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10話

「トウカ下がってろ!すぐに終わらせるから」




 そう言うと同時に持っていた剣で魔物に対して振るうが、魔物も危険と思ったのか大きく後退して威嚇のような『ぐるぐる』と鳴いている。


 すると、急にユウが何かしらのオーラみたいなものを纏い凄まじい速度で魔物を一線し真っ二つに引き裂いた。


「ふぅ、大丈夫か!?トウカ」



 一目散に俺のところに駆けつけてきてくれて、涙とか鼻水とかぐちゃぐちゃになった顔をハンカチで拭いてくれて抱きしめて「大丈夫だよ、もう大丈夫」と背中を叩いてくれる。


「ぇぐ‥うぅ‥」

「あのさ、こんな時に言うことじゃないかもしれないけど」

「うぅ‥‥?」

「やっぱお前可愛いよな」


 安心とか色々していたせいで。今は怒るに怒れないので服の裾を掴んで引っ張っておく


「帰ろうか」

「ぅん‥」


 そして帰ろうと歩こうとしたと同時にこの森に来た最初の目的を思い出して


「まって‥!ユウ、この森に子供がいるかもしれないの」


 もしかしたら怒られるかもしれないと思ったけど、すぐに探しに行かないと、こんな魔物がいる森に一人なんて怖くて仕方ないだろうとユウを急かすのだが、ユウも俺の言葉を聞いてからバツが悪そうな顔になり



「えと、そのことなんだけ――」

「早くしないと‥!」

「トウカ、お前が森に行ってすぐにゴンは帰ってきたそうだから安心していいよ」

「ふぇ‥‥?」


「俺が村に戻った時には普通にいたし、むしろ子供たちがお姉ちゃんが森の中に入ったってすごい心配していたぞ?」


 つまりどういうことかと呆然としてしまったが、俺がもう少し村に残っていればこんなことにはならなかったということである。


 いや、何事もなくてよかったと言えばよかったけどとても複雑な気分になる。


「トウカって普段何考えてるかわかんないけど、案外天然だよな」

「だ。だって迷子になったって‥」

「お前が迷子になってどうするよ‥というかあれだ、一人で突っ走るとか危ないだろ」

「子供‥見つから‥なくて‥」

「はいはい、もう一人になるなよ?」

「‥ごめんなさい」




 いつもの笑顔がそこにあって、少し、少しだけ心が温かくなった気がした。








 村に戻ると、もう夜も襲いらしくみんな家の中らしくそのまま宿屋に戻る。


 もしかしたら俺がいなくて村のみんなが心配してるとかそんなことがあるかもしれないとも思ったけど、ユウにしか知らないのか、宿に戻るとおばさんが俺の泣いて腫れた目を見てユウに少し説教していた。


 部屋に戻り、体を拭くときユウが外に出ようとするので「一緒に体拭けばいいんじゃない?」と提案すると馬鹿か!と怒られた。


「別に‥男同士だし‥」

「今は!女の子だろ!‥‥まだ怖かったりするのか?」

「別に‥‥」



 否定しても、ユウが分かったような顔になり、大丈夫だよと頭をぽんぽん撫でてきてさすがにむかついたのでぽすっっとお腹を殴っておいた。


 そしてユウが部屋を出たので、体を拭いたりしているときに汗とかで体が寒かったりしていたのだが、下着を脱げば、漏らしていたという事実が俺に大打撃を与えた。


 これ‥‥荷物管理してるユウに渡さないといけないのか‥‥?

