これが俺たちの人生だ
ゴオォォォォーーーー
「まだ死にたくねぇぇぇぇ!!!!!」
そう泣き叫びながら全力疾走する少年、ナシロ18歳。
「何だよあれ!?」
気がつけば空から真っ白い隕石のような塊が迫っている。
大きさは直径500メートルぐらいだろうか。
「意味が分からん!何で急に隕石降ってきてんの!?確実にこの町吹き飛ぶサイズじゃん!?ニュースで言ってたっけ!?」
町の人達が同じく走り回っている。ということはニュースでは言ってなかったのだろう。
人間死ぬ直前は意外と冷静なんだな、これもしかして走馬灯なんじゃ?
あと10秒ぐらいで地面に着きそうだな。もうほとんど空見えないもん。
「彼女もできないまま死ぬのか俺はー!?」
あるあるすぎる未練を叫びながら足を止めた。
こういう時どうするのが正解なんだろう。いやきっと何も不正解で何でも正解なんだろう。
かといって何かできるわけではない。眩しすぎて、怖すぎて、目を開けることがもうできない。もうすぐくるとてつもない衝撃に備えて、無駄と分かっていながら構える。
フワッーーー
一瞬、違和感を感じた。いや正しくは何も感じなくなった。
「ーーー!!」
さっきまであった白い塊の代わりに、虹色の、いや7色どころじゃない色の空があった。
…あったのだろうか。瞬きをした時には雲ひとつないいつもの空だった。
でもナシロはその一瞬に見たかもしれない空の色に心を奪われていた。
「俺…生きてるのか…?」
遅れて自分が生きていることに気づいた。
ーーー2年後
あと3分で20歳を迎える。今年はお祝いのメッセージが何個届くだろうか。大して友達も多くないけど。
ふと2年前の空を思い出した。あれから毎日のように思い出し、今でも鮮明に浮かぶ。
キィィィィンーーー
「ーーー!!??」
日が変わると同時、右目に激痛が走った。
違和感しかない。熱い。異常を確認するために洗面台へと走った。
「何だよこれ…」
真っ白な眼。ただひたすらに真っ白な眼だった。しかしそれが未知の現象ではなかった。
「…俺…が??」
ナシロ20歳。平凡な日常を失った瞬間だった。