5・盗賊と拘束
「やっぱり不気味だなー」
宿への近道のため、俺は昨日の裏路地を通っている。
「また何か出るんじゃないか?」
そう呟いたとき、後で何かが動いた。
どうやら予感は当たっていたらしい、後ろに振り向くと、茶色のフードを被った人影が、こちらに向かって接近してきた。
おそらく盗賊であろう人影は、ナイフを持ちながら、俺の懐に切りかかってきた。
だが、俺は昨日までの俺ではない。そのナイフを華麗によける。
「鉄の鎖により敵を拘束せよ。バインド」
俺の周りに現れた魔方陣から4つの鎖が表れ、盗賊の両手足を拘束した。
バインドは、ライトが持ってきていた魔法の本に載っていた上級魔法だ。時間の都合上昨日はこれしか覚えられなかったが、いきなり役にたった。
にしても、本当に中二病みたいな呪文だ。恥ずかしいがちょっと格好いいと思っていると、一筋の風が吹いた。
そして、拘束していた盗賊のフードが取れっいかにもごつそうな男が・・・・・。
「女、の子?」
フードが取れると、そこには、俺と同じ年ぐらいの美少女がいた。
青紫の髪の毛はゴムで後ろに結ばれていて、少し鋭い赤い瞳は、月明かりに照らされているせいか強く輝いていた。
「なぜバインドが使える。」
突然の美少女に見とれていると、その盗賊から、そんな質問がきた。
「バインドは上級魔法、こんな田舎の冒険者が使える魔法じゃないはずよ。」
「俺は、魔力とMPがすごく高かったんだ、だから使える。」
とりあえず上級魔法が使える理由は説明した、だが、それより気になることがある。
「お前はなんで盗賊なんてしているんだ?」
「そんなのあなたに教える義理はないわ、そんなことより私をどうするつもり、警察に突きだそうとしても無駄よ、バインドが解けた瞬間あなたから逃げるくらいは出来るわ。」
そういえば、捕まえた後は考えていなかった。
別にこのまま逃がしてもいいのだが、なぜこの子が、盗賊なんてことをしているのかも気になる。
なんか気になるなー、やってみるか。