第22夜 抽腸-前編-
これほど強烈な描写を目の当たりにしたのは久しぶりかもしれない。
毎夜毎夜、と言いたくなる程頻繁に見るようになってしまった夢。
死に至らねば目覚めることが出来ないと言う夢の特性も相まって、こういった事にはだいぶ慣れていたつもりであった。
今夜はどのような世界観の夢であろうか。
理不尽と感じることも多々あれど、時と場合によってはそれなりに楽しめる状況も有り得る。
死の判定がなされるまでにはそれなりのプロセスがあり、大抵は痛く苦しい。しかしながら、夢の中の世界は無限だ。
現実では経験することの難しい出来事も、ある時は正義のヒーローであり、ある時はパイロットであったりと、あれやこれやとバラエティに富んだ形で、あたかも実体験のようなリアルさをもって体感する事ができる。
今日のスタートも、いつもと同じ暗闇からだ。
瞼を開けることで夢の舞台か開幕する。
いまだ、視界は暗い。
寝起きと同様に、夢の世界に入り込んだ時も少しずつ覚醒してゆく。
寝入りでまだボーっとしている耳に、ギギギ・・・と、なんとも表現しにくい不気味な音が届く。
「!!!」
同時にすさまじい痛みを腹のあたりに感じた。
急に意識がクリアになる。
あまりの痛みに飛び起きようとするも、体の自由が利かない。
口元には何かがきつく結ばれている。不自由なのは体だけではない。
否応なしに叫んでいるはずなのだが、のどを潰されでもしているかのように、どういうわけか声が全く発せないのだ。
辛うじて動かせる頭を目いっぱい動かし、眼球を可動域限界まで動かしあたりを見回す。
学校の教室と同じくらいの広さの石造りの部屋。外光が差し込んでいることから日中であることは解る。
しかし、差し込む自然光のみでは光量が足りないのか、松明のような物に火を灯すことで明るさを確保しているようだ。
理不尽な事も多い夢の中で、少しでも長く生き残る為に、まずは状況を把握する事が大切だ。
入眠し、夢を見始めたらまずは周囲を確認する。
いち早くその世界観を掴む事で、最終的に死に向かうという結論は同じでも至るまでのプロセスに選択肢と言う余裕が生まれる事も多い。
このような状況でも、そんな事が身についてしまっているのかと面白くもあったが、それを自嘲する余裕はなかった。
何しろ、腹が痛いのだ。
いや、ここまでくるとそれは果たして痛いという表現が適切なのか解らなくなる位、腹部の異変は尋常ではない。
動物的本能とでも言えば良いのか。
尋常ならざる事態である事を、体は痛みをもって脳に伝えている。
反射的に視線を向けてしまいそうになるのを意思でしっかりコントロールしつつ、可能な限りゆっくりと、それが視界に入ったときに出来るだけショックを受けないように心の準備をしつつ、恐る恐る目線を腹部へ向ける。




