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時止まりの令嬢と女嫌い侯爵  作者: 千山芽佳


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29/33

真犯人

 

  腕に怪我は負ったものの、一命を取り留めたメルディことルディ。

 メルディの偽者だとアランとレオハントに知られてしまったが、すぐに追い出されることはなく、怪我の治療までしてもらえた。

 そして今は、手を拘束され、王都から離れた森の中で監禁されていた。

 ルディはまんまと騙されて、誘拐されてしまった。

 ルディを誘拐したのは、ずっと彼女が探し求めたメルを誘拐した犯人だった。

 その犯人はというと、先程予定外の侵入者に対応するため、ルディを部屋に残し銃を持って階下に降りて行った。

 ルディは拘束された後ろ手でドアノブを回し、玄関ホールへと向かった。


「やめて、ラオネル」


 ルディは銃を構えるラオネルに声をかけた。

 玄関扉を開けたままで対峙していた男達は、階段から姿を現したルディの姿に驚いていた。


「なぜお前がここにいる!?」


 眉間に皺を刻み問いかけるラオネル。彼はここにルディが監禁されているのを知らずにやって来たのだ。

 それならラオネルは、別の目的でここへやって来たのだろう。その銃口を向けた男、事件の元凶となったメルを誘拐した犯人に引き金を引くためにーー。


「……」


 ルディは質問には答えず、チラリとラオネルの背後を確認した。

 ラオネルは一人のようだ。伯爵がいないのはどうしてだろうかと、疑問も浮かんだが今は考えている場合ではない。

 ルディが階段を下りていくと、外からの風が金の髪を巻き上げて行った。


 さあ、これで最後よ。


 覚悟を決めたルディは仮面を被り、二人の間に割り込むと、犯人を背に庇う様にラオネルの前に立ちはだかった。


「……何をしてる」

「この人を撃たれちゃ困るのよ」


 肩を竦め、妖艶な雰囲気を出して答える。


「俺を裏切るのか?」

「裏切るも何も、初めから私とあなたは仲間じゃないの。ごめんなさいね、ラオネル」


 苛立つ声を無視し、悪女のように微笑むルディ。

 ラオネルは更に眉間の皺を深く刻むと、銃口をルディに向けた。


「そいつはメルを誘拐した犯人だぞ!?」

「ええ、知っているわ。この人が私利私欲のためにメルを誘拐し、売り飛ばした男だってね」


 ラオネルの顔には隠すことなく戸惑いと疑問が浮かんでいた。そんなラオネルに自らの手の拘束を見せる。


「私も誘拐されたのよ? ひどくない? 彼は目的のために懲りずにまたメルディを利用しようとした。そうでしょう? リック」


 男爵家の次男であるリック=ダストンは、垂れ目にかかる前髪を掻き上げ、歪んだ口角を上げて不敵な笑みを浮かべた。


「ああそうだ。まさか君がこちら側についてくれるとは思わなかったよ。偽者のメルディ」

「どちらにつけばより甘い蜜を吸えるか、嗅覚には自信があるの」

「はは! いいねえ!」


 手を叩き何度も頷いてから、ルディを見下ろすように観察した。


「やはり君は偽者だったか。あまりに似ていたせいで最後まで分からなかったよ」


 リックはメルの火傷の痕を知らないので、確信が持てなかったようだ。

 メルディとして戻って来たルディに執拗に構っていたのはそういう探りもあったようだ。


「私が偽者か本物か、あなたにとっては些末なことでしょう?」

