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3話

 家まで帰ったは良いけど、居間で串肉を食べてたら勝手に「お腹すいてたんだ!」2本とられるし、お風呂に入ろうと思ったら「ボクも一緒に入る!」とか言い出すし散々だ‥


「ヤギさんは‥いつまでいるの?」

「ご主人が帰ってきてボクの借金返してくれるまでだけど?」


 暇だったとはいえ、一人暮らしがまさかの二人暮らしに変わるとは、でもユウが帰ってきてくれたらさすがにこの子を追い払ってくれるだろう、それまで辛抱しておこう


「あ!ボクお風呂に入るのはいいけど着替え持ってきてないんだ!あんたの貸してくれないか?」

「普通に嫌‥」

「少しくらいいいじゃないか、まあさすがにそれは図々しいか」


 分かってるなら串肉の時点で自重してほしい、キッチンに野菜があるのだからそれを先にあげればよかった。


「そういえば名前教えてもらってないな!風呂に入りながら語ろう!」

「トウカ‥先に入るけど入ってこないでね‥」

「トウカ!良い名だな!」


 この世界でどんな風に名前を付けているのかは知らないけど、少なくともヤギさんの名前と比べたら大抵良い名前に聞こえるよ


「別にそこまで気にすることないだろうに‥」


 私は一人でゆっくりお風呂に入りたい派なのだ、というか元々誰かとお風呂に行くっていう機会もそんなにないと思うけど、この世界って大衆浴場とかあるのかな?






 のんびり入っていたからか「長い!」と文句を言われたけど、知るか!と思ったけど無視して、ヤギさんが風呂に向かった後はどこで眠らせればいいんだろう?と思ったけど、そもそも成り行き上勝手に来たけど、あの子宿‥はあるわけないか借金してお金ないって言ってたし


