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World Wide Wonderland –人形使いのVRMMO冒険記–  作者: 星砂糖
第1章 –World Wide(ログイン2日目)-
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濯ぎと乾燥

戦闘して時間が経ったからか樹液の量が減ったし、甘い匂いも少しマシになったんだけど、まだ残ってる。

早く取るには魔法を試すしか無いよね。


魔法少女の杖(マジカルチェンジ)(アクア)


洗い流すイメージで水の魔石に変えたけど、どの魔法がいいんだろう。

ボールは部分的に落とせそうだけど、何回もやらないとダメそうだし、ランスは勢いがありすぎるよ。

バインドは体を縛るだけだから意味がないし、ウォールは壁だからね。

擦り付けて落とす感じかな?

ストームは洗濯機みたいで良さそうなんだけど、勢いが心配だ。

とりあえずボールを使ってみて、取れたら僕でストームの実験をしてみよう。


「樹液が取れるか試してみるね」

「はい」


ミヤビちゃんはいつの間にか布を取り出してシロツキとトバリの舐め合いを見ていた。

樹液が舐め取られたらその布で拭くつもりなんだろうね。

ミヤビちゃんから垂れる樹液が布に当たりそうになって慌ててるよ。

早く実験しよう。


「ボール」


アザレアの杖を僕の服に向け、水の玉を放つ。

その玉は僕の服に当たると弾けて、樹液も殆ど無くなった。

弾けたところは残ってないんだけど、当たってない部分には残ってるね。

ボールだと残るなら微妙だけど、水の魔法なら取れることがわかった。

あとはストームでどうなるかだ。


「さっきの玉で樹液が落ちたんだけど当たったところしか落ちないから、今度は勢いよくやってみるね」

「わかりました」


ミヤビちゃん達からアザレアを連れて少し離れ、杖をアザレアと僕の間の地面に、僕よりに向けさせる。

アザレアに付いた樹液は杖だけなので、ストームで発生する水の竜巻で杖を洗えばいいだけだからね。


「ストーム!」


僕の足元を中心に水に竜巻……渦潮みたいなものが膨れ上がって一瞬で僕を飲み込んだ。

横からくる水の勢いはすごいんだけど、不思議とバランスを崩すこともなく呼吸もできてるしSTも減ってない。

気になるのは空気をかき混ぜる水の音がうるさいのと、目に水が入りそうだから開けられないぐらいだね。

アザレアの杖が見えないから樹液が取れたかわからないよ。


少しすると渦潮が消えて、水でびしょ濡れになった僕と杖の先から水を滴らせているアザレアが現れた。

見える範囲の樹液は全部取れてるからそれはそれでいいんだけど、本来なら状態異常回復魔法や別のアイテムで取るんだと思う。

びしょ濡れにならなくて済むはずだし。


「取れたけどミヤビちゃんもやる?」

「怖くないですか?」

「目を瞑っていれば大丈夫だよ。呼吸もできるし」

「わかりました。シロツキちゃんとトバリちゃんもお願いします」

「わかった。それじゃあやるよ」

「はい」


ミヤビちゃんが布をアイテムバッグに収納して、シロツキとトバリを抱きかかえた。

せっかく舐め合って取れた樹液だけど、ミヤビちゃんが抱きかかえたことでまた付いてるね。

これから取るからいいんだろうけど、シロツキ達はどこか不満そうだよ。


「ストーム」


ミヤビちゃんが渦潮に飲み込まれる。

中からは見えなかったけど、取れた樹液は水流で上に押し流されて、やがて消えていってた。

僕の周りに樹液が散らばってなかったのはこういうことだったんだね。


少しして渦潮が消えると、びしょ濡れになったミヤビちゃん達が現れ、シロツキとトバリが勢いよく飛び上がった。

ミヤビちゃんはポタポタと水が垂れる髪やドレスアーマーのフリフリを気にしながらも、樹液がついてないことを確認していた。


「取れてます!ありがとうございます!」

「うん。僕から見ても取れてるからもう大丈夫だね。後は乾かす方法だけど……」


ミヤビちゃんと一緒に空を見上げる。

シロツキ達は木の間を抜けて空に上がり、風を生んで体を乾かしてるみたいだ。

ということは、次は風の魔法だね。


魔法少女の杖(マジカルチェンジ)(ウィンド)


