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6話

 そんなこんなで冒険者ギルドに着くと、中はそこそこな賑わいようでユウが入ると知り合いなのか声をかけられたりしていた。


「おう!ユウこっちで一杯しようぜ!」


「あはは、今から依頼なんで今日は遠慮しておくよ」


「ん?そうか、まあ頑張れよ」


 そこそこ人気なのかみんな対応いいなぁと眺めていると、そのみんなは俺を一瞥すると何もなかったように酒を飲み始めたりしている。


 案外奴隷を持つなんてこと良くある話なんだろう


 ユウもいつの間にか受付の人に紙を渡していて戻ってくると「ちょうどよいのがあったから行こうか」と足早にギルドを後にした。




 町を出て森に向かう途中会話も特になく、ユウは気まずいのか何か口に出そうとしながらも途中でいうのをやめたりしている。というかこいつ分かりやすいな意外と


 昨日から朝まで居間で何してたかとか不気味だったりもしたけどな




「この薬草を袋いっぱいにして納品すれば依頼官僚だよ」


「‥‥なるほど」


 ただの雑草にしか見えないものを薬草と言い俺に見せてくるけど、正直見分けなんかつくわけがない




 それから何事もなく、会話と呼べるかは分からないけどユウが話すことに対して相槌は打つようにして薬草も集まり帰ることになった。


 今回の冒険とやらの感想をあえて述べるなら俺いらなくね?というかそもそも俺に薬草笑顔で見せつけたかっただけなのか?こいつは


 途中にギルドに寄って報酬ももらいつつ帰宅した。もはやただの散歩である。


「トウカ疲れてない?大丈夫?」


「大丈夫です」


 ちなみに疲れた?と聞かれるのは今日だけで30回はあったと思う。奴隷として体力そこそこ鍛えてあるのでこのくらい全然大丈夫なのだが


「トウカ‥‥」


「どうしました?」


「後で大事な話があるから休んだら居間に来てもらっていいかな?」


 別に疲れてないんでさっさと話してください


 ユウは真面目な顔で居間のほうへ歩いて、もちろん俺もついていく


「えと‥だいじょ――」


「大丈夫です、疲れてません」


 さすがにしつこいから、思わずうざいまで付けそうになったがそれは何とか飲み込んでおいた。


「トウカ‥‥信じられない話を今からするんだけど真剣に聞いてもらっていいかな?」


「どうぞ」


「急にこんなことを言われてとまど――」


「どうぞ」


「実は‥実は俺――」


「どうぞ」


 まじでもったいぶってうぜえこいつ




「異世界人なんだ!」




 まじで突拍子もねえこいつ‥‥


「この世界とは違う世界から来たんだ!」


「そうですか」


「そうなんだ‥信じられないかもしれないけど」


 同郷だったらしくユウは日本のことを話し始めて鉄の馬車がどうのとか言い始めた。

 いや馬はいないんだから馬車ではないだろうと内心突っ込んでおいたけど


「あのご主人様」


「それで空を――ってどうしたのかなトウカ?」


「ご主人様、私のこと仲間って言いましたよね?」


 急に話を遮ったから疑問符を浮かべていたユウが更に疑問符を浮かべて「そうだよ」と微笑んできた、殴りたい


「ご主人様、俺のこと売らないって言いましたよね?」


「あぁ言ったよ、って俺?俺っ子だったのか‥‥ありだな」


「日本人‥‥なんですよね?」


 これが運命というならば俺は神様に再度祈るかもしれない‥‥俺は今度こそ安心して平和を異世界を満喫とやらができるかもしれないのだ。




「そうだけど、どうしたんだいトウカ?」


「ともしび、と書いて灯火、トウカと言いますご主人」


「‥‥日本人?」


「ジャパニーズ」


「転生?」


「いえす」


 ユウは乾いた笑いをしながらぼそぼそと何か言い始めた。


「異世界まで来て獣人娘を奴隷にできてこれから信頼関係やらなにやら築いていくっていうときにまさかの日本人を奴隷にしていた俺の気持ちが分かるか?分からんだろうな、ようやく生活も落ち着いていたっていうのに俺に対してなんの恨みがあってこのような仕打ちが‥いや待てよ今はどう見ても獣人娘なんだから普通にありか?」


 よく分からないけど、同じ日本人なら裏切られることもないだろうと昨日よりも心が楽になって安心したのか眠くなったので「部屋戻ります」とだけ言って眠りについた。










 夜、物音に気が付いて目を開けるとユウが目の前に迫っていた。


 そして唇がだんだんと近づいて‥‥ってなにしとんねんこいつ!


「ぶへぇ」


 思わず殴ってしまった。


「ユウ‥?なにしてるんですか?」


「夜這い‥かな?」


 かな?なんて爽やかな笑顔と同時に言うことじゃないだろう、大丈夫かこいつ?いや大丈夫じゃないんだろう


「やめてください通報しますよ」


「トウカ聞いてくれ、俺はずっと耐えたんだ」


 そして昨日から夜這いするかどうか悩み苦しんでいたことを何故か熱弁し始めた。知らんがな。てか欲求不満で眠れなかったのかこいつ、まじで何してるんだ




「ユウ‥聞いてくださ、いや、よく聞け」


「いやもう聞かない、俺は獣人娘ともふもふするんや」


「俺は男なんだ」



 何言ってんだこいつ?という眼を今度は俺に向けてきたが、お前のほうが危ないことをわかってくれと思う。


 てかこのこと説明したら売られるかもしれないなと思ったが、事情を説明してユウの前言を言い訳になんとか説得してみよう、何とかなるか分からないけど


 そう思い、異世界に来る前のことを話すとユウは顔を俯かせてぷるぷると震え始めた。


「トウカ‥お前は俺に何を求めてるんだ!!俺に俺っ子属性ケモミミ男の娘と教えたいのか!?」


「いや落ち着け、言いたいことは分からなくもないけど男の娘ではなく純粋な男なんだ」


「今は女だろ!」


 世の男の娘ファンに謝れと言わんばかりに顔がマジになっている。ひくわー、てか元男なのであるから男の娘でも男でもないのが正解なのだが、今が女なら大丈夫だぁ!とか言いそうで怖いこの人


「ユウ、とりあえず落ち着けって」


「落ち着いてられるか!!どれだけトウカを落とそうとしてたと思ってるんだ!俺の純情を返せ!」


 鼻息がとても荒いしどれだけ必死なんだ、今日は寝ようよ?と言ったら「くそっ上目遣いでそんなこというなぁ!」とか言って自分の部屋に戻っていった。



 殴られるか、本当に出ていかされるかとも思ったけど一応は大丈夫?そうだ


 まぁ明日にならないと分からないかもしれないけど、売られたらそれまでだろう。本気で襲われたりももしかしたら今後あるかもしれないのかと思うと、現実味が湧かないけど‥‥なるようになるだろう

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