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World Wide Wonderland –人形使いのVRMMO冒険記–  作者: 星砂糖
第1章 –World Wide(ログイン2日目)-
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擬似ロケットパンチ

アイアンゴーレムの右腕に糸を付けると指の開閉ができた。

肘を曲げることもできた。

後は振り回せるかどうかだ。


すごく重いんだけど踏ん張った状態で糸を短くすれば、地面を擦りつつも動かすことができた。

僕が引っ張られるんじゃなくて、腕が動くということは頑張れば持ち上がるはずだ。

ハピネス達を振り回して投げる時は2、3回回すだけでよかったんだけど、アイアンゴーレムの腕は重いので、糸を短くして無理やり回して、勢いがついたら伸ばすしかないかな。


糸を短くしていくだけで、腕が引っ張られる感覚がすごいけど吊り下げることもできた。

なので体に当たらないよう腰を曲げた状態でクルクルと回して、遠心力のおかげで回しやすくなったら手を上にあげつつ糸を伸ばす。

これで、何とか振り回すことはできた。


「オキナさん!モンスターが立ち上がりました!」

「わかった!もう一度痺れさせれるかやってみるよ!」

「お願いします!」


アイアンゴーレムの右腕を振り回しつつ、アザレアでボールを撃つ。

立ち上がったアイアンゴーレムに直撃したけど、今度は感電しなかった。

耐性ができてるんだろうね。


そして、アイアンゴーレムはさっきの糸をくっ付けたせいなのか、右腕を振り回してるせいなのかはわからないけど、近くで槍を突いてるミヤビちゃんを無視して僕の方に向かってきた。

継続してアザレアにボールを撃たせても、ダメージこそあるものの感電はしなかった。


気づけばHPは半分を切ってるんだけど特に変化はないね。

右腕がないからかな?

右腕を返せばパターンが変わるかもしれないけど、自分から危険なことはしたくないので、このまま距離を取りつつ右腕を振り回しておこう。


「螺旋槍!」


ミヤビちゃんが後ろからスキルを放った。

そして、スキル後の硬直はクローバーではなくシロツキが体を掴んで動かすことで回避できていた。

これなら僕とパーティを組んでいなくても攻撃を受ける確率は減るね。

たぶん、ミヤビちゃんの指示なくて僕の提案を聞いたシロツキが勝手に動いたんだろうけど。


2頭の性格がよくわからないけど、シロツキは好奇心旺盛だけどのんびり屋さん。

トバリはクールっぽく見えるけど、寂しがり屋なイメージがある。

まぁ、僕には関係ないんだけどね。


シロツキ達のことを考えながらもアイアンゴーレムの右腕を振り回しつつ、追ってくる本体から逃げる。

アザレアはMP節約のためボールを、クローバーはアイアンゴーレムが最初にいた場所に落ちていた鉄の欠片を拾い、パチンコで放つ。

アザレアの攻撃はダメージがあるみたいだけど、クローバーの攻撃は今ひとつだね。


「オキナさん!」


ミヤビちゃんの声を聞いてアイアンゴーレムを見ると左腕で岩を掬うように持っていた。

持ち方で攻撃方法がわかるよ!


人形の館(ドールハウス)!ハピネス収納!」


投げられる前に距離を稼ぎたいので、腕に抱えたままのハピネスを人形の館(ドールハウス)に収納した。

さすがに左手でハピネスを持ったまま、右手でアイアンゴーレムの右腕を振り回しつつ走るのは無理だよ!


今の僕は、さながらカウボーイみたいになってるのかもしれない。

振り回してるのは縄じゃなくて右腕だけどね!


「うぉ?!」


僕の右側に岩が飛んで来た。

左腕で下から投げたせいなのか、少し右にそれたみたいだね。

それでも、撒き散らされた小石が当たって地味にダメージを受けた。


アイアンゴーレムは周囲を探り、また岩を掬い上げて投げて来た。

今度は左を意識したせいか、また当たらなかった。

小石は当たったけど。

これが両腕あれば、もっと激しい投石だったかもしれない。


しかも、2回投げられたことで道が狭くなっていて、まっすぐ進むかアイアンゴーレムに向かうしかなくなっていた。

もしかしてわざと外して、僕の退路を削った?!


