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こいつのことを好きになるとは思えない  作者: メルメル
1章―ダンジョンと魔法
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9話

 耳を澄ましてみても、特に何も聞こえず近くに人がいないのは分かるのだけど‥意識を取り戻してから結構な時間が経ったように感じるけど誰も来ない


 久しぶりに何もすることがなくなってしまった。いやこの場合誰かが来てしまった方が最悪なのかもしれないけど、状況が何も分からないので少しは進展が欲しいとも思う。


 とにかくすることがないので鎖とかをジャラジャラと外そうとしてるけど、鉄で出来ていて壊せないなぁとしか思えない、強いて言うなら手首に付けられてる錠を外せばいいのだけどそういう技術は私は持ち合わせていない


 牢屋‥なんだよね、多分だけど、鉄格子とかが牢屋のイメージだけどこういう牢屋もあるのだろう








 眠っていたら、足音らしき音が聞こえて目が覚める、ようやくと言うべきなのか、ついにと言うべきなのか、ドアを開けて盗賊が入ってきた。


「やあやあお嬢さん」


 現れたのはこの盗賊一人らしい、顔を見ると私を捕まえたあの時の人だった。盗賊と言えばあくどい顔なイメージだけどこの盗賊はなんというか‥話し方も含めて盗賊っぽくないというか紳士のようなダンディなおじさんだ


「こんな狭苦しいところに閉じ込めてすまないね、何か要望があれば聞くが何かあるかい?」

「町まで‥返して」

「それは俺の要望になるができないんだ、すまないね」

「ホットケーキ‥作って」

「ほっと‥ん?あーっと、あれだお嬢さん俺にできることでって意味だよ」


 要望聞いてくれないのと一緒じゃなかろうかと突っ込みを入れたいけど、私が何か言っても大抵拒否されそうだ。


「何が‥目的なの?」

「それは説明しても分からないと思うけどね」

「ここはどこ?」

「牢屋かな」


 やはり答えてくれる気はないんだろうなと分かる。しかしそれならわざわざここまで何しに来たのだろうか、というかそれを言わせることが目的なのかもしれない

 いい加減話が進まないので相手の望んでいるであろう言葉を言うことにしようか‥


「私に‥何をしにきたの?」

「何も、お腹がすいたかなーと心配して来ちゃった」


 真面目に何をしにきたんだこいつ

 最後のあたりお茶目のつもりなのか、ちょっと気持ち悪く言われた。顔が渋いだけにとても似合わない


「冗談は置いといて、お嬢さんに一つ聞きに来たんだが‥答えてくれると嬉しいかな」

「何を‥?」

「あの冒険者‥あー、名前なんだったかな、ユウだっけか?あいつはお嬢さんを連れ戻しに来ると思うかい?」


 あれだろうか、ここで来ないと思います!とか言うと殺されたりするのだろうか


「こんなことを君に聞いても困るかな?いやなにユウ君の評判は良いからね、奴隷でも助けに来ると俺は踏んでるんだがどうだい?まして君はユウ君の奴隷だよね?」


 そういえば意識を失う前に私の首輪を見て呆れたような声を出していた気がする。

 奴隷だから人質の価値がないかもしれないと考えてあんな風に言っていたのかもしれない


「別にそんな警戒しなくてもいいよ、ユウ君が来ないなら来ないでも別に構わないからね」

「一体何が‥目的なの?」

「盗賊なんて大体金目の物が目的って思わないかい?」

「それは‥そうかもしれないけど、なんでそれなら私を捕まえたの?」

「身代金という考えはないのかい?」


 そうか、その手があったか‥って納得しそうになったけど来ないなら来ないでも構わないって言った直後で騙されてたまるか


「来ないでもいいって言ってた‥」

「ははは、そうだね」


 何がしたいのか分からない、私から離れた位置におじさんは座り込んでこちらの様子を見ている。見られる視線は別にいやらしいようなものではないのだろうけどじろじろ見られる趣味もないので大分不快だ‥


 無言になっても相手はそれでもいいのか、ずっとこちらを見るだけで目的の一つも分からない。ユウに来てほしいのか来てほしくないのかもわからないので私の扱いが今後どうなるかも予想できずいまいち対応に困る。


「何を‥しにきたの?」

「野暮なことを聞くなお嬢さんは、盗賊に捕らわれた女性の末路は大体一つだぜ?」


 発言だけはそれらしいことを言うのだけど、何かを私に何かしようという素振りが感じられない


 そうしているとどこかに行く気になったのかおじさんは立ち上がり牢屋から出ようとする。


「後で食事を持ってこさせるよ、悪いけど大人しくしてもらえると助かるかな」

「ホットケーキ‥」

「食べ物だったのかそれ‥それじゃあなお嬢さん」


 部屋を出ていき、また一人になる、何も教えてくれる気がなかったのだけど、先ほどまでの会話で何か相手の意図を読み取る何かがあっただろうか‥単純にユウが来るか来ないか知りたがってはいそうだった雰囲気はあるけどそれにしても、私を捕まえた時点で他の盗賊もユウと交戦していたのだろうからユウの様子を見ていれば分かることな気がするけど


