7話
昨日のことを思い出しながら目が覚めると、そもそも異世界転生‥いやそもそもユウの場合は日本人ぽい要素がたくさんあるから異世界転移?の醍醐味の一つはハーレムとかそういうのだよなぁと思う。
そう考えるとなんか悪いことした気がするから何とも言えない、まぁ俺のせいではないけど
居間に来てみると、ユウはいないようで、手持無沙汰になってしまった。
椅子に座ってのんびりしてると、眠ってないのか疲れているユウが降りてきて無言で食事を準備して、俺にも作ってくれた。なんだかんだ養ってくれるっぽい
「トウカ、昨日なんか俺悪い夢を見たかもしれないんだ、ははは」
いや、お前寝てないだろう絶対に急に何を言ってるんだ。
「実は俺も夜這いされそうになった夢を見たんだよなぁ」
「そんなかわいいのに俺とか言うなあぁああ!」
俺っ子属性がどうのと言っていたのに、まぁ俺お一人称で俺が男であったと再認識でもするのかもしれない。
「くそぅ‥俺の純情がぁ‥」
お前の純情にそこまでの価値はないだろう、と内心で突っ込みを入れつつ
「そもそもトウカはなんで奴隷になってたんだよ」
お腹が熱くなる。それと同時に虚脱感が襲ってくる。
ほとんど自業自得なんだけどそれでも、信じてしまったからおっさんを、裏切られたという印象がとても深い、実際は裏切られたというよりはおっさんも合理的な判断しただけなんだろうと‥
「トウカ?」
思い出したくないこと思い出させやがってこいつと、睨んでみたけど、少しの間じーっと見つめあいユウがでへへとか気持ち悪い笑みをしたのでイラつくだけだった。
「まぁ言いたくないなら仕方ないけどな、お前これからどうすんの?俺と一緒に暮らすってことでいいのか?」
「養ってくれ」
「家事とかいてくれるなら別に構わないけど、別に奴隷から解放してもいいんだぞ?」
何を言ってるんだ、と思いこの国では獣人は奴隷でしか歩いてはいけないことを言うと
「そうなの?ギルドには獣人もいたはずだけどな」
「‥‥その人奴隷なんじゃない?」
そうだったかなぁ?と曖昧に答えられて、役に立たない情報であった。
それから他愛もない話、というより質問をされた。
トウカはこの世界にきて何してたんだ?トウカは女の子になってどう思ってるんだ?トウカのその無気力スタイルってわざとなの?結構好みなんだけど!
最後は少し寒気がしたが「何もしてない」「女の子になったと思った」「俺は無気力じゃない」
等々、最後のは無視したが、ユウも昨日と比べると落ち着いたのか普通に話しているので、こいつも元男に手を出そうとは考えてないようで安心した。たまにブラックジョークがあるがそれを抜いたら学生がする会話のようで楽しかったりもした。
「というわけで奴隷買ってくるわ」
まだ金あったのか、ていうか何がというわけなんだ
「今度は恥ずかしがったりせずに性奴隷を買うんだ!」
そう言って笑顔で走っていった。悩みがなさそうで羨ましいくらいの元気さで行ってしまった。
しかしそうなると俺が暇になって何もすることがない‥‥いやそういやユウがスキルがどうのと言ってたので久しぶりに魔法概念とやらを使おうとしてみようと練習することにした。
「ふぁいやぁ‥‥」「火‥‥火‥‥」「魔法概念‥‥」
何も起こらないのでやはり寝ることにした。
ユウが出かけて数時間くらい?だろうか、聞いてくれよ!ってドアをバンバンと叩いたらしく驚いて若干涙目になる。
「どうしたんだ?」
「奴隷を探してもトウカ以上にかわいいのがいなかったんだ!」
さいですか。
その日は延々と俺の可愛さについて語られた。別に今の容姿褒められても嬉しくないのだが‥‥
それからというもの、ユウがたまに奴隷商に行ったり、俺と一緒に薬草採取に行ったりという日々が続いて、平和を満喫していたのだが
「ユウさん!!いい加減真面目に働いてください!!」
ギルドの受付嬢がユウに詰め寄ってきた。
「え、えと落ち着いてアンナさん」
「落ち着いてられませんよ!なんで薬草ばかり採取してるんですか!?それユウさんのランクに見合ってないんですからね!?」
「そんなこと言ってもなぁ‥‥」
「第一そんなに薬草ばかりとってたら下位ランクの方が仕事なくなっちゃいますよ!」
「あ、だから奥の方に採りに行ってるから大丈夫」
「そういう問題じゃありませーーーん!!」
なにやら揉め始めたので俺としては帰りたいけれど、奴隷はあまり主人から離れてはいけないと習っていたので我慢する。
「なんでそんなヘタレになっちゃったんですか!?」
「へ、へたれって‥‥」
なんで、という言葉をギルドにいる他の人が聞いた瞬間、俺の方をチラッと見られた。
まぁ、俺に遠慮してるのとかあるんだろうなとは思うが別に俺は何も言ってないので見られても困る、こちとらただの奴隷である。家ではため口になってるけど
「アンナさん、今日のところはもういいかな?連れも暇してるからさ」
「連れって‥‥奴隷じゃないですか‥」
最後の方は小声だったけれど、俺には聞こえた、ユウは聞こえなかったのかまたねって声をかけて俺と一緒に帰宅することになった。
「なぁ、さっきのだけどさ」
「ん?薬草採取のこと?」
「そう、俺も思ったんだけど、なんで薬草しか採取しないの?」
ユウはバツが悪そうな顔になりつつ「怪我したらいけないかなと思って」と小声で言って
「なんでもねえよ、薬草が好きなんだよ俺は」
そう言われた。俺の心配をしているらしいのでこれ以上は追及しないようにしておこう、追及してもどうせ笑顔で言い直すだけだろうし