「はは! 偽者の方は理解が早くてよろしい! ああ。君が偽者でも本物でもどちらでも構わないさ。伯爵位がこの手に入るのならね!」

「……」


 リックの身勝手な動機にラオネルは舌打ちをし、ルディも一瞬表情が抜け落ちてしまう。

 やはりそういうことか。

 メルを陥れて得をする人間なんて、リックかルディくらいだ。

 リックは男爵家の次男で、彼が爵位を継ぐことは無い。

 それでも自尊心が強く地位に固執するリックは、自分が爵位を持つために一番の近道を思いついた。

 跡取りのいないロックベル家の一人娘、従妹のメルディとの結婚である。

 リックはさりげなく周囲にその案をちらつかせた。

 ロックベル家の血を分けた自分が後継者になる。

 ロックベル伯爵も一時はリックを婿にと考えた。

 しかし、それをメルディが強く拒絶した。


「聞き分けの悪い子供が、結婚は好きな人としたいとバカなことを言い出して、伯爵も娘に甘く我が儘を鵜呑みにし、この話は無かったことにすると言い出した。全く、あの親子はどうかしている!」


 いいや伯爵は、メルは、リックの本性に気付き、当主の器ではなかったから白紙にしたのだろう。


「だから二人に分からせてやった」


 リックの粘着質で耳障りな話し方に、つい嫌悪感が浮かぶ。


「メルディは当時、あなたに熱を上げていたんですよ? 知っていましたかクライシス卿」

「……」


 メルディは幼いながらに度々屋敷を訪ねる年上のラオネルに恋をしていた。

 まだ幼かったので具体的な話にはならなかったが、ラオネルはロックベル伯爵とも親しく、いつ婚約を結ばれてもおかしくはなかった。


「クライシス卿の名を借りて、メルディを屋敷の外に誘い出した。君の時と同じにね」


 ルディは苦虫を噛んだ顔をする。

 好意のある相手から話があるから一人で来るよう手紙をもらえば、疑う前に心が浮ついて正しい判断が出来なくなる。

 屋敷にいたメルがどうやって誘拐されたのか、ルディがたった今実証して見せた。


「こちらの顔を見られる前に気絶させ、平民の服に着替えさせた。ああ、少し薬も吸ってもらったな。余計なことを言われても困るからね。その後はレントンに売り飛ばして金にした。そこから裏ローチェの仲間に売られていくのは分かりきっていたので、あとは伯爵が僕を頼ってくるのを待つだけだった」


 自らの犯行を告白し、それから思い出したかのようにラオネルの方を向いた。


「先程あなたに聞かれた答えはイエスです。私は裏ローチェのメンバーにしてメルディを誘拐した犯人ですよ。彼女の純潔を奪い、その傲慢なプライドを粉々に砕いてやれば、夢見がちな少女ではいられなくなる。あとは傷ついたメルディを私が優しく受け入れてやればいい。もしくはそのまま命を落としてしまっても、ロックベル家は親類から養子をもらわなければならず、私がその役を買って出ればいい。そう、どちらでもよかった」


 伯爵位さえ、手に入れば――。


「イヴァンがお前に爵位を譲るとは思えんな」

「だけどメルディは伯爵家に戻って来た」


 その中身は偽者のルディであったが、伯爵家の事情を知らないリックの計画は狂っただろう。

 ルディの捕捉にリックは大袈裟に肩を落とし、ため息を溢した。


「ええ! 今更生きて戻って来られても迷惑なだけですよ!」


 リックの執着が再開した。


「こちらが譲歩して優しくしても君は頭ごなしに毛嫌いするだけ。最初は別人だと思わなかったから、記憶を失くしていると信じたメルディに大きな心で長期戦も覚悟で接していたんだ」


