5話
よくダンジョンで生活をする‥なんていうラノベを見たりしていたけど、私なら1週間も耐えられない気がする。
時間感覚も狂ってきたし、なにより二人が守ってくれたりしてるから私はまだ大丈夫な方なのだろうけど、これも慣れ‥いや慣れたくないし、よくよく考えたらこの冒険が終わったらユウは一人で冒険に行くようになるだろうし関係ないのかもしれない
「あぁ~久しぶりに戦闘ばっかりだとさすがに疲れるな」
「怠けすぎてた報いよ、キリキリ働きなさい」
関係‥ないのか、関係ないなんて言うと少し寂しく感じてしまうから不思議だ。
この旅が始まってからというもの、場違いな私だけ違和感を感じてしまう。二人はどう思ってるのだろうか、私がいなければ休憩所に行くのだって、ダンジョンに着くのだってもっと余裕をもっているのだろうし明らかに足手まといだろうに
いけないネガティブになってしまってる気がする。もっと役に立てるように頑張らないとな
「そろそろ休もうか」
「一応魔物除けの香焚いておくけど安心はしないでね」
そんなものあるんだ、過信は禁物みたいだけど嗅覚が鋭い魔物にはそこそこ有用らしい
「トウカはどうする?今日も3番目にする?」
「んー‥」
「まだ元気がありそうなら最初起きておく?」
「そうする‥」
嫌なこと考えていたからか、眠気よりも役に立つこと考えてしまって思わず言ってしまった。
「ごめんな、何かあったらすぐ起こしてな」
「分かった‥」
青い子は何も話してないなと思ってみてみるとすでに寝息を立てていた。
ユウも剣を握ったまま目をつぶって動かなくなってしまったし、集中して見張りをするようにしないと
そうして、二人の様子を見ながら周りに注意してると、のそのそと生き物が動く音が聞こえた。
音がした方を注意深く見てると、四足歩行の犬とも猫とも言えない魔物が現れる。たしか何度かユウが斬ったり青い子の魔法で倒してた魔物だ
こちらに気づいたのか威嚇なのか尻尾をびたんびたんと地面に打ち付けてる。
そんなに大きくないし、私がもらったナイフでも倒せるかもしれない‥いや私は弱いんだ早く二人を起こさないと‥
‥‥いや私がやってみよう、二人とも疲れ切ってるだろうし、私一人で魔物一匹倒せるくらいならユウの過保護も少しはマシになるかもしれない
決意してから私はナイフを抜き魔物と対峙する。急所を一突きすれば何とかなるはずだ1匹しかいないのだから
こういう時相手の動きを待ってからやった方がいいのか、私から相手に向かった方がいいのか‥そう考えていたら魔物の方がこちらに走ってきて、予想以上に早くてナイフを思わず適当に振り、運が良かったのだろう魔物の手を斬れたらしく床にどてっと落ちて残りの手足で逃げようともがいている。
「や、やった‥!」
あとはとどめを刺せば私の勝ちだ。本当に運が良かった、もしナイフが当たってなかったら引っかかれたり噛まれたりしたのかもしれない
なにはともあれこれで終わりだ。私はナイフを振り上げて魔物に突き刺す。
魔物とはいえ生き物を殺したという感触がどうも嫌な感じだ‥考え続けると罪悪感で締め付けられそうなので考えないようにしないと、大丈夫、魔物も私の命を狙っていたのだ。
しかし、いざ魔物を一匹倒したとなると二人の役に少しは立てたのではないだろうか、疲れていただろうから多くでも休ませてあげたかった
どっちから起こすべきなのか聞くのを忘れていたけど、青い子の方が疲れていそうかなと思いユウを先に起こそうと思う。そろそろいいのかな?どうにも一戦してからまだ興奮しているのかそわそわしてしまう。
すこし落ち着こう、深呼吸して‥‥よし!ユウを起こそうと体を揺する。
「ん‥おはようトウカ」
「おは!‥よう‥」
「んお!?なんか元気だな‥ってその血どうした?」
魔物の返り血を浴びてしまっていたのか、ユウが私についてる血を見て怪訝な顔をして見てきた。
「頑張った‥!」
「頑張ったって、何考えてるんだ」
私の戦果でもある魔物の方を指して、ユウがそれを見て顔をしかめている。それに言葉も苛立っているのか少し荒い気がする。
「トウカ、もうこんなことしなくていいからな」
「‥‥なんで?」
「俺を起こせばよかっただろ、どうして起こさなかったんだ?」
「‥どうしてって、疲れてるだろうと‥思ったから」
「疲れてるって、それで負けてたらどうするんだ?疲れてるからってトウカがやられたら意味がないだろ」
たしかに私が負けていたら、私と魔物がやりあってても起きてこなかったのだからそのまま寝込みを襲われるなんてことがあったかもしれない‥
「トウカ、頑張るんなら見張っていて魔物がいたら起こしてくれ」
「うん‥」
「絶対にするなよ?戦わせるためにトウカがいるわけじゃないんだからな」
「‥わかったってば!」
せっかく魔物を倒したのに怒られてしまった。言いたいことは分かるけど、少しくらいほめてほしかった。
「そうか、もう寝ていいから休んでいいぞ」
「‥うん」
そう言って、恐らく返り血を拭けという意味合いなのだろう布も渡された。
