表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
World Wide Wonderland –人形使いのVRMMO冒険記–  作者: 星砂糖
第1章 –World Wide(ログイン2日目)-
92/287

広がる館と人形にとっての5年

次に行く場所を決めてないのでクエストを受けることなく冒険者協会を出た。

工房に行って、職業クエスト報告と右腕を作ってから今後のことを考えようと思う。

単純にレベル上げをするより、スキルレベルを上げた方がいいと思うんだよね。

MPはマナポーションでどうにかなるけど、僕の戦力は人形だし、バリエーションを増やさないと。


転移するために昨日子供がチョークみたいな物で落書きしていた路地裏に入ると、昼前だからか誰も居ないし落書きも消えていた。

朝のうちに誰かが掃除したんだろうね。

とりあえず気にしてても仕方ないし、工房へ行こう。


「工房!」


視界が明滅したら、ようやく見慣れ始めた転移室に出た。

そして廊下へと続く扉を開けると。


「お帰りなさいませ。オキナ様」


当然のようにゼロワンさんがいて、帰宅したかのように声をかけてきた。


「ただいま?」

「何故疑問系なのでしょうか?」

「まだ慣れてなくて……」


ゼロワンさんにとっては家かもしれないけど、僕にとってはまだよくわからない場所なんだよね。

ここで生活してるわけでもないし。


「そうですか。それでは、まず応接室にご案内しますね」

「お願いします」


ゼロワンさんに続いて廊下を進む。

『人形制作室』、『武具制作室』、『塗装室』、『性能評価室』と書かれたプレートが付いている扉の前を通り『応接室』まで進んだ。


応接室に入りソファに座ると、机の横に大きなトランクケースが目についた。

等身大デッサン人形が入っていた物よりも大きくて、僕に持てるかわからない程だね。


「それでは、クエストの清算をさせていただきます」

「お願いします」


紅茶とクッキーを出してくれたゼロワンさんは、前回と同じようにメニューを開いて何かを確認し始めた。

冒険者協会は水晶で、ゼロワンさんはメニューなんだよね。

職業クエストは特別なのかな。


「はい。確認しました。それでは、こちらが報酬になります」


ゼロワンさんは机の横にある大きなトランクケースを持ち上げ、スッと机の上に置いた。

見た目は重そうだけど、全然音がしなかったよ。

中身が少ないのか、ゼロワンさんが力持ちかだけど、多分ゼロワンさんが力持ちなんだと思う。

デッサン人形が入ったトランクケースも簡単に運んでたし。


「こちらには銅のインゴット、鉄のインゴット、カエデルの木を裁断したもの、カシンの木を裁断したもの、棉と布が入っています。トランクケースはお渡しできませんので、全てのアイテムに触れてください」


