5話
もやもやとした背景で、ユウが俺に向かって笑顔で「出かけよう」と言って奴隷商に向かい。
また鉄格子の中に‥‥ユウにどうして売るのかと聞くと
「こんな愛想がない奴隷よりもっと良い奴隷にしたくてな」
そしてユウが商人と同じ顔で笑う‥‥なんて夢を見た。
夢、である。
夢だけどかなり寝覚めの悪いことこの上なく、汗がびっしょりで今の場所を確認してしまった。
しかも窓を見てみるとまだ外が暗いのでそんなに寝てないらしい‥‥
このままもう一度寝ようという気もしないので、居間にまだユウが入れてた井戸の水が桶に入ってるだろうと飲みに行くと、ユウが椅子に座っていた。
明かりも点けてないし、怖くてびくっとしてしまったけど、向こうもこちらに気づいたのか笑顔を向けてきた。
「トウカ、まだ起きていたの?どうしたのかな?」
「‥‥」
お前こそ明かりも点けない中笑顔になってんじゃねえよ怖いんだよと思ったけど、まぁこいつも悪夢か何か見たんだろうと結論付けた。
俺が何も言わないからか、困った笑顔になって小さくふぅとため息をついた。
なんだか悪い気がしてきたので、とりあえず俺も椅子に座ってユウと話そうかなと思ったらさらに困り顔になりやがった。
「ご主人様‥‥」
「っ!なにかな!!トウカ」
「水を飲みに来ました」
「あっ!な、なるほど?ちょっと待っててね」
すごい食い気味になにかな!!って言ってきたので内心引いているが、なんか何もしなくてもこいつが水をせこせこコップに注いで持ってきてくれたのでラッキーである。
で、あるが正直奴隷に対いてこいつへこへこしすぎではないだろうか?奴隷商で学んだ時はひたすら尽くすことを学んだのだがこれではどちらが奴隷か分からない。
「よかったらさトウカ、俺のことは名前で呼んでいいからね?」
どうやら名前で呼んでほしいらしい
「その、今までどんな風な生活をしていたのか分からないけど、ここではもっと気を楽にしていいんだよ」
こいつはもしかしたら良いやつなのかもしれないと思ってしまう。
「これからは俺とトウカは仲間だからさ」
‥‥
「えと、急にごめんね‥‥」
「‥売らな‥いんですか?」
「ん?ごめんねもう一度いいかな?」
「売らないんですか?」
ユウは目をぱちくりと瞬かせて急に笑顔で
「売らないよ、なんでその話になったのか分からないけど買って早々君を売ったりなんかしないよ」
「夢を見たので‥‥」
「何の夢かな?」
俺はさっき見た悪夢を見たことを言うとユウは微笑みながら「大丈夫」と言ってきた。
まぁ、でも確かにあんな大金払って早々売るわけないかと納得もしていたのでもう大丈夫なのだが、特に話すこともないのでこの話題のまま適当に「本当に売らないんですか?」としつこく聞いてみた。
「絶対に売ったりなんかしないよ」
「ずっと売らないんですか?」
「ずっと売らないよ」
「一生売らないですか?」
「一生売らないよ‥ってだんだんと壮大になっていってるね?!」
どうやら所詮は口約束ではあるけど、当面は売る気がないのが分かったので「寝ます」と一言って部屋に戻ることにした。
後ろで「な、なんだったんだろう」と何か小さく呟いていたがどうせまた売らないよとか呟いていたんだろう。
部屋に戻ってベッドに寝転がると、すぐに眠りに落ちた。
朝になって、居間に行くとまだユウがいた。昨日から寝てないのか少し疲れてそうな印象だけれど、まじでこいつ何してるんだろうか‥‥
「おはようトウカ」
「‥‥おはようございます」
何がうれしいのか知らないけれど、朝からこいつの笑顔が満面なことに多少の苛立ちを覚えつつ椅子に座ると何も言わずとも勝手に食事の準備を始めるユウをぼーっと見ていた。
ふと思ったのだが、もし新婚生活なるものがこんな風にほのぼのした日常なのであるかもしれないと思うと同時に、なんで男と男で新婚なんだよと内心で突っ込みとボケを一人考えていたらご飯ができたらしく美味しくいただいた。
「トウカは自分の事についてどこまで知ってる?」
ケモミミ美少女とでも名乗ってほしいのか?残念ながら朝はそんなに元気じゃないから急にボケられても困る。
「魔法概念てスキルがトウカにあるんだけど、使ったことってあるかな?」
すっかり忘れていた代物がユウの口から出てきたので懐かしいなぁ程度にしか感じない、てかスキル扱いだったのか俺の魔法‥使えないけど
「ありません‥」
「えと、試しに使ってもらってもいいかな?どんなものなのか気になってたんだけどね、俺もあるのは見れるんだけど詳細までは分からないんだよね」
あるのが見れるとか、鑑定か何かでもできるのだろうか?そういえば奴隷商にいたときは何も言われなかったけど勝手に鑑定でもされてこのスキルのことも含めて値段が高かったのかな?なんて今更ながらに思ったけど、詳細まで見れないなら関係ないのかな?
「使い方が分かりません」
「そうなの?」
昔使おうとして、結局何もできなかった代物だし、今言われて意識してみても何か変わるわけもなく何も起きないのだ
「んー‥‥条件が整ってないか、なにか使えない原因があると思うんだけど何か心当たりとかないかな?」
「ありません」
そんなにこのスキルについて何か知りたいのかあれやこれやと聞いてくるけど、俺が知りませんかわかりませんしか答えれないことばかりである。そもそもこの世界の魔法もスキルとやらも何もわからない状態で来たのだから仕方ない、こんなことならチュートリアル聞いておけばよかったと思う。
「分かったよ、スキルについては追々また考えてみようか」
「はい」
「トウカは俺と一緒に冒険行ってみたいと思う?」
そもそも冒険て何をするの?状態である。ラノベとかで見た知識でいいなら採取とかゴブリンみたいな生物を討伐するイメージであるが
「モンスター討伐ですか?」
「いや、トウカの強さもわからないし森に薬草採取でも行こうかなと思ったんだけど、どうかな?」
それくらいならと思うけど、俺に何かできるとも思えないけどな
けど、守ってあげるよなんて気障ったらしくニコニコしてるんで、まぁ命に関してはこいつがいれば何とかなるのかもしれない、もしくは俺のことを盾にでも使うかもしれない
「役に立てるよう頑張ります‥‥」
「そんな重く考えなくていいからね?」
それから俺は何も用意するものがないしと思っていたらどうやらユウも用意するものがないらしいのでそのまま出かけることになった。
一旦冒険者ギルドにて依頼書を確認、そして受付に受理してもらえば依頼となるらしい、また現地にてモンスターを討伐した場合討伐部位なるものをギルドに持ち帰れば事後報告で依頼完了する場合もあるらしい