シンクロ率上昇Lv2
ゴーレム坑道を南に抜けて草原に出た。
出るまでの間に3パーティとすれ違った。
2パーティはアイアンゴーレムと戦うためか、やる気十分だったんだけど、残りの1パーティは3人がツルハシ、残りの3人が剣と盾を持っていたから、採掘目的なんだと思う。
護衛3人、鉱夫3人のパーティだね。
もしかしたら、このパーティのおかげでアイアンゴーレムの腕を攻撃すれば取れることが広まるかもしれないね。
坑道に掘りに行くってことは石の人形と遭遇するだろうし、護衛は戦うからね。
その後にアイアンゴーレムと戦うかはわからないけど、帰ってきたところを観戦組に捕まって、色々話しているうちにバレそうだ。
他に出口があって、そこから出て行ったら別だけど。
「さて、今日も山登りだね」
「はい!2日連続です!」
「きゅー!」
「キュ!」
昨日も登った山を見上げる。
イタズラモンキーは中腹までに出てきてたから、山頂まで登る必要はないから楽だ。
山頂まで登ったらロックワームが出てくるし、そうなると本日2種類目になるからミヤビちゃんの精神がもたないと思う。
嫌いなものばかり目にしていたら疲れるし。
「一応確認しておくけど、ミヤビちゃんのイタズラモンキーを倒すクエストは残り29匹で合ってる?」
「はい。合ってます。オキナさんは6匹を人形に意識を移して倒すんですよね?」
「そうだね。最初に職業クエストをクリアして、その後猿をおびき寄せて一気に倒したいんだけど、それでもいいかな?」
「はい。大丈夫ですけど……どうやっておびき寄せるんですか?樹液ならドロップ品でありますけど……」
そういえば樹液玉ってアイテムをドロップしてたね。
文字通り樹液を球状にした物で、『膜に覆われた樹液。破ると溢れ出てくる』としか書いてなかったんだよね。
地面に叩きつけたら、虫とかおびき寄せられそうだけど、猿はどうだろう。
もちろん僕が取ろうとしてる方法は樹液じゃないよ。
クローバーのホラーモードこと賛美歌だ。
こっちもおびき寄せれるかはわからないけど、樹液より効果はありそうだよね。
あの猿たちが甘党だったら別だけど。
「おびき寄せる方法は樹液じゃないよ。クローバーの機巧で賛美歌を歌う物があるんだけど、その音を聞いたモンスターが寄ってくるかもしれないんだ。それを使うつもりだよ」
「もしかしてクローバーちゃんが赤くなって怖くなるやつですか?」
「そうそう。テンペストバードと戦った時に使った奴だね」
「わかりました。お任せします」
「うん。使うときは事前に言うからね」
「はい」
ミヤビちゃんも怖いと思ったんだ。
服が赤くなるのも怖いんだけど、血涙みたいなのが1番怖いよね。
服を着替えたら顔だけにならないかな。
なんとなくだけど、どんな服を着ても赤くなりそうなんだよね。
修道服を着替えさせた時に確認したんだけど、管みたいなものはなかった。
あの赤いのは魔力だと思う。
「よし!登ろう!」
「行きましょう!」
アザレアを抱いて北の鉄鉱山を登る。
消費MPは多いけど、魔法で倒したほうが早いからアザレアで戦うことにした。
遠くから攻撃できるから、被弾の可能性が減るし。
まだ、人形の性能に僕が追いついてないんだよね。
落とし穴に注意しながらゆっくり登っていると、早速3匹のイタズラモンキーを見つけた。
その3匹は協力して落とし穴を掘ってるみたいで、それぞれ平べったい石を手にして地面を掘っていた。
掘ることに夢中でこっちに気づいていないからチャンスだね。
「行ってくるね。同期操作」
「頑張ってください」
アザレアを置いて、意識を移す。
ミヤビちゃんの激励が一瞬遠くなったかと思ったら、最後はしっかりと聞こえた。
意識を移動させていた途中だけ聞きとりにくかったよ。
今、アザレアの杖には火の魔石が入ってるんだけど、
特に変える必要もなさそうだからこのまま燃やそうと思う。
杖を構えてゆっくりと近づいてもイタズラモンキー達は気づかず、一心不乱に穴を掘ってる。
なんだか砂場で遊ぶ子供に見えてきたよ。
そんなことは関係なく攻撃するけどね。
「キッ?!」
「ギャギャ?!」
「キィ!」
穴を狙って杖を構えてストームを意識すると、穴の中から勢いよく炎の竜巻が立ち上る。
穴を掘るために突き入れていた腕が燃え、怯んだ隙に全身が呑まれた。
最初の悲鳴を上げてからは、何も発せず光になったよ。
さすがアザレア。
高威力だね。
「ふぅ……。後3体か」
「後少しですね」
「そうだね。次も同じような集団がいれば楽なんだけど……」
アザレアを回収して、道の先を見たけど何も居なかったのでさらに登る。
ゆっくり進んでいると地面が沈み込んだので、慌てて下がる。
見上げると2匹のイタズラモンキーが見えた。
惜しい。
後1匹だったのに。
イタズラモンキーは僕と目が合ったはずなんだけど、なぜか攻めてこない。
なら、こっちから攻めてもいいよね!
