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1話

 準備が整い、ユウとアリー3人で王都に向かう商用馬車に乗り込み私はこれから向かう場所に少しながら心躍らせた。


 アリ―から聞いた話によると、奴隷の扱い‥対応が酷いものではないと聞いてるので視線が気になることがあまりないらしい、とは言ってももちろん獣人というだけで相手が良い気持ちではないとのことなので、路地裏などにはいかないように注意を受けた。




 馬車は予定通りで行けば1週間半で着くとのことで、それまではのんびりと道中の景色を楽しむ。

 二人も最初の方は話していたけれど2時間くらいしたころだろうか、さすがに話すネタが尽きたのか景色を見たり、仮眠をしたりしている。一応こちらが金銭を払って同行させてもらってるけど盗賊の件からもあり、襲われ護衛した場合報酬がもらえるらしい






 平和を満喫して、道中の休憩にアリーが自分の荷物から指輪のようなものを見せてきた。


「あまり思い出したくないかもしれないけど、最初のダンジョンでトウカ魔法に興味を示していたでしょう?これは魔法を媒介する指輪、水の初級についての魔法印が込められてるわ」


 そういえばすっかり忘れていた。私が言い出したことでそれも魔法概念という私にもしかしたら使えるかもしれないものが二人の何かに役立てるかもしれない


「水なの‥?」

「そうよダンジョンでは行使した水が残るからダンジョンでは基本的には扱わないわ、火も同様ね」


 なるほど、だから風魔法を使っていたのか、てっきり風魔法が得意だからと科かと思っていたけどちゃんと理由があったらしい


「とりあえず教えるけど、都度分からないことがあったら聞いてきなさいね」

「二人ともがんばれよー」


 ユウも素質はあるらしいんだから真面目にやればいいのに‥




 さて、私の馬鹿なりに思いっきりアリーの話を要約すると


 体内の魔力を媒介に送り、行使したい内容‥つまりは『真っすぐ飛べ』というのをよく分からない言語で言う必要があるらしい。ちんぷんかんぷんである。


「まぁ分からないわよね、だから最初はトウカの魔力を使わずに魔法を行使するわ」

「いらないの‥?」

「以前言ったかもしれないけど、媒介は必要だけど必要じゃない、なければ複雑なものはできないけどただ水滴を出すくらいならトウカの血を使えばできるはずだわ」

「それ‥出血してるだけなんじゃ‥?」

「ちゃんと無色透明な水滴にできるから大丈夫よ」


 あまり痛いのは好きではないのだけど‥指輪を渡されて呪文について聞いてみたら、魔法印というものを刻んだから大丈夫とのこと


「魔法印ていうのは行使する内容をあらかじめ媒介に刻むことよ、私は使わないからそれあげるわ」

「媒介って‥高いんじゃないの?」

「高いわね、けどそれをトウカが付けておけば相手の牽制にもなるし、町中でもそれなりの奴隷として見られるから普段からつけておいて損はないわ」


 あくまで相手が魔法に疎くない場合だけどねと付け足して教えてくれたけど、そこまでして私は外に出ないと思うから、本当に保険みたいなものなのだろう。


 襲われないとも限らないけど、町中でそんな事態に陥りたくないと思う。


「じゃあナイフで指を少し切って、あとは指輪に垂らすだけでいいわ」


 言われた通りやってみると何も起こらない‥これは血筋が駄目と言うことだろうか‥?


「なんで、何も起こらないのかしらね‥?」

「‥?」


 ダンジョンの時に聞いた説明では血筋が駄目だったら使えないと言ってたからそれではないかと思っていたけど、アリーが何故か不思議な顔になってる


「呼応はしてるのに発動してないわ」

「どゆこと‥?」

「トウカの血で媒介が反応してるってこと、けど何も起こらないからおかしいのよ」


 なんで?と言ってるけど私の方がもっと分からない


「つまり‥私の血は魔法使いの血‥?」

「そうね、使えるはずよ本当なら、試しに他のも試してみましょうか」


 アリーが別の指輪をゴロゴロ出してきた、そんなにあったんだ‥どれがどれか分からないので、差し出されたら指輪を付けて血を垂らすけど全部何も起こらない、そもそも呼応してるというのも私にはわからないのだけど‥


