2話
そして馬車が近づいてくるのを待って御者台に乗っているふくよかな人をみて商人と目星をつけたところで話しかけた。俺も大馬鹿ではないからちゃんと盗賊かどうかくらい確認して話しかけるのだ!
「へい!すいません!か弱い少女なんですが!」
「え?えぇ‥な、なんでしょうか?」
困惑顔である商人が苦笑いで対応してくれている!こんな怪しい人間に話しかけられて苦笑いで対応してくれるってことは良い人に違いない
「はい!私を乗せて町までつれていってもらえませんか!!」
「町まで?失礼ですがあなたは‥ん?」
もう一回か弱い少女を名乗ろうとしたら、急に商人の顔が俺の頭に向けて視線を向けて、納得したかのように笑顔になった。
「なるほど、分かりました、それでは後ろに乗ってもらえますか?」
「おぉ!いいんですか!ありがとうございますですよ、よい人でよかったです!!」
「いやはや珍しいお方ですね、あなたは」
なにが珍しいのか?俺の話し方が珍しいのかは知らないが、おっさんは色々話しかけてきてくれた。どこに住んでいたのか、父と母はどうしたのかなどなど
まぁ、適当に両親は病気で死んだことにして、どこに住んでいたのかは世間知らずなので知らないと言ったらすぐに納得してくれた。こういう人が多いのかは知らないけどそれ以上は詮索せずにいたのでラッキーである。
「あ、お嬢さんこの首輪を付けてもらえますか?」
「ん?なんだこれ」
「お嬢さんは身分が定かになってないでしょう?それを付けておかないと町の中に入れないんですよ」
なんて結構洒落た首輪をくれた、おっさんは「私にはこの商業ギルドカードがありますので」なんて言っていたので、町の人はみんな首輪でもしているのだろうか?と思ったがかっこよかったので首輪はありがたくつけさせてもらった。
町まで三日くらいで着きますとのことでそれまでは雑談をしながら、おっさんと過ごした。夜になれば毛布も貸してくれるし、飯はまずいがスープ等暖かいものもくれたので至れり尽くせりである。
「おっさん良い人でよかったよ!これで盗賊にあってたら一瞬でおわってたぜ!」
「私みたいな格好をしてる盗賊もいますので一概にはいえませんが、あまり信用してはいけませんよ?」
ちょっと怖くなってしまったがおっさんはスープのおかわりをしてくれたので怖くなくなった。
「ちゃんと首輪は付けたかい?」
「おう!似合うか?」
おっさんは似合うよと優しい声で言ってくれて、ちょっと照れてしまったが
なにはともあれ町についた!予想してたより結構でかいし、町に入るための入り口も異世界を代表するかのように大きく見える、たぶんだがこの女の子の体になって小さくなってしまったのも原因の一つだと思うが(もとから身長が高くなかったが‥‥)
「止まれ!荷物を検品する!」
門兵の人が大きな声をあげるのでビクッとしてしまったが、大丈夫首輪はしているので問題はないだろう。
そして馬車の中にいる俺と荷物を見て頷いて「通っていいぞ」と言った。
「おっさん完璧だったな!」
「これで問題があれば投獄されてしまうからね」
苦笑気味に返しているが、俺という不審人物を連れているのだからおっさんも焦るかと思ったけど気にしてすらなかったらしい
そして町の中に入るとやはり人がかなりいて、賑わっている。
「これからどこに向かうんだ?」
「今からある程度荷物を売らないといけないね」
「そっか!商人だもんな!」
俺はどうしようかなとか考えて、まだもうちょいおっさんと一緒にいるのもいいなとか思った。
困っていた俺にここまで優しくしてくれたし、おっさんが良ければ物を売る手伝いとかもありだろう、まだ顔は見てないけどおっさんが優しくしてくれてるのだから不細工ってことはないだろうし女の子が物を売っていたほうがお客さんも増えるだろうし
「なぁ、おっさん!話があるん――」
「お嬢ちゃん良かったら一緒に来てくれるかい?」
なんだかでかい建物の横に馬車を着けておっさんが笑顔で俺に向けて言ってきた。
もしかしたらおっさんも俺の可愛さを使って商品を売ろうとしているのかもしれない!
それならそうと言ってくれれば手伝うというのに!
「おう!何か持っていくの手伝おうか?」
「ん?いや荷物はこことは違うところで売るから大丈夫だよ」
「そうなのか?」
そうして一緒に建物の中に入ると受付に俺と同じような首輪をしている女性が立っていた。
そういえば今思い出したらこの町の中でこの首輪をしている人がいたりいなかったりしてどちらかといえば少なかったのを思い出したけど、おっさんのように付けてない人はなにかしらのギルドに入ってるのかもしれない
おっさん曰く冒険者ギルドやらもあるらしいし、実際に剣やらを持っている人もいた。
「いらっしゃいませ、本日はどのようなご用件でしょうか?」
「えぇ、今日は良いものを見せれるかと思いまして」
「畏まりました。少々お待ちくださいませ」
受付嬢は俺のほうをちらりと見て、奥のほうに引っ込んでいった。あの受付嬢の瞳がちょっと怖くなっておっさんのほうを見てみると、優しく微笑んでくれた。
それから程なくして帰ってきた受付嬢に「こちらです」と案内されて応接室らしいソファとテーブル、そして相手のお偉いさんなのか髭を生やしたおっさんがニコニコしていた。
お互いに挨拶して、俺も一緒におっさんの隣に座って話を聞くことにしたのだが、よくわからない話だったので眠くなってしまいちょっとうとうとしていると話が終わったのかおっさんが立ち上がった。
俺もおっさんと一緒に行こうとしたら髭親父が「あ、君はここでいいんだよ」と言い出した
「え?」
「君はこれからここで教育しないといけないからね」
「どういうことだ?」
「ん?本当にわかってないのかい?」
何のことかわからないので首を傾げてると髭親父はニヤニヤとし始めてこう言った。
「君をこれから奴隷として教育しないといけないんだ」
俺はすぐにおっさんのとこに走って受付のところまで戻るとおっさんは受付嬢からじゃりじゃりと音を立てる袋をもらっていた
「おっさん!どういうことだよ!」
「どうしたんだい?勝手に出ちゃだめじゃないか」
「な、なんだよどういうことだよ!!」
おっさんは困った顔で俺の頭を撫でようとしてきたのでその手を払った。
「残念だけど私には獣人は手におえないんだ、わかっておくれ」
「は?獣人てなんだよ!」
「君は何も知らないんだね‥‥」
そう言って受付嬢に何か言うとカウンターから受付嬢が手鏡を持ってきて俺に見せてくれた
そこにはケモミミが生えている俺的には美少女と言える女の子がうつっていた。
「獣人はね、この国は奴隷でないと町に入れないし、まして奴隷でないと殺されてしまうんだ」
「な、ならおっさんが俺を養ってくれればいいじゃねえか!働くの手伝ったりとかすればいいんだろ!?」
「そもそも獣人の奴隷なんて使っていたら相手に悪印象を与えてしまうんだ‥こういう難しい話はまだ幼い君にはわからないかもしれないがね」
そして汚い――本当に醜い笑顔でおっさんは
「いやぁ、良かった。珍しい獣人のハーフが思ったより高額で」
そこからおっさんを殴ろうとして首輪から電流のようなものが走って意識がなくなった。