アイアンゴーレムを見ると左腕をグルグルと動かしている。

右腕があれば左肩を抑えながら回してそうな動作だね。

そして、この状況で左腕を回すということは……予想通り左腕を前にしてタックルの構えになった。


このまま後ろに逃げても、岩を砕きながら突っ込んでくるアイアンゴーレムに吹っ飛ばされる気がする。

こうなったら右腕をぶつけるしか無いけど、うまくできるかな。


アイアンゴーレムが走って僕の方に迫ってきたので、振り回していた右腕の糸を伸ばす。


「それっ!」


回転させていた右腕は、走って来たアイアンゴーレムにフック気味にめり込み、鈍い音と何かが砕ける音をたてながら重い体をふき飛ばす。

僕に迫ってくる最中に横から攻撃を受けたので、斜めに吹き飛んだ。

そこに向かってミヤビちゃん達が追撃に向かった。


もう一度右腕を放つために糸を短くして回収して右腕を見ると、鉄鉱石の集合体でできたアイアンゴーレムの体からいくつも欠片が落ちたのに対して、右腕は何ともなっていないように見える。

糸をつけた時に光が覆ってるから、それが保護の役割を果たしてるみたいで、たぶん糸を切るか限界がきたら崩れると思う。

手元に寄せた右手の指はボロボロで割れて繋がってないのに動かせるし、手首から肘にかけていくつもヒビが入ってるからね。

逆に言うとこれでもまだ崩れないのかと思ったよ。


「オキナさん!モンスターが武器を持ちました!」

「気をつけてね!」

「はい!」


吹き飛ばされたアイアンゴーレムは起き上がると地面に左腕を突き刺し、引き抜いた。

その手には先が剣のように尖った分厚い岩があった。

HPバーを見ると控えの1本が消えて満タンになっていたので、1本分減らしたことでパターンが変わったんだと思う。


それにしても、このアイアンゴーレムは左利きなのかな。

もしも右腕があったらどういう風にパターンが変わったのか気になるけど、確認のためにわざわざ返す気は無いよ。


アイアンゴーレムは左腕を掲げて剣を誇示した。

すると石の人形が鉄鉱石を運んで来るときに通っていた小さな穴から、細い石や木の棒を持った石の人形がワラワラと出てきた。

ここでモンスターの数が増えるのか……。


「オキナさん!どうしますか?!」

「僕が右腕を持ってるせいであいつは僕の方に来るみたいだ!だから、僕が石の人形を倒しつつアイアンゴーレム引き付けるから、ミヤビちゃんは石の人形をお願い!」

「わかりました!」


ミヤビちゃんは手近な石の人形を攻撃し、シロツキとトバリもそれぞれ石の人形に向かった。

アイアンゴーレムは剣を肩に担いで悠然と迫ってきているので、僕の周りにいる石の人形に攻撃する時間はありそうだ。


アザレアにボールを撃たせてみたけど、石の人形へのダメージは少ない。

属性を変えてもいいんだけど、そうするととっさにアイアンゴーレムに攻撃できないんだよね。


今の所クローバーが鉄の欠片を撃って何とかなってるけど、二体以上同時に来られると対処できないんだよね。

アザレアもメイスで殴らせようかな。

魔法より物理の方が効果出そうだし。

その間にアイアンゴーレムの右腕を回せば、いざという時攻撃できるからね。


クローバーのパチンコで撃ちつつアザレアに殴らせ、アイアンゴーレムの右腕を回転させる。

どうしても間に合わない時は、回した右腕で石の人形にぶつけた。


クローバーだと4回、アザレアだと3回だけど、アイアンゴーレムの右腕だと一回で倒せるんだよね。

やっぱり質量も重要だよね。

腕を作る時は大きめに作ってもいいかもしれない。

ハピネス達は小型な分機巧(ギミック)で対応してるのかもね。


アイアンゴーレムは左手に剣を持ってるせいで、遠距離攻撃できないかと思いきや、剣で地面を削り、石を飛ばしてきた。

最初の石飛礫より量が少ないものの、一個の威力は上がってるみたいで、結構なダメージを受けた。

クローバーを回復に使うのは間に合わないのでポーションで回復したよ。


そんな感じでアイアンゴーレムと距離を取りつつ、石の人形を倒していき、残り2体になった。

そして、ミヤビちゃんが残り一体を倒したら、アイアンゴーレムが剣を掲げた。


そして増える石の人形。

さっきは数えてなかったけど、今は15体いるね。

さっきも同じぐらいだったから、MAX15体かな。


プレイヤーの数を下回ったらMAXまで増やす感じに見えるから、対応としては2体残せばいいんだろうね。

シロツキとトバリがカウントされないから助かるよ。


「ミヤビちゃん!石の人形は2体残そう!そうすれば追加されないはずだよ!」

「はい!わかりました!シロツキちゃんとトバリちゃんもお願いね!」

「きゅー!」

「キュ!」


アイアンゴーレムが石の剣を持ってから全然攻撃できてないけど、まずは石の人形を減らさないと!

チクチク攻撃してきて地味に邪魔なんだよね。


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