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幕間 お風呂

 朝になって私は寝ぐせもそのままで居間に降りて、ユウがいつもの朝食を作るまで椅子に座って待つ。


「おはようトウカ」

「‥‥おはよう」


 俺‥いや私が俺って言うと、やたら笑ってない目がおれ‥いや私を射殺すかのような冷たい視線に変わるのであまりの怖さに面倒くさいながらも心の中でも私で覚えようと思ったのだけど、すごい違和感を感じる‥‥


「今日はどこか出かけてみるかな、行きたいところとかトウカはある?」

「‥‥ない‥」

「まぁそう言うとは思ったよ」


 何が楽しいのかニヤニヤ笑っている、てかそう言うってわかってるなら聞くなよ


「何かあればトウカも意見ていうか、色々言っていいんだぞ?」

「色々って言われても‥本当に何もないんだけど」

「それじゃあ今の生活に不満なこととかは?」

「ん~‥」


 すっかり奴隷なの忘れそうになるくらい、ユウがなんでもしてくれるから助かっている。ほかに不満なこととかなにかあったかなと悩むと、言っていいのか分からないけど一つ一応あるにはある‥


「風呂‥」

「え?」

「おr‥私、お風呂入りたい」

「お風呂か‥」


 一瞬すごい視線になりかけたユウだが、私がお風呂というと真面目に考え始めた。

 やはり無理なのだろうか、水は井戸水があるとしても浴槽に入れるの大変だろうし、温めるのも難しいだろうし


「別に無理なら――」

「いや、ごめんごめん俺がシャワーで済ませる派だったからそういえば困ってなかったなって思ってさ、なんとかしてみるよ」


 そう言って「心当たりもあるからさ」と言って買い物に行かないと行けないらしいので、外着に着替えて一緒に行くことになった。






 歩きながらどういう心当たりなのか聞いてみると


「俺のカバンてマジックアイテムだろ?あれって加工が難しいらしいから高いんだけど別に俺だけの特別なアイテムとかじゃなくて、魔道具専門店とかにあったりするんだよ」

「ユウって結構お金あるよね‥」

「別に無尽蔵にはないけどな」

「今買おうとしてるのも‥高いんじゃないの?」

「いや、消耗品とかだから別に高くはないかな?」


 ちなみに今回買おうとしてるのは付与石という魔術師が何かしらの属性を付与したエンチャントストーンとか言われた。さっぱりわからん


 ユウ先生曰く、火の付与石なら石が温かかったり熱かったりするし、水の付与石なら水が湧き出るらしい。さらに言うなれば火お付与石なら火石、水なら水石と呼ぶらしい


「それって‥すごいんじゃないの?」

「凄いといえば凄いけど、消耗品だし、それに使い道に困るものもあるからな。火石なんかは冬にはカイロの代わりに買う人もいるらしいけど」


 買っても貴族くらいじゃないかなとのことらしい、私的には寒いのはあまり好きではないので是非ほしいけど、お風呂を作ってくれるだけでもうれしいのであまり贅沢は言わないようにしよう。


