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Day Dream  作者: ユ・サド・クアザ
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第17夜 再会-前半-

 間もなく夏休みを迎えようとしている頃。

 自分はあまりにも平和な日々を過ごしている。


 トラブルと呼ぶには少々派手な出来事ではあったが、その副産物とも言えるのは教師たちとの距離感だ。

 周囲とも打ち解け、授業態度もまじめ。部活動にもしっかり取り組んでおり、自ずからトラブルを引き起こすような事はない。


 入学当初はあんなに怖いと感じていた鬼軍曹こと体育教師の中川からも、廊下ですれ違えば出された軽口ににこやかに答えられる程良好な関係が築けている。

 だからと言って、決して慣れ慣れしい態度にはならず、教師と生徒と言う礼儀をもって対応をしている。

 その態度が功を奏しているのか、所謂、教師ウケする生徒、と言うポジションが出来上がっているのが解りつつあった。


 「おい!國井、ちょっとまて。」

 放課後の廊下ですれ違った直後に声を掛けてきたのは、体育教師の三浦だ。

 自分を柔道経験者と勘違いしているものと思われるが、一度部活動に体験参加させられたものの、以降は体育の授業でも他の生徒と同様の扱いを受けている。

 なんにしても熱血漢独特の圧が若干苦手だが、決して嫌いな教師ではない。


 「はい、なんでしょうか。」

 顔を見る度になんのかんの声を掛けられていた為、今日は何を言われるのか身構えつつそう答える。

 「そんなに固くなるなよ、ほらこれ。」

 んっと言いながら差し出された手元には、パンフレットが握られていた。


 「夏休みの最初の週末に、隣町の自衛隊駐屯地でまつりがあるんだが、友達と行ってきたらどうだ?音楽隊の演奏もあるぞ。」

 よくよく話を聞けば、知り合いがそこに勤務しているらしく、一人でも多くの中高生に是非遊びに来てほしいという事らしい。

 確かに、高校生にとっては卒業後の進路の一つでもある自衛隊である。

 まつりと聞けば単純に楽しい物である事には違いないが、向こうからすれば無数にある卒業後の選択肢の一つとして考慮してもらう為、普段交流のない中高生に堂々とPRができる貴重なチャンスでもある訳だ。

 

 「実は俺のライバルなんだ。渡辺って言ういけ好かない野郎でな!がっはっは。」

 小学生時代から柔道をやっている三浦は現在でも現役で大会に出場し続けている。

 体格差があり同じ階級で直接対決はあまりなかったらしいが、それぞれが所属している道場同士の交流もあり、お互い何度も稽古をしているそうだ。


 「まぁ!試合となれば俺の方がデカイ分だけ、少しだけ強いんだがなー!」

 豪胆な笑いと共に、本気とも冗談とも取れない軽口を吐き出すが、格闘技とは基本的に大きい者が強いのではなかろうか。

 「もし、行くとなったら教えてくれ。渡辺に連絡してジュースの1本くらい奢らせるからさ!」

 三浦が職員室に向かうと、自分も部活動に出る為音楽室へ向かう。


 いつにも増してドンと来てドンと去っていくなぁと苦笑いしながら、もわっとした渡り廊下を歩いて行った。

 手にしたパンフレットを見ながら、誰を誘うか悩みつつ。

 もっとも、誘う相手は悩むまでもなく、男子も女子も全て決まっていたが。

  

-----


 年々気温が上がっているのではないかと思うが、今年の夏も暑い。

 生ぬるいを通り越して熱風とも思える温度の風を受けながら、待ち合わせ場所に指定したコンビニの僅かにできている陰に身をひそめる。


 「・・・で、くにーちゃん、今日は他に誰が来るんだっけ?」

 見る見る間に溶けていくシャーベットバーをこぼさないように食べながら、まつりに誘ったうちの一人である蕪木がシャーベットバーのような甘ったるい声で聞いてくる。

 この独特な話し方を気持ちが悪いという生徒もいたが、自分は蕪木のこの穏やかなところが大好きだった。


 「んー、あとね、生井ちゃんと貝塚くんと、サトスに青柳。」

 サトスは生井と同じ中学出身で本名をさとしと言うが、自宅に遊びに行った際、彼の祖母が田舎なまりで彼を呼ぶ声がそう聞こえた事から定着したあだ名だ。

 青柳は仲間内の誰とも出身中学は被らないが、ひょうきんな性格と独特な毒舌口調でクラス内でも人気があり、気付けばすっかり仲間になっていた。

  

 コンビニで売っている袋の氷に、ペットボトルのコーラを流し込み、ストローを刺して飲む。

 お手製の"かちわりコーラ"を片手に他の仲間を待つ。


 「こんな暑い中自転車で隣町とかw行くわけないじゃん!」

 須田をはじめとする女性陣に振られたことは、みんなにはナイショだ。

 いや、これで良いのだ。男同士、親睦を深める夏休みと言うのも、いかにも高校生っぽくて素晴らしいじゃないか。

 

 程なくして自転車に跨った面々が集まってくる。

 田舎であるが故、この集合場所に来る時点でそれぞれが20分程かけて自転車をこいでやってきた。

 思い思いに暑いという単語を発しながら各々の好きなやり方でコンビニで涼を取り、一旦落ち着いたところでイベント会場である隣町へ向かう。


 周りには畑しかない。灼熱の中、自転車をこぐ。

 おおよそ30分の距離だが、走る順番も入れ代わり立ち代わり、並走したり競争したり話し込んだりと、緩急つけつつ45分程をかけてようやくたどり着く。

 たどり着くころには全員のシャツが絞れる程度に汗でぬれていた。

中学高校とバスフィッシングが趣味で、部活動の合間を縫ってあちこち行ってました。

夏の暑い盛りにも、自転車で30分・1時間なんて距離は苦でもなく走っていたことを考えると、若さって言うのは常に無謀とも思える行動と隣り合わせだったな、と感じます。

作中にある「カチワリコーラ」はあまりやりませんでしたが(持ち運びがしにくい為)、カップ形状のレモン風味のアイスシャーベットにコーラやジンジャーエールを入れてよく飲んでましたね。

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