 しかしメルディに、今度はブライトン家との縁談の話が持ち上がった。

 リックは再び行動を起こさなければならなかった。


「しかも王太子とダンスを踊った!? 僕がどんなに焦ったか! 大事になっても構わないから君と対話して決めてもらおうと思ったんだ」

「服従か、死か……」


 リックの考えを推測して答える。リックは「正解」と満足な笑顔を向けた。


「理解のある人でよかった。私も罪を重ねることには心が痛むからね」

「そうかしら? 目的のためなら他人の命にまで気を配る必要はないでしょう?」

「ルディ!?」

「はは! 本当に偽者とは気が合いそうだ!」

「そうね。フレッド=ニーベルグもあなたが殺してくれたんでしょう?」


 メルディは核心の部分を一際大きな声でリックにぶつけた。


「フレッドもあなたの計画を邪魔する一人だった。だから殺した」

「……」


 リックの表情から笑顔は消え、警戒の色を宿した。


「あの人、私のことも裏でこそこそ調べて困っていたのよ」


 メルディの肯定的な言葉を聞いて、リックは警戒を解き、笑顔を取り戻した。


「フレッドは父親の事件から裏ローチェのメンバーを知り、今更メルディ誘拐事件を掘り起こして僕を脅してきたんだ」


『これ以上メルディには関わるな』


 フレッドの最後の言葉を聞いて、ルディの胸が締め付けられる。

 フレッドは裏ローチェのメンバーであるリックの罪と企みに気付いた。

 だからリックをリンザンパークに呼び出し、二人きりで話したいというリックの誘いに乗りボートに乗った。

 そこでフレッドは、自殺に見せかけて殺された。


「お前がニーベルグの息子を殺したのか」


 更に罪を重ねたリックにラオネルは呆れ、吐き捨てた。


「ええ。今回もうまく自殺と処理してもらえました。メルディの誘拐の時も、いつだって神は、運命は! 私の味方でいてくださる……。そして今、邪魔なあなたさえ消してしまえば――」

