2人と2頭と3体VSテンペストバード(幼)
目の前にはテンペストバード(幼)が滞空している。
大きな翼ほとんど動かしてないから、魔法で浮いてるんだと思う。
テンペストなんて名前だから、風を操るのが得意なんだろうね。
「ミヤビちゃんはシロツキ達に乗れば逃げれるよね?空を飛んで逃げてくれてもいいんだよ?」
「そ、それなら、オキナさんがトバリちゃんに乗れば、い、一緒に逃げれますよ」
「僕も乗れるの?」
「た、たぶん?」
疑問形だった。
ミヤビちゃんの騎竜だから、ミヤビちゃんしか乗れないと思ってたけど、もしかしたら僕も乗れるかもしれないんだね。
それだったら、空高く飛んでみたいな。
「キュエエエエエエエエエ!!!」
「っ!試してる時間はなさそうだね!とりあえずは様子を見ながら戦ってみよう!」
「は、はい!」
テンペストバードは一鳴きした後、翼を動かして高く飛んだ。
空中で円くように大きく回り、その勢いのまま山頂に突っ込んできた。
鋭い体当たりだね!
「うぉ?!」
「ひゃっ!」
僕とミヤビちゃんは左右に分かれて避けたけど、テンペストバードが通った後に強い風が吹き荒れたせいで吹き飛ばされて、少しダメージも受けた。
とりあえず、丸腰では対処できないから、誰か出さないと!
近接戦闘は難しいだろうし、ここは遠距離攻撃が1番充実してるアザレアかな!
「人形の館!アザレア来い!繰り糸!」
アザレアに糸を繋いだ。
後は攻撃する属性を選ぶ必要があるんだけど、風ではないことはわかる。
けど、弱点はわからないよ。
鳥だから雷とか、生き物全般火に弱いとか、色々頭をよぎるけど何も思い浮かばない。
とりあえず光にしようかな。
周りも暗いから、闇だと攻撃が見えないかもしれないし。
「魔法少女の杖・光!」
魔石が入れ替わる音がして、属性が光になった。
反撃しないと一方的にやられるだけだから、とりあえず攻撃してみよう。
「ボール!」
テンペストバードは突っ込んできた後、また滞空していたので、それを狙って光の玉を放った。
別にそこまで遅い物じゃないんだけど、さっきのテンペストバードの動きを見ると避けられそうだ。
ちなみに僕は避けれないよ。
テンペストバードは予想通り避けた。
しかも、ギリギリでサッと避けるんじゃなくて、余裕を持ってフワッと避けた。
ボールは当てられそうにないね。
そうなると、次は……。
「ランス!」
ボールより速いランスならもしかしてと思って放ったけど、これはギリギリで避けられた。
もうちょっと近ければ当てられるかもしれない。
そんな風に次のことを考えていると、避けた体勢のテンペストバードにの翼にシロツキに乗ったミヤビちゃんが突っ込んだ。
「ピィイ!!」
ミヤビちゃんの槍が翼に当ったけど、HPは全然減ってない。
テンペストバードが遥かに格上なんだろうね。
ミヤビちゃんは翼に攻撃した後、そのまま突き抜けて距離を取り、今は周囲を旋回している。
僕がボールやランスで体勢を崩させて、そこにミヤビちゃんが攻撃すれば、ダメージを与えれるのはわかったけど、MPが保たない。
もっと効率よくダメージを与えるにはどうすればいいんだろう。
避けられると思うけど、範囲魔法も使ってみよう。
「ストーム!」
テンペストバードの足元に、光り輝く竜巻が発生した。
即座に範囲外に出られたけど、ほんの少しHPが減っていたのでダメージは与えられたけど、焼け石に水だよ。
「キュウ!」
テンペストバードが避けた先から、体が大きくなったトバリが突っ込んでいく。
トバリはテンペストバードに噛みつき、勢いに任せて地面に叩きつけようと頑張ったみたいだけど、耐えられた上に蹴り落とされた。
遠くでミヤビちゃんがトバリの名前を呼んでるのが聞こえたよ。
僕ができそうなことはハピネスを投げて近接戦闘か、ダメ元で繰り糸を放つぐらいだ。
絶対に弾かれるけど、やるだけやってみよう。
「繰り糸!」
避けられた。
けど、ミヤビちゃんが避けた先に突っ込み、今度は体に攻撃できた。
それでもHPは全然減ってないけどね。
「キュ!」
トバリの鳴き声が聞こえたかと思うと、上空から黒いブレスが降ってきた。
テンペストバードは途中で気づいて避けようとしたけど、左の翼にあたり、バランスを崩した。
ここだ!
