幕間 雑談1
「トウカ、今日は一緒に過ごそう」
いつも一緒にすごしているじゃないかと思うが、なにか用事でもあるのかもしれない
「別に‥いいけど、何かするの?」
「あ、えと一緒に家の中で過ごそうってこと」
どうやら今日は仕事をしないで家でぐーたらしようってことなのか、それなら得意分野である。
ユウが買い物で出かけた時とか、家でいつも何もせずに部屋で寝るか居間で椅子に座って過ごしているから余裕である。
「トウカって昔からそんな感じなの?」
「意味が分からない‥」
「なんていえばいいんだろうか、普段からぼーっとしてるの?」
「別に‥ぼーっとしてないけど?」
「あ、うん、なんかごめん」
一体何だったのか‥ユウは私のことをまっすぐ見てきて「う~ん」と悩み始めた。
「じゃあトウカは一人の時はなにかしてたりするの?」
「別に‥」
何かしてるかと聞かれると何もしてないというか、テレビゲームやパソコンもないし家にいてもすることないのだから、むしろこれで私が「一人でかくれんぼしてるの!」とか言い出したらどうするつもりなんだろうか
「何もしてないと暇じゃない?」
「別に‥」
暇だと言ったら何か持ってきてくれるのだろうか、けど持ってこられても一人で遊ぶなんてそれこそ空しくなるだけだと思うのでむしろやめてもらいたい
「トウカは何か欲しいものとかない?」
「別に‥」
お風呂は先日用意してもらえたし、今は特に欲しいものはない、というかここでパソコンを仮に出してもらえてもインターネットが使えないからどうしようもないのでやはり特にない
「普段トウカは俺になにも聞いてこないけど、何か聞いてみたいこととかない?」
「別に‥」
聞きたいことって言われても、特にない、以前鑑定で私を見てたとか言ったのが少し気になると言えば気になるけど、詳しいところまで見れないとか言ってたから聞いても大したことないのだろうと思う。
「会話が続かない‥‥」
「えと‥ごめん」
「いやトウカが謝ることじゃないんだ!むしろごめんな」
まじで急にどうしたのか、言いたいことがあるならできればはっきり言ってほしい、遠回しに言われても俺は馬鹿なので分からない。
ユウはまた「ん~ん~」と悩み始めたので、もしかしたら私と楽しい会話でもしたいのかもしれない、しかし友達なんかいたことなかった私からしたら何話していいのか分からない‥
たしかこういうときは好きなものの話をするとこからだと聞いたことがある気がする。
「ユウ‥」
「っ!なにかなトウカ」
「私‥ホットケーキが好き」
「そうなの?」
「うん‥」
思ったよりも会話が弾まなくて大変だ‥というか会話をしたかったんじゃないのかユウはどうしたいのか
「ごめん‥ホットケーキの作り方が分からなくて」
「別に‥」
どうして作る話になったんだろうか‥食べたいと言えば食べたいので作り方くらいなら教えてあげるけど材料がそろうか分からない、また今度聞いてみようかな
しかしここまで話が合わないともしかしたらユウとは気が合わないのかもしれない。
「トウカは俺と一緒にいて楽しいか?」
急に重たいな、別に楽しくないとも楽しいとも言えないけど‥いやでも、こんな生活も別に悪くないなと思ってるし、それは楽しいのではないだろうか?
「トウカ?」
「別に‥」
「そ、そっか‥‥」
「楽しいと思う‥」
「そ、そっか!!」
しょんぼりした顔から満面の笑顔まで1秒とかかっていなかった、こいつの表情筋鍛えられすぎだろう‥
ユウは「まさか別にからそういう変化があるとは」とニコニコしながら呟いて昼食の準備を始めた。もうそんな時間になってしまったのか、思ったより時間経っていたんだな。
昼食を終えた後、またユウが「話をしよう」と言いだした。まだするのかこれ
「俺が作るごはん、トウカの舌に合ってるかな?」
「別に‥」
「別に?」
「普通」
「なるほど普通か」
何が面白いのか朝の時とは違ってうんうんと納得して満足そうになっている。
「トウカ試しに元気な感じで話してみてくれない?」
「別に‥」
「別に?」
「元気だけど‥」
「な、なるほど元気なのか」
何かの心理テストでもしてるのか、今回は微妙な反応が返ってきた。
「アニメでさ、アイドルの子がやってるみたいなことやってみてもらえない?」
「なんで‥?」
「あ、違うパターンになった‥えと、俺が見たいからなんだけど」
どうして急にみたくなったのか、あれかなホームシックにでもなったのかもしれない、私がホットケーキとか言ったからだろうか、しかしアイドルが出てくるアニメとかあまり見てなかったのでよくわからない
ここで断るのもいいんだろうけど、こいつはロリコンだし今の私は見た目がロリと言えるだろうから何かのキャラと重ねているのかもしれない
「どう‥言ってほしいの?」
「言ってくれるの!?」
「急に顔近づけないで気持ち悪い」
「あ、はい‥えと俺もセリフそこまで覚えてないんだよな」
覚えてないのになぜ言わせようとしたんだ。
「ユウ‥」
「ん?なに?」
「元気注入‥!」
「なにそれ?」
「‥‥」
せっかく恥ずかしいの耐えてやったのに、こいつ殴りたい
「あ!!アイドルかそれ、ごめん気づかなくて!!」
「もう‥いい‥」
「ごめん!ごめんて!」
「もう寝る‥」
後ろでユウが「まじでごめん本当ごめん!」と言ってるが、確実に滑ったあの空気に耐えられる気がしないので、せめて一日放っておいてほしい
とはいえ明日何かからかわれるかもしれないと考えると嫌だなと思いながらも、ベッドに寝転がると睡魔が迫ってきた。