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こいつのことを好きになるとは思えない  作者: メルメル
1章―ダンジョンと魔法
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7話

 目が覚めると、一瞬どこにいるか分からなかったけど、私の部屋だ


 起きたはずなのにまだ頭がぼんやりしている不思議な感覚ではあるけど、動かないとと思って腕を動かすと痛い

 左腕を見てみると包帯がまかれている。そういえば矢が刺さったんだっけ


「ユウ‥」


 意識を失う前にたしか敵と言っていたはずなので何かと争っていたはずだ、ここに私がいるってことはユウ達が運んでくれたってことなのだろうけど、大丈夫だったのだろうか


 私を運ぶのは迷惑だったろうと思うと、ユウに謝らなければと思い、けど怒られるかもしれないと思うと行くに行けない‥というかあれ?


 ふぬ!と力を出しても体が中々言うことを聞かずしびれたような感覚がじんわりと来る。動かないことはないけど痺れているためか凄い疲れる。なんでだろうか


 何度か試してみたけど、ベッドから転げ落ちてうねうねもがいて戻ることもできなくなってしまった。


「寒い‥」


 仕方ないので足と腕を使ってシーツを下になんとかおろして誰か来てくれるのを待つことにする。

 ‥‥お腹すいたな。








 数時間だろうかそれくらい経った時玄関の方から音が聞こえて、耳を澄ましてみると声も聞こえる


「そんな思いつめた顔しても、薬の効果が切れたら目が覚めるって言われてるでしょ?」

「けどぴくりとも動かないし、これ以上起きなかったら栄養も不足するともいわれてるじゃないか!高位のプリーストを探さないと」

「少しは落ち着きなさい!」


 ユウが帰ってきたのだろう、そして一緒にいるのは青い子かな、ユウが叫んで青い子が宥めているようだけど、会話の内容的に私のことだろうか?そこまで慌てることでもない気がするけど、強いて言うなら早く部屋に来てご飯を食べさせてほしい


「とにかく一旦様子を見に行ってくる」


 おっ、部屋に来そうな雰囲気がある、そういえば最初になんて言おうか、なんか心配してるっぽいし、謝ることから入った方がいいかもしれない


「待ちなさいユウ」

「なんだよ」

「そろそろ起きてもいい頃合いでしょうし、貴方トウカが起きてたらなんて声かけるつもりなの?」

「そりゃあ‥起きたなら無事で良かったって」

「それだけ?」

「あともう無茶なことはしなくていいって言わないとな」

「馬鹿なの?」

「馬鹿って、なんでだよ!」

「なんでトウカが私をかばったり、魔物を一人で倒したりしたかちゃんとわかってあげて褒めてあげて、そういうことを一つ一つちゃんと言ってあげなさいよ」


 なんだか知らないけど、私が起きていた時に備えての打ち合わせが始まった‥‥


 別にユウの言ってることに間違いはないし、青い子を庇ったのは偶然そうなったに過ぎないし、私がユウにお世話になってばかりだから安心させたいと思って無茶をしたに過ぎないのだ


