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未知との出会い  作者: En
第一章
3/109

「未知」との出会い③

「エックスさん魔力が来ないですよ」

「あげてないからね。欲しければ奪ってみなさい」

 公平が見上げた先のエックスは小悪魔的な笑顔である。体格的には小悪魔ではない。公平はエックスの靴下に触れてうんうん唸った。形のない何かを自分の中に引きよせるイメージで集中してもみた。が、いつものように体に力が来る気配はない。

「分かったぞ。靴下だ。こいつがいけねーんだ。エックス、悪いけど素足になってくれ」

「え。う、ん。まあいいけど」

 エックスは少し赤くなって答えた。公平から目を外し、足を持ち上げる。公平が見えていないので気付かず蹴ってしまう。公平は文句を言ったが、エックスは聞かずに靴下を脱いだ。ぽい、と投げ捨て足を下ろしてくる。見上げている公平は、このままだと踏み付けられてしまうことに気付き、慌てて逃げ出した。

「あら、ごめんなさい」

「ふざけんなー今のはわざとだろー」

「おほほほ。さー、どーでしょー。ほら魔力取るんでしょ頑張って」

「よーし」

 公平はエックスの足に改めて触れる。上から「くさくはないとおもうけど……」と聞こえてきた。ので、においをかいでみる。するとエックスに蹴り飛ばされた。

「嗅ぐな!ばかっ!」

「うん大丈夫。変なにおいはしなかった」

 エックスを怒らせてしまったらしいので公平は素直に答えた。

「感想を言うな、ばかっ!」

 エックスは再び公平に向かって足を下ろす。今回はよけきれず、柔らかく重い彼女の足に踏みつけられてしまった。

「苦しい?ねえ苦しい?じゃあ頑張ってボクから魔力を奪いましょう。そうしたら押し返せるかもよ?ほら、ぐりぐり」

 エックスは公平を踏みにじりながら言った。足元で小さく脆い生き物の必死の抵抗を楽しむ。足の裏でチクショウ!チクショウ!という叫び声が聞こえた。




 次に公平が目を開けたとき、エックスが申し訳なさそうな心配そうな顔で彼を見つめていた。公平が目覚めたのに気が付いて安堵したように小さく笑う。

「おれはどうしたんだ……」

「ごめんなさい。やりすぎました……」

 公平はぽかんとエックスを見上げる。何があったのかを思い出してみる。最後の記憶は、確かエックスに踏まれたところで、それ以降の記憶はない。

「え、俺アレで気ぃ失ったの?」

「……」

「なんか言ってくださいよ師匠」

「うん。まあ……。うん。ごめん」

 公平はハハハと笑った。今更何を申し訳なさそうにしているのかおかしくなった。

「別にいいけど。それより魔力を奪うってやつどうすればいいんだ。コツを教えてよコツを」

「うーん。あれは、魔女だったら大体みんなできる基本の技術で、コツらしいコツは無いしねえ。けど、魔力が引っ張られてる感じはあったし、感覚的には合ってると思うよ。大事なのはイメージだよイメージ」

「分からん。実際必要なんかアレ」

 公平の言葉に対して、エックスは彼の目をまっすぐ見つめて答える。

「いる。公平には特に」

 ピンと来ていない公平を見つめる。体験してみないと分からないこともある。エックスはそう考え一つの提案をした。

「実験してみよっか。魔女と人間の力比べだ」

「は?それ実験の意味ある?さっき俺意識飛んだんだよ?」

「やってみないと分かんないだろ。それー」

 エックスが人差し指を押し付けてくる。公平は必死に押し返す。が、彼女の白い指はびくともしない。

「まあこういう感じ」

「分かってたんだよ!こうなることくらい!」

 公平は息切れしながら返した。エックスは笑いながらごめんと謝る。

「じゃ、次ね」

 エックスが言うと公平の身体に魔力が送られてきた。直後エックスはまた指を近づけてくる。だが、今回の公平は──。

「おっと!」

 エックスからの魔力で強化されている。よって、エックスの指を押し返しきれるだけの力があった。

「まあこうなるな」

 公平はニッと笑って言った。大してエックスも怪しく笑う。

「じゃあ次だ」

 エックスからの魔力はまだ送られている。再び彼女の指が迫ってくるが、同じことのはずだった。だが、結果は想定外に終わった。強化されている身体でありながら、最初の時と同じように、いやそれ以上の力を感じ、エックスの指は当然押し返すことが出来ない。

