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6話

 お風呂から上がると何故かメイド服しかなく仕方なく着る、ヤギさんもメイド服しかなかったようで素直に着込んでいた。


 女性の服を着ることに違和感がいつの間にかあまりなくなっていたけど、メイド服だとさすがに着るとコスプレでもしたかのような気持ちになるけど、ヤギさんがあまりにも平然としてるので、私も気にしないよう心掛ける。


 そして着替え終わるのを見計らったかのようにメイドさんが現れて「ご主人様がお待ちです」と言って案内される。


「なあトウカ、これで出会って早々さっきのは無しだとかってならないか?」

「なってもならなくても‥あの坊ちゃまに命握られてる‥」


 だよなと小さくため息をしてヤギさんはもうなるようになるスタイルに切り替わっている。正直私も、あの殺伐とした雰囲気を纏っている坊ちゃまとは相手になりたくないから今すぐにでも逃げたい気持ちがあるけど、それを簡単に許してはくれないだろう


「ボクはいまいちあの貴族を信用できないなぁ」


 信用するほかないにしても、あまり味方にはしたくないタイプなのは間違いない、国王に向けて頼ってくるのを待つと堂々と言ってるくらいだ‥あれ?けど頼ったら案外何でもしてくれるのかな?もしかしてこれがツンデレなのかとも思ったけど、逆に頼った後がなんか怖くなりそうな気がするし、やはり味方なのかと聞かれたら対応に困る人なのは間違いない


「こちらが応接室になります。粗相の無いようお願いいたします」

「あんがとさん」


 やけに軽い対応をヤギさんがしてノックなしに入っていく‥馬鹿なのか‥


「お客様‥!?」

「え?なに?」


 なんだろう、変な時に常識というかマナーを知らない天然ぶりをここでぶちかますのは止めてほしい


「あの‥ノックも無しにすいません‥!」


 とりあえず相手が何かを言う前に早めに謝っておかなければ


「よい、元々勝手に屋敷へ侵入するような者に今更マナーなぞ期待しておらん」


 思ったより寛大で助かる。けれど隣にいる執事さんが驚くほど怖い眼光でヤギさんを睨みつけているのだけど、主人の寛大さを是非見習ってほしい‥心臓に悪い


「と、トウカ‥ノックって必要なのか?」

「馬鹿なの‥!部屋に入るときは当り前‥!」

「なるほど‥貴族はどの部屋も合言葉が必要なのか」


 なぜここで盗賊アピールを持ってきたんだ、だれも求めてないよ

 しかし本当に何も思ってないのか「立ってると目障りだ、座れ」と言ってソファに座るように促されてしまった。

 何を話したいのかは分からないけど、恐らくはユウ達のことでも聞かれるのかもしれない、坊ちゃまも冒険者が遠征に向かっていることは知っているだろうからユウの私に対しての扱いでも聞くのだろうか?


「しかし、獣人のお前は似合うが、そこの不躾な方はメイド服似合わんな」


 なんだ、貶したいのか、それとも意表をついて笑わせにきた貴族なりのジョークなのだろうか

 けど実際ヤギさんにはメイド服があまり似合ってない気がする。


「ボクはこういうヒラヒラしたものより動きやすい軽装がいいんだが、ないのか?」

「邪魔なら裾を切れ、そうすれば多少動きやすいだろう」

「いいのか?」

「構わん」


 結構高そうに見えるメイド服だけど、あっさり切っていいと許可をだしてくれた、ということは単純に客人用の服がないのだろう

 まぁ、ここで女性物の服が出てきても誰の?って困るし、坊ちゃまの私服を私たちがもらうにしてもサイズが合わないだろう。


「坊ちゃま、そろそろ本題に入られた方がよろしいかと」


 命の危機もあってスルーしていたけど、この坊ちゃまは坊ちゃまと呼ばれるの恥ずかしくないんだろうか


「そうだな、貴様らに問うが、何に追われている?」


 あ、たしかに私たちの事情何も伝えてなかったと今更ながらに思ってしまった

 なんだろう、大胆不敵というか偉そうにしているせいか、私たちが何も言わなくても勝手に知ってるような気分になってしまっていた。


「ボクたちは盗賊ギルドと、兵士、そして借金取りから追われている!」

「やはり、道化であったか‥」


 呆れられたというか、可愛そうなものを見る目でヤギさんのことを見ている

 そしてあの執事がテーブルの上にじゃらっと音がする袋を乗せる


「受け取れ、これ以上必要なら都度言え」


 ヤギさんが袋を見えるように開くと大量の金貨が詰まっている。

 いつの間にこんなもの用意してたんだと突っ込みを入れたいところだ、あの執事実は私たちの事情知ってるんじゃないだろうな


「トウカ!!これだけあれば何もしなくても暮らせるぞ!」


 馬鹿なの‥!?お金渡した貴族本人を目の前にしてなんてことを言ってるんだ、恐らくこれは借金取りのところからお金を返せとかそういう意味合いだろうに


 これじゃ私たちがお金を取って逃げるかのような言い分に聞こえてしまうのではと危惧していたら、何も思ってないのか、私たちの反応を見ているだけで律義に待っているようだった。