「けど‥あいつは」

「けどじゃないの、言葉にしないと相手に伝わらないんだから、まぁ‥あの子も言葉にしないところあるからそこも分かってあげなさい」

「分かってって、俺も言葉にされなきゃわかんねえよ」

「女心は複雑なものなのよ」


 ごめんなさい心は男のつもりなんです。


「お、おう‥複雑だろうな‥あいつは特に」

「心当たりあるなら尚のこと気にしてあげなさい」


 思いっきり打ち合わせを聞いてしまったのでとても気まずいのだけれど‥私は何といえばいいのだろう‥


 ドアをノックなしに入ってきて、私を見るなりに焦ったように抱え込む


「トウカ!!」

「あーっと‥ごめんなさい」

「意識があるんだな?大丈夫か?」

「ごめん‥」

「良かった、本当に良かった」


 しばらく同じやりとりを繰り返していると、一緒に様子を見に来たのか青い子が私たちを若干呆れた様子で見ていた。


「トウカも起きて疲れてるしょうし、その辺にしたら?」

「そうか!!大丈夫かトウカ?」

「‥ごめんなさい」

「いい加減にしなさいよ貴方達!何回同じことしてんのよ」


 それでもユウが心配してくれてるのか私に大丈夫かと聞きながら頭やらなんやらを触って確かめてくる。腕しか怪我してないのにどこ触ってるんだこいつは


「意識が戻ったのなら良かったわ」

「青い子も‥ごめんなさい」

「青い?むしろ私はお礼を言う方だわ、貴方のおかげで無事だったのだから」


 青い子がユウに食事の用意でもしてきなさいと蹴飛ばして、笑顔を向けてくる。不覚にもきゅんとときめいてしまいそうである。


「それで、体の調子はどうかしら?」

「あまり‥体が動かない」

「あぁ、それは矢に毒が塗ってあったからよ、毒と言っても痺れ薬の一種なんだけどね、魔術師殺しと言われてる薬よ」

「誰かに‥狙われていたの?」

「誰かって言ってもただの盗賊よ、ダンジョン帰りを狙っていたらしいわね」


 ダンジョンには大抵依頼でしか潜らない人ばかりだから、襲った場合は帰還しない冒険者お捜索等が派遣されるので、足がつきやすい為、本来はあまり狙う盗賊なんていないそうだ。


 けれど今回は青い子とユウが度々ダンジョンに潜っていたりしたことを知っていたらしく、準備をして狙っていたらしい、と捕まえた盗賊が吐いたのだとか


「今回は不運だったということね、私たちが油断していたのが悪いだけなのだけどね」

「そう‥」

「だからありがとうね」

「ううん‥私も色々ありがとう、名前なんて言ったっけ?」

「あんで貴方がありがとうなのよ、名前ね、名前ってなにが?」

「青い子の‥」


「‥‥」


 ここまで親切にしてもらって、さすがにずっと名前を知らないのも悪いなと思って聞いてみたのだけど、何故か固まってしまった。


「ちなみに聞くのだけど、その青い子って私のことでいいのよね?」

「うん‥」

「なんで青い子なのよ!子ってなによ!青いってなによ!名前教えたじゃない!」

「言ったっけ‥?」

「言ったわよ!私の身長を見て子ってつけたのかもしれないけど‥!もう!色々突っ込みどころがありすぎて困るわ‥」

「私17歳‥」

「同い年だし‥」


 何かショックを受けたのか方を落として、けれど「よく分からない子だわ」と呟いた後私の頭を撫でながら


「アリーよ、呼び捨てでいいわ私もトウカのこと呼び捨てだから」


 そしてアリーと話し終えるとユウが料理が終わったのか部屋に来て、お粥モドキをくれた。ちなみにいつもの料理と比べて、不味かった。







 その日は食事をした後はアリーが帰り、ユウも「疲れてるだろ」と言って私に布団を掛けたら部屋に戻っていった。


 別に疲れてないから気を遣わなくていいのだけど、有無を言わせずして、勝手に戻っていったので結局あの後どうなったのか聞けずじまいだ。


 そして眠るのが得意な私でも相当眠っていたからなのか、眠れない


 どうしたものか、悩んだ結果仕方ないのでユウの寝息でも聞くかと思い耳を澄ませるとユウの部屋がある方から、はぁはぁと若干荒い息遣いが聞こえてきて私は聞くのを一旦中断する。


 さて‥筋トレでもしているのかもしれないけどどうしたものか・深読みするべきかしないべきか



 いやいや‥まさかね



 もう一度耳を澄ませると「トウカ‥」と呟いているのを聞いてもう一度聞くのを中断する。


 さて‥私の心配でもしているのかもしれない、全く困ったものだ、それとも悪夢でも見ていて息が荒くて私の名前を呼んでいるのかもしれない


 も、もう一度聞いてみようか‥いや‥私にそんな趣味はないけどなんというか名前を呼ばれたりすると気になるというか聞いておかなければいけない気がしてというか‥誰に言い訳してるのだろうか‥‥


 耳を澄ませるとやはり息遣いが荒く私の名前を呼んで何かが動いてる音が聞こえる、というか聞いているともう何をしているのか私は分かってしまったので、それでやめておけばいいのだが、一応すべて終わるまで聞いてしまった。


 というかあいつ私が元男と聞いてなんか引いてなかっただろうか、ううむ‥まぁ思春期男子ならこれくらい普通なのかもしれない、見た目は可愛いのだから心というよりはそっちかもしれないのでもうこれ以上は考えないようにしておこう



 しておこう‥としたけれど、さっきのことが頭から離れないので余計眠れなくなってしまった。

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