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4話

 私とヤギさんは先日もお世話になった串肉屋で肉を買い、前回も来てくれたと一本串肉をサービスしてもらい上機嫌だったのだけど、ヤギさんが私に「誰かに付けられてるな」とか言い出した。


 なんだろうか‥あの串肉を買うと呪われるのだろうか


「え‥誰に付けられてる?の?」

「ううむ、恐らく借金取りだろうな」

「え‥ヤギさんお別れしよ?」

「とりあえずこっちだ!行くぞトウカ!」


 根本的な問題としてヤギさんのせいなのだから私を巻き込まないでほしいのだが、手を握られて私の知らない道を勝手に走りだす。私はすでにここがどこだか分からない自信がある‥!


「どこに‥行くの‥?」

「とりあえず奴らを撒いた後にトウカの家に向かえばいいだろう!」


 後ろの方に聞き耳を立ててみると確かに複数の走ってくる音が聞こえる。

 あれか、ヤギさんと出かけたせいでとばっちりを受けたわけだけど私の外食生活も今日で締め切りになってしまうのかもしれない、明日からはユウ達が帰るまでは野菜炒め生活か‥




 それから結構走って後ろから音も聞こえなくなってヤギさんと息を整えたあとにヤギさんが真剣な顔のまま固まっているからまだ何かあるのかと警戒してたら


「トウカ!家がどこだか分かるか!?」

「‥馬鹿なの‥?」


 なぜ道も分からず走っていたんだ‥


「あはは。まぁ振り切ったんだからあとはゆっくり帰宅すればいいだけだろ?」


 迷子になってもその元気でいられる脳みそが私は欲しいよ、しかし真面目な話私が商業区へ買い物へ行けたりしたのはアリーに教えてもらった道を通ったりしてるだけだから、覚えてる場所じゃないとこの町の構造自体全く把握してない


「と‥とりあえず歩こう‥」

「そうだな、そのうち着くだろ!」


 一応周りを見て歩くけど、出店の類は無いけど服屋だったりがあるので商業区からは出ていないはずなので、南側に行けばいいはずだ。


 と、行こうとするとヤギさんが「そっちはだめ」と言うので、足を止める。


「どうしたの‥?」

「なんとなくだけど嫌な予感がするからこっちに行こう!」


 明らかに反対方向へ進み始め、何も根拠なんてないだろうに自信満々に歩くので思わずついて行ってしまう。


 元々逃げるのも直感だよりだったんじゃないだろうかとか突っ込みどころは満載なのだけど、別に私が向かう先が正しいとも思わないので、別に良いのだけど、大丈夫なのだろうか


「本当に‥こっちでいいの?」

「大丈夫だ!こう見えて直感が外れたことはあまりないんだ」

「それってどれくらい‥?」

「あまりだ!」


 私が先導した方が良かったかもしれないと後悔しそうになる。しかも段々店の数も減って、路地裏に入ったり通りに出たりと色々歩きまわって明らかに商業区から別の区画に移動したっぽいのだけど、町民区でないのが分かる。


 雲行きがここまで怪しいとさすがにこれ以上は止めたほうがいい気がする。


「ヤギさん‥道に迷ってるよね‥?」

「元々迷っていたから変わらないから問題は‥ないな!」


 こいつ‥開き直ってやがる。


 私が元の道を引き返そうとすると、いつの間にいたのかそこには人が立っていた。


 おかしいな、一応後ろの音には警戒してたはずなのに音もなく現れたようにそこに立っていたので警戒するのだけど、ヤギさんも気づいたのか笑顔になって


「おお!モンドじゃないか!」


 知り合いだったのか、ヤギさんの知り合いってだけで物凄く不安を覚えるけど、借金取りじゃないのならある意味良かったのかもしれない


「ヤギガラナステコフィーネ、こんなところで何をしているのだ」

「あはは、道に迷ってしまったんだ!丁度良いから道教えてもらいたいんだけど」

「お前‥まあいい、それより任務はどうした?」

「あー、うん、失敗しちゃった!」


 何の話かいまいち分からないけど、ヤギさんが失敗したと言ってから目の前の男が段々眼光が鋭くなってきて怖い感じになってる。なんだろうか雲行きがとても怪しいのだけど


「トウカ、まだ走れるか?」

「え‥?うん、大丈夫だけ――」


 最後まで言い切る前に引っ張られて走り始めて、さっきまで私たちがいたところに男が剣を抜き払ってる姿が見えた、正直今何が起こってるかいまいちわかってないのだけど、とりあえずヤギさんのせいということだけは分かる‥


