第15夜 叱責-前編-
翌金曜日の朝。
登校するや否や、校門で待ち受けていた中川に首根っこを掴まれ、生徒指導室に軟禁されてしまった。
昨日の一件の後、とても部活動に顔を出す気にならずサボってしまったので、そのまま帰宅したのもいけなかったのだろうが、せめて担任か顧問に事情を伝えておくべきであったと反省している。
中川に促されるまま指導室の貧相なソファーに座らされる。
時折、パンッパンッと竹刀を床に叩く音がする。
これを中川のクセだと言う生徒がいるが、それは違う。
しかめた顔をして舌打ちを絡めながら竹刀を動かすことで、その場に居るメンバーにそれとなくプレッシャーを与える為の動作だ。
それがそれと解ってしまうと、効果など無いに等しいどころか滑稽にさえ見えるが、今この状況でそれに意見する程頭は悪くないつもりだ。
5分10分と竹刀をリズミカルに叩く音が続く。
いい加減聞き飽きたところで指導室のドアがそっと空き、担任の川田が腕を三角包帯で吊った直井を連れて入ってきた。
「さて・・・」
ガタン!とわざと大きな音を立てて立ち上がる中川は、いつにも増した低いトーンで話始める。
「1年1組の國井くん。お前は直井がなぜこの恰好をしているか、解っているな?」
憤慨している、と言うのがこちらにも解るような大げさな物言いで言い放った。
自分は直井の顔を見る。その表情はいつもの直井ではない。
まるで、自分は被害者なんです、助けてください、と懇願するような顔だ。
その表情を見た途端に、頭の蓋が開くかと思う位一瞬で怒りがマックスに達してしまった。
「はい!よく解ってます!」
あの中川を挑発するかのような大声を出した。
もちろん、目をまっすぐに見据える事も忘れない。
そもそもは、相手の因縁から始まった出来事なのだ。
「お前!それが!!人に怪我させておいてとる態度か!!!」
バシン!と竹刀を床に打ち付けながら中川は怒鳴る。
只でさえ怒りのボルテージが上がっているうえに、一方的に怒鳴られてはこちらとしても引く気は失せる。
鬼軍曹だろうがなんだろうが何でも良い。こうなれば全面戦争だ。
「なんで俺が怒鳴られなきゃなんないんですか!」
返す刀で怒鳴りながら、直井の顔を睨みつける
「理由もなく上級生連れて俺を角の教室に連れ込んで、その上級生がタイマン張れって言うけど理由はよく解らないから黙ってたら」
怒りが過ぎて涙がこぼれてきたが、大きく息をしたあと涙も構わず一気にまくし立てた。
「コイツはどんどんどんどん一方的に殴ってくるしよぉ!挙句に朝から指導室に連れてきて怒鳴られるんだから、たまったもんじゃねぇよ!おい!中川!てめぇこっちの身になって考えてみろよ!!!」
中川が持っている竹刀がバン!と一際大きな音で鳴らされる。
なにしろ、鬼軍曹にケンカを売ったのだ。
一発二発ぶん殴られても後悔は無かった。
「おい!てめぇも何とか言えよ直井!!」
泣き喚いてる声は絶対に廊下にも漏れている。
そんな事もお構いなしに直井の方へ歩み寄ろうとすると、担任の川田が優しく穏やかな顔でそれを制した。
中川の竹刀が、今まさに横一閃に振られようとするのが視界の端に入る。
刹那に訪れるであろう痛みと衝撃に、自分は覚悟を決め目を閉じた。
今回も前後半に分れてますが、前半短め後半長め、です。