「魔法印のものは駄目ね、呪文も試してみましょう、もう血を流さなくていいわ」


 そう言うと別の指輪を出してきて「私と同じ言葉を一緒に唱えてみて」と言うので真似してみるけどやはり何も起こらない

 アリーの方を見てみると指輪がほんのりと光って、指先から水が流れてる


「初級の魔法なら意味を理解してなくても使えるはずなんだけど‥おかしいわね」


 とりあえず私にわかることはないので、この件に関しては保留にすることにしようということで落ち着いた。


「血には反応してたから大丈夫だとは思うのだけど、トウカなりに色々調べてみるといいわ」


 正直魔法の仕組みがいまだにわかってないから自信はないけど、出来る可能性はあるみたいだから今度からは一人の暇なときに積極的に試せることは試してみようと思う。






 そんなこんながあったけど王都への道中は平和に過ごすことができた。強いて言えば私達一行が王都へ向かう中、逆に王都から離れる商人が多いように感じられた。


 そのことに関しては私たちを乗せてくれてる行商人も頭を捻って通りすがる商人仲間に聞いてみたりはしていたけど詳細はあまり教えてもらえなかったようだ。


「普通は王都での商売が成功にしろ失敗にしろ離れるのは少ないんだけどな」

「そうなの‥?失敗したら帰るんじゃないの?」

「商人が王都へ向かうって言ったら一念発起して向かうから、失敗しても王都へ残り他の行商組合傘下に入るかもしくはそのまま王都で別の商売に切り替えたりとかするんだよ」


 ユウがなんでこんなに詳しいのかむしろ怖くなってきた、いつもの馬鹿じゃない‥


「馬鹿なのに‥」

「どういうことだ!?俺が詳しいからか?」

「そうね私もびっくりだわ、そんなに詳しいの」

「俺だって、まぁ普段はそういうの気にしないけどギルド以外で金儲けとかできないか考えた時もあるからその時知ったんだよ」

「亡者‥」

「ちが――わないけど違う!」


 そういえばユウの家の隅にある倉庫で節約と称して木工大工のような跡があった、おそらくまともな物が作れそうなら売ろうと考えていたんだろう、残念ながらものづくりの才能はなかったらしいけど


「けどそれならどうしてこうも多いのかしらね」

「王都で何かあったんじゃないか?」


 仮に何かあったとしても今の状況から考えると盗賊やら、怪しい団体?とやらがダンジョンに潜んだりとかくらいだけど、他に何かあるとしたら税関連?だろうか商売において国にある程度の税を払わないといけないらしいので、増税でもしてるのかもしれない


 これも‥私が考えても仕方ないか、しかし暇なのでそれくらいしかできないのだけど




 考えていても答えがでずに、もう少しで王都に着くという頃、馬車窓から外を見ると目視できた。


 王都と呼ばれることもあって圧巻、私は見たことがないけど地球でも城と言うものがあるらしいけど私みたいな個人、一人からしたら遠目から見ればこの城に攻めたくはないなと思える光景だ。まぁ攻める気なんて元々ないけど


「久しぶりだなー」


 二人とも来たことあるらしいので私みたいに感動することはないけど、城を見て「相変わらず大きいわね」と言ってるので、なかなかな城なのだろう。


 王都から周りに町村が道で繋がっていて、更に外に向かうと別の国に向かうための道もあるけれど関所を通らなければ他国へ渡れぬよう壁で囲まれているそうである。とはいえ抜け道が多いのであくまで戦争間においての防御策らしい


 最も平和条約を結んでいるらしいのでその壁が意味を成しているのかは不明であるけど


「王都を囲むように町々が形成されてるけど、区画で貴族区、商業区、町民区、工房区のおおよそ四つで形成されてるんだ」

「ギルドは‥?」

「ギルドは商業区、冒険者も言うなれば依頼を受けることが依頼を売り買いとしての扱いになるから、工房区じゃないと剣の類は買えないけどギルドに関していえば町民が困っている雑用もこなすからっていうのも理由だな」


 基本何でも屋さんらしい、雑用と聞くと派遣会社みたいな扱いなのだろうけど、そう言ってしまうと冒険してないからなんとも微妙なように聞こえる。


 ちなみに商業区で町民区の物件を購入して今日は宿を探して泊まろうという予定のようだ。






 王都への門前にて税を商人とユウが払って中に入れてもらえるよう話をしたあと、馬車中にいる私とアリーを一瞥して確認等済ませた後は商人の荷物を確認して中に入れてもらえるようになった。