「同期操作」
アザレアに意識を移して狙いを定めようとしたら……見えなかった。
身長が低くなったせいだね。
少し下がってみよう。
道のギリギリまで下がったんだけど、やっぱり見えなかった。
なので、うなだれた状態で座り込んでる僕の体をよじ登り、肩の上に立ってみた。
アザレアのボディバランスがいいのか、すごく立ちやすかった。
僕の体の上に乗ったら辛うじてイタズラモンキーの頭が見えたので、それぞれにランスを放った。
手前の一匹はアザレアの動きを見ていたので避けられたけど、奥のもう一匹は手前のイタズラモンキーが邪魔で見えてなかったみたいで、ランスが顔に直撃した。
当然一撃で倒せた。
炎のランスを避けた一匹が急いで駆け下りてきたんだけど、着地の隙を狙ってボールを撃ち込んだ。
着地したことで両手両足を地面についていたイタズラモンキーは、避けることも防御することもなく、顔面で火の玉を受け止めてHPバーを砕け散らせた。
ボールでも一撃だったね。
「後1体ですね!」
「そうだね。もし次に集団と遭遇したら、1匹を除いて倒してくれていいからね」
「わかりました!」
「きゅ!」
「キュー!」
ミヤビちゃんに向けて言ったんだけど、シロツキ達も返事をしてくれた。
さっきから観戦ばかりだし戦いたかったのかな。
次が集団だったら戦わしてあげられるんだけどね。
「4匹か。しかも、それぞれが結構離れてるね」
「そうですね。オキナさんが手前の1匹を魔法で攻撃して、その隙に私が走っていきます。シロツキちゃんとトバリちゃんには飛んで背後に回ってもらいましょう」
「わかった。ミヤビちゃんの提案でいこう」
「はい。シロツキちゃん、トバリちゃん。よろしくね」
「きゅきゅ!」
「キュッ!」
ミヤビちゃんがシロツキとトバリを空に放つ。
2頭は大きく旋回して、イタズラモンキー達の向こう側に降り立った。
今回は全体を見れるミヤビちゃんに任せようと思う。
アザレアの視点だと周囲を見る余裕がないんだよね。
見ても全部大きく見えるから、正確に把握できないし、イタズラモンキーですらすごい迫力があるんだよ。
牙をむいてこっちを見てる時なんて、言葉通りモンスターだよ。
「いつでも大丈夫です」
「同期操作」
ミヤビちゃんの合図でアザレアに意識を移し、イタズラモンキー目掛けてボールを放つ。
その炎の玉を追いかけるようにミヤビちゃんが駆け出し、シロツキとトバリもそれぞれに近いイタズラモンキー目掛けて飛びかかる。
ボールが直撃したイタズラモンキーは即座に光になって、その光を散らすようにミヤビちゃんが光の中を槍を構えて突っ込んでいく。
そして、いきなり攻撃されたことで混乱しているイタズラモンキーに槍を突き入れて、そのまま壁に叩きつけた。
盾とのコンビネーションといい、ミヤビちゃんの攻撃方法は少し見た目に勢いがあるね。
叩きつけたイタズラモンキーに対して、トドメとばかりに槍を横薙ぎに振るう。
イタズラモンキーは吹き飛ぶことなく光になった。
シロツキ達の方も問題なく倒せたみたいで、ミヤビちゃんの元へ戻っていった。
僕も自分の体に意識を戻そう。
「よし。クリアしてる。ん?」
視界右下には職業クエストをクリアしたというアナウンスが流れていたので目標達成だ。
それに、僕の体の横にはウィンドウが開いていた。
『同期操作のレベルが2になりました。
操作可能範囲が半径25mになります』
スキルのレベルが上がったんだけど、10mから25mって範囲が広がりすぎじゃないかな。
こんな上がり方だとレベル10の時にはどうなるんだろう。
1kmとか?
何にせよ職業クエストはクリアできたし、後はイタズラモンキーを20匹倒すだけだ!