9・予感とパーティー
「空きがないのですか?」
俺は不吉な予感がした。
まるでお嬢様のように受付の人と話していた少女は、こちらに振り向く。
その少女は、金髪碧眼で少し幼い顔立ちをしている、服もピンクのドレスを着ていて、冒険者なんかが全く似合わないように見えるのだが・・・。
彼女が右手に持っていたのは・・・、俺の背よりもデカイ巨大な斧だった。
この先の展開は大体わかる。
「どうしたんですか?」
ザ・主人公のライトは何の躊躇いもなく声をかける。
「それが、今この宿は、空き部屋が無いんです。」
どうやら、昨日セラが借りた部屋が最後だったらしい、受付のお姉さんは申し訳無さそうに答えた。
「だったらセラの部屋で一泊してはどうですか?」
やはりそうなるか、そういえば俺がセラを誘うときもこんな感じだったな。
「いいんでしょうか」
「大丈夫だ。なあ、セラ」
「ええ、大丈夫よ。」
「ありがとうございます。このお礼はいつか必ず。」
「そんなのはいいよ。それよりも、ロビーで話さないか?」
今の所、全て俺の予想通りに話が進んでいる。少女が困っているのでライトが声をかけ、空き部屋がないのでセラの部屋で泊まる、となると、最終的にああなるだろう。
「わたしの名前は、ノーラ・マルフォードと言います、ノーラって読んでください。」
「僕はライト・エルティネスだ、よろしく。」
「私はセラ・マルフォードよ、よろしく。」
「俺はユウキ・クサナギだ、まあよろしく。」
「ノーラは冒険者なのかい?」
「はい、今日冒険者になりました。でも私を拾ってくれるパーティーがなくて、それで今、わたしを入れてくれるパーティーを探しているんです。」
「なら、僕達のパーティーに入らないか?ちょうど1人空いているんだ。」
予想通りだ、ただでさえ脳筋なパーティーに、アタッカーが入ってくる。これじゃ後衛は俺一人だ。
「いいんですか?ではそうさせていただきます。」
「大歓迎さ、せっかくパーティーが揃ったんだ、明日は、レッドドラゴンでも狩って、宴会でもしよう。」
パーティーに入ってしまった以上仕方がない、脳筋じゃないことを祈ろう。
あの武器を見る限りきっとアタッカーなんだろうが、俺は奇跡を信じて寝ることにした。