 となると、仕方ないし私の部屋に寝させて、私はユウの部屋にでも寝ようかな、さすがにアリーの部屋に入るのは気が引けるし


「上がったぞ!」


 早い‥


「それでトウカの主人はいつ帰ってくるんだ?」

「わからない‥」

「何故わからないんだ!?」


 いちいちオーバーリアクションなので対応に困るからもう少し抑えめにしてほしい


「一週間‥?くらい?」

「一週間てつまりいつだ!?ボクは数を数えるのは苦手だから分かりやすく頼む!」

「息をしてたら‥帰ってくるよ‥」

「そうか!それは早いな!」


 まじか、適当に言ったら勝手に納得したぞ


 一週間くらいわかってほしいと思ったけど、かつて奴隷商の人が教育の時に言ってたけど、識字率や他にも数字が苦手な人が多いとのことなので、これは仕方ないのかもしれない


 ヤギさんと一緒にいるだけで大分疲れたので、私は寝ることにして、「上の奥‥部屋勝手に使って」と言い残してユウの部屋に向かって早々に寝る


 後ろで「もっと何か語ろう!あんたの主人てどんな言葉に弱いんだ!?」とか言ってたけど無視した。






 一瞬自分の部屋じゃなくて焦ったけど、そのおかげか朝起きて、二度寝することなく起きれたので良しとしよう。


 居間に行くとヤギさんはすでに起きていたのか床でごろごろしていた。居間はあまり掃除した記憶ないので汚いと思うのだが‥


「おはようトウカ!待っていたぞ!」

「待たなくていい‥」


 うっわ、朝から元気だこの子


 朝食を食べようと思ったけど、そういえばユウ達がいないので誰も準備してないや、ヤギさんが準備してるわけもないし、どうしようか


「トウカ!ボクはお腹がすいた!早く飯を用意してくれ!」

「生野菜‥食べる?」

「いいのか!?」


 むしろそれでいいのか、さすがに朝から生野菜だけを食べるのも嫌なので、適当に野菜炒めを作る。


 作ってテーブルに運んで、それまでずっとゴロゴロしていたヤギさんがようやく体を起こして「飯だ!」と喜んで食べ始めた。なんというか本能で生きてそうな子だ


「ひょうははにをひてふごすんだ?」

「何を言ってるか‥分からない」

「ん、ん!ふう、今日は何をして過ごすんだ?トウカの主人は帰ってくるのか?」

「何もしない‥帰ってこない‥」

「そうなのか!」


 そうなのだ、しかし食事の時は基本的に喋りたくない派なのだけど、問答無用で話しかけてくるなこの子は


 いつもと違うのは最初は新鮮だからいいけど、これが明日も明後日も続いたらさすがにストレスが溜まりそうだ。


 これ以上話しかけられても困るので、ささっと食べてしまい、片付ける。最初の予定では朝食も外の出店で食べたりしようとか思っていたけど色々予定外だ、とはいえこれから日課の魔法の練習だ






 練習を始めて体感的に一時間くらいだろうか‥子供のころ必殺技の練習とかしてた時を思い出してしまうほど魔力を感じようとしたり、呪文を唱えたりしてるのだけどいつも通り何も起きずにいたら、ヤギさんが庭の方まで来て「なにしてるんだ!」と声を掛けられた


「練習‥」

「それは呪法か?」

「違う‥魔法の、てか呪法てなに?物騒なんだけど‥」

「魔法か!凄いなトウカは魔法使えるのか!」


 というかまず魔法なんじゃないだろうか、呪法っていうのはもっと一般的に使えるものなんだろうか?


「呪法っていうのはだな、血肉を使ってなんか凄いのがばーんとでるやつだな」

「血肉って‥?」

「あー、えっとだな、たしか魂?を媒介?にして死体とかを代償に使うとかってやつだ!」


 いまいち分からないけど、なんというか物騒なものだというのは間違いないみたいだ


「それって‥誰でも使えるの?」

「使えるぞ!ボクも少しなら使える!」


 なんで使えるんだ‥しかし誰でも使えるとは凄いな、そんなものがあるなら魔法より広く使われそうな気がする


「使えるけど使ったらやばいから使わないけどな!」

「呪法?ってみんな使うの‥?」

「んー、使わないんじゃないのかな?そもそも呪法を使うのはだめって国で禁止してた気がする?」


 だったら何故余計に知ってるんだと突っ込みたいけど、なんというかすっとぼけられて終わりそうな気がする。


 しかし、使ったらやばいと言うなら多用できないということだし、覚えても仕方ないかな、そもそも教えてと言って実際に私が試して死ぬのも嫌だし


「というか魔法を使うなら魔力を込めたりするものなんじゃないのか?」

「え‥」

「いくら魔法が使えると言っても魔力を込めないと使えないはずだが?」

「込め方分からない‥」

「あー、なるほど、ボクも分からないけど、込めないと無理だと思うぞ?」

「魔力‥込めなくても発動できるって指輪、もらったんだけど‥これじゃ駄目なの?」

「才能がないんじゃないか?」


 凄いストレートに言われた、アリーですら言わなかったのに

 やはり才能とかそういう問題なのだろうか、けどアリーの反応から魔力込めなくても発動するとか言われてた指輪のはずなのだし、何か原因が他にありそうだと思ったのだけど


「ボクもやっていいか!?」

「え‥別にいいけど」


 指輪を渡して、ヤギさんが私のマネをして呪文を唱え始めた、というか私が言ってたのを聞いて覚えたのか、凄い記憶力だ

 唱え終わると指輪から水がチロチロと出始めた。なんてことだ‥ヤギさん魔法使えてる‥


「あはは!ボクはできたぞ!」


 これはヤギさんの血筋に一応反応してるってことだよね?なんか誰でも魔法使えるんじゃないのかなと疑問に思うけど、そもそも私が使えないだけのパターンなのかもしれないし‥


「冗談は置いといて、トウカは凄いなちゃんと使えるんだな」

「‥?」


 なんだかんだショックを受けていたけど、ヤギさんが意味不明なことを言い出した。

 私は使ってないのだけど?