 何かヒントがあればいいのだけど、それとも単純に暇だったから私と話をしに来たということだったりして‥ううむ


 ユウは何をしているだろうか、また心配しているのだろうか、私を探しているだろうか

 探すにしてもユウが見つけてくれるとは限らないので、私の方で何とかしないといけないのだけど鎖はびくともしない、食事が来るというのなら食器でこじ開けたりできないだろうか‥





 食器がどういうものか分からないけど、来るのを待っていたら足音が二つ聞こえ、牢屋に入ってきたのは若そうな人と歳をとっている人の二人、私を見るなり足を見たり、胸を見たりした後小さいため息をする。


「まだガキじゃねえか、こんなの捕まえてなにするんだか」

「いいから飯与えてもう行こうぜ、俺的にはこいつでもいいけどな」

「お前はそういうの好きだな」


 気持ち悪いと思い、後ろに少し下がると二人がニヤニヤと笑うので、おじさんとは違う考えなのが嫌でも伝わってくる。


「安心していいぞ、手を出すなと言われてるからな、飯食えよ、死なれちゃ困るからな」


 不味そうなスープを置くと牢屋から出ていく、スプーンもなく器と中身だけなのでこれで錠をどうにかできるとは思えない‥

 一口飲んでみると、恐らく芋をすり潰して煮たものなのだろう、調味料が入れられてるわけもなく、単純に炭水化物のドロドロしたものとしか思えず不味い


 贅沢を言えないのは分かるけどあまり飲む気にもなれないので、そこら辺に置いとくことにして、食器が当てにならないので別の脱出手段を考えないといけない


 少し分かったと言えば、あのおじさんの言う通り私に何か危害を加える気は恐らくないんだろうということ、先ほどの二人が手を出すなと言われてるってことは人質くらいしか思いつかないけど、だからと言って暴行を加えないというのは謎である。


 本当に身代金でも要求するつもりなんじゃとも思うけど、それなら一介の冒険者、しかもユウは馬鹿でもAランクらしいのでわざわざそれを相手にしてまですることでもない気がする。


 分からない‥少し寒く感じたので、あのおじさんが来たら毛布をくれるように頼んでみようと思い目を閉じる。






 あれからおじさんが来ることがない為、何か聞けることもなく、食事を毎回取り換えにくる二人、もしくは一人がいるくらいで、いつまでここにいればいいのか


「おい」


 私に食事を持ってきた二人組だった若い方の盗賊が今日は一人で私に食事をもってきたらしい


「そろそろまともに食った方がいいんじゃねえの?」

「不味い‥」

「なんだこの奴隷贅沢かよ」


 不味いか?と首を傾げているところを見るともしかしたらこの芋スープは案外この世界では一般食なのかもしれない、ユウのところや、村で食べたもの、奴隷商だと普通に食事美味しかったからどちらかと言えばこの盗賊の味覚の方に問題がある気がするけど‥


「悪いことは言わねえ、ちゃんと食え」


 たしかに体力もこのままだと失うかもしれないので食べないといけないけど、なんというか敵地でもらえる食事というのが不信というか、食べるのが嫌な気分になるというのを初めて知った。


「質問‥」

「あ?」

「ここはどこ?なの」

「答えるとは言ってねぇよ‥てか知らなかったのかここは赤壁のダンジョンだよ」


 ちょっと頭が追いつかなかった‥ダンジョンに住んでるのこの人たち?!

 なぜダンジョンに住んでるのか、まず赤壁とかダンジョンの名前を言われてもどこか分からないので困るけど、魔物とかどうしてるのだろうか


「お?なんでダンジョンに住んでるのかって反応だな」


 アリーに分かりやすいって言われたりしたけど、この何も知らない盗賊にもばれるほど私の考えてることってわかりやすいのだろうか‥


「って言っても俺もわかんねえけどな、古参のやつらならなんか知ってるかもしんねえけど」

「気にならないの‥?」

「今が楽できりゃあ俺は何も思わねえよ、考えてもわかんねえし」

「魔物とかでないの?」

「俺は襲われたことねえな、どうしたお前急にしゃべるようになったな」


 さすがに不振がられるかと思ったけど、暇なのか普通に話に付き合ってくれるあたり何も知らない新参なのかもしれない

 とはいえ、ダンジョンに住んでるのは分かったので少しでも進展した気がする。


「あ、やべ、そろそろ戻らねえとな。また来るからよ今度はお前の話でも聞かせてくれや」

「‥うん」


 ユウが来たならこの人も殺されるのではと思い出来れば感情移入したくないから、割り切って話さないとな

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