6・脅迫と勧誘
「紅蓮の炎よ、我が手に表れよ。ファイアボール」
俺は手から炎の玉を出した。
「なぜ盗賊なんてしている、教えてくれ」
俺はバカじゃないかと思うが、これしか思いつかなかった。
「あなたバカなの?炎の上級魔法なんて使ったら、防具を着てない私は確実に死ぬわ、あなた殺人犯になるつもり?」
「安心しろ、俺が持っている最悪なスキルのせいで、お前には1ダメージしか入らない。」
「嘘でしょ、そんなスキルあるわけが・・・」
俺はウィンドウを開き、ステータス画面を見せた。
「そんな・・・」
普通なら哀れむようにこちらを見るはずなんだが、彼女は恐れる目でこちらを見ていた。
やっぱり盗賊って言っても女の子なんだなー。
「お前にダメージは入らない、だが防具ではないその服は燃え尽きる、燃やされたくなければ・・・、教えてください。」
「なんで脅迫してるのに最後が敬語なのよ。」
だって女の子と何てあんまり話したこと無かったし、やっぱり女の子なんだなーって思うと恥ずかしくなってきてー。
そんなことを考えていると、さっきまで俺の手で激しく燃えていたファイアボールは、いつの間にか消えていた。
「はぁ、わかったわ、話してあげる。」
盗賊は、諦めたように過去の話を語り始めた。
「捨てられたの・・・親に。」
そういうことか、親に捨てられ仕方なくってことだな。
「私は3才ぐらいの時に親に捨てられた、そして毎日のように食べ物を求めて過ごしてきたの、冒険者になりたくてもそんなお金なんてない、だからこうやって盗むしかないの、私が生きるにはそうするしかないの、わかった?」
なんとか救ってやりたいのだが俺には最低所持金しか・・・、そう言えばこの最低所持金って武器代も入ってたよな、なら。
「なら、俺のパーティーに入ったらどうだ?」
「聞いてなかったの?お金がないの、今日食べる分もろくに食べられないの、冒険者なんてしたくてもできないのよ!」
「なら俺が初期のお金を出す、後はモンスターを倒して、お金を稼ぐだけだ、どうだ?」
「そんな見ず知らずのあなたにそんなこと・・」
「その見ず知らずの人間から金巻き上げようとしたのは誰だよ、俺のパーティーまだ二人しか居なくて今仲間を探しているんだ。どうだ?お互いにいい条件だと思わないか?」
まだライトには聞いていないがあいつのことだ、きっと大賛成するだろう。
「どうだ?仲間になってくれるか?」
「本当にいいの?」
「ああ。」
「本当に?」
「本当だ。」
「・・・わかったわ、その提案を飲む。私の名前はセラ・リスティール、よろしく」
「俺の名前はユウキ・クサナギ、よろしく」
宿に戻ってライトに説明すると、やはり大歓迎してくれた。