風の魔石に切り替えて、ミヤビちゃんに近づく。

僕とミヤビちゃんの間に竜巻を出せば乾かせるはずだよね。


「ミヤビちゃん。竜巻で乾かそうと思うんだけどいい?」

「はい。お願いします」

「じゃあやるね。ストーム」


僕とミヤビちゃんの間に竜巻が発生する。

ミヤビちゃんは竜巻を浴びるのが2回目なので少し慣れた感じだね。


徐々に風が弱まって、竜巻が治ると服が乾いていた。

短時間の風だったけど問題ないみたいだね。


「乾きましたね」

「そうだね。後は吸血バタフライの討伐か……。その前に回復してもいい?もしかしたら回復すると吸血バタフライが寄ってこなくなるかもしれないけど」

「気にしないでください!オキナさんが倒される方がダメです!吸血バタフライは探せばいいだけですよ!」

「ありがとう。人形の館(ドールハウス)。クローバー来い。繰り糸(マリオネット)


クローバーを出して慈愛と救済の右手(癒しましょう)で回復する。

もしも、吸血バタフライの出現条件がダメージを受けていることだとしたら、トレントや芋虫から攻撃を受ければいいだけだから、とりあえず全回復しておこう。

いきなり強いモンスターと戦うことになるかもしれないからね。


「ミヤビちゃんはダメージを受けてないけど、シロツキ達は大丈夫?」

「はい。大丈夫です」

「そっか。じゃあ、そろそろ進もうか。クローバー収納」


回復し終わったのでクローバーを収納する。

トレントや芋虫ならパチンコで攻撃できるかもしれないけど、吸血バタフライだと避けられそうだし、そもそも手頃な石ころが少ないんだよね。

掘り返せば出てくるかもしれないけど。

今度鉄鉱石でビー玉サイズの鉄球を作ってくれる人を探そうかな。


「わかりました。シロツキちゃん!トバリちゃん!行くよー!」


ミヤビちゃんが呼ぶと、シロツキ達が戻ってきた。

そして、いつもの定位置に着く。


「お待たせしました。出発しましょう」

「とりあえずこのまま北だね」

「はい」


ミニマップを見て、来た道とは反対側に向けて歩く。

特に風景は変わらず、木に蔦が絡まっていて草やキノコが生えてる道無き道をまっすぐ進む。

この草やキノコは素材なのかな?


キノコを捥いでみると光になって消えたので、アイテムだったみたいだ。

それをミヤビちゃんに伝えると、キノコや草をとりあえずちぎってみることになった。


キノコや草だけじゃなくて、蔦や花に木の実なんかも光になったよ。

いろんな素材があるんだね。


「あ。吸血バタフライがいます」

「ん?どこ?」


採集しながら歩いているとミヤビちゃんが吸血バタフライを見つけたようだけど、視線の先には高さが1mぐらいの大きな真っ赤な岩みたいなものがあるだけだった。


「あの赤い物が、全部吸血バタフライです……」

「え?」


ミヤビちゃんが指差しているのは、赤い岩に見える物だった。

よくよく目を凝らして見ると、かすかに表面が動いてる気がする。

遠くてはっきりと分からないんだけど、ミヤビちゃんはよく気づいたね。


「なんで吸血バタフライだってわかったの?」

「さっき1匹の吸血バタフライがあの岩みたいなところに混ざったんです。そうしたら、赤いのが場所を譲るように開けたんです」

「ということは、あの赤いのは岩じゃなくて、吸血バタフライが獲物に群がってるってこと?」

「だと思います」

「えぇ……」


1mもある生き物を蝶々が襲ってるってことだよね。

しかも、その獲物が見えないぐらいに吸血バタフライが集まってるってことは、軽く見積もって2、30匹はいそうだよ。

そんな数の蝶々に集られたくないよ……。

回復したおかげか、こっちに気づいている様子はないみたいだし、このまま距離を詰めて倒すべきかな。


「どうしましょうか」

「ゆっくり近づいて、魔法で一気に倒すのがいいと思うけど、シロツキ達のブレスで攻撃するのもありかだと思うよ」

「うーん。シロツキちゃんとトバリちゃんだと、攻撃する前にバレちゃいそうです。オキナさんにお願いしてもいいですか?」

「わかった。じゃあゆっくり近づいて竜巻で攻撃するね」

「お願いします」


蝶が集っている塊ぬ向けてゆっくりと進む。

結構近づいたけど、吸血バタフライは僕に気づいた様子はない。

さっきの戦いだとすでに襲い掛かられてた距離だけど、回復したからかな。


どちらにせよ、攻撃しやすい所まで近づけたから、後は魔法を放つだけだ。

ミヤビちゃんもしっかりついて来てくれてるから、何かあっても大丈夫だよね。


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