 そして若干怪しいというよりは禍々しいような店に着いた。


「えと‥ここなの?」

「中々良い雰囲気だろ?」


 こいつはあれだ、路地裏のラーメン屋さんとかで隠れた名店だからって入りそうなタイプだと納得して、お風呂のためを思って一緒に店の中に入る。


 外装よりは比較的マシな内装でちゃんと棚とかに綺麗に陳列されてあったりした。


 棚にある物を見ても何に使うのか分からないけど宝石のような輝きを放ってるものから、ジャムのような液体もある。明らかに毒そうなものもあるから触らないようにしないと


「エイラさん火石ありますか?」

「あら、ユウちゃん珍しいわね」


 なんかナイスバディな人が出てきた。元の私なら確実に声をかけられないような人だ‥まぁ誰が相手でも声かけれないかもしれないけど


「それに一人じゃない上に、その子貴方の奴隷なの?」

「別に好きで一人じゃないですしね、可愛いでしょ?」

「ん~、別にあたしは構わないけどユウちゃんその子をあまり他のお店に入れたりしない方がいいわよ?」

「え?そうなんですか?可愛いからですか?」

「まぁ、可愛いのは分かるけど、その子性奴隷よね?」

「えと、それは‥」


 なんだか、ユウと一緒に行動してて初めて反応された気がするので少し嬉しいが、なんだか忠告みたいなことをしてるので優しい人なのかもしれない


「違うのかしら?どんな用途なのかは知らないけど性奴隷を店の中に入れると嫌がる人もいるから気を付けなさい」

「あ、ありがとうございますエイラさん」

「それで火石だったわね、いくらほど欲しいの?」

「お風呂を作ろうかと思いまして」


 そう言うと「なるほどね」と言い残して、カウンター奥の箱から小袋を持ってユウもナイスバディに――


「そこのお嬢ちゃん、あたしのことはエイラって呼んでいいからね」


 めちゃくちゃびっくりした。私が勝手にナイスバディと呼ぼうとしてたのを察したのか、てか心を読まれたのかと思って焦る。


「エイ‥ラ‥さん‥」

「そう、貴方人の名前覚えなさそうな気がしたから」


 覚える気がないというのもあるけど、人の名前覚えるのが苦手なこと図星を突かれて心臓に悪い‥この人


「あはは、エイラさんさすがにトウカも人の名前くらい覚えますよ」

「そうなの?それはごめんなさいね」

「本当ですよ」


 ごめん、なんかごめん‥

 しかし性奴隷が嫌がられるとは知らなかったので良いことを知った。いや私は性奴隷じゃないから別に関係ないのかもしれないけど、それならそうと奴隷商も教えてくれればよかったのになぜ教えてくれなかっ――


「何か知りたそうね?トウカちゃん」

「うぇ‥‥っ!」

「分からないこと、あるんでしょう?」


 怖い怖い何この人、本当に心読めるんじゃないのだろうか、た、試してみるか‥ばーかばーか!


「先に言っておくけど心は分からないわ、恐らく罵倒されてるんでしょうけどね」

「やっぱり読めてる‥!」

「貴方、分かりやすいってよく言われないかしら?」


 言われたことないから分からないし、少なくともユウには何も言われたことない、そんな分かりやすい表情してるのかな


「エイラさんすごいですね!俺なにもわかんないですよ」

「ユウちゃん‥」


 エイラさんが少し呆れた顔をしながら自分の耳を指さす、エイラさんの耳に何かついてるわけもなく、何を言いたいのか分からない


「耳‥?耳‥あ!そういうことかエイラさん!」


 何に気づいたのかユウは何か分かったらしくホクホク顔である。私だけ分からない‥


「ユウ‥なに?」

「いや、これは教えてもタメにならない気がするから秘密だよ」


 うぜえこいつ、絶対タメになるならないじゃなくからかう気だ


 弱みを握られたみたいでいやな気分である。耳‥まさか俺の耳が動くのか?と思って自分の耳を触ってみたけど何か分かるわけもなく分からないままである。


 そうしているうちに買い物を済ませたのか「行こうか」ってユウが出口に向かう。

 結局質問とか出来てないなって思ってついて行こうとすると


「トウカちゃん、困ったらいつでも来なさい、あたしでよかったら‥だけどね」


 そう言ってくれて嬉しくなった。


「はい‥困ったら来ます」


 お店の外観が悪かったのでイメージ悪く見てしまったけど、エイラさんは良い人そうで良かった。


 これで「困ったので来ました!」って来た瞬間奴隷商に連れてかれたら泣くだろうけど‥


「買うものって‥これだけなの?」

「そうだね、あとは家にあるので何とかなると思うよ」


 実は、前に一度だけお風呂入ろうとかも考えていたらしく、中途半端に作りかけていたものや、浴槽の代わりになるものがあるらしい


 家に戻ると「こっちだよ」と言って庭の方に行くと隅のほうにある小屋に来て中を開けると色んなものが散らばっていて綺麗とは言い難い


「ここ‥倉庫?」

「そうだよ、なんか節約してた時からあまり使ってないから結構汚くなってるけどね」

「節約って‥何か作っていたの?」

「椅子とかテーブルとか作ったりしてたけど、本職の人と比べたら全然子供の作品でね、まぁ壊れたから結局購入したんだけどね」


 別に今家にある家具はユウが作ったわけではないらしい、それを聞いた後だと風呂も手作りなのだろうか、ていうか壊れたって聞くとそれだけで期待できないのだけど本当に大丈夫だろうか


