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World Wide Wonderland –人形使いのVRMMO冒険記–  作者: 星砂糖
第1章 –World Wide(ログイン1日目)-
35/287

治療人形のクローバーと魔導人形のアザレア

予約投稿する余裕がないほどギリギリだった。

GW末に見直し予定

応接室のソファに座った僕の目の前には、ゼロワンさんとゼロワンさんが報酬として持ってきた、ハピネスが入っていたトランクケースと同じ大きさのトランクケースが2つ、机の上に置かれている。


ゼロワンさんは机に置いたトランクケースを両方とも開き、回転させてこちらに向けてきた。


片方にはライトグリーンの修道服を着せられた、腰まである金髪の人形。

もう片方には黒い魔女服と先の折れたとんがり帽子を被った、肩ほどの銀髪だった。

両方ともブーツを履いた状態で、足を抱えて横になっている。


修道服の方は何も持ってないけど、魔女服の方は右手に10角形のメイスのようなものを持っている。

そのメイスのそれぞれの真ん中に窪みがあり、そこには『赤・青・黄緑・茶・水・黄・濃い緑・透明・白・黒』の丸い玉が嵌っていた。

玉の大きさはビー玉より少し大きめに見える。

茶色い玉からステップボアの魔石かと思ったけど、それよりも少し大きい。

10個もの魔石みたいな物がついてる杖……。

これも魔道具なのかな?

だとしたらすごい使いづらそうなんだけど……。


「それでは、紹介させていただきます。まずはこちら」


ゼロワンさんは黄緑の修道服の方に手を向けた。


治療人形(メディカルドール)のクローバーです。治療人形と書いてメディカルドールと読みます」

治療人形(メディカルドール)……。治療……。回復ができる人形ですか?」


回復ができるならポーションの数を減らせるね。

もしかして、状態異常も解除できたりするのかな?


「半分正解です」

「半分ですか?」


回復で半分?

逆の事といえばダメージを与える事だけど、手術的なことをでもするのかな?

メスとか取り出して。


「はい。半分です。ビスク様が他者に渡す人形が、そんなに単純なわけがありません」

「はぁ。そうなんですか」


先代の人形使い(ドールマスター)は奇天烈な人だったのかな。

自分の作ったゼロワンさんにこんな評価をされてるなんて。

確かにハピネスもパッと見たら普通なんだけど、右手からは剣が出てくるし、左手は銃口が出てきて火を噴くし、口からは麻痺針を吐くからね。

使ってない機巧(ギミック)で、体から7枚の刃を出して、抱きついた相手に突き刺す物もあるし。


「操作等はオキナ様の方で確かめていただきたいのですが、簡単にご説明します」

「お願いします」

「まずは右手です。こちらにはMPを消費してHPを回復させる魔道具と、相手のHPを吸収してMPを回復する魔道具が埋め込まれています」

「2つも入ってるんですか?」

「はい。クローバーのコンセプトは人形使い(ドールマスター)本人の継続戦闘能力向上です。右手でHPの回復とMPの回復ができるようになっています」

「なるほど……」


確かにMPが650もあるのに、繰り糸(マリオネット)を使用したり、ハピネスを使って戦うとすぐに無くなるね。

MPを回復できるなら長時間戦闘できるかもしれない。


「続いて左手です。こちらも2つあります。バッドステータスを10個までシリンダーに吸収する魔道具と、吸収したバッドステータスを放出する魔道具です。吸収したものが10を超えると古いものから消えていきますのでご注意ください」

「えっと……吸収と放出ですか?」

「はい。体の淀みを払うだけでなく、相手に返すことを意識しています」

「そうなんですか」


回復だと半分正解ってこういうことなんだね。

右手でHP、左手でバッドステータスが回復できるけど、右手でHPを代償としたMP回復、左手で集めたバッドステータスを相手に与えることができると……。

修道服を着せてるのは悪魔祓いとか「神に仇なす者に裁きを!」みたいな感じなのかな?


「続けて口ですが、こちらは攻撃ではありません。讃美歌を歌います」

「え?歌う?」


戦闘中に歌うってことだよね?

どういうこと?

相手に位置がバレるだろうし、狙われやすくなるんじゃないの?