ユウの方を見ると不機嫌なのか、足を揺すってる。そんなに怒らなくてもいいのではないだろうか、私が弱いのは分かるけど‥いや命がかかってるのだからもう少し反省しなきゃ‥
血をぬぐい終わってから寝転ぶと、さっきのことが気になって眠れない
とりあえず眠ろうと目をつぶってしばらくすると青い子が起きたのか起き上がる布の擦れる音が聞こえる。
「ユウ、あなたさっきの言い方少しきつかったわ」
「起きてたのか?そりゃあきつくもなるだろう?」
「けどあの子は素人なのよ、初めてのことで頑張ろうとするのはよくあることだわ」
「それでも‥」
「別にユウが良いならそれでも構わないけど、彼女私たちのこと気にかけて頑張ったそうなんだから一応褒めてもあげなさいね」
「‥あいつは戦わなくていいんだよ」
青い子が私のフォローを入れてくれてるのだろうけど、やはり二人からしたら私なんて戦力外で役に立たないから、何もしてほしくないのかもしれない
出来ることあれば頑張らないとな‥魔物ももう少し楽に倒せるところを二人に見せたら見直してくれるかもしれない‥
せめてこの冒険で、ユウに私が一人でも大丈夫なところを見せることができれば安心させて上げれるんだろうな
いつの間にか眠ってしまってたのか目が覚めると、青い子が見張ってユウが眠っていた。
「あら?起きたのねトウカ」
「うん‥」
「あそこの魔物トウカが倒したみたいね、おめでとう」
「ありがとう?」
いまいちこの子が何を考えているかは分からない、眠る前は私のフォローを入れてくれてたけど青い子もやはり怒ってはいるのかもしれない、下手をしたら自分の命も危なかったのだから
「怒ってるか気になってるの?」
なぜばれたのか‥
「別に私は怒ってないわよ、初心者の冒険者が頑張るって言ったら一人で魔物に突っ込むなんてよくある話だからね」
「そうなの‥?」
「そうよ、だから反省してるならそれでいいのよ」
ぱっと見私と同じくらいの見た目だから何歳なのか分からないけど、場数を相当踏んでいるということなのだろう。
「‥私が頑張れば‥二人の負担減るかなって」
「んー?トウカ貴方勘違いしてるわ」
「勘違い‥?」
「貴方冒険者じゃないのだから頑張らなくていいのよ」
「‥?」
「商人だからって戦えるわけじゃないけど魔物がいる道を通ることはあるわ、けど彼らは戦わないでしょ?それと同じよ」
「けど私‥奴隷だし」
「奴隷だとしても同じでしょ、戦えない奴隷だっているわ、そういう奴隷を戦わせる人もいるけどユウは貴方に戦ってほしくないみたいよ?」
だからって何もしないのは違うと思うけど、私が間違っているのだろうか‥そりゃあ商人は戦わないだろうし、奴隷だって戦わない人もいるかもしれないけど、戦わなければいけないときもあるのではないだろうか
「貴方‥結構分かりやすいわね」
「なにが‥?」
「考えてることよ、どうせ戦う時もあるとか思ってるんでしょ?」
だから何故ばれてるのだ
「そんなに奴隷のこと気にしてるならご主人様の言うことを素直に聞いてあげなさいね」
優しい声で私をなだめるかのように言う‥いまいち納得できてないのだろう、自分のことながら分かるはずなのに私でも何かできるんじゃと妙に落ち着かない
「なにも、役に立とうとするのが戦うことだけとは限らないでしょ?それ以外に自分に何ができるのか考えてみなさい」
「それ以外‥?」
「ずっと後ろで見てたら分かると思うけど、私なんか魔法打ったあとへとへとで基本的にはユウと交代するように魔物を倒していたでしょ?」
たしかに交代して倒していた、たまに魔法の方が有効な魔物だからと言ってそのまま青い子が連戦するときもあったけど
「今回は二人で、しかも戦闘職二人だけのパーティだからこんな戦いしてるけど、本当は二人で役割を分けて戦うの誘導や牽制、そうやって連携して魔物を倒すの」
ゲームとかである、盾役も回復職もいないし、火力役二人なら今回みたいにごりごり押すかと思ったけど、青い子の言い分では戦闘職二人だけであっても連携を取るらしい
「ただ私はそういうの苦手だからユウに頼んでこういう戦いをしているの、これが私にできること」
連携を取るのが苦手、だからごり押すのができること、いまいちわからない‥
「魔法使いっていうのはね、範囲が広いのよ、それを魔物だけに当てて倒すなんて相当技術が必要なの、だから私みたいに技術がない魔法使いは基本冒険者なんてせず、戦争にでも行くわ」
戦争なら味方に当たってもばれないからねと呟いて、顔を伏せる。なにか悪い思い出でもあるのかもしれない
「だから自分のできること‥探して見なさい」
私にできること‥何があるんだろう。
戦わないってなれば私にできることなんて何もない気がする。家にいても寝ることくらいしかすることなかったし
役に‥役に立たないと
「なんか勘違いしてそうね‥そろそろユウを起こしていきましょう?今回は初めてなのだから先輩の言うことをとりあえず聞いてみること、いいわね?」
「うん‥」
私ができること‥やらないと