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World Wide Wonderland –人形使いのVRMMO冒険記–  作者: 星砂糖
第1章 –World Wide(ログイン2日目)-
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蝶溜まり

ストームが使える距離まで近づくと、吸血バタフライが集ってる塊の上にHPバーが表示されているのが見えた。

考えたらわかることだったけど、獲物から血を吸うんだから対象が生き物なのは当然だし、今吸ってるてことは光になってないんだから生きてるってことだよね。


ストームを放ったら血を吸われてる生き物も攻撃しちゃうんだけど、プレイヤーじゃないよね……。

もしも、プレイヤーだったら僕がPKになるんだけど。


しかも、表示されているHPバーの横には麻痺を表すアイコンも見えてるから、吸血バタフライが麻痺させた上で触角で切って、切り傷から吸血してるってことだね。

麻痺してる以上吸血バタフライを倒しても動けないだろうし……どうしよう。


「ミヤビちゃん。あの吸血バタフライ達が血を吸ってる相手はプレイヤーじゃないよね?」

「えっと、HPバーの近くに名前は表示されてません。なので、モンスターだと思います」


ミヤビちゃんに見てもらっても名前は表示されていないらしい。

蝶に集られて見えなくなってる可能性もあるけど、HPバーが見えてるんだから大丈夫だよね。


「まとめてストームで攻撃しても問題ないってことだね」

「そうですね」

「わかった。あと、血を吸われてるモンスターは麻痺してるみたいだから、戦う時は気をつけてね」

「鱗粉に気をつければいいんでしょうか?」

「多分そうだと思うけど、何が原因かはわからないね。最悪麻痺してもクローバーで回復できるから、麻痺しても焦らないでね」

「はい。その時はお願いします」


ミヤビちゃんにプレイヤーかどうかの確認もしたし、アザレアであの塊に向けてストームを放てばいいんだけど、その前に、MPの回復をしないと。

いつ戦闘になってもいいように、ずっと糸をつけてるからMPが結構減ってるから、マナポーションを飲んでおく。

僕が飲んでるのを見て、ミヤビちゃんもマナポーションを飲んだ。


2人ともMPを回復して準備ができたので、改めてアザレアで狙いをつける。

属性はどうしよう。

トレントも居ないし、火でやってみようかな。


魔法少女の杖(マジカルチェンジ)(ファイア)。じゃあやるね」

「あれ?アザレアちゃんを直接操作して攻撃しないんですか?クエストのチャンスだと思うんですけど……」

「あ。そうだった。職業クエストのことを忘れてたよ。ありがとう」


ミヤビちゃんのおかげで同期操作(シンクロアクション)でモンスターを倒す職業クエストのことを思い出した。

確かにこの状況でやらない手はないね。

現時点で11体倒してるから残り39体で、吸血バタフライが何匹いるか正確にはわからないけど、運が良ければクリアになるかもしれないね。

指摘してくれたミヤビちゃんには本当に感謝するよ。


「いえ。私も山頂の職人クエストをやったので覚えていただけです」

「それでも教えてくれたおかげでクエストは進むからね。じゃあ、アザレアに意識を移すけど、体のことはよろしくね」

「はい。任せてください」


ミヤビちゃんが僕の前に移動して盾を構えてくれた。

僕も早く準備しよう。


同期操作(シンクロアクション)


アザレアを地面に置いてスキルを使う。

一瞬の暗転の後、目に入って来たのは杖を持った手だった。

問題なく移れたね。


アザレアの体を操作してミヤビちゃんの前に移動して、杖を持っていない左手で問題ないことをアピールした。


「私はいつでも大丈夫です」


ミヤビちゃんへの返答として頷いてから、赤い塊に向けて杖を構える。

いつもアザレアに対して魔法を撃つポイントを指定する時はもっと視線が上なので、少し狙いづらい。


繰り糸(マリオネット)で操作してる時は『ここに撃ってほしい』と指定しただけで、その場所に魔法が放たれるから楽なんだけど、自分で指定するのは難しい。

他の魔法を使うプレイヤーはどうやってるんだろう。


四苦八苦しながらも何とか狙いを定めて、ストームを意識する。

その瞬間、赤い塊の周囲に一瞬円形の何かが現れ、すぐに消えて炎の竜巻が出現した。

もしかして円形の何かは魔法の範囲を表すものなのかな?

