表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Day Dream  作者: ユ・サド・クアザ
50/52

第27夜 射的-前編-

 「げほっ、ぶっごほっ……な、なん、なんて??」

 朝食時、母親からの思わぬ一言に盛大に紅茶を吹き出してしまう。


 「あーあー、なにやってんの」

 母親は苦笑いしながら布巾を差し出しつつ、間髪入れずに

 「だから、昨日友達と遊ぶって言ってたけど、女の子とデートだったでしょ?って聞いたの」


 昨日、母親にはたしか『昼過ぎから友達と遊ぶ』とだけ伝えたはずである。

 どこからか伝え聞いたのか・・・いや、昨日タカイシと会う事は生井ちゃんにすら話していない。

 話したところで、生井ちゃんとの接点がないのだから、漏れるハズもない。

 あ、もしかして・・・どこかで見られていたか・・・??いやでも行った先は母親の行動範囲にはないハズ・・・

 などと逡巡していると


 「図星なのねぇ。ホントにオトコってのは・・・浅はかよねぇ・・・」

 半ば呆れたような表情でこう続ける

 「黙ってたって、親なら解るわよ。毎日あんたの顔見てんだから。」

 

 昨日は出かけるまでそわそわしてたし、夜遅くまで帰ってこなかったし、朝起きたら顔が赤かったり、ニヤニヤしてたり、唇なんか触っちゃったりして・・・

 と、指折り数えてゆく。

 「逆に、これで解らない方が不思議だわ」

 と豪快に笑う。

 年相応に老けてきてはいるが、同年代の女性と比べたら母親は若い方だと思う。

 若かりし頃は遊び半分で都会のクラブに勤めていたと言うのは、伊達ではないのかもしれない。


 「・・・で?どうだったの??白状しちゃいなさいよ」

 そう詰められたら、一瞬つい白状しそうになるが

 「ばっ・・・いや、そんなんじゃないってば!!」

 と、思春期男子らしい豪快な一言をストレートにぶつけてやった。

 どうだ、普段おとなしい息子が語気を荒げるなんて、なかなかない事だろう。


 「ふふん。その顔じゃキスぐらいしてきたな?」

 ダメだ、強がってみたところで母親にはかなわない。

 母親からしてもちょっとからかってやろうと思った程度であったのだろう。

 それ以上、余計な詮索をせず大量の洗濯物を干しに二階へ上がっていった。


 朝食を終え、身支度をして玄関へ向かう。

 「いってきまーす!!」

 解けている左足の靴の靴ひもを結びつつ、大声を張る。

 先ほどの悔しさを少しでも反映させるべく少しでも威勢よく言い放つ。

 「今日会うのは女の子じゃないから!!!」


 ドアを閉めると、母親の大笑いが聞こえる。

 「あっははははは、白状しちゃったねぇ。」

 墓穴を掘るとはまさにこの事だ。


 距離と共にフェードアウトする母親の声を背に、待ち合わせで場所である学校へ向かう。

 田舎道を10分程歩いたところにある高校の校舎。

 まだ母校と言う実感はないが、4か月程の学校生活を経てみるとなんだか妙な愛着もあった。


 昨日にも増して暑い日差しを浴びながら校門で待つこと5分。

 一台のRV風の車が目の前に停まり、ウーッと言いながら運転席側の窓がおりる。

 「よ!時間より早かったが、待たせちゃったかな?ささ、乗ってくれ。」

 

 促されるまま助手席へ回りドアを開け乗り込む。

 「シートベルトはしてくれな」

 似たようなセリフも相手が違うとこうも印象が変わるのは不思議だ。


 「夏休み中に申し訳ないが、この間はほとんど話が出来なかったからね」

 声の主は、そう。渡辺だ。

 今日は軍曹でも少佐でもない。陸上自衛隊の二等陸佐である渡辺である。

 

 先の駐屯地では友達と一緒だった事、渡辺に続きタカイシメグミとの遭遇で少々気が気でない事を気遣ってくれたのか、連絡先だけの交換に留めてくれた。

 「・・・で、高石さんとのデートはどうだったんだ?」

 

 ・・・忘れていた。そうだ、昨日タカイシと会う事を知っていた人物がここにいた。

 メッセージアプリでのやり取りで会う日程を調整していた際、渡辺から最初に指定された日付は昨日、すなわちタカイシメグミとの約束の日であった。

 用事があるの一言で済ませれば良いものを、馬鹿正直にタカイシと会う予定があると答えてしまい、青春を謳歌すべしという返信をもらったのだった。

 

 答えに窮していると『おや、その反応は穏やかじゃないな?』と茶々を入れられる。

 一緒にファミレスで食事をし、レイトショーを見て、そのまま自宅近くに送り届けてもらっただけだ、と端的に答える。

 「そうか。ん?・・・何、顔を真っ赤にしてるんだ、まったく」


 別れ際に声を掛けられ振り向くと、タカイシの両手に頬をロックされ、そのままキスをされた事は話していない。

 送り届けてもらった所までの事実を語っただけだ。


 車を降り、ドアを閉めようと思ったら

 『私の年齢だと犯罪みたいなもんだから・・・ナイショだよ?』

 と、顔を真っ赤にして言われた。

 オトコと言う生き物はナイショと言う言葉に弱い。母親の口癖である『オトコって浅はかよねぇ』と言うのはこう言う事かと妙に納得してしまう。


 結局、タカイシとはお互いが見ている夢に関しての核心的な話は一切出来ていない。

 何度かそれっぽい雰囲気はあったが、お互いに別の話題を切り出してしまった結果、完全にタイミングを逸してしまったのだ。


 もう一人のキーパーソンであろう渡辺は、どんな話をするつもりなのだろうか。

 今のところ、車内では渡辺と自分の共通項である三浦の話から始まり、主に自分の学校生活が会話の主だったテーマだった。

 高校生である自分の趣味や興味関心にも熱心に耳を傾けてくれている。

 楽器に関しては知識が無いようで、解らない事は素直に解らないと質問を出してくれるのが他の大人と比べて好印象だった。


 何のかんのとおしゃべりに夢中になっていると、いつの間にか車は繁華街エリアに入っていた。

 繁華街とは言え、田舎町の駅回りだ。急に高いビルが増えるという事はないが、それでも5階建て程のビルが所狭しと立ち並ぶ。


 「よし、着いたぞ。ここが目的地だ。」

 繁華街の中でも端の方、目的地は広い倉庫のような建物であったが、看板が無ければそこが店舗なのか倉庫なのかは判別がつかない。

 車を下りて入口の上に掲げてある看板に目を向ける。

 そこには<GUN&SHOOTING>の文字が見て取れた。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