「ウフフフ」

「な、なん、で」

 公平の必死な抵抗を感じる。この弱弱しい反応は大好きだ。だが、やりすぎるとまた公平を気絶させてしまう。適当なところで指を離した。公平は息切れして暫く言葉も話せない状況に陥った。

「フフ。さて。最後にボクは何をしたでしょう」

「……はあはあ、はあ。魔力で身体を強くしたんだろ」

「うん。正解。これが魔力を奪えるようにならなくてはならない理由です」

 ようやく公平も理解した。例えエックスからの魔力供給があっても、人間と魔女では素の能力に差がありすぎる。公平のように魔力で身体を強くできるなら、魔法抜きでも結局敵わないのだ。

「身体強化に使った魔力だって獲れる。この技術を極めれば相手の魔法すら魔力に還元して奪えてしまう。どう?魔女と戦うには必須のスキルじゃない?」

「うん……。必要だな。絶対」

 その時、エックスが何かを感じたように顔を上げた。溜息を吐いてぼやく

「あの子はプライドってモンがないのか?」

 公平になにも言わずに彼を摘み上げた。

「え。どうしたの」

「アクアが来た。今回は二人もお友達を連れてきてるみたいだ」

「うわあ……。三下っぽい」

「場所はボクが指定する。連れてって」

「おっけー」


 穴を抜けた先に三人の魔女が立っている。彼女たちは何もしていなかった。足元の人々は不安げに見上げている。

「来たね。エックス」

 エックスは三人を一人一人順番に見回す。小声で右からアクア、バーン、チャンスと公平に伝える。

「チャンスて。逆に何してくるか分からなくてこえーんだけど」

 アクアという名前で炎の魔法使ってくる意味不明なのもいるが。そう考えるとバーンという名前でも油断できない。爆発の魔法かと思いきや水で攻撃してくるかもしれない。

「あの子らの名前に意味なんかないよ。別に気にしなくていい。どうせ何したってボクには効かないんだ」

 言い終えてから三人を見つめる。彼女らはまるで気にせず、余裕の笑みを浮かべている。

「せいぜい吠えてればいいし。今日は作戦があるんだから」

 アクアは魔法で穴を開いた。その奥からは強烈な冷気が零れている。「あの場所で勝負よ」その声に従いエックスは、公平を下して穴に向かう。

「俺もいくよ。てか俺がいないとエックス帰ってこれないだろ」

「魔女が三人もいるんだ。適度に虐めてやれば帰ってこれる。それより──」

 エックスは何か言いかけて止めた。一瞬何かを悩むような顔をして、すぐに笑って公平に向き直る。

「いや、大丈夫。何でもない。けど、後で迎えに来てもらわなきゃいけないかもしれないし、ちょっとだけ魔力を分けてあげる」

 そして公平は北極に向かった。何かの胸騒ぎを、公平は感じた。


 三人の魔女による波状攻撃。エックスはそれを片手で受け止め、そのまま突撃する。魔力で強化されたとび蹴りをアクアは避ける。数では勝るのに、防戦一方の三人である。

「やるわね。エックス」

「さっさと全員ぶっとばして帰りたいからね。どーせ追加の誰かが公平のところに行ってるんだろうし」

 アクアは焦ったような表情をした。

「い、いや。そんなこと」

「流石だな。気付いていたか」

「バーン!」

「落ち着け。大丈夫だ大丈夫」

