AWS小説“約束の時間は366日前”1
お待たせしました。
お試しで書いてるとはいえ妥協は許されない……!
でも、イマイチいいのが書けそうにない……
この板ばさみな感情は誰しも持つものなんでしょうか
今はこのモヤモヤを楽しみながら執筆活動を続けたいと考えております。
それでは、立山が“消えかけの黒霧領域”への干渉を終え、次の作品に関わっていくお話です。
よろしくお願いします!
「“消えかけの黒霧領域”、無事に完結したんですってね」
「ありがとうございます。原田さんには助けてもらってばかりで」
「まぁ、お疲れ様だよ」
“消えかけの黒霧領域”は立山の干渉後、無事に結末を迎え、立山はエディターとしての役割を果たした。
もっとも、立山の手によって生み出された干渉者ケイの事は心残りだったが、すでに踏ん切りは付いており次の仕事に向けて気を切り替えたところだった。
「じゃあ早速なんだけど、立山くんに担当してもらう次のAWS小説が決まったわ」
そう言うと原田はふたつあるうちのひとつ、立山が新しく担当するAWS小説の資料を手渡す。
そして、同じ資料を手に持ち、眺めつつ口を開く。
「タイトルは“約束の時間は366日前”、作者は緋奈理ヒナ先生。ジャンルは学園ラブコメよ」
「ラブコメですか……」
「ええ、とりあえずはこの一作をお願い。様子を見てもう一作任せるかもしれないわ」
チラと横目で立山の様子を窺い、
「来週には打ち合わせよ。それまでに準備を済ませておくこと」
それじゃよろしく、と原田は後ろ手を振りながらデスクに向き直り忙しそうにする。
一瞬立ちすくんだが立山も自分のデスクに戻り、資料に目を通していく。
来週には作者との打ち合わせ、来月にはAWSによる自動執筆、干渉者も順次用意する必要がある。
資料をめくっていくと、
〝あの子と約束して別れた次の日、ボクは一年後にいた〟
というキャッチコピーと簡単なあらすじが記載されていた。
立山はそれを読みながら頭の中にイメージを膨らませていく。
――長い髪、ヒロインの葉月が主人公と夕暮れの教室で約束。
一年後になってしまい何もかもがズレた環境で主人公が孤独を感じ始める。
髪を切り印象が変わってしまったヒロイン、変わっていない、取り残された自分はここに居場所があるのか。
しかし、主人公に対する葉月の態度は一切変わらず、そこに安らぎを感じ、やがて――
立山は頭を抱えた。
恋愛とは無縁の人生を送ってきたのはおろか、その手の小説すらあまり興味がなく読んでこなかった。
「どうすればいいんだ……」
心の声が思わず声に出る。