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こいつのことを好きになるとは思えない  作者: メルメル
1章―ダンジョンと魔法
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8話

 あれから数日程経って、それまでの間に体も大分動けるようになり、それに私が眠っている間のことも聞いておいた。


 あの後盗賊を数人捕まえ、そして尋問したところ私たち‥正確に言えばユウとアリー二人の冒険者がダンジョンに潜ると知って魔法使いから仕留めるために魔術師殺しと言われる痺れ薬を商人から仕入れて、人質に使えば倒せるだろうと企んでいたらしい。



 ちなみに結構な手練れだったらしいので、私かアリーが人質に取られていたら危なかったらしい、私のことをアリーが守ってくれてユウが盗賊を倒すということができて良かったと言っていた。


 あとは私の応急処置を施したあと、ユウが運んでアリーが主に戦闘をしてくれたらしい、魔法を行使するのはただでさえ辛そうなのにとても迷惑をかけてしまった。


 一緒に冒険をしたからか、もしくは元々私が来る前からそうだったのかは知らないけれど、アリーが良く来るようになって一緒に食事をするようになった。そして私とユウとアリーが朝食を食べていると


「ユウ私話したいことがあるのよ」

「どうした?」

「今日はどこにいくのかしら?」

「薬草を採取しに行くけど、それがなんかあるのか?」

「そうなの‥なんかじゃないわよ!なんでまた草かき集めてんのよ!」


 ちなみに私の体調が戻ってからこのやりとりを何度もしている。

 もしかしたら私がいなくてもしているのかもしれないけど、大体ユウが宥めてアリーが諦めてどこかに行った後にユウも薬草の依頼を受けに行くという流れである。


「もう!知らないわよ!」


 そう言ってアリーが怒ってどこかに行く





「トウカ体の調子はどうだ?もしよかったら一緒に薬草採りに行くか?」

「別に‥いいよ」

「そか!良かった」


 アリーのこともあって、私が原因で冒険行きづらくしているはずなので何か私なりにユウの目的に向かえるようにしておかないと


 正直この人に何を言えばいいのか分からないというか、あれだろうか?私が同じ世界と知ってるから余計過保護になっているのだろうか

 安心させればいいのか、それとも単純に気にしなくていいよとか言えばいいのか







 うだうだ悩んでいたら準備ができたのかユウと一緒に薬草を集めに森の方に向かう

 依頼については事後報告にしようとのこと、恐らくギルドの受付嬢に私を合わせたくないという配慮だろう。


 いつになく無言のまま二人で歩いてると、私の歩幅に合わせて歩いてくれてる事に気づいた‥‥こいつもしかして、本当にもしかしてだが、この前の夜も怪しい出来事があったことだし、私が男だったこと忘れてるんじゃないだろうか?


「ユウ‥あのさ」

「ん?どうした?」

「私、男なんだけど」

「それは元だろ?」


 どうやら覚えているらしい、てっきりまた自分好みの奴隷落とすための行動でもしてるのかと思った。

 あれかな、純粋に過保護なのかもしれない、ペットを飼ったはいいけど構わなければ気が済まない的なやつ?


「それがどうかしたのか?まさか生えたのか!?」

「‥‥馬鹿なの?」

「ごめん、いや生えてないならいいんだ」


 ユウがたまにおかしいのはいつものこととして、あの時のことは欲求不満だっただけなのだろう、とはいえそうなってしまった場合なんていえばいいのか振り出しに戻った気がする。


「ユウ‥聞くんだけど」

「ん?」

「薬草好きなの?」

「特に好きではないけど苦いし、ポーションもあるけど美味しくないんだよな、スライムの方が好きかな」


 嫌なことを思い出させてくれる、私は生理的に受け付けないし、元々ドロドロゼリーが動いていたのにそれを飲むというのも‥って違う、話を逸らされた!


 好きでもないのに薬草薬草とずっと集め続けてるとは変わった趣味だなといつもなら流すところだけど、やはり私に気を遣っているということなのだろう。


 そんなことを考えてる間に森の中に入ってきたし、そろそろ私も薬草を探さないと‥というかここまで毎日薬草アピールしてるってことは私に薬草を集めさせる仕事を与えるために覚えさせたかったということなのかもしれない?