「先ほどお話ししました両手の魔道具の内、2つ目を発動する際には讃美歌が必要となります。最初の魔道具は讃美歌がなくても使えるのですが、2つ目は使えません」

「何でそんな機巧(ギミック)になってるんですか?」

「ビスク様のご趣味です。何でも『相手に危害を加えるのだ。許しを乞いながらやる方が美しいではないか』とのことです」

「何となくわかります……」


治療に勤しむシスターが、戦いたくないのにその力を使うしかない状態に陥った時、神に祈りながら戦うイメージが思い浮かんだ。

何かを守るために戦う人は美しいし、ビスクさんの考えもわかる。

わかるんだけど、使いづらそうだね。


「最後に胴体部分ですが、これはハピネス同様に服とスキンが破ける魔道具ですのでご注意ください」

「はい」


ハピネスの使ってない技だね。

服とスキンが勿体無いし、ハピネスの場合使うタイミングもないんだよね。

相手に近づかないとダメだけど、切ったり炎をぶつけて倒せてるしね。

この子の機巧(ギミック)も、多分使わないかもしれない。

服とスキンが勿体無いよ!

作れるようになったら考えるけど……。


「肝心の内容ですが、オキナ様の全MPを消費して、前方に魔力の奔流を放出するものとなっています。威力は消費するMPに比例します」

「全MP消費……なんで治療人形(メディカルドール)にそんな機巧(ギミック)があるんですか?」

「これもビスク様のご趣味です。『神に仕える者の最後は身を賭した攻撃に決まっておるだろう。自爆はスキルでできるから命を掛けた全力攻撃といったところかの』とのことです」

「なるほど。先代とは気が合いそうですね」

「そうですか。それは良かったです」


シスターが身を賭して悪漢から孤児を守る姿が想像できたよ。

自分の全魔力を使って攻撃しようとするシスター。

それを止めようとする子供達と、怯む悪漢。

それでも退かない悪漢に、シスターから魔力が放たれる!

こんなイメージだね。


「続けてこちらの紹介をさせていただきます」


ゼロワンさんは黒い魔女服に身を包んだ人形を手で示す。


「こちらは魔導人形(マギアドール)のアザレアです。魔を導く人形と書いて魔導人形です」

「魔法を使うための人形ですか?」

「はい。その認識で問題ありません。それでは、武装の説明をさせていただきます。まずは右手ですが、持っている杖を使って魔法を放ちます。10個の小魔石の内、どれかを内部シリンダーにはめ込み、はめ込まれた魔石の属性魔法を放つことが可能になります」

「えっと……今は魔石が見えてる状態ですけど、どれか1つが内部に入るってことでいいですか?」

「そうです。杖には魔石を入れ替える機巧(ギミック)があり、右手には魔石経由で魔法を放つ機巧(ギミック)があります」

「なるほど……ちょっと複雑ですね」

「慣れるまでに時間がかかると思いますが、使用方法はそこまで複雑ではないので、あとで試してみてください」

「わかりました」


要は魔石を切り替えることで属性が変わるってことだよね。

切り替える、魔法を使うっていう流れで戦うと思うんだけど、魔石の数だけ属性があるとしたら10属性があるとしたら10属性になるよね……多くないかな。

すごい難しそうなんだけど……。


「続けて左手です。左手は魔法によるシールドを張る魔道具です。シールドは物理・魔法どちらも対処できますが、半球状のシールドを手をかざした方向に向けて出す物なので、逆側からの攻撃にお気をつけください」

「一度に張れるのは1つなんですか?」

「そうです。また、強度は使用したMPによって変わります」

「わかりました」


なかなか使い勝手が良さそうだね。

乱戦の時に背後を守ったり、正面からくる敵を止めたりできそう。

そのためには、強度を調べないとダメだけどね。


「続いて口ですが、こちらは口から黒い塊のような物を射出して、それが当たったものに対してランダムでバッドステータスを与える魔道具です。当然、相手の耐性によっては何も起きない場合もあります」

「はぁ……バッドステータスですか……」


魔女服を着た人形から与えられるバッドステータスって、呪いだよね?!

