表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
World Wide Wonderland –人形使いのVRMMO冒険記–  作者: 星砂糖
第1章 –World Wide(ログイン1日目)-
55/287

突発レイドイベント

空から戻って来たミヤビちゃんを置いて、山小屋の前に移動した。

山小屋は南側なので周囲には何かが争った跡があって、岩や地面が削れていたり、地面に防弾ガラスをハンマーで殴った時のような蜘蛛の巣状のヒビ割れがポツポツとあった。

大きいものだと直径3mぐらいのヒビ割れで、小さいものだと30cmぐらいだ。

武器を叩きつけたのかな?


ヒビの中心をよく見ると、拳にも見える。

もしも拳だとしたら僕の手の3倍はあるね。

他のヒビには僕の拳と同じぐらいの大きさのもあった。

これは、拳みたいに見える中央部に小さな穴がいくつか空いてる。

イタズラモンキーのボスみたいなのが居たのかな?

他の人が倒したから今は居なくて、しばらくしたら復活するのかもね。


そんな戦闘跡がある広場に建っている山小屋にも関わらず、なぜか壁の大きな穴以外は特に傷ついていない。

結構近いし、猿だったら入り込みそうなんだけどね。

まぁ、考えていても仕方がないし、とりあえず扉から山小屋に入ろう。


扉の向こうはダイニングキッチンだった。

横長の机と椅子が6脚。

奥のキッチン部分には2つのかまどと水瓶がある。

ただ、お皿や調理器具はないみたいだね。

先に登った人が取って行ったのか、あるいは放棄されてから長い時間が経ってるかだね。


床には埃が積もっていて、僕以外の足跡がいくつもある。

その足跡はキッチン周辺や2階への階段に続いている。

外から見た感じでは2階建のようには見えなかったんだけど上があるらしい。


先人の足跡に沿って2階に上がる。

そこは2階というより屋根裏部屋みたいな感じだった。

ベッドの木枠だけが置かれているので、ここで寝泊まりしていたんだね。


「ん?」


1番奥の木枠の下で薄っすら光っている物があった。

覗き込んでみたけどよくわからなかったので、手を伸ばしたら消えた。

アイテムバッグの中に入ったみたいだね。


アイテムバッグを開いてみると、ライトグリーンの鳥の羽が入っていた。

羽のアイコンをタッチしてみると。


名前:テンペストバード(幼)の抜け羽

説明:テンペストバードの幼体から抜けた羽。

・取り出す

・ロック


テンペストバードっていうモンスターの羽らしい。

(幼)って書いてるけど、鳩よりは大きな羽だね。

成長したらめちゃくちゃ大きくなるんじゃないかな。


他のベッドの下も探したけど、何もなかったので1階に戻った。

後は外から見ると壁に穴の空いていた部屋だね。

ダイニングの横にある部屋で、扉は閉まっているので、ダイニングから中の様子はわからない。

外からは暗くて見えなかったけど、開けたら何かが起きるとかはないよね?


ドキドキしながら扉を開けると、そこには荒れ果てた部屋があった。

まぁ穴が開けられるぐらいだから仕方ないけどね。


部屋に入りながら床を見てみると、ダイニングとは違い足跡は付いてないどころか埃が積もってなかった。

いくら壁に穴が空いているとはいえ、埃が積もらないなんてあるのかな?


部屋の中には小さな机や割れた花瓶、何かの絵が飾られていたであろう額縁なんかがあったけど、そのどれにも埃は付いてない。

それに、壁の破片が部屋の中になく、むしろ外側に木の破片が散らばっていた。


もしかして外から開けられたんじゃなくて、中から開けられたのかな?

中で戦闘が発生して、壁を突き破って外で戦うとか。


そうなると人対人になるから、さっきの大きな拳は違う戦闘なのかもしれないね。

少なくとも拳が僕の3倍ほどもある生物は、この小屋には入らないし。


荒れた部屋を物色したけど、特に変わったものはなかったので、外に出よう。

壁の穴から外に出て山小屋の裏側を確認したけど、裏側も何もなかった。

中で見つけたのはテンペストバードの羽が1枚だけで、他は何もなかったんだけどこれでいいのかな?

クエストの進行状況を確認したら何かわかるかな。


『調査クエスト:山小屋調査

依頼者:冒険者協会

内容:北の山の頂上に建てた山小屋の様子を確認してください。

山小屋は1つしかないのですぐにわかるはずです。

報酬:2000ゴールド

状況:調査完了。冒険者協会にて報告待ち』


え?