 はあ、とエックスはため息を吐いた。どうせそんなところだと思った。公平が捕まればエックスは何も出来なくなる。故に二人を分断しようとしているのだ。

「おあいにく様。公平は普通の魔女には負けないくらい強いです。で?誰が行ったの?ダイヤ?フラワー?」

 きゃあきゃあ騒ぐアクアの声が途絶えた。「大丈夫だろう?」バーンが言う。チャンスがクククと笑った。その雰囲気に、エックスは嫌なものを感じた。

「おい。誰が言ったか答えろよ」

「すぐに分かるわ。もうすぐ来るからね」

 その直後、目の前の三人とは比較にならない程巨大な力が出現した。ドクンとエックスの心臓が跳ね上がる。そして、エックスは高速でアクアに接近し、殴り飛ばした。

「うきゃう!」

「アクア!」

 エックスは何も言わずに、バーンに回し蹴りを叩きこむ。最速で全員倒し、帰らなくてはならない。何故なら、そこにいるのはエックスの想定をはるかに超えた強力な魔女だ。

「なんで」

 エックスにとっても、因縁の相手。

「なんでこのタイミングでワールドが!」

 それは全ての魔女の中で特に強い力を持つ五人の魔女の一人。ワールド。


 公平は、自分のところに新たな魔女が現れる事を予見していた。だが、エックスが大丈夫と言ったのだ。きっと自分なら戦えるのだろうと思った。果たして魔法の穴は開き、イオンの駐車場にそれは降り立った。

 周囲がざわめく。自転車が潰れているので公平は走ってそこに向かう。エックスの代わりに戦うのだ。そこに立つ巨人の姿を確認する。長い黒髪に蒼い目。エックスよりも若干ほっそりとした顔。魔女の共通項なのかもしれないが彼女も綺麗な顔立ちである。心なしか困ったような表情であった。

「エックス?エックス?」

 巨人は周囲をきょろきょろ見回しエックスを呼ぶ。足元の人を捕まえて顔の前に持ってくる。

「ごめんなさい。エックスという女の子を知りませんか?友達なんです」

 まだ魔女は遠い。彼女の声しか聞こえない。だが、エックスの友達ならば、もしかしたらこちらに危害は加えてこないかもしれない。そう、思った。

「そう。行ったのですねエックスは。そうか。うん。良かった」

 そのまま、魔女の指先で赤色が弾けた。巨大な足が持ち上がり、地面に思い切り叩きつけられた。その足はそのままイオンを蹴りぬく。まだ少し離れたそこで起きた惨状。

「なにしてんだテメェ!」

 公平の叫びに巨人の視線が突き刺さる。

「あなたね」

「俺だ!」

 公平は右手を前に突き出す。魔女の指が彼を指す。公平の目は集中していた。怒りが頭を冷たくし、その瞬間を待つ。ジッと見つめていた指先が、視界の上へ消える。公平は魔女を追う。彼の真上に、それは居た。まだ彼女の指は公平をロックしている。

「輝きの一矢」

 巨大な水晶の矢が、公平目掛けて降ってくる。還元。魔力に還元。頭で必死にイメージするも、その魔法はビクともしない。そしてそれ以上に問題なのは、落下してくる魔女本体だ。

「っ……!開け!」

 エックスからもらった魔力。これで回避するより他なかった。下に穴を開き落下して、即座にそれを閉じる。公平がいた場所に、巨大な矢が突き刺さった。魔女が右手だけで着地し、腕の力だけで飛び上がり、地面に立つ。魔女は片側二車線の道路に立っている。膝くらいの高さのマンションが近くにあった。上から指で指していき、「どれにしようかな」と唱えている。

