AWS小説“消えかけの黒霧領域”2
こんにちは!
以外に時間があったので早めに上げときます。
AWS小説の消えかけの黒霧領域の続きです。
今回も少しあっさりした展開で進んでいきます。
それでは、“消えかけの黒霧領域”(曖昧なパートナー(達)は今日も健在です)をよろしくお願いします!
窮地に立たされたB班は逆境を覆すべく動き出す。
ダイアンは領域の確保、クレアは正面に位置取っているリーパーへの牽制、サエキが隙をついて突破口を作る。狙うはあくまでも包囲網からの脱出だ。
サエキはもう一度隊員の様子を確認すると――ダイアンが2体のリーパーに対して持ちこたえていられるのはおおよそ20秒といったところか……――クレアの扇子の動きに合わせて間合いを詰め、リーパーへ打撃を加えていく。
「弱い……もっと近づかないと……! クレア、もう一度だ!」
「ええ、行きますよ!」
まだ届かない。
段々と隊員に焦りが見え始める。どうせやられるならもっとだ、そう一歩踏み込むものの既に暗闇へと変化した霧の中ではうまく距離感を掴めないでいたのだ。
「まだか!? 少し後退したい、余裕はあるか!?」
「こちらも手一杯です! サエちゃん、ダイくんが!」
「わかってる! もう一度だ!」
もう一度、もう一度、数十秒の間に何度かの攻防が繰り返された。
サエキは霧への恐怖と、隊員の命を預かっているという責任に飲まれそうになる。
感覚が痺れ、歯を食いしばり目の前の、暗闇に得物を振りかざす。
もう一度。もう一度。
とっくにリミットの20秒は過ぎていた。よく耐えたんじゃないか? そんな諦めの気持ちが恐怖で溺れそうになった自分を安らげ、支配していく。
「サエちゃん!このままじゃ!」
「ダメだ! これ以上は無理だ、俺がしんがりをやる! 道を開くから二人で逃げてくれ!!」
「っ……」
サエキの頭には何もなかった、何も入ってこない。天に、神に祈っていたかもしれない。
目まぐるしく回る思考に唯一、神頼みという頼りない手段だけが思い浮かぶ。
気づけば辺りは闇。孤独さは恐怖で弱くなっていく心をさらに追い込んでいく。このまま、終わるのか。以外にもあっけなく希望は潰えたのだ。
「サエちゃん! ダイくんがぁ!! ダイくんが……!」
仲間、これまで共に戦ってきた隊員の叫びに。ふと我に返ったサエキはクレアの方へと目を向ける。ほとんど真っ暗になり、おぼろげながら見えたクレアの顔は。
泣き崩れていて必死に何かを訴えていた。その叫びは途切れ――
「クレアっ……うぉぉぉおおああああああ!!!!」
展開した黒扇子で闇をかき分ける。その声を、闇に消えていった声を辿って。
嫌だ。嫌だ嫌だ、信じたくない。そんなわけが、がむしゃらに扇子を振り回すと、――一筋の光が差し込む。
「サエキ! 無事か!!?」
赤髪の男が扇子を振り抜き、闇を切り裂く。
ゲルト、カトウ、ソニアの三人の風がB班を包んでいた死の闇を取り払う。
しかし、そこには膝をつくサエキと二本の黒扇子が転がっているだけだった。
「殲滅する、カトウ、ソニア」
「はい……!」
「サエキさん! こちらへ! まだ動けますか!?」
「うっ……戦えます!」
ゲルトは3体のリーパーを見据え、軽くカトウに合図をする。サエキはソニアの手を借りながらも立ち上がり、失いかけた我を取り戻す。
「サエキさん、私たちはゲルト隊長とカトウさんの援護。次に黒扇子の回収、二人のね」
ソニアはサエキに軽くウインクをする、それに応えてサエキは意志の固まった表情をする。
もし、ここでもう一度、立ち上がらなかったら一生後悔する。サエキは駆け出すとゲルト、カトウに追い風を送るようにひと扇ぎ、力いっぱいに道を開く。