 私みたいな獣人の奴隷をよく見ることがあるのか、自然とした対応だったから本当にアリーの言う通り奴隷の扱いが酷くないのだろう。酷くないというか下手に視線を向けて主人が貴族や名のある人だと面倒ごとが多いだろうからという理由なのだろうけど


 都をそのまま馬車で入っていき、ユウが「ここまでで大丈夫です」と言った後は私たちは馬車を降りて、予定通り不動産?らしいところに向かう。


 不動産と言っても国が土地を管理してるから広い都の各地に用意されてる兵が駐屯している場所に向かっているらしい


「トウカとアリーはちょっと待っててな」

「ちゃんと3人小部屋があるところにしてね」

「おう!」


 アリーと二人きりになったので、せっかくだから気になっていたことを聞いてみようかな


「アリーは‥なんで一緒の家に住むの‥?」

「その方が私が嬉しいからよ」


 そう言えばユウのこと好きでしたね‥じゃなくて、何故以前の家だと住んでなかったのに平然と住めるようになったのかを聞きたい


「前住んでた家‥いなかったから」

「ん?そうね、ユウは元々一人暮らししかする気ないって断られたわ」

「そうなの‥?」

「そうなのよ、トウカみたいな女の子を男一人で世話できると思ってるの?って強く押したらなんとかなったわ」


 アリーが疲れた顔をしながら言ってるので、私の知らない間にかなり努力していたらしい


 というかそのユウの一人暮らしって奴隷を買うつもりだったから誰も家に入れたくなかったとかそういう理由な気がするのだけど、それに関してはアリーに言わないようにしておこう。さすがに意中の相手が奴隷の子といちゃいちゃしたい願望があっただなんて知りたくないだろう。


「トウカも私に遠慮せずユウにたくさん言い寄らないと振り向いてくれないわよ?あまり強く推す性格じゃないのだろうけど少しは頑張らないと、それともユウが夢中になってるから余裕なのかしら?」


 あぁ‥まだ勘違いをしている、私はユウにそういう好意は抱いてないし、ユウも私のことをそういう風には見ていない‥と思う


 訂正しようとしたら謙遜云々とまたいわれるのでもう言わないけど、それにしても何故こうなった


 私が何も言い返さないのをまた何か勘違いしてるのか「トウカは優しいのだから」と言ってるのは私には聞こえない、何が優しいのか分からないけど聞こえないなら仕方ない

 ユウが戻ってきて「宿を探しに行こう」と言ってきたので話は上手くいったのかもしれない


「明日に家を見せてもらって、それで良い物件ならそのまま購入しようかなと思うけどそれでいいかな?」

「大丈夫よ、トウカも長い間座りっぱなしで疲れてるでしょうし、宿を決めてゆっくりしましょう」


 たしかに座るだけだったけど馬車はガタゴト揺れていたので腰が痛いけど、体はそこまで疲れてないから別に気を遣わなくてもいいけど、それでもベッドで寝れるのは嬉しいから是非向かいたい






 宿を探してる間、町を歩いてると、さすが王都と言われるだけのことはあって都の名に恥じない人の多さでごった返している。


 冒険者風の装いをしてる者から、私と同じとはいかないまでも尻尾を生やしていたりする奴隷が普通に闊歩している。一人でいる奴隷がいても周りの人は視線を向けるでもなく普通と言うように歩いて、私にも好奇の目線を向ける人もあまりいない


 視線が完全にないわけではないけど、私のような奴隷商の髭親父も言われたように愛玩として耳だけ獣人の遺伝がある者が珍しいという理由で恐らく見てくる人はいるけど奴隷に興味ない人からしたら私なんてよくいる人の一人なんだろう。それだけで大分心が軽い


「この宿にしよう」


 宿が決まったのか、店主の方に話をいつの間にか付けていたユウが私とアリーが泊まるという部屋の番号を言って鍵をアリーに渡してきた。


「トウカしばらくよろしくね」

「‥?明日から新しい家じゃないの?」

「明日家を買っても家具がそろってないでしょうしね、床でも良いなら毛布で寝るのも良いけど嫌じゃないかしら?」

「なるほど‥嫌だ」

「そういうことよ、まぁ、家具もすぐ買えるでしょうし明後日には新居で生活できると思うわ」

「だな、二人にはそれまで一緒の部屋で頼む」


 宿に入る前にもう一度大通りを見るとたくさんの人が飛び交っている。町民区はもう少し控えめらしいけど、商業区は夜もそこそこ賑わうそうなので迷ったら大変だろう


「いきましょ?トウカ」

「うん‥」

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