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World Wide Wonderland –人形使いのVRMMO冒険記–  作者: 星砂糖
第1章 –World Wide(ログイン1日目)-
29/287

竜