 ダンジョンに潜った時も私に魔物を倒さなくていいって言ってたのは遠回しに薬草だけを採取してればいいんだよって言うことを伝えたかったのかな


 それなら私のことをやたら戦わせたがらないのも辻褄が合う気が‥うん、さすがにそれはないね

 もう私にどうしろと言うんだこいつは、ダンジョンの時はいっぱいいっぱいだったけど、たしかにアリーが言ったように私が役に立つと言ったら他に色々できるのかもしれない






 そうして薬草を採取してると、遠くから足音が複数聞こえる。

 たしかユウがこの森の奥にはあまり冒険者は来ないとか聞いていたけれど、どうなのだろうか


「ユウ」

「ん?今度はどんな質問だ?」

「違う‥誰か人が来る」

「誰かって、あれか急に気配とかが分かるようになったのか?」

「こんな時に冗談言わないで‥何人か足音が聞こえる」


 私が冗談言ってないとわかるとユウがカバンから手品のように剣を取り出して臨戦態勢に入る。


 音も近くへと迫ってきたところでこちらの様子を伺っているのか、動きが止まった。

 ユウも気づいたのかそちらの方を向いて


「おい!俺たちに一体なんのようだ!」


 問いかけるが、相手は姿を見せることはなく、ユウが「気を付けろ」と言ってくれるが、相手の出方がどう出るのか分からないので足がすくんでしまいそうになる。

 心なしか左腕が痛む気がする。


「トウカ、逃げるぞ走れるか?」

「逃げるの‥?」

「複数人相手だと何が起こるか分からないからな逃げるが勝ちだ」


 なるほど‥ってなるわけがない、恐らく私がいるから逃げるのだろうユウ一人なら勝てるはずだけど


「俺が最初は先行して、その後は町までトウカに走ってもらう」

「一人で‥?」

「足止めしてすぐに追いつくから大丈夫だよ、行けるか?」

「うん‥こけなければ‥」

「悪いな、病上がりなのに」




 走り切れるかはわからないけど、ユウが足止めしてくれるなら大丈夫なはず。

 私がここで残るよりはいない方が心置きなく戦えるから‥また役に立たないとネガティブになりそうな考えに頭をふるって逃げることだけ考える。


 そしてユウが「行くぞ」の言葉と同時に走り出す。


 たしか町へ戻る方から聞こえてきた音は2人だったはず、最後に聞こえた音は茂みのあたり通り抜けようとしたときに剣を持った男が道を遮るように立つが、ユウが一太刀で相手の剣を弾き二ノ太刀で斬り伏せる。

 すぐさま左側から新手が来るがユウが「行け!」と言うのでここから一人で逃げろということらしい。町までは一直線のはずなのでもつれそうになる足をこけないように意識して走る。




 後ろの方で男の悲鳴のような声が聞こえたので、ユウが斬ったのだろう‥間近で人の死ぬところなんて初めて見たけど、ユウは慣れてるのだろうからこの世界ではごくありふれたもののはず‥慣れないとなと思うけれど、慣れたくもあまりない


 下手したら私たちもあんな風に死ぬのかもと気を引き締めて足を進めるが、気のせいでなければ森の出口近くから足音が聞こえた気がする‥


 なんで?と思ったけど、普通に考えて人数が足りてるなら町までの道を塞ぐぐらい当たり前じゃないかと気づく、今更気づいたけど今から逆走してユウの元に戻ればまだ大丈夫のはずだ。


 すると気づいたのか分からないけど出口で待機してた盗賊がこちらの方に走ってくる音が聞こえる。隠れてやり過ごすというのもありかもしれないけど、私に気づいたかもと思うとユウの元にまた走った方がいいと足を動かす。


 音が聞こえるというのは‥時に残酷で、私の速度では絶対に追いつかれるとわかってしまう。別に遅い方ではないはずの私より遥かに速い速度で盗賊の一人が迫ってくる。


 すぐに木の陰に隠れるけど、私が動かなくなったのに気づいてるように私のところへ足音が聞こえ


「悪いね、ちょっとばかり付き合ってもらえるかな?」

「無理‥」

「それじゃあちょっと失礼」


 私の拒否を無視して、頭を掴まれると意識が急に遠のいていく‥


「て、この子奴隷じゃないか‥」


 最後に盗賊が呆れたような声だけが頭の中に響いた。









 ぼやっとした意識の中から目が覚めると私は既視感を感じる、最近はこういう起き方ばかりしてる気がする。


 盗賊に追われていたのも覚えているし、最後にあっけなく捕まったのも覚えているので自分ではちゃんと冷静になれてると思う‥




 周りを見渡してみると石造りの壁が見えるのと、木製のドアが見える。

 体を動かすと手足に錠があってじゃらりという音で壁に鎖で繋がられてるのが見える。


 鎖を引きちぎるくらいの筋肉があればまだしも私には無理なので、逃げるのはほぼ諦めていいだろう。ユウが助けに来てくれるのを待つくらいだけど、それまで私が無事とも限らないので今のうちに覚悟しておいた方がいいかもしれない‥


 服装が若干乱れてるけど、体も痛くないのでまだ暴行の類は何も受けてないはずだけど、どうして捕まえられたのか分からない‥そもそもの話だけど、ユウが昔言ってたけどギルドの影響で町の近くには盗賊の類は現れないんじゃなかったのだろうか?


どういう意図があるのか何も分からないけど、こんなことなら薬草採取行くんじゃなかったと後悔する‥そもそも最後ももう少し反抗できたんじゃと思う‥ネガティブになってしまうけれど、少しでも脱出できるチャンスを探さないとと意識を極力切り替える



 とにかく、私を捕らえたということが人質みたいな、そんな感じで価値があるから?なのだと思うけど、もし誰かが私のところへ来たらなんとか話をして意図を探ってみようと思う

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