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9話

 起きるとユウがいないので、先に起きて出かけたのか、ベッドの横にあるテーブルに朝食であろうパンがあった。


 この体になってからというもの食事の時に男だった時のように口の中かきこんだりとかできなくなったい食事量も少なくなった気がする。


 特に前からそんなにたくさん食べていたわけではないけど




 食べ終わってもユウが帰ってくる気配もないので、外に出てみると朝から村の人たちは仕事をしてる姿が見受けられた。畑?仕事にこれから行くような人や、昨日俺たちと一緒に来た商人の人たちが店を開いていて、交渉している人もいたりする。


 そして昨日みかけた子供もいたりして、不幸というべきか目が合ってしまい


「ユウ兄ちゃんの女だ!」


 違います。絡まれてしまった。




 あれよこれよと引っ張られた後子供たちと遊ぶことになってしまい、ユウに教えてもらったらしいあやとりとかを見ていたり、男の子に稽古しようぜ!なんて言われるのを無視したり等してのんびり過ごしていた。



 この軽いノリみたいなものにどう乗っていいのかもわからないし、痛いのは嫌なので遠慮させてもらってるだけなのだが「なんだただの女なのか」などと馬鹿にされたりした。


 別に今は女の子なので怒ったりはしないのだけど、純粋にただの女じゃなかったらどんな女だったのかとも思ってしまう。


 結局ユウはどこに行ったのか、周りを見渡してもいないのでいまだに不明である。

 俺の挙動を変に感じたのか、男の子が「なんだよ夫さがしてるのか?」なんて悪戯っぽく笑ってきた。


 だから夫とかになると過程すっとばしすぎではないだろうかと思うのだが


「ユウさんのこと好きなの?」


「好きとかそういう感情をいだいてないよ」


 そう言うと子供たちが兄ちゃんが振られてるーと笑っていたので少しは伝わったのだろう。


 子供のみんなもユウを朝探していたらしく、見つからなくて残念だという話を聞いたので、村の中にはいないのかもしれない、せめて一言声くらいかけてほしいと思ってしまったが、俺が起きなかったのかもしれないのであえて追及はしないでおこうと思った。


 なんだかユウがいないと何もできない子のような気がしてきて、情けなくなってしまう


「急にしょげてどうしたんだよ」なんて慰められてしまったりもしたので余計情けなく思ってしまう。


 しかし本当にどこに行ったのだろうか?仮に黙って外に出向いたとして俺は自由行動とか望んでないので連れて行ってほしかった


「お姉ちゃん!こっちきてー!」


 ‥‥まぁ、することもないので遊んでやるかと、鬼ごっこやかくれんぼを教えてあげることにした。





 ユウに買われてからは久しぶりに運動した気がするけど、案外体力はすぐに落ちるものでもないらしく子供と一緒にずっと遊んであげることができたのは僥倖である。


 子供たちも満足し始めたのかそろそろ解散という雰囲気になりつつあった。




「あれ?ゴン君どこ行ったの?」




 ゴンが誰か知らないけど、男の子がいなくなったらしい。


 みんなで「いないねー」なんて話して周りを探索してみたがそれらしい子も見当たらないし、帰ったのかな?なんて思っていると


 「そういえばゴン君最後のかくれんぼのとき絶対に見つからないところ行ってやるとか言ってた‥‥」


 なんて言い出した。いやみんな見つけたかどうかくらい確認しようよとも思ったけど、もしかしたら存在すら隠すことによって究極のかくれんぼを実演したのか!なんて一人でふざけてしまったが、さすがにここまで見つからないと内心焦ってきている。


「お姉ちゃんもしかしたらゴン君森の方に行っちゃったかもしれない‥‥!」

「‥‥森?」

「うん、森の中ならわたしたちも行かないと思ったんじゃないかな」


 真剣になりすぎなどころか村の中でしかかくれんぼはしたら駄目だろうと思ったけど、俺は鬼が見つけて他の人は隠れる程度しか説明してないからもしかしたら本当に森の中に入っていったのかもしれない


 それくらい説明しなくても‥と思うけど相手は子供だ、責める以前に説明不足の俺が悪い


「森って言っても、この村からだと東側と西側?にあるんだよね?


