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World Wide Wonderland –人形使いのVRMMO冒険記–  作者: 星砂糖
第1章 –World Wide(ログイン1日目)-
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8人と2頭と3体VSテンペストバード(幼)

テンペストバードとの戦いに崖前で別れた6人組が入ってきた。

レイドバトルだから入れたのかな?


視界左上のステータスプレートを見ると、ミヤビちゃんのプレートの下にレイドパーティ1っていうプレートが増えてたよ。

いつの間に……。


そのレイドパーティ1のプレートに視線を合わせると、6人の名前とHPバーなんかが表示されたけど、誰が誰だかわからない。

まぁ、いきなり他のパーティと連携なんて器用な真似僕にはできないから、あんまり気にしないでおこう。

何か言われたら対処すればいいかな。


考え事をしている間に、入ってきた6人がそれぞれ武器を取り出してテンペストバードを睨んでいる。

剣と盾、メイス、弓、斧、杖、出刃包丁と中華鍋を持ったパーティで、弓と杖が女性で、残りは男性だ。

そのうちの剣と盾を持った人が僕に近づいてきた。


「先ほどはどうも。レイドだったので参加させてもらいました」

「あ、どうもです。助かります」


剣と盾を持った人は崖前で話した人だった。

そして一言話したらすぐにパーティの元へと戻っていった。

せめて名前だけでも教えてくれたら、ステータスプレートが見やすくなるんだけど、まぁいいか。

不干渉ってことで。


「あの、お、オキナさん。あの人達は何ですか?」


ミヤビちゃんがテンペストバードに向けて盾を構え、腰だめに槍を持って摺り足で近づいてきた。

何この動き?


「えっとね、このレイドバトルに参加してくれた人達だよ」

「そ、そうですか。い、今ならあの人達にお任せして、に、逃げれるんじゃないですか?」


テンペストバードを見ると、体の周囲に緑色に輝く風のようなものを纏っていた。

あれでさっきの土煙を吹き飛ばしたんだろうね。

そして、なぜか滞空したままで攻撃してこないんだけど、人数が増えたから警戒してるとか?

目はギョロギョロと忙しなく動いていて、たまに目が合うんだよね。

6人パーティも様子を見てるだけだし。


「逃げられるかな?すごい勢いで追いかけてきそうだけど……」

「で、ですよね。見られてますし」

「うん。ところで、ミヤビちゃんのその動きはスキル?」


話しながらも、摺り足で移動しているミヤビちゃん。

今はほとんど僕の前まで来ている。

6人パーティがどう動くかわからないから様子見も兼ねてるのかな?