調査完了になってる……。

冒険者協会に報告に行けばいいようだけど、口頭で聞き取りでもあるのかな。

でもまぁ、完了になってるならそれはそれでいいや。

失敗になったりどうすればいいかわからなくよりはマシだし。

ミヤビちゃんをの所へ戻ろう。


「ミヤビちゃんお待たせ。問題なかった?」

「あ、はい、だ、大丈夫ですよ」

「そっか。それなら良かった。そういえばミヤビちゃんは職業クエストクリアできたの?」

「は、はい!できました!そ、空高く飛んだら星空が近くなったり、す、水平線が丸く見えたんです!他にも遠くの空に光る何かがあったり!その!あの!とにかく凄かったです!」

「そっか。すごい光景なんだろうね」


ミヤビちゃんの目がキラキラと輝いていて、両拳も胸の前で握ってることから興奮具合がわかる。

それに、ミヤビちゃんの話の中に出てきた遠くの空に光何かがすごく気になるよ。

もしかして、天空城だったりして。


空に浮かぶ巨大な岩の中にある白亜の城。

場内には空気中の水分を集めることで清流が流れ、やがてその水は滝のように地上に落ちていく。

夜には遠くに浮かぶ月に照らされて薄っすらとレモン色に染まる城壁。

場内では天空ならではの大きな月を鑑賞できるんだね……。


いいなぁ。

行ってみたい。

人形で飛ぶにはどうしたらいいのかな?

今度ゼロワンさんに相談してみよう。

天空城って決まったわけじゃないけどね。


「お、オキナさんはクリアできたんですか?」

「う〜ん。よくわからないうちにクエストが進行しちゃってて、後は冒険者協会に報告するだけだね」

「進行したなら、いいんですよね?」

「そうだね。後は山小屋の中でこんなのを見つけたんだ」


アイテムバッグを操作してテンペストバードの羽を取り出し、ミヤビちゃんの前に持っていく。


「わぁ……。綺麗な羽です……キラキラと光ってます……」


ミヤビちゃんの目もキラキラと光ってるよ。

というか、この羽の光がさっきより強くなってるんだけど。

さっきは薄っすらと羽の周りが光る程度だったのに、今は濃い緑の光を放ってる。

しかも、周囲の風も強くなってるんだけど、何かが起きそうだよ。

早く収納しておこう。


アイテムバッグを開いてテンペストバードの羽を入れた瞬間、別のウィンドウが出てきた。


『レイドイベントが発生しました。

フィールドは北の山の山頂広場。

参加可能パーティは3パーティです。

現在の参加メンバー

・オキナ

・ミヤビ


本レイドイベントから逃走する場合、山頂広場から退避してください』


ん?

レイドって複数のパーティで挑むやつだよね。

どういうこと?

何が起きたの?


「あ、え?レイ…ド?」


ミヤビちゃんもウィンドウを前にして固まっている。

周囲を見ると、山頂広場の外周に『レイドイベント発生中 戦闘可能パーティ1/3』という文字が流れる黄色い幕のようなものが、規制線のように僕達を囲んでいた。


3パーティで挑むイベントに2人とか無理だよ!

早く逃げないと!


「ミヤビちゃん!逃げよう!」

「は、はい!」


ミヤビちゃんと一緒に南側の登山道を目指して走る。

シロツキとトバリはミヤビちゃんに乗ってるから問題なし。

僕も人形を出してないし、ただ走るだけなんだけど、僕よりミヤビちゃんの方が速いのはステータスのせいだよね。


山小屋の前を過ぎたあたりで規制線の幕が黄色から赤に変わった。

どう考えても戦闘開始だよね……。


「きゅあああああああ!」

「キュウウウウウウウ!」


シロツキとトバリが空に向かって吼える。

するとそれに答えるかのように空から声が聞こえてきた。


「ピィイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!」


それは鷹を大きくしたモンスターだった。

羽は緑で、さらに体の周りが濃い緑で光っている。

どうみてもテンペストバードだけど、翼を広げているせいでとても大きく見える。

両翼合わせて6mは超えてるね。


羽根1枚の大きさはさっき手に入れたものと同じだから、これでも(幼)なんだろうね。

成長したらどうなるんだろう。


「お、オキナさん……」

「と、とりあえず戦って、隙を見て逃げよう……」

「うぅ……わ、わかりました」


全く勝てる気がしないけど、規制線の外に出れば逃げられるよね?

さっきのウィンドウでもそう書いてたし。

まさか、赤くなったら逃げられないとかないよね?


オキナが羽を手に入れられたのは、テンペストバードが北の山に近づいたせいで、羽が光ったからです。

6人組探索した時は光っていなかったので見落しました。


突発レイドイベントは、飛び回る伝説のポケットなモンスみたいなもので、出会ったらラッキーあるいはアンラッキーなモンスターです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