 ユウから流し聞きしてた会話にたしか東と西がどうたら言ってた気がするので聞いてみると「東と南だよ!」と指摘されてしまった。


「ご、ごめん、東と南ってどっちの森に行ったか分かるかな?」


「えと、多分東だと思うの、この前お父さんと狩りに出かけたって自慢してたから‥‥」


 俺の責任だし仕方ないと思いつつ、向かおうとしたら子供たちが「駄目だよ!!」と急に大きな声を出してきた。


「森の中は魔物が出てきたりして危ないって言ってたんだ!」


「それに最近は強暴な魔物がいるって‥」


 なんでそんな危ないねんと思ったけど、それを聞いてもしかしたらユウはその魔物を討伐しに行ったのかなとも納得した。


 それなら途中でユウに出会うこともあるかもしれないし、一緒に探せるだろうと思って「大丈夫だから」と子供たちい言ってさっさと森に向かうことに――「お姉ちゃんそっちは南だよ!」‥‥向かうことにした。





 ちなみに魔物と聞いて少しビビらないこともない俺だけど、ユウが余裕余裕と言ってたので適当に逃げれるだろうと思ってのことである。


 なんとしても見つけて、俺のせいで怪我をさせてしまったとかにならないようにしないとさすがに心が痛む。




 痛い思いしてないといいな‥‥






 まだ比較的明るいから大丈夫だろう‥なんて高をくくっていたのがいけなかったのが日が沈み始めてだんだん暗くなっていき、焦って、探していて今更ながらに気づいたのだが


「ここが‥どこだか分からない」


 不安になって呟いてしまったが、声にだせば余計に不安になってしまった。


 ユウにも会えないし、子供も見つからない、しかも暗くなるうえに道が分からない


 こんな何も考えずに森の中に向かった過去の自分を殴ってやりたい、そう思うと以前の商人のニヤニヤ笑う姿を思い出して、また‥何も考えてなかったんだという自覚で気持ちがだんだん沈んでしまう。




 そしてついに真っ暗になった。










 動くのは危ないんじゃないのか、けど魔物とやらが狂暴化してるなら動いた方がいいんじゃないか、けどこんな暗闇で魔物から逃げられるのだろうか


 何が正しいのか分からなくて森を道が分からないなりに歩いていると茂みであろうと頃からカサカサ音がする。すぐに近くの木に隠れるようにするが茂みから何か出たのかも見えないししばらく動かずにいると、月が雲から出たのか、ほんの少し明るく見えるようになって、何もいないことを確認して、また方向感覚がわからず歩き始める。


 どうすればいいんだろうか、とずっと考えてようやく俺は、村の人で警備する人もいたんだろうからその人に真っ先に声をかけてしまえばよかったと思った。


 あの時そこまで考えて入ればと、いつも馬鹿なのだ‥後先くらい考えなきゃいけないのにな




 反省と呼べるか分からないものを考えても子供は見つからない。


 そうしてまた茂みから音がしてすぐに隠れようと思ったら、野犬のような猪のような獣が現れた。


『ぐるぅ』


「へぁっ!?」


 思わず変な声をあげてしまったが、すぐに逃げなきゃと思い走った。


 そいつは想像以上に足が速くすぐに回り込まれたが、俺が方向転換して走るとまた回り込んだりしてきた。ユウが言ってた魔物は知恵が回らないという言葉を思い出して、これのことかと思ったが


 俺に回り込むたびに『ぐるふぅ』と鳴いて、それが段々楽しそうに聞こえたところで気づいた。俺の体力を無くそうと、弱らせるためにわざわざこんなことをしているのだ。足の速さで圧倒的に勝っているからこその余裕なのか


「やだ‥」


 奴隷になりたての時は死ぬこともあるのだろうと覚悟してたりした。性奴隷になってしまって犯されそうになったら死んでやろうかとも思った。一度は死んでるのだ、それくらいならと思った。


 けど怖くて、なんだかんだ最初に死んでしまったのも別に故意的に死んだわけではないのだ。今では忘れている、あの時の首の痛みが蘇るかのように心臓が痛い


「やだ‥‥」


 こんなことなら子供を探しに来るのではなかったと、暗い森の中で何度も考えた。今でも思ってしまう。


 魔物なんて余裕なのではなかったのかと怖い気持ちがユウに対しての責めにもなる。


「ごめん‥なさい」


 魔物がまた周り込んで、更に距離を縮めてきた。もう体力がないのを見越しているのかもう俺の横に向かおうともせずに



 どうして魔法は使えないんだろう。



 どうして自分はこんなにも愚かなのだろう。



 どうして村の子供を追いかけてしまったんだろう。



 どうして誰かのせいにしてしまうのだろう。

 


 分かってる、だからごめんなさいと思った。誰かのせいではなく俺がただ馬鹿だったから


 神様に話を真面目に聞かなかったから、ユウはこの世界で親身に男と知っても歩み寄ろうとしてくれたのに拒んだから、せめて子供の前でくらい良い恰好をしたかったから


 そんな我儘ばかりだけど、願わずにはいられないのだ。情けなくてみっともないけど


「助けて」


「助けてやる」


 いつもの笑顔はそこになく、どこか怒りを孕んだ様子のご主人様がそこにいた。

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