ゼロワンさんがトランクケースを開いて中を見せてくれた。

インゴットは台形ではなくしっかりとした長方形で丸みはない。

大きさはロールケーキが入った箱ぐらいかな。

それが銅と鉄でそれぞれ15本ずつ。


カエデルは多分楓で、カシンは(かし)木だと思うけど、正直よくわからない。

カエデルは綺麗で、カシンは硬そうだね。

そんな風に見える木はインゴットより少し大きく、それぞれ10本ずつあった。


棉はハピネスなら簡単に包めそうなぐらいあって、布も色とりどりだ。

ただ、ハピネス達の服のように香りはしなかった。


そしてクッションと、それに乗せられたメモ帳。

人形の館(ドールハウス)Lv3のスキルの書だね。

これはすぐに使うとして、素材についてなんだけど……。


「多くないですか?」

「オキナ様はまだ人形制作を行っていないのでしたね。これでも少ない方だと思います。実際にこれを使ってパーツを作っていただければわかると思います」

「そうですか。では、受け取りますね」


トランクケースに入っているアイテムに触れていき、どんどんアイテムバッグに収納していく。

指先が触れるだけで消えていくから、これだけあると気持ちいいね。

お盆だとどれか一つに触れた時点で全部消えちゃうからね。

あれはあれで綺麗なんだけど、こっちは楽しいよ。


全部のアイテムを入れ終わったのでスキルの書という名のメモ帳だけ取り出し、開く。

開いた瞬間光になって、視界の右下にアナウンスが流れた。


人形の館(ドールハウス)のレベルが3になりました。収納上限が20になりました。【大通り】が解放されます』


庭の次は大通りだった。

どんどん広がっていくし、大通りなんて館の範囲を超えてる気がするんだけど、このスキルの最終形態は王国にでもなるのかな。

そもそも閲覧モードを使用してないから、庭がどうなってるかもわかってないのに、館の敷地を飛び出して大通りなんて……店でも並んでるんだろうか。

時間がある時に確認する程度いいや。


「それでは次に、私からの依頼です」


ゼロワンさんが言うと、目の前にクエスト内容が書かれたウィンドウが表示された。


『職業クエスト:自らの作品だからこそ輝く

依頼者:自動人形(オートマタ)ゼロワン

内容:自身が作成した人形、あるいは人形のパーツでモンスターを倒してください。

武器を持たせて戦わせても問題ありません。

人形を作るだけでなく、戦わせることでようやく半人前です。

前のクエスト報酬の素材を使用して、人形を作って戦いましょう。

報酬:【人形の館(ドールハウス)】Lv:4,【?????】

状況:0/50』


もちろん『受けるボタン』を選択したよ。

元よりもらった素材で右腕を作ったら戦闘に使うつもりだったし、丁度いいよね。

たぶんステップアップできるようにクエストが準備されてるんだと思うけど。


それにしても人形の館(ドールハウス)Lv4と【?????】か……。

人形の館(ドールハウス)には何が追加されるんだろう。

メイン広場とかかな。

噴水があって、周囲に屋台がある感じ。


そして【?????】は人形なのかな。

戦闘用なのか、生産用なのかは手に入れるまでわからないけど、このクエスト内容だと結構早くクリアできそうだし頑張ろう。


「オキナ様はこの後どうされるおつもりですか?」


心の中で気合を入れてるとゼロワンさんが聞いてきた。


「右腕を作るので、人形制作室に行くつもりです」

「そうですか。ついに作られるのですね」


ゼロワンさんが嬉しそうにしてる。

先代が作った人形で戦ってるだけだ

ったから、ゼロワンさんからすると人形使い(ドールマスター)として一歩進んだように見えるのかな。

さすがに子供が巣立つとか、ニートが働き出したとかじゃないよね?


「嬉しそうですけど、どうかしましたか?」

「いえ。人形を作るということは、いつか自動人形(オートマタ)を作るということになります。その一歩を踏み出したかと思うと嬉しくなったのです」

「そうですか」

「はい」


ゼロワンさんは、本当に嬉しそうに微笑んでる。

自動人形(オートマタ)が増えることは、ゼロワンさん達にとって兄弟が増える感じなのかな。

僕が来るまでゼロツーさんとも会えてなかったんだから、他の自動人形(オートマタ)にも会いたいだろうし、変化が欲しいのかもね。

そういえばどれだけの期間会えてなかったのかな。


「ゼロワンさんとゼロツーさんはどれだけの間会ってなかったんですか?」

「ほんの5年程です。それがどうかしましたか?」


5年か。

中学生が高校生になるぐらいだね。

その間家族の誰とも会わずに生活するのは辛いよね。

少なくとも僕にはできないよ。


「5年間も1人だったんですよね?」

「いえ。私の場合はプニおさん達が居ますので1人ではありませんでした」

「なるほど……」


確かにゼロワンさんにはプニおさんが居たね。

しかも、この言い方だと他にもいるみたいだけど、どんなモンスターがいるか聞きたくないよ。

プニおさんでさえブルースライムキングだからね。

他にもキングはたくさん居そうな気がする。


「ゼロツーさんはどうされてたんでしょうか」

「あの子は趣味に没頭していました。かくいう私も設備維持以外では趣味に注力していましたが」


ゼロワンさんの趣味はプニおさん達のことだと思う。

魔物使い(モンスターテイマー)とかなのかな。

あるかどうか知らないし、自動人形(オートマタ)が職につけるかもわからないけど。

能力入力(スキルインプット)で『テイム』を付与しただけかもね。


「ゼロワンさんの趣味は魔物を育てることですよね?」

「そうです。私には『モンスターテイム』のスキルが付与されています。そのため、怪物と呼ばれるモンスターや、不定形のモンスターがテイムできます。その子達を育てていました」

「怪物に不定形……」


怪物はフランケンシュタインとかヴァンパイアかな。

ホラーチックな物しか浮かばないよ。

不定形はスライムとか泥のモンスターだと思う。

そんなモンスターを5年間育てるなんて強さが尋常じゃなさそう……。


「ゼロツーさんの趣味は何ですか?」

「刺繍です」

「え?」

「刺繍です。裁縫も致しますが、1番好きなのは刺繍です。あとレース編みも好きですね」

「刺繍……」


執事服着たゼロツーさんが刺繍。

意外だったけど何でもできそうな感じがするし、そこまで違和感はないね。


「今度会った時に服の裏地を確認してください。そうすればゼロツーの趣味が見れますよ」

「服の裏を見せてくれって言いづらくないですか?」

「あの子は嬉々として見せてくれます。場合によっては解説もしてくれます」

「解説ですか……」


『これはウサギで、これはキツネで、これがタヌキなんです。』みたいにモチーフを説明してくれるのかな。

まぁ凄いとしか言えそうにないけど。


「食べ終わったようなので、人形制作室にご案内しようと思いますが、よろしいでしょうか?」

「お願いします。ついでに、途中の部屋も覗いてみてもいいですか?」

「わかりました。各部屋を見ながら軽くご説明しましょう」

「ありがとうございます」


ゼロワンさんはクッキーを食べ終わるまで雑談に付き合ってくれたみたいで、食べ終わって少ししたら案内を申し出てくれたよ。

なので、他の部屋の案内もお願いしてみたんだけど、してくれるらしい。

今回使うのは人形制作室だけの予定だけど、他の部屋で何ができるか知っていれば、うららさんを連れて来やすいからね。


強力なバックアップが存在するのも☆5の強みです。

ただし、無条件で従ってくれるわけではありません。

例えば何かを作ってもらうにしても素材を用意する必要がありますし、ゼロワン達にもやることがあります。

正式なマスターになれば命令できるようになりますが、今はまだお願いするしかありません。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