それを確認するとソニアは更に踏み込み風を起こす。
二人の起こした風に乗ったゲルトとカトウのコンビネーションが瞬時に一体のリーパーを捉え、その体を霧散させる。
「カトウ、いったん距離を取る、下がれ」
しかし、サエキはA班の連携に慣れておらず、回収できそうになった仲間の黒扇子を拾いにリーパーへと近づいてしまう。
安全マージンおおよそ2メートル。この言葉の本当の意味は、強い風で霧を押し返せば押し返すほど反動でまた戻ってくるという事だった。
サエキが落ちている黒扇子に手を伸ばした瞬間、辺りが再び恐怖の暗闇へと変わる。
また届かないのか。
フラッシュバックで先ほどの恐怖が蘇り足が竦んで動けなくなる。
「対して濃くはない、サエキ! こっちだ、戻れ!」
「マズい、ソニア! 扇げ!」
A班は霧に飲まれそうになった仲間、サエキを救おうと必死に声を掛け、風を送るが霧は晴れない。B班の3人を飲み込まないと満足しないと霧は再びサエキを襲う。
「ラチがあかねぇ。こうなったら霧の元を断つしかねぇ! おいカトウ、ありったけ俺を扇げ!」
「マジで言ってんのおっさん!?」
「私がサエキさんを救助します! カトウさん頼みます!」
「もう腕パンパンだぜ、やってやらぁ! 吹き飛ばされんなよゲルトのおっさん!」
フン、と笑うとゲルトはカトウの風を受け、地面に落ちている黒扇子の一つを拾い上げると、両手に持った黒扇子を交互に振りリーパーへと殴り掛かる。
「サエキさんの救助が完了しました! これより私も風を送ります! 隊長は後退して――」
「悪いがそれはできねぇ、見ての通り踏み込みすぎた。これだけ強い風送ったんだ、反動はすげーだろうなぁ」
ゲルトはサエキの救助のために霧へと突っ込んだ。もうその姿は見えず、いくら風を送ってもあらわになることはない。
幸いサエキは救助完了、黒扇子も一本は回収できていた。
「なぁ! カトウ、ソニア! コイツを頼む!」
と、闇の中から二本の黒扇子が飛び出し、地面を転がっていく。
「これを持って撤退しろ、いいな!?」
「何言ってんだおっさん! おっさん……隊長なら帰ってこれるだろ!! おい、ソニア! 風を送れ!!」
「無理よ……これだけの霧、もう助けようがないわ……」
「おいおいマジかよ、お前はゲルト隊長を置いて撤退することで納得すんのかよ?」
「納得できるわけないでしょ!! でも……これが、ゲルト隊長に、この場を預けるのが、最善よ」
語気を乱しながらもソニアはカトウの目を見据えてゆっくりと言う、言葉を紡ぐ。
目を見開いて取り乱していたカトウは言葉を失うと、何も言わずに背を向け、
「撤退するッ!」
A班は撤退を始めた。消えかけの隊長を残して。
「さて、もうここは《向こう側》かな? 得物を託したのは間違いだったかなぁ、しくったしくった」
赤髪の男はポケットに手を突っ込むと煙草を一本出し、火をつけ、暗闇に向かって歩いていく。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
初めてだと、バトルシーンは夢中で書いてしまって、読者にうまく伝わらないあるある
まさにそんな感じですがこれもいい経験としてたくさん失敗したいと思います。
もう一度。もう一度。
今回、干渉者を出して干渉していく場面を書こうと思ったのですが、
なかなか難しく次に回そうと思いました。
今のところ干渉の仕方は決まっていないので深く練り直して次回は執筆していきたいと思います。
それと、結末までの展開がだいたい完成しました。
も、もちろん教えませんよ(笑)