「!?」

「私の目的は達成される!」


 ラオネルは再び銃口をリックに向けようとするが、庇う様に立ちはだかったルディに当たりそうで撃つのを躊躇してしまう。

 逆にリックはルディを盾にし、銃を取り出すと躊躇うことなくラオネルに向けて発砲した。


「っ!」


 耳を劈く発砲音。

 その凶弾を受けたラオネルは血を流し床に倒れる――はずだった。


「お前ーー!」


 驚いているリックの腕を逸らし、銃口を壁に向けさせたのは、直前に隣で反応したルディだった。


「くそっ! 騙したな!」


 仲間だと思った相手に邪魔をされたリック。

 激昂してルディの胸ぐらを掴んだ。


「ルディ!」


 助けようと向かってきたラオネルに、リックは片腕で発砲した。

 銃弾は運悪くラオネルの拳銃に当たり、唯一の対抗武器が外へと吹き飛ばされてしまう。

 続けて撃った銃弾は、今度はラオネルの足元を掠め、その反動で後ろへ怯んでしまう。

 邪魔者を遠ざけたリックの怒りの矛先はルディへと向けられ、激情のままに襲い掛かった。

 胸ぐらを掴まれたルディは、つま先立ちで遠くにラオネルの叫び声を聞いていた。

 間近で銃声を聞いたせいで甲高い耳鳴りが酷く、はっきりと聞こえない。

 振り上げた腕が実にゆっくりに見えた。

 リックはルディに銃口を向けず、柄の部分で殴りかかろうとしていた。こんな状態でもまだ、爵位を捨てきれないのだろうか。

 銃を凶器として振り下ろすリックに、後ろ手で拘束されたままのルディは抵抗できない。

 それなのに、心は静かに凪いでいた。

 暴力を受け入れたわけでも、諦めたわけでもない。


『絶対、大丈夫だ。絶対、助ける』


 こんな時に思い出したのはアランの言葉。

 もちろん、都合よく彼が助けに来るはずがないと分かっている。

 それでも、後の事をアランになら託せるという安心があったから、不思議なほど冷静でいられた。


「ルディ!」


 ルディは衝撃のまま床に倒れこんだ。

 しかしルディを襲ったのは拳銃ではなく、リック自身だった。


「ぐっーー!」


 ルディに痛みはない。

 代わりにくぐもった声を発したリックが、ルディを巻き込んで床に倒れる。

 一体何が起こったのか、手を拘束されているので直ぐには起き上がれず状況が分からなかった。


「ひいっ!」


 隣で呻いていたリックの体が浮いて、ルディから引き剥がされる。

 その時やっと、何が起こったのかはっきりとこの目に映すことができた。

 鈍い音と共に顔面に拳を受けたリックは、外にまで投げ飛ばされた。

 たった今リックを投げ飛ばした男が直ぐにこちらに振り返る。

 長身の、ライトブラウンの髪にキャラメルの様な甘い瞳。ルディが会いたくて止まなかったアラン=ブライトン、その人が立っていた。


「……うそ」


 来てくれた。

 信じられない。

 こんなタイミングで助けに来るなんて、アランは本当に物語の王子様みたいだ。

 だけどよく見るとその姿に余裕はなく、キャラメル色の瞳は険しくいつもの甘さはない。

 息を切らしたアランは起き上がろうとしていたルディに駆け寄り、そのまま腕の中に引き寄せた。


「アラン様――」


 苦しいほどに抱きしめられる強さが心地いい。

 アランの体温と香りに安堵する。


「おい! あいつが逃げるぞ!」


 ラオネルの声に我に返ったルディは、リックがよろめきながら外に逃げようとしている姿を視界にとらえ、「アラン様!」と体を捩った。

 しかしアランはルディを抱きしめたまま離そうとしない。

 モゾモゾと動くルディの耳元で、「大丈夫」と口にした。

 その言葉の意味が直ぐに知れた。

 外には警備隊が待ち構えており、リックはあっけなく彼らに捕まった。

 ルディがほっと胸を撫で下ろすと、アランはゆっくりと体を離した。


「……」


 少し物寂しくもあったが、アランはルディの縄を解き、他に怪我をしていないか確認していった。

 肩の傷口が開き、服に滲んだ血の痕と拘束された縄の跡を見てアランは苦い顔をした。

 気に病むアランにルディは大丈夫だと伝えた。


「……直ぐに助けなくてごめん」


 ルディはアランが何に謝っているのか、分かっていたから大きく首を振った。

 アランと警備隊は少し前からここへ到着していた。

 突入の機会を窺っていたのだろうが、ルディ自身もあのタイミングで助けに来てくれたことに異論はない。

 ルディが肩を撃たれてから、いや、ルディが偽者だと知られてから、おそらくロックベル家には監視が付いていた。

 だから誘拐されても直ぐに駆けつけることが出来た。


「私が屋敷を抜け出したのを尾行していたんですよね?」

「うん。確かに君に護衛はつけてはいたけど、君がうまく警備隊を巻いたものだから行方を追えなかった」

「え?」


 それならばこの場所へはどうやって来たのか。


「リックに付けた監視からわかった」


 アランがリックにも監視をつけていた。

 それならば、リックの犯行と事件の全容を既に知ったことになる。