「は、はい。フロントフルガードって言います。う、動きづらくなる代わりに、盾で、こ、攻撃を受けても、その、吹き飛ばされなくなります」

「へー。突進を受け止めるつもりなの?」

「そ、そうです。そうすれば、オキナさんも攻撃しやすいですよね」

「そうだね。ありがとう」


ミヤビちゃんが攻撃を受け止めてくれたら、テンペストバードはほとんど地上にいるようなものだからね。

その高さならハピネスでも攻撃しやすいよ。

念のためハピネス達を手元に集めておこう。

受け止めた時の衝撃で吹き飛ばされるかもしれないからね。


シロツキとトバリは自由に飛び回りながら、テンペストバードとミヤビちゃんをチラチラと見ている。

タイミングを計ってるんだね。


「よし!行くぞぉ!」

「「「「「おぉー!」」」」」


テンペストバードが飛び込んでくるのを待っていたら、剣の人が号令を出して、残りのメンバーがそれに続いた。

剣の人と斧の人がテンペストバードに向けて走り出し、杖の人が火の玉を、弓の人が薄っすらと輝く矢を放った。

メイスの人は後ろで何か魔法を唱えていて、包丁の人が中華鍋を構えてメイスの人を守ろうとしてる。

中華鍋は盾なんだ……蓋じゃなくて鍋を使うんだね。


放たれた魔法と矢は矢の方が早かった。

なので、テンペストバードが矢を魔法が来ていない方に避ける。

これで魔法が無駄撃ちになったと思いきや、火の玉が曲がってテンペストバードに迫った。

そういえばアザレアの魔道具は発射後の調整ができないんだよね。

これが調整かぁ。

これができれば当てれるかもしれないから少しは戦いやすくなるんだろうけど、無い物ねだりだね。


テンペストバードを追いかける火の玉は、当たる寸前に弾けて消えた。

たぶん纏ってる風が原因なんだろうね。

アザレアの魔法を使った時は直撃していたし。


そして、いつの間にか次の矢が飛んで来ていたけど、それも風で弾かれた。

今のテンペストバードは飛び道具が効かないってことだよね。

そのことに気づいた剣の人と斧の人は足を止めて警戒し出した。

弓と魔法で地面に落として攻撃するつもりだったんだろうね。


動きを止めた2人を見たテンペストバードが、軽く上昇して勢いよく足を振り下ろした。

固まってたせいで、それぞれの足で1人ずつ狙われていたよ。


「うぉ?!」

「ぐぁ!」


剣の人は盾で防いだけど、斧の人は防御のために斧の腹を向けて構えていたけど、テンペストバードは気にすることなく斧ごと掴んだ。

うまいこと刃を避けて掴んだみたいで、ダメージはなかった。


「銀太郎!」


剣の人が斧の人の名前を呼びながら足に切りつける。

それをもう片方の足の爪で受け止めたテンペストバードは、剣の人を無視して上昇した。

こんなことを考えている場合じゃないのはわかってるんだけど、上空に連れていかれた人の名前が気になる。

まさかり担いだ銀太郎?


ステータスプレートで上銀太郎さんのHPを見ると、徐々に減っていた。

掴まれてることによって継続ダメージがあるんだね。

ギュッてされる度にダメージなのかな。


というか、テンペストバードは空に連れて行って何をするつもりなんだろう。

もしかして地面に叩きつけるのかな?

もしそうだったら叩きつけられる前に糸で助けよう。

勢いを殺すように引っ張ればいけないかな。

僕の職業に関しては、ハピネス達が出てるから隠せないだろうし、最悪何か言われても制限があるから大丈夫だよね。


テンペストバードを目で追っていると、結構な高さまで飛んでいた。

100mは離れてると思う……自信ないけど……。

こんな高さから紐なしバンジーはトラウマ物だけど、大丈夫かなぁ。


かといって地上からはどうしようもないのでテンペストバードの動きを注意するしかない。

そして、テンペストバードが足を振りかぶって、銀太郎さんを地面に向けて放った。

勢いよく投げられた銀太郎さんだけど、少ししたところで急に消えた。


「あれ?銀太郎?」

「銀んさーん!」

「ぎーん!」


剣の人のパーティが銀太郎さんの名前を呼ぶ。

ステータスプレートを見るとHPがあるから死んだわけではないんだろうけど、どこに行ったんだろう。


「キュウ!」


銀太郎を探している剣の人達の前にトバリが降下してきた。

その後ろ足には必死の形相で斧を握っている銀太郎が掴まれていた。

掴まれているし、助かってるんだけど、運び方が獲物を持ってきたような感じなのは仕方がないんだろうね。

鎧の腰部分を雑に掴んだだけだし。


「よ、よかったです」


ミヤビちゃんが軽く息を吐いた。

見てる側も心臓に悪いよね。


「ミヤビちゃんが指示したの?」

「い、いえ、トバリちゃんが自主的に、です」

「そうなんだ」


シロツキは周囲を旋回していたけど、トバリは夜に紛れて動いたみたいだ。

正直いつ動いたのかはわからないよ。


「銀太郎!無事か?!」

「お、おぅ。何とかな……」


銀太郎さんは斧を杖代わりにして立ち上がり、テンペストバードを睨みつける。

よかった。

トラウマにはなってなさそうだ。


「キュエエエエエエエエエエ!!!!」


銀太郎さんが受け止められたからか、テンペストバードが落下の勢いのままこっちに突っ込んできた。

でも、そのルートにはミヤビちゃんがフロントフルガードを発動したまま待機していたから、攻撃のチャンスになる……はずだよ!