だとしたら、見えてから竜巻が出るまでの間が短すぎるよ。


「ギャン!」


吸血バタフライに集られていた生き物を中心に炎の竜巻が発生したことで、その中心となった生き物が焼かれる。

吸血バタフライも何匹かは巻き込まれたんだけど、魔力を吸うこともできるせいで感知能力でもあるのか、竜巻が大きくなる前に半分ぐらいが飛び上がって範囲外に逃げたよ。

そのおかげで吸血されていた生き物も見えたんだけどね。


灰色っぽい狼だったけど炎の竜巻に飲まれて、麻痺したままHPバーを砕け散らせていたよ。

麻痺して血を吸われた挙句に炎で焼かれるなんて散々な倒され方だけど、目の前にいるんだから仕方ないよね。


それよりも、竜巻を避けた蝶が問題だよ。

まだ、密集しているから、逃げ場がないようにストームを放てばもう半分ぐらいは倒せそうだね。

やってみよう。


吸血バタフライは、炎の竜巻を避けるためにほとんどが左右に飛んだので、その2ヶ所を挟むように2つの竜巻を発生させた。

そして、それすらも避けようとしている吸血バタフライはボールで狙うよ。


結構なMPを消費した甲斐あって、飛んでる吸血バタフライが残り12匹になった。

残りもアザレアで倒したいんだけど、それぞれが距離を開けてミヤビちゃんを囲うように迫ってきてるから狙いづらい。


ミヤビちゃんも僕の体を守りながら戦うことになるからやりづらいだろうし、ここは無理せず元の体に戻って戦おう。


体の前まで移動して同期操作(シンクロアクション)を解除する。


「ミヤビちゃん。もう大丈夫だから前に出てくれていいよ」

「わかりました」


ミヤビちゃんが吸血バタフライに向けて走りだし、その後をシロツキ達が飛んで追いかける。

シロツキ達は噛みつき攻撃をよく使うけど、吸血バタフライに使ったら麻痺するんじゃないかな。

念のため様子は見ておこう。


繰り糸(マリオネット)!」


アザレアに糸を繋ぎつつ、僕に向かってくる吸血バタフライに対しても糸を放つ。

2本とも吸血バタフライに命中し、光が体を覆ったので成功したんだけど、直後に地面に落ちて少しダメージを受けてた。

もしかして、僕が飛ぶように命令してないから墜落したのかな。

だとしたら、糸で縛れば攻撃しやすくなるね。


地面に落ちたそれぞれに向けてボールを放つ。

火の玉は動けない2匹に当たり一撃で倒した。

僕の方には後2匹しか向かってきていないから、この2匹も糸を付ければ簡単に倒せるね。


繰り糸(マリオネット)


2匹を倒したことで空いた指から糸を放つ。

1匹には避けられたけど、もう1匹には当たった。

当たった1匹は近かったので、アザレアのメイスで殴る。

2発殴ると倒せたので、体力か防御力が無いか少ないんだと思う。

小さいし蝶だしね。


繰り糸(マリオネット)!」


残った1匹に対して避けられてもいいように2本の糸を飛ばした。

ボールを撃つのと2本の糸を飛ばすのは同じ消費MPだから、避けられそうなボールより、2本出せる糸の方が可能性があると思ったんだよ。

そして、予想どうり1本は避けられたけど、もう1本が当たって地面に落ちたので、メイスで殴って倒す。

これで僕の方に向かってきた吸血バタフライは倒せた。


ミヤビちゃんの方は、シロツキとトバリが空中で尻尾を当てたり爪で切り裂いて地面に落とし、それをミヤビちゃんが突いて倒してた。

残り2匹だから加勢しなくても問題なさそうだね。

シロツキとトバリの攻撃で倒されてる吸血バタフライもいるし。


少しすると残った2匹も問題なく倒せたので、アザレアを連れて合流した。


「お疲れ様。問題なさそうだね」

「はい。最初はうまく当てられなかったんですけど、シロツキちゃんとトバリちゃんのおかげで当てられるようになりました。どうやら、風の動きに敏感みたいですね。槍の迫る風に乗って避けられてました」

「そうなんだ。だから竜巻も避けられたのかな?」

「かもしれないですね」


蝶のように舞うってこういう感じなのかな。


「それで、オキナさんの職業クエストはクリアできたんですか?」

「えっとね……さっきの魔法で32匹の吸血バタフライと1匹の狼を倒せたみたいで、残り6体だね」

「その数だったら帰りにイタズラモンキーやブラウンラビットを倒せばクリアできますね」

「うん。そうするつもりだよ。それじゃあ来た道を戻ろうか」

「はい!」


ミヤビちゃんの吸血バタフライ討伐クエストは、この数を倒してるから余裕でクリアできてる。

あとはイタズラモンキー残りを倒すだけだ。

ついでに僕の職業クエストもクリアするつもりだけどね。


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