アザレアの魔道具怖っ。


「最後に胴体ですが、こちらもハピネス、クローバー同様に服とスキンが破けるものとなっていますので、ご注意ください」

「わかりました」


胴体の説明で服とスキンが破けるのは予想してたよ。

ビスクさんの趣味なのか、服やスキンが破けることを勿体無いと思わせて頻繁に使わせないようにするためかはわからないけどね。

僕は勿体無いと思うから使わないけど、人形を完全に道具だと思ってる人だったら、ボロボロになることも厭わずに使いそうだね。


「内容は周囲の魔力を集め、使用者に送る魔道具です。クローバーの右手は、前方のHPのある生物に対して発動しますが、アザレアの場合使用者とそのパーティメンバーを除く周囲すべてが対象となりますので、草木も枯れます」

「え?無差別ですか?!」

「はい。森で行なった場合、使用した場所だけ荒地となるでしょう」

「そ、そうなんですか……」


呪いでバッドステータスといい、周囲からのMP吸収といいアザレアはちょっと怖い。

ん?

もしかしてクローバーとアザレアは互いに補う関係なのかな?


アザレアでバッドステータスを与えて、倒す前にクローバーで吸収。

アザレアで周囲の魔力を吸収して、クローバーで放出。

クエストを2つ同時に報告したからセット感が強いけど、交互に報告したとしても結局揃うはずだよね。

それに、クローバー単体だとバッドステータスを与えてくる敵が少ない序盤は、機巧(ギミック)の1つが使えなくなるよね。


序盤にバッドステータスを与えてくる敵が少ないっていうのは、想像だけどね。

今のところ受けたバッドステータスが麻痺だけなので、そう思っただけだよ。


「説明は以上となります。操作はハピネスと変わりありませんので、ご自身でお確かめください。MPの消費量などはトランクケースに詳細を記載した紙を入れてあります」

「わかりました。ありがとうございます」


ゼロワンさんがトランクケースを押し出してきたので、中からクローバーとアザレアを取り出す。

これで所有権が僕に移ったはずなので、一旦収納する。


人形の館(ドールハウス)。クローバー、アザレア、収納。人形の館(ドールハウス)


2体とも問題なく収納できた。

続けてトランクケースを閉じて、アイテムバッグに入れる。

こちらも問題なく収納できた。


「それでは最後に、私からの依頼です」


ゼロワンさんが言った瞬間、目の前にウィンドウが表示された。


『職業クエスト:人形の目線

依頼者:自動人形(オートマタ)ゼロワン

内容:同期操作(シンクロアクション)を使用して生物を倒してください。

普段操っている人形の目線だからこそ見えるものもあります。

報酬:【人形のドールハウス】Lv:3,人形作成素材セット

状況:0/50』


もちろん『受ける』ボタンを選択した。

今度は「?????」はなかったので、人形の追加はないね。


「それでは、報酬は以上になります」

「え?あれ?【工房】スキルのレベルアップ依頼は無いんですか?」

「はい。次の依頼は私ではありません。ホールへご案内しますので、そこで受けてください」

「え?あ、はい」


工房Lv2で追加されたホールに誰かいて、その人から依頼を受けるってこと?

そういえばゼロワンさんは『工房の維持を担当してる』って言ってた。

ということはホールには別の担当がいるってことだよね。

ゼロツーさんかな?


「それでは、ご案内いたします」


ゼロワンさんが立ち上がったので、後に続いて応接室を出た。

目指すは追加されたホールだ。


ステータス(変化なし)


名前:オキナ

種族:人族

職業:人形使い(ドールマスター)☆5

Lv:4

HP:130/130

MP:650/650

ST:113/113

STR:13

VIT:13

DEF:13

MDF:130

DEX:315

AGI:13

INT:260

LUK:50

ステータスポイント:残り16


スキル

繰り糸(マリオネット)Lv:2〕〔人形の館(ドールハウス)Lv:2〕〔同期操作シンクロアクションLv:1〕〔工房Lv:2〕〔人形作成ドールクリエイトLv:1〕〔自動行動オートアクションLv:1〕〔能力入力スキルインプットLv:1〕〔自爆操作(爆発は主人のために)Lv:1〕〔〕

スキルスロット:空き1

スキルポイント:残り10


職業特性

通常生産系スキル成長度0.01倍

通常魔法使用不可

武器装備不可

重量級防具装備不可


装備

・武器1:装備できません

・武器2:装備できません

・頭:なし

・腕:なし

・体上:冒険者のローブ

・体下:冒険者のズボン

・足:冒険者の靴

・アクセサリー1:なし

・アクセサリー2:なし


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

余談

クローバーは最初『キュアドール』でしたが、それでは某プリティでキュアキュアな人形とかぶるため変更しました。


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