テンペストバードは止まることなく突っ込んできて、ミヤビちゃんが構える白い盾に激突した。

衝撃で周囲に風が舞い上がり、更にテンペストバードが纏っていた風も吹き荒れたことで、ハピネス達の服がバタバタと音を立てる。


「うぅぅぅ!!!」


ミヤビちゃんが盾の位置をずらして、テンペストバードの頭を抑え込もうとしている。

それに対抗して抑え付けられないように踏ん張るテンペストバード。

いつの間にか地に足つけてたよ。


でも、ハピネス達では吹き荒れる風の中を進ませれそうにない。

中心に近づけば近づくほど風が強くなってるみたいなので、飛ばされるかもしれないし。


幸い纏ってる風にはダメージはないみたいなので、ミヤビちゃんのHPは減っていないけど、このままだと僕は攻撃できないよね。

一応試してみるけど。


「ランス!」


アザレアで光の槍を打ち出しながら、クローバーにパチンコを使わせる。

パチンコから放たれた石は、テンペストバードの纏う風であらぬ方向に飛んで行ったけど、光の槍は何とか当たった。

狙った場所からはだいぶズレてるけど。

上からはシロツキとトバリがブレスを吐いていて、テンペストバードの背中に当てていた。

ハピネスは……僕の迷いに迷った命令のせいで同じ場所を行ったり来たりしている。


「クルルルルルルルル!!」


ちょっとの間ミヤビちゃんが盾で受け止めていたけど、先に動いたのはテンペストバードだった。

竜巻を上空に向けて発生させた。


「きゃあ!」


突進はガードで防いで吹き飛ばされなかったミヤビちゃんだけど、竜巻は盾で覆っていないところにも当たったみたいでバランスを崩した。

そして、バランスを崩したことでフロントフルガードが解除されたのか、ミヤビちゃんが吹き飛んだ。

僕の方へ。


「うぉっと!」

「あ、ありがとうございます」


飛んできたミヤビちゃんを何とか受け止めることに成功した。

少しダメージを受けたけど、これはミヤビちゃんが障害物扱いで、僕にぶつかったからだと思う。

あくまで吹き飛ばしたのはテンペストバードだし。


そのテンペストバードはというと、竜巻を解除して地面すれすれで滞空していた。

もちろん、風は纏ったままだ。


周囲を見ると6人パーティのメイスの人以外は地面に倒れてたり、岩に叩きつけられたりしていた。

ミヤビちゃんが抑え込んでるときにチャンスだと思って接近したんだろうね。

でも、あんまり攻められなかったみたいで、テンペストバードのHPはまだ2/5ほど残っていた。

あの風さえなければ遠距離攻撃も当てられるのに。


と思っていたらテンペストバードが横に吹っ飛んだ。


「え?」


ミヤビちゃんのHPが減っていたので、クローバーで回復しながらアザレアに魔法を撃たせようとしていたタイミングだったので、何が起きたのかよくわからない。


6人パーティは起き上がったばかりだし、ミヤビちゃんは回復中。

ふとステータスプレートを見るとレイドパーティ2が増えていた。

そこに視線を合わせると『ナックル』『赤鬼さん』が表示された。

え?

ナックル?


テンペストバードが吹き飛ばされる前の場所を見ると、棘のついたグローブを付けて、で右ストレートを放った体勢のナックルがいた。


「よぉ!面白そうなことしてるな!」


その横には身長2m50cm程の肌が赤くて角の生えた鬼がいる。

あれが赤鬼さんか……。


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