「繰り糸!」
今度は当てることができた。
だけど、予想通りテンペストバードの体は光ることなく糸がちぎれた。
それと同時に、僕の目の前にウィンドウが表示された。
『繰り糸のレベルが3になりました。右手中指から糸が出せるようになります。スキル使用時に伸ばしている指から出ます』
ウィンドウを叩いて消した。
このタイミングで3本出せるようになった。
前回はブルースライムキングのプニおさんに繋いで失敗した時だから、格上と接続して弾かれるとレベルアップするのかもしれないね。
そうだとしたらすごく面倒なんだけど……。
それに、この場でハピネス、クローバー、アザレアを操れてもあんまりプラスにならない気がするけど、出し惜しみするよりかはいいかな。
「ハピネス!クローバー来い!」
開いたままの人形の館から、両手が外れたハピネスと、パチンコを持ったクローバーが出てきた。
パチンコがあったね。
これならMPを消費せずに遠距離攻撃できるよ!
幸い弾代わりの石はいっぱいあるし。
「やぁっ!」
ミヤビちゃんがシロツキとトバリのコンビネーション攻撃でテンペストバードを翻弄している間に準備を整えよう。
「繰り糸!」
ハピネスとクローバーに糸を接続する。
クローバーには周囲の石を拾わせてパチンコの準備。
ハピネスだけ左手の糸なので、投げれるように回転させる。
「ミヤビちゃん!交代!……ランス!」
ミヤビちゃんに声をかけると2頭の竜……とそれに乗るミヤビちゃんがテンペストバードから離れた。
それに合わせてクローバーがパチンコを放ち、キラキラと軌跡を描く石を飛ばした。
テンペストバードの右の翼を狙った石なので、左に避けられたけど、そこに合わせてランスを放った。
テンペストバードは避けられず、体に直撃した。
軽く仰け反ったタイミングで、回転した勢いのまま放り投げたハピネスがテンペストバードに近づくことができたので、左手で炎を出しながら、右手で切れるだけ切る。
落ちてくるハピネスは糸を短くして手元に寄せた。
これだけ攻撃しても減ったHPが1割に届くかどうかだし、よく見ると減ってるHPバーの上に、短いHPバーみたいなものが2本見えた。
合計3本分ってこと?!
それはちょっと無理じゃないかな……。
「えい!」
「きゅ!」
「キュゥア!」
僕の攻撃の終わりを見計らったのか、ミヤビちゃんが再度コンビネーション攻撃を仕掛けた。
ミヤビちゃんの槍、シロツキの爪、トバリの噛みつきの順で攻撃され、テンペストバードがバランスを崩して地面に落ちた。
チャンスだ!
「ランス!ランス!ランス!ランス!ランス!」
アザレアでランスを連射しながら、口の機巧の呪いも発動させた。
杖から高速で光のランスが放たれながら、文字列が周囲を回る黒い塊がゆっくりとテンペストバードに向かっていく。
その間にクローバーも口の機巧である救済と安らぎの調べを発動させる。
血まみれっぽく見える修道服で讃美歌を歌うホラーモードになったので、テンペストバードに向けて投げる。
たどり着いたら慈愛と救済の右手でHPを吸収してMPを回復する。
ハピネスは変わらず左手で炎を出しながら右手で切りつけさせる。
麻痺針を使うか迷ったけど、使うなら飛び立つ瞬間だと思ってる。
ハピネスが攻撃している横にアザレアの出した呪いが当たったけど、ただ弾けただけだったので失敗したんだと思う。
もう一回呪いを発動しておく。
人形3体に攻撃させながらマナポーションを飲んでMPを回復させていると、空からミヤビちゃんが降ってきて、槍をテンペストバードに突き立てた。
そして、ミヤビちゃんが離れるとシロツキとトバリがブレスを放ったので、急いでハピネスとクローバーを退避させる。
ダメージを受けなくても吹き飛ばされるからね。
それで岩に叩きつけられたら、そっちのダメージは入っちゃうし。
「ピギュアアアアアアアアアアアア!!!!!」
シロツキとトバリのマーブルブレスを受け、それによって起きた土煙が舞う中から、テンペストバードの叫び声が聞こえてきた。
そして、次の瞬間土煙が一気に晴れた。
中からは目に見える風を纏ったテンペストバードが現れた。
怒ったみたいだね。
ちなみにHPはようやく半分を切ったぐらいで、それでも残り2本あるせいで、全体ので見れば20%ぐらいなんだよね……。
「山頂から何か聞こえてきたので戻ってみたら……なんですかそのモンスターは!」
「ヤベーよ!」
「レイドだから入ってみたら、めちゃくちゃ強そうじゃん!」
テンペストバードが飛び立つ前に攻撃しようと思ったら、崖前で別れた6人組のパーティが現れた。
スキル(レベルアップ)
〔繰り糸Lv:3〕〔人形の館Lv:2〕〔同期操作Lv:1〕〔工房Lv:2〕〔人形作成Lv:1〕〔自動行動Lv:1〕〔能力入力Lv:1〕〔自爆操作Lv:1〕 〔〕
スキルスロット:空き1
スキルポイント:残り10