「ヤギさん‥ヤギさんが話すとおかしくなりそうだから‥静かにしてて?」

「それじゃボクがまるで話したら悪いことを話してるみたいじゃないか」


 拗ねたように金貨の入った袋を懐に入れている。その行動がいけないというのに何をしてるんだ‥盗賊ならではの本能なのだろうかこれは‥


「えっと‥この度は助けていただいてありがとうございます‥あの、色々遅くなってしまいましたが‥トウカと言います、こっちはヤギさ――」

「ヤギガラナステコフィーネだ!」


 それは大事なことなのか‥


「えと‥です‥本当に遅れて申し訳ありません‥」

「俺の名はディル・ジャーヴァ・フィリウスだ」


 まじで名前長い人ばっかりで困るんだって、ヤギさんはまだヤギの印象もあったし最初のインパクトで名前、というかあだ名覚えたけど、いかにもこの忘れちゃいけなそうな人から長い名前言われると覚えづらくて仕方ない


「無知で申し訳ないのですが‥なんとお呼びすればよいですか?」

「ディルで構わん」

「は‥はいディル‥様?」

「して、貴様らはどう助けてほしいんだ?ユウが帰ってくるまで屋敷に匿ってれば良いのか?」


 あまり深く考えてなかったというか、この屋敷にいる以外の選択肢がないと思っていたので思わぬことを聞かれてしまった


「俺としてはその方が楽だが、どうせなら貸しを他に作っておきたい、遠慮なく申せ」


 私たちが理解してない様子なのを察してか、追加補足まで話してくれて、気を遣ってもらうのが逆に申し訳ない

 ヤギさんは借金返済できる時点で問題はなさそうだし、私もユウが帰ってくればそれで十分だ。と言うか元々ヤギさんがいなければ私としては関係ないので特に何もない


「トウカ、少し話していいか?」

「‥余計なこと言わないなら‥話してもいいけど‥」

「あ、違うトウカに話しておきたいのだが、追われてる時も話したと思うけど、ボクの仲間としてトウカも見られてるし命を狙われているだろうからいっそディル‥様?に頼んでみるのはどうだ?」

「それって‥具体的に何を頼むの‥?」

「ボクがギルドマスターとさえ話ができるのならトウカに関しては解決すると思う」


 そのギルドマスターと親しい中なのか、凄い自信で言ってきた。

 正直なところ仲間に任務失敗しちゃったと言った瞬間殺されかけてるのを見ているからとても信用ならないのだけど、けれど私が命を狙われているというのは事実だろうからたしかに放っておくのも困る。