「なん‥で!こんなに追われてるの‥!?」

「あはは!ボクが人気だからかな?あはは!」


 笑い事ではないのに、随分と余裕な態度である。というか知り合いから斬りかかれるとか借金以上にやばいのだけど、なんなのこの子


「それよりトウカ、ボクが失敗したってモンドたちにばれたから恐らくトウカも狙われるけど大丈夫?」

「大丈夫じゃない‥迷惑‥やめてほしい」


 さすがに走りながら喋るのは疲れるからまず逃げれてから話してほしいのだけど、そもそもの問題として、あの男、借金取り達と違って全然距離が離れないし、むしろ縮まってる。


 するとヤギさんが急に手を放して、反転して男の方に横の壁を蹴りながら高く飛び上がって蹴りを放つ、なにその立体機動‥かっこういいな


 蹴りを男が簡単にガードしてすぐに剣を振るが紙一重のように剣を避けてそのまま近距離で戦い始める。


 どうせヤギさんのせいだし、今のうちに逃げようかなと思ったら「ちょっと待ってて!」とこちらの様子を分かっているのかヤギさんが止めてきた。


「くそが!ヤギガラナステコフィーネえええ!」


 急に男が叫んで蹲り、ヤギさんが蹴りを一発放った後、私の元に戻って「行こう!」とまた走り出す。




「さっきの‥何したの?」

「トウカにしたのと同じだよ、相手の血を奪って貧血状態にして追いつけないようにした!」


 何気にえぐいことしてる上に、普通に強くて笑えない


「最初から‥それすれば良かったんじゃ?」

「リスクあるからねぇ、トウカは受け入れてくれたり、気づいてなかったから抵抗されなかったけどボクのことを知ってる人からすれば呪法の抵抗を常にされてるよ」


 抵抗とかできるのか、まあ出来なかったら血抜いて捨てればどんな敵でもたしかに最強だから納得はある程度するけどそれでも十分すぎるほど強い気がする。


「そもそも呪法使えばボクも血が抜けるから相打ちなんだけどな!あはは!」


 それは笑いごとなのだろうか‥?


 何はともあれ、あの男から逃げれたのでひとまずは安静と思ったら「見つけたぞあの女だ!」と今度は別の男たちがわらわら集まってきた。


「ヤギさん‥今度は何‥?」

「あれは借金取りだな、まさかボクもここまで追ってくるとは思わなかったよ」


 ずっと走ってるからさすがに疲れてきたのだけど、このままじゃ体力が先に尽きてしまう。


「ヤギさんが‥あの人らについて行けば‥私は助かるのでは‥?」

「トウカは優しいからそんなことをしたら胸を痛めてしまうだろ?それはさすがにボクも心が痛いから一緒に逃げよう!」


 また逃走劇が始まり、どこに向かってるか分からないまま走る。






 すっかり夜になってしまい、道も分からないまま、人通りも全くなく不気味な静けさの中二人でのそのそ隠れながら歩く


「なんで‥まだこそこそしてるの‥?」

「斬りかかってきたやついたろ?あの手の輩が結構な数追ってきてるから隠れるに越したことはない」


 さすがのヤギさんも疲れてきてるのか、いつもの元気はなくなってる。

 しかしこのまま朝まで逃げるとかなったらさすがに辛いのだけど


「今‥どこ向かってるの?」

「トウカの家に行って滞在場所が割れるのはまずいからな、今日はどこかに泊まるのがいいと思う」

「宿の場所‥分かるの‥?」

「自慢じゃないけど分からないな!」


 それは本当に自慢じゃないな、商業区ならもう少し賑やかだろうからまず別の区画なのは間違いないけどそれくらいしか分からない


「ヤギさんて‥何者なの‥?」

「んー?ボクは一般人だけど?」


 一般人が立体機動してたまるか、そもそも呪法とか使ったり知ってたりする時点で一般人からかけ離れてるし、私ももっと早くに気づいて注意してればよかった。


「任務が‥どうとか言ってた気がするけど」

「あー、あれは盗賊ギルドの任務のことだな、王城に忍び込む予定があっさり見つかるし借金とかしてあっさり身バレしちゃってさ!あはは!」


 どうして私の周りは盗賊やらがこうも集まるのか不思議で仕方ない、というかただの借金少女ではないとは思っていたけど、こうなってくると思いっきり危ない人じゃないかこいつ