 上着とかといっしょに丸めても、服を洗ったりしてくれるのもユウなので洗うときにバレるのは確実である。


「トウカ着替えたか?」


 ドア越しにノックして聞いてくるユウにどう説明したものかと、思ったが、とりあえず上着と一緒に丸めてごまかそうと結論付けてやり過ごすことにした。


 そのあとはユウが入ってきて、ユウも体を拭いたりするため脱いだりしているときにじっくりと体を観察してみると、傷がところどころ見えて体もよく引き締まって細マッチョである。家では見る機会もなければ見る気も無かったため、こうしてみると、魔物とよく戦っているんだなと‥‥


「あの、トウカさん?そんなにマジマジと見られるとさすがに恥ずかしんですが?」

「み、みてないし‥‥」


 苦笑してからまた体を拭き始めたので、また見させてもらった。


 強いて感想を述べるとしたら元の俺より大きかったとだけ言っておこう。別に悔しいとかではないが‥‥







 疲れていたのか、あっさりと眠りこけてしまい、朝に起こされると軽い朝食をした後すぐに帰りの馬車に乗るとのこと


 宿をでると、ユウから聞いていたのか、子供たちが「あ!迷子の姉ちゃん!」などと言ってくるので、言い返してやろうとも思ったけど、ユウが「心配して探してくれた人にそんなこと言ったら駄目だろ」と諭していた。


「だって暗い森なんて危ないなんて子供でも知ってるのに‥」


 そんな風に男の子が言って、ユウが珍しく怒ってるのか「だ・め・だ・ろ?」と笑ってない目をしながら笑顔で男の子の頭をがしがしと撫でる。


 痛そうだなぁとか思いながら、その後子供に謝られたりしたが、今回は子供の言う通り俺の自業自得なので「いいよ」と言って時間になったんでユウと帰りの馬車に乗り込む。







「どうだった?トウカ、良い村だったろ?って言っても、まさか一人で森の中に行くとかいろいろあったから良い思い出にはならなかったかもしれないけど‥」


 たしかに良い思い出かと聞かれると散々な記憶ばかりになってしまったけど。


「森以外は‥良かった、というかユウて本当に強かったんだな‥」

「弱いと思ってたのか!?」

「護衛のとき魔物なんて余裕余裕って言ってたから‥」

「あぁ、それは俺にとっては余裕なのであってトウカが余裕なことにはならないからな?」



 実際、あの魔物の巨体を真っ二つにするとかいう人間辞めてそうな強さを披露されたわけだから、俺が冒険者になれないくらい弱いだけなのだろう。


「ユウって強いの?」

「んーそこそこかな?ギルドのランク=強さじゃないけどAランクだよ俺は」


 ギルドでの信頼、依頼実績、実力等々でF~Sまでのランクを付けているらしいのだが、ユウは上から二番目らしく、Sは人外魔境であるらしい。Aランクでも十分すごいんじゃないかと思うのだが、実力に関してだけ言えば、何かしらに特化していているのでなんともいえないのだとか


 たとえばダンジョンと言われる。魔物の洞窟専門もいれば、ユウのように野外での魔物を討伐専門という人もいるらしい、というか野外の魔物専門ということを初めてしった。前も言ったと思うがと前置きを入れていたので、俺が聞き逃していただけなのだろう。


「Sランクはなんでもできるってこと‥?」

「いや、あそこの人は一つに特化してはいるんだが‥それだけでなんでもこなすってことかな?」

「剣でダンジョンどーんてこと‥?」

「どーんて‥お前笑わせるな急に、まぁそうだなイメージは大体あってる」


 ダンジョンなんかは斥候役やパーティを組んで挑むのが基本だったりするらしいがそれを一人で余裕で行けるらしい


 昔よんだラノベとかではダンジョンと言えばお宝の山みたいなイメージしかない俺にはあまり分からなかったけど、「俺が1万人くらいいたら勝てるかどうかって感じだな」つまり相当強いらしいユウと他の人を比べたことがないから、実際更に困惑したけど。