「やめろぉ!」

 公平は魔女の真上にいた。アクアが使った魔法、炎の雨を放つ。魔女は公平に顔すら向けず左手だけで魔法をペシペシと弾いた。唖然としている公平の背後に、空間の壁を越えて巨大な手が伸びてくる。公平が気付いた時にはその手に捕まっていて、魔女の目の前に連れてこられた。巨大な手に握りしめられて顔だけ出せている状況。魔女はあきれ顔で公平に言った。

「まだいたなんてばかですね。さっさと逃げればよかったのに」

「……言われなくても、てめえごとエックスの所に逃げるさ。開け!」

 穴が魔女の足元に、出来なかった。

「……なんで」

「あなたがさっき一生懸命やってた魔法の還元をしただけですけど?」

「そ、そんな……」

「私は他の魔女とは違います。特別な五人のうちの一人。だからエックスもわざわざ私が出てくるなんて想定してなかったんだろうけど」

 魔女の手がぎゅっと握られる。声も出ない強さ。体が壊れることも、死ぬことも気にしていない、残酷な力が公平を襲う。エックスからもらった魔力がなければ、公平の小さな体は瞬時に弾けていただろう。

「アハハ。面白い顔。ほらほら、頑張らないと死んじゃいますよ」

 身体が悲鳴を上げ、魔力は尽きていく。全身に走る痛みが頭の中の99%を支配して、残りの部分で痛みの果てに意識が消えるのだと理解した。怖くはなかった。怖いと思う余裕がなかったからだ。

 突然、公平は手の締め付けから解放された。そこでようやく悲鳴を上げることが出来た。痛みで泣いたのはずいぶんと久しぶりであった。体が震えて、魔女への恐怖と、生かされたことへの感謝を感じてしまった。

「分かりました?エックス。人間なんてこんなに弱い生き物」

 魔女は後ろを振り返る。息切れをして、三人の魔女の返り血を浴びて、それでも帰ってきたエックスがいた。周囲を見回し、ここで起きたことを理解し、怒りと後悔を抑えるように俯いて歯を食いしばる。

「あなたのお気に入りもこの程度。本気でこれと共存していくつもりですか?」

「公平を返せっ!」

 エックスの叫びをにこやかに魔女は聞いた。そして、答える。

「いいですよ。今日はあなたに会いにきただけなので。……ただ──」

 エックスの表情が歪む。公平は涙で殆ど何も見えなかったが、それでも分かった。

「私、この人に攻撃されまして、今も手が痛むのです。やられたままでは気が収まらないので」

 魔女が後ろを指さす。先ほどターゲットにしていたマンションだった。

「そこの上から三番目の階にいる人間を全部殺してください。そうすればこれはあなたに返します」

「ふざけんな!」

 エックスより早く公平が叫ぶ。

「そんなことさせねえ!絶対やらせねえ!俺なんてどうなってもいいからコイツを!」

「ふうん。すぐに泣いちゃう弱虫のくせに。またぎゅうってされたいの?」

 恐怖を顔に出さないように頑張った。それでも身体は震えてしまうし、表情はこわばる。

「それとも頭をピーンって飛ばしてあげようかなー。簡単ですよ?」

 公平の目の前で、巨大な手がデコピンのマネをして動く。少し間違えれば当たる距離だ。無意識に「ヒッ」と声が出て、すぐにしまったと思った。

「……やめて」

 言いながらエックスが歩いていく。魔女が指示したマンションに向かって歩いていく。すれ違いざまのエックスの表情に、公平の胸が張り裂けそうになった。

「やめ、やめろ」

「とめちゃダメじゃない虫けら。あなたの為にエックスが頑張っているんだからよーく見ていてあげないと。沢山人を殺しちゃうことになるけど、嫌いにならないであげてくださいね」