「あった!これこれ」


 でかい釜を取り出してきた。けどユウが入ると少しだけ小さいのかな?私のサイズだとちょうどよいというかむしろ収まりすぎるくらいの


「‥‥てかこれ何に使う予定で作ったものなの?」

「えと、なんていうか錬金術とかできるかなって思ってさ」

「錬金術って、そういうこともできるの‥?ここ」

「いや、一応魔術師の分類になるらしいんだけど、良く聞く鉛が金になるようなものじゃなくて薬とかを作ろうとしてたんだよ」


 それじゃあエイラさんもこういう釜を使ってるんだと思ったら、そうでもないらしい


「えと‥‥これは俺が勝手にこんな感じなんだろうなって勢いでやったもので‥」


 つまり全く関係ないらしい、ていうか調べもしないで何をしてるんだと思ったけど、気持ちが分からないこともないので追及はしない


「これを‥お風呂にするってことでいいの?」

「そうだね、さすがに鉄釜だと熱くて火傷しちゃうだろうから簀の子とかで補強すれば入れると思うよ」


 そうしてユウは私のためにお風呂作成するからって言って、私も「あれ取って」「これ取って」「水少し持ってきてもらえる?」とかと手伝ったりしていたら日も沈んできた。


 日も沈みかける頃合いに差し掛かるころ、ある程度できたのかパッと見は分からないけど釜の中が熱を持った釜で火傷しない等になっていた。


「後は水を入れて火石を少量底に沈めればオッケーかな?」

「これって‥中に入れた水‥捨てたりとかできないんじゃないの?」

「さすがに毎日入るにしても井戸から引き上げるのは疲れちゃうから、使ったあとのお湯を再利用していこう」


 洗濯とか掃除とかに使おうということになった。


 私的には受け付け難い気もしたけど、どうせ洗濯するのも掃除もユウが勝手にするで良しとしよう




 井戸水をユウに入れてもらことにして、私がまた暇になったので、ここまでしてもらって何も返せないのは悪い気がするので、私なりにお返しということも含めて、料理作ってあげようとキッチンに行き色々見てみる。


 水を取りに来るくらいしか真面目に見てなかったので、少し楽しい、こう見えて男だったときは料理少し得意だったのでユウに美味しいと言わせようと思う。


 火とかどうするんだろうと今更ながらに思ったけど、キッチンでも火石を使うのか、ユウが使っていた赤い石の欠片がいくつかあるのを見て、それをフライパンもどきの下に敷いて、何も起こらない‥

 そういえば使い方分からなかった‥‥


 フライパンで適当に叩いたら火が一瞬噴き出て焦ったけどすぐに収まってフライパンを熱し始めたので、叩くのが正解だったのかな?


 あとはよくわからない野菜を炒めたり、調味料?っぽいものを一応舐めて味を確認しつつ中に入れていく、味だけは比較的マシそうなものが出来上がっていく


 ちなみに冷蔵庫が一応ある、冷凍庫はないけど、氷石なるものがきっと中に入っていたんだなと今では納得してるけど、最初見たときはユウのチート道具なのかと思っていた。


 そうしてると、ユウが終わったのか倉庫から帰ってきて料理してる私を見て驚いていた。


「え、トウカって料理できたの?」

「それくらい‥できる」



 そして「メシマズヒロインかもしれん‥」とか呟いていた。失礼な‥あとヒロインじゃない

 皿に盛り付けて(盛り付けるほど手が込んだものでないけど)それを二人で一緒に食べた。



「普通に美味しいな」

「どれだけ失礼なの‥」

「ただ油使ってないからなのか‥健康的だな‥」

「油どれか‥分からなかったから‥」


 今度一緒に作ろうって笑顔で行ってきたので、たまにならいいかもしれない


「そういえばお風呂は‥どうなったの?」

「あぁ、温まるまで時間かかるだろうと思ったけど、そろそろいいかもな、そろそろ行っていいと思うよ」

「行って‥来る‥!」


 楽しみにしていたのでるんるんと向かおうとすると「着替えも持って行けよ?」と言われて部屋に一旦戻る。べ、べつに忘れていたわけではない‥忘れてたけど‥










「ふぇぇぇぇ」


 思わず感嘆のため息である。最高に気持ちが良い


 やはり日本人は風呂である。異世界もののラノベを見て、お風呂に入りたくて狂ってしまう人の気持ちをここまで理解できてしまうとは‥


 これも一重にユウのおかげである。


 本当に優しくされてる、この世界でどうなることかとも思ったけど、ユウと会ってから良い事尽くめで逆に不安になる。


 我儘ばかりでいつか捨てられないとも限らないので、頑張らないとと思うけど、思ってるだけでいつも何もしてないので何かお返しを考えないといけない



 何をされたらあいつは喜ぶかな‥



 長湯してもあれなので、上がってユウのところにお風呂あがったことを報告したら「俺も久しぶりに入るかな」と言って準備してたのか着替えをすぐに持って倉庫に向かっていった。


 私は部屋で寝ようかなと思って、廊下に出るとまだ玄関のところにいたのか声が聞こえてきた。


「残り湯‥トウカの残り湯‥」


 ‥‥もしかしたら私が何かしなくても勝手に喜んでいるんじゃないかなとさっきまで考えていたお返しについて頭の隅に追いやって部屋で寝ることにした。

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