「……」


 ルディの目的も、アランを利用したことも知られてしまった。

 自然と体はアランから距離を取ろうと後ろへ下がる。

 そんなルディの手を掴んだアランは、真剣な目を向けた。


「逃げないで」


 手から伝わる体温に胸が締め付けられ、息をするのも苦しい。


「君に話があるんだ。だけどその前に、全てを終わらせよう」


 アランは手を繋いだまま、ルディを背に庇い守るようにリックの方へ向き直った。


「リック=ダストン! お前をフレッド=ニーベルグ殺害の罪で拘束する!」


 地面に押さえつけられて尚も抵抗するリックは、冷たく告げるアランを睨んだ。


「はい? 一体何のことを言われているのか――」


 誤魔化そうとするリックに、一際冷たい声でアランが言い放った。


「たった今お前が大きな声で自白しただろう。私含め外に待機していた警備隊が全て聞いていた」

「な――!」


 開け放たれた玄関と、自身を捕らえる警備隊に視線が泳ぐ。


「それとフレッドは死の直前に裏ローチェの会員の名を書き残していた。そこにはお前の名もはっきりとある。非人道的な行為も罪に問われるだろう」

「う、嘘だ!」

「協力関係にあったレントンが司法取引に応じ全て吐いた。生き証人もこちらは用意できている。人身売買の件も追って調べがつくだろう」


 畳みかける様に次々と突きつけられる証拠に、リックは口を開けたまま青ざめて固まってしまう。


「爵位を得て贅沢に暮らせるどころか、君は一生を牢獄で過ごす羽目になるだろう」


 アランの放った止めの言葉で、リックの正気は崩壊した。


「ふざ、ふざけるなー! なんで俺がこんな目にー! お前のせいだ! お前が、あいつも捕まえろ! あの女は偽者だ! 伯爵家を乗っ取ろうとしているぞ!」


 最後の悪あがきにルディを道連れにしようとするリック。


「黙れ! 彼女は――」


 庇うアランの言葉を手で制し、守られた背中から踏み出てリックに微笑んだ。

 アランが何を言おうとしているのか分かった。

 分かっていたからこそ止めた。


「偽者だなんて、嘘に決まっているでしょう?」

「な、なに!?」

「玄関が開いていたから外に警備隊が張っているのに気付いたの。すぐにあなたを嵌めることを思いついたわ。あなた、私が偽者だと信じて自ら罪をべらべら喋り出したわね。上手くいってよかったわ」


 表情の抜け落ちたリックに、ルディは仮面をつけて妖艶に微笑んだ。


「私はあなたに誘拐された後、上手く逃げ出して売られるこもは無かったの。記憶を失くして帰ってくるまでに時間はかかったけど、残念ながらあなたの作戦は、初めから失敗していたのよ……」


 そう、メルディの矜持は守り抜く。

 警備隊の目もある中でルディの素性を明かすことは出来ない。


「……連れて行ってくれ」


 アランの合図で警備隊はリックを馬車に収監する。

 静かな森の中に断末魔の様な悲鳴を響かせながら、リック=ダストンは牢獄へと旅立っていった。


「ルディ!?」


 これで終わったと思ったとたん、安堵から力が抜けてアランに支えてもらう。


「……お前、外に警備隊がいるのを知っていたのか」


 側に寄るラオネルに、ルディは片眉を上げて肯定した。


「お父……伯爵は?」


 ラオネルは銃を持ってリックを断罪しにやって来た。まさかルディが誘拐されているとは思ってもみなかっただろうが、ここで復讐を果たそうとしていたならば、なぜ伯爵がこの場にいないのだろう。


「あいつはお前が撃たれてから抜け殻のようになった。お前の怪我で相当堪えたんだろう、もう危険なことは出来ないと言い出した」

「え?」

「あいつは昔から中途半端なんだよ」

「……」


 それなら伯爵は、今屋敷にいるのだろうか。

 ふとルディは屋敷のことが気になった。夫人が誘拐されたルディを心配しているかもしれない。

 不安気なルディがアランに向き直る。

 アランは言わんとしていることを分かって先に答えてくれた。


「君が誘拐されたことはまだ伏せているよ。といっても私も直接ここへ来たから詳しい状況は分からないが、夫人にはこれ以上心の負担はかけたくなかったから、騒ぎは大きくしていない」


 よかった。安堵し、アランに感謝した。


「これで、終わったね」


 ニーベルグ、レントン、リック。

 これで全ての犯人が法の元に捕らえられ、粛清された。伯爵とラオネルの手を汚すことなく終わった。


 終わった?


 いいえ。まだ終わりではない。

 ここにもう一人、復讐の炎を消せない男がいる。


「アラン様、先に戻っていてくださいますか。どうしてもラオネルと、二人きりで話がしたいのです」


 視線は黒い服を纏ったラオネルから外すことなくアランにお願いした。


「……わかりました。後で話しましょう」


 アランは一度ラオネルに視線を移したあと、静かに扉を閉めて出て行った。


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