 公平は首を横に振る。「ふざけんな」と小さな声が漏れた。許せなかった。

「ふざけんな……」

エックスが建物の前に立つ。ズンと体を落とし、指定された部屋を見つめる。震えた小さな声で「ごめんなさい」と聞こえた。

「ふざけんな」

 魔女の喧しい笑い声が聞こえる。公平は許せなかった。当然この魔女は許せない。だが、それよりも許せないものがある。

「ふざけんな!」

 そこでようやく、魔女は異変に気付いた。魔力が奪われている。手の中の人間の身体が魔力で強化されていく。そして、それを奪うことが出来ない。

「ふざけんなぁ!」

 公平は、その力で、魔女の手を押し広げた。そのまま移動の穴を開き、飛び込む。

「エックス!」

 穴の向こうにはエックスの顔。驚いた表情に飛び込んでいき、その鼻先に抱き着く。エックスは戸惑ったように彼を手に取り見つめる。

「俺は最低だ。人間のクズだ」

 公平は何より自分の弱さが許せなかった。弱いから誰も守れなかった。弱いからエックスに守られてばかりだった。そして、弱いから。

「俺が弱いせいで、エックスを」

 エックスを傷つけた。エックスを泣かせてしまった。

 エックスは首を横に振った。「違う違う」と声が漏れる。エックスが何を言おうと、彼女を泣かせたのは結局公平が弱いためだと分かっていた。そんな顔は見たくない。そんな顔は絶対にさせない。だから、公平はあることを決めた。

「エックス俺は──」

 直後、大地が叫んだような大きな音がして、エックスの目の前のマンションは、魔女の足の下に潰されていた。

「茶番はそれくらいで」

「お前!」

「ワールド!」

 ワールド、と呼ばれたその魔女はエックスを蹴り飛ばしつまらなそうに溜息を吐いた。

「まあ、約束はしたのでそのムシケラは返します。ただこのまま終わるのはやはりこっちの気が済まないですね。一応三人ボロボロにされていますし」

エックスがワールドを睨む。苦々しげな表情で、ワールドは答えた。

「エックス、あなたを連れて帰ります。それで今日はお仕舞にしてあげましょう」

「いやだ!」

 ワールドは困ったように頭をかいた。めんどうくさげな溜息がこぼれる。

「じゃあしょうがない。この世界を火の海に沈めるだけです」

 巨大な炎の玉がいくつも発生し、宙に浮かぶ。ワールドその気になれば、その全てが地上に降り注ぐ。

「やめろ!」

「じゃあ言うことを聞きなさい!」

 ぐぅとエックスの口から声が漏れた。

「あなたさえ戻ってくるなら、これ以上私はここを攻撃しません。私の部下にも攻撃させません。誓いましょう」

 エックスは一瞬考えて、公平を見つめて、彼を地面に下した。諦めたように「ごめん」と呟く。

「待っ……」

「行こうワールド」

「ええ。賢い判断です」

 エックスは立ち上がって歩いていった。ワールドは公平を跨ぎ越していって、そのままボロボロになって気を失っている三人の所へ向かう。ワールドはアクアの頬をペシペシ叩いた。それでも反応がないので、三人の真下に穴を開けて落とした。ワールドはエックスに穴に入るように促すも、彼女は断った。

「一緒に行こうよ」

 エックスが笑顔で手を差し出す。分かっている。ワールドを一人残して立ち去りたくない。ただそれだけ。それだけなのに、無理した笑い顔で、ワールドと手を握り合っている姿を見ているだけで、公平の胸は締め付けられた。

「ムシケラの皆さん、友達が長い間お世話になりました。もう来ないと思いますのでご安心ください。それでは、さようなら」

 ワールドの声が響き、二人は穴に落ちていった。また一つ、自分を許せないところが増えた。公平の拳が固く握りしめられる。

「俺は……」

 エックスに言えなかった誓いを、言葉にした。エックスを傷つけないために、今度は自分が守るために、自分が至るべき姿を。

「俺は、世界最強の魔法使いになるぞ。エックス」

 弱い自分だからこうなった。敵に負ける自分だからこうなった。だからもう誰にも負けない魔法使いになる。壊れた世界の中で、風が吹き抜けた。


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