「トウカあまり気にしないで聞いてほしいんだけどさ」

「‥なに?」

「村に行く時より素直になったな」


 非常にむかつく笑顔だったのでそれから次の休憩になるまで俺は窓を眺めて無視することにした。


「なんでだよ!褒め言葉だから!なんで怒ってるの!?」








 町に帰ってきて、ギルドの報告は明日にして今日は家で休もうかと言われたので、それは大丈夫なのかと聞いたら、緊急の依頼でもない限り期限以内に報告すれば大丈夫らしい


「ただいまーっと、それとトウカおかえり」


「‥一緒に帰ったからそれはいらないんじゃ‥?」


 まぁそう言わずに!と押されて俺も「ただいま‥おかえり」と言うと満足したのか食事の準備にむかった。


 あまり今まで意識してなかったけど、この家に帰ってきて、とても落ち着いた。


 自分でも知らない間に気を張っていたのか、緊張が解れてうとうとしてると、笑いながら「ご飯できたよ」なんてユウに起こされて、完食したら真剣な顔をしたユウが俺を見ていた。


「えと‥‥どうしたの?」

「いや、これから今回での反省会をするにあたって何から言うか考えていた」


 主に俺が悪い点しか思いつかなかったけど、俺が悪いだけなので嫌だとも言えないので素直に聞くことにする。


「まず、トウカに対してもっと魔物や森の説明不足、単独行動にしてしまったりとか済まないと思ってる」

「え‥?いや、俺が悪かったからむしろごめん‥」

「いや、これは俺が悪い、ただしトウカも一人で行動したこと、周りに相談しなかったこと、自分の弱さを自覚せずに楽観視したこと、とかかな」


 いくら子供が心配だったからなんて無謀だぞと言われて、それと同時にまた笑顔になって「これくらいかな?」と柔らかい雰囲気になった。


「あとは罰ゲームだな」

「どゆこと‥?」

「トウカ、お前一人称俺っていうの禁止な」

「どゆこと‥‥?」

「俺っ子もいいけどなんかトウカが俺って使うと違和感が拭えないんだよな」

「どゆこと‥‥‥?」

「あ、話し方はそのままでいいから、なんか無気力そうに話すその独特の雰囲気まじでストライクだわ」

「どゆこと‥‥‥‥?」


 これにて終了!と食器を片付け始めるユウの背中に対して俺はまたもや「どゆこと?」と言うが何もユウはご機嫌なのか鼻歌歌いながら洗い物を始めた。


 一応念のため従わなかったらどうなるか聞いてみようかとも思ったけど、まぁいつも通り無視してればいいかなと思った。


「じゃあ‥俺部屋に戻って寝るね」


 そう言い残して、部屋に戻ろうとするとユウの口から聞き捨てならない言葉が‥


「びしょびしょの下着‥‥」

「っ!?」

「なにかしら香る下着‥」

「嗅いだのか!?俺の下着嗅いだのか?!」


「なんのことかなぁ?まさかなんの説明もなしにカバンの中に漏らした下着入れられるとか‥う~んわかんないなぁ」


 アイテムバッグの中は別に時間が止まるとかでないため、別空間に保管してるらしいのだが、そこで他の荷物に臭いが移ったりしたなぁとか言われた。


「俺‥知らなかったし‥」

「聞こえないなぁ」

「俺――」

「き・こ・え・ないなぁ」

「私‥知らなかった‥」

「次から気を付けような?」

「うん‥‥」


 こんなことなら素直に漏らしてしまったこと言っておけば良かった‥


 なんというか迷惑ばかりかけてしまったし、申し訳ないことばかりだ。


「じゃあトウカ、寝るんだろ?おやすみ」


「うん‥おやすみ‥」


 ずっと迷惑かけてしまったし、せめて何かもう少しあってもいいだろと思ったので、振り返って俺はユウに






「ありがとう‥ご主人様」






 そしてこちらを見てユウが一瞬ぽかんと口を開けていたので、恥ずかしくなってしまった野で足早に俺は部屋に逃げ込む


 後ろの方で「急にあれは‥反則だろ」と聞こえた気がした。

*あとがき*

プロローグというか序章というか‥導入編のはずなのにかなり長引いてしまった気がします。

1章になる前に日常のなにかしらを少しだけ挟もうと思います。

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