「一体何を話すの‥?」

「トウカは無関係だと話す!」


 あ、これ駄目なやつだ‥

 とりあえずヤギさんは無視して話を進めないと、いくら寛大な貴族でも怒りかねない


「その‥ディル様、盗賊に関してどうにかできたり‥みたいなされますか?」

「良かろう、だが条件がある」

「条件‥?」

「先刻にも言ったが、俺はこの王都がどうなっても構わない、そして貴様の言う盗賊をなんとかしたら爺が喜ぶという胸糞悪い結果がついてくる、それは解せん」


 どれだけ王様嫌いなんだこの人


「じゃあ‥駄目ですか‥?」

「早まるな、言ったろう条件があると‥俺にも利があればよいのだ、今王都で暗躍してる者がいるのだろう?そいつらは何時、事を起こすか分かるか?」

「えっと‥明後日だっけ?ヤギさん」

「それは昨日言ったことだろ?明後日で合ってるな!」

「あ、そっか明日だね‥なんで昨日言ったと分かってるのに明後日のままなの‥」


 思わず突っ込まざるを得ない、これは道化と言われても仕方ない‥けど私は無関係なのでディル様‥その冷たい視線を私にも向けるのはやめてほしい


「ならば明日以降、爺が俺に助けを求めてから賊どもを叩けばそれで解決ということだな?」

「そう‥ですね、その爺様‥?にも貸しが作れると思います」


 なんというか、この人が特別なのか、それとも貴族全体がこうなのかは分からないけどいちいち貸しがどうのとか面倒くさいやり方だなと思う。


 私たちも頼む側なので、特に異論もなく、これで大丈夫‥のはず


「では話は以上だ、ジーニアス部屋まで送ってやれ」

「畏まりました」


  執事が部屋の外まで歩き始めたので、私たちも行けということなのだろうとついて行こうとする。


「あの‥それでは失礼します‥」


 私がそう言うとディル様は頷いて返してくれたので、大丈夫なのだろう。

 ヤギさんも私を習って「失礼します!」と言って、執事について行く






「坊ちゃまは貴殿達を完全に信用しているわけではないこと、重々承知してくださいますよう」


 広い屋敷を黙って案内していた執事が急にドスのきいた声で言ってきた。


 ヤギさんは睨んでるし、できれば反発するような態度はやめてもらいたい


「はい‥分かっております」

「しかし、坊ちゃまが協力してくださると明言された以上、何よりも強い方です。ご安心くださいませ」


 主従そろってツンデレ系なのだろうか、上げて落とすというより下げて上げるような言い回しをするから怖くて仕方ない


「こちらがお二人の部屋になります。何かあれば屋敷の者に声をかければ対応してくださいます。また明日以降の件につきましては進展があれば追って連絡いたしますので」

「ありがとうございます‥」


 ドアを開いてもらい、中を覗くと結構な広さでベッドも一人用とは思えないサイズのものが二つ用意されている。

 中に入ることを見計らっていたのか、私たちが部屋に入るとゆっくりと音もたてずにドアを閉めて遠くへ行く足音が聞こえた。


「トウカ!すごいなこの部屋、さすがは貴族だ!ボクが5人寝ても余裕はあるベッドだ!」


 その例え方されても困るけど、凄いのは確かにその通りだ


 それ以外にも調度品?骨董品?なんというのかは分からないけど、飾ってある絵画や壺もとても高そうだ。壊さないように注意しておかないと


 しかしヤギさんは襲われても仲間を殺したりはしていなかったけど、私たちが盗賊ギルドの人を殺すことになっても良いのだろうか、今まで平然とそういう会話をしていたけれど


「ヤギさんは‥盗賊ギルドの人がやられてもいいの?」

「いいんじゃないか?死ぬ奴なんてたくさんいるからな!」

「けどヤギさんは‥その‥殺したりはしなかったよね?」

「あー、一応モンドにしても育ててもらった恩があるからな、ボクたち盗賊ギルドに暗黙の掟?みたいなのがあるんだよ」


 暗黙の掟と聞くとかなり盗賊っぽいと思ってしまうのは私の盗賊のイメージが安っぽいからなのかもしれない


「ギルドで育ててもらったことのある師は一度見逃せ、次出会えば殺すっていうのがな!」


 なんというか、なんと言葉にしていいのか分からないけど、それは何故一度見逃すんだろうと科、育ててくれた人だけ殺しに来るっていうのは微妙に理不尽なような気がする。


「これがないと皆殺し合いが止まらないから出来たらしいんだけど、いざボクが狙われて気づいたけど面倒くさくて仕方ないな!」


 それがなかったら殺していたのか「残念残念あはは!」と笑っている

 成り行きでここまで一緒にいるけどヤギさんも元盗賊なのだろうし、本来なら危ない認定すべき人なのだけどこの馬鹿な性格だからかつい忘れてしまう。


「ギルドマスター‥?さんも死んじゃうかもしれないよ‥?」

「それはない」


 即答で言い放つ。先ほどまで笑っていたのがなかったかのように真面目な顔になり


「マスターは死なないよ、あの貴族が相手でも殺すことはできないだろうな」


 ただでさえ私が誰にも勝てないのに強さがインフレしすぎてもう訳が分からなくなりそうだ


「そんなことより!トウカの主人をこれで待たなくてもよくなってしまったな!」


 何のことか分からなかったけど、そういえばヤギさんはそもそも私の主人‥ユウに借金を何とかしてもらい立ったんだっけ、すっかり忘れてた


「ヤギさんは‥盗賊を追い払ったら‥どうするの?」

「ギルドマスターに謝ってまた戻るとは思うけどそれがどうかしたのか?」

「戻るの‥?」


 本来あるべきところに戻るというだけなのだろうけど、つまるところ敵になってしまうと思うとこのまま一緒にいてほしいと思ってしまう。


 というよりも謝って済むほどやさしい雰囲気なようには見えなかったのだけど、ヤギさんは分かっているのだろうか


「行く当てもないしな、戻るくらいしか思いつかない!」


 ユウが戻ってきたらヤギさんについて相談してみるのもいいかもしれない


 ヤギさんは強いし、冒険者として活動しても良いだろうし、いくらでも行く当てなんて作れるはずだ、今は兵に追いかけられてるというけど、それも今回盗賊ギルドから脱退したようなものなのだし情状酌量くらいあっても良いかもだし

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