「悪い悪い!何から説明しようか、ボクが勝手にトウカの血を呪法で奪ってその分を指輪に込めたんだけどちゃんと反応した!」


 え、何それ怖い、というか簡単に使えないんじゃなかったのか、とか、いつの間に血を奪ったんだとかいろいろ突っ込みどころありすぎるのだけど


「私が‥血を垂らしたときは反応‥しなかったんだけど?」

「そうなのか?それはまた不思議だな」


 進展と言えば進展したっぽいけど、謎が深まるばかりだ


「まぁ、さすがのボクも魔法使いの血じゃないと魔法は使えないから、トウカは紛れもなく血筋的に魔法使いのはずだぞ?」


 アリーにも言われたからあれだけど、勝手に奪われたとはいえ魔法が反応してるというので少しは自信がつくけど


「その血を奪う‥?呪法って私にも使える?」

「使えるけど、これを使うくらいなら容器にトウカの血を入れればいいんじゃないか?」

「痛い‥怖い‥それ痛くなかった」

「少量しか奪わなかったからあれだけど、失敗したら死ぬけどいいか?」


 なんてもの使ってるんだ、いやヤギさんは慣れてるのか‥?それにしても失敗したら死ぬってやばいのだけど、あ、だから呪法はやばいのか

 それにしても前に垂らしたときは反応しなかったからいまいちナイフで切りたくないのだけど、仕方ないか‥いまだに何も進展してないし


「あー、トウカが呪法を使うなら失敗するかもって意味で、ボクが容器に入れるからトウカは容器だけ用意してもらっていいか?」


 あ、私が使う場合の話か、というか私の血を抜いてくださいっていうのも中々変というか嫌な感じだけど


「待ってて‥」




 さすがに木のコップとか茶器に入れるのは嫌なので、ユウの部屋に置いてあった空瓶を持っていく、なんでこんなのがあるのか分からないけど丁度良い、ちゃんと綺麗に洗っておく


「これでいい‥?」

「一本だけでいいのか?」


 私の血をどれだけ抜く気なんだ、殺す気なのか


「それじゃあちょっと失礼してっと、ほい!」


 心なしか体がふわっとした感覚がして若干気分が悪くなる。いつの間に入れたのかビンの中には私の血であろうものがタプタプと揺れている。


「え‥普通に怖いんだけど‥」

「あはは!面白いよな!」


 もしかしたら一番怖いのはこのヤギさんなのかもしれない、笑うところなのかここは

 とりあえずこれで私の血が痛くもなく手に入ったわけだけど、これが自分の血だと思うと体の力が抜けるような感じだ

 ヤギさんから受け取って、指輪に少量塗ってみるけど何も反応無し‥


「何も‥起こらない‥」

「ボクに貸してくれないか?」


 ヤギさんに渡すと、すでに塗られてあった血が指輪に吸い込まれるように消えていき、水が流れ始めた、なぜ‥


「んー、ふむ?ふむふむ?分からないな!」


 しかし、これでは結局私が使えてないから意味がないのだけど、どうしたものだろうか



 ヤギさんとあれやこれやと悩んでいたら、時間も結構立っていて昼過ぎくらいには太陽が傾ている。


「トウカ、そろそろ腹が減ってこないか?」

「ん‥もうそんな時間なんだ‥」


 肉体的には疲れてないけど、精神的に疲れたりするので外食にしようと出かける準備をヤギさんとして、商業区に向かう。




「あ、トウカ言い忘れてたけど、肉食べたほうがいいぞ?」

「ん‥なんで?」

「トウカの血を奪う際に多分だけど肉とかも減ってるだろうから増やしておいた方がいいからな!」


 なんて危ないんだ、というか先に言ってほしい、肉なくなってるのか私は‥

 血が抜けたんだろうなという感覚はあっても肉がとられた気はしないのだけど


「まぁ、成功していたら肉はなくなってないのかもしれないけど、血はなくなってるだろうからどちらにせよ肉は食った方がいいだろうな!肉!肉!」


 単純にこいつが肉を食べたいだけなのではないだろうか‥

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