 逃げたほうがいいのだろうけど、剣を抜いた男とかが私をヤギさんの仲間と思って見ていただろうし逆にヤギさんの傍にいたほうが守ってくれるだろうから安心なのかも‥いやけど借金取りにも追われてるし‥どうしたものか


「モンドがまさかすぐに斬りかかるとは思わなかったから驚いたけど、こうなると中々やばいな」

「そもそも‥仲間になんだ殺しかかれるの‥」

「口封じだろうな、というかそれでなくても今盗賊ギルドは大忙しだからな、ボクたちのことも見つけたらついでに殺す程度で積極的に探してはいない‥というかボクたちを狙ってるなら休まる暇もなく殺しに来るだろうな!」


 いつもの笑いではなくても微笑んでるあたり、余裕なのかそれとも単純に疲れすぎて笑ってるのかいまいち区別がつかないけど、今の状況が良くないことだけは分かる‥見つけたら殺しに来るって‥


「王城も明後日には完全に機能しなくなるだろうし、できることならトウカの主人が早く帰ってきてくれると助かるんだけどな」

「うん‥うん‥?」

「こんなに騒ぎ大きくしてるのに警備の一人もいないの不思議じゃなかったのかトウカは?」


 そういえば以前住んでいた町でも警備兵がちらちら歩いていたはずなのに、この王都で追いかけっこしてる間兵士っぽい人が見当たらないような気がする。


「トウカは知ってるか分からないけど、冒険者も多く出払っていて、手薄になってる、しかもそこらへんの盗賊みたいなごろつきならまだしも、冒険者ギルドに匹敵する盗賊ギルドが王都で活動を開始したからな余計手が足りないだろうな!あはは!」


 ごめん、全く状況分からない上に、馬鹿なはずのヤギさんがなんか悪役が言いそうなことを言ってるのだけど


 走って汗ばんでいたりしてることや、疲れてることを差し引いても体から熱が引いて妙に寒い感覚がする。


「ヤギさんは‥敵なの‥?」

「どうしてボクが敵になるの!?ま、まぁ盗賊ギルドには入ってたけどさ、トウカの敵にはならないよ」


 この馬鹿っぽさが演技とは思えないけど、急に後ろから「ごっめーん!」とか言って斬られたらたまったものではない‥まあ殺す気なら最初からしてるか


「これから‥どうするの?」

「そうだね、とりあえず潜伏するか、そうだ!いっそギルドマスターにでも会いに行こうか!」


 なんでそうなるんだ、見かけたら殺されるって言ってたはずなのに


「大丈夫大丈夫!ま、どこにいるか分からないんだけどな!」


 何も大丈夫じゃないのに、なんとお気楽なことか‥


 そして隠れながら移動は続けていたのだけど、ヤギさんが急に前に飛び、いつの間にかいた男と格闘を始めた。足音がしないのは普通なのかヤギさんの言う盗賊ギルドの奴らはいつも突然現れて驚く、というかヤギさんは何故普通に気づいてるんだ


「ふぅ‥しかしこの王都も物騒になったな!」


 戦闘をあっさり終えたヤギさんが戻りながら言うけど、貴方も加担してたんでしょうに


 そして通りの方に出ると今まで見かけてこなかったこの国の兵士であろう鎧を着たいかにもな人たちが歩いてどこかに行こうとしてるのを見かけた。よかったこの人たちと一緒に行けば少しは休めるだろう。


 声を掛けに兵士に歩み寄ろうとしたらヤギさんに「駄目だトウカ!」と止められたけど、すでに何名かに気づかれてしまっている。


「君、どうしたん――あ!後ろのあいつは盗賊の一人だ!!」

「トウカ!さっきボク身バレしちゃってるって言ったでしょ!?」


 知るか!私は無関係だ!というか身バレするってわかるなら借金するなよ!


 ヤギさんが引っ張る中、兵士たちが「追え!」とぞろぞろ追いかけてくる。というかこの状況で私たちの味方って誰もいないってことなんじゃないのか


「そもそも‥なんで私は逃げてるの‥!?」

「助けてくれるって言ったじゃないか!あはは!」


 絶対今後‥倒れてる人間を見かけても声を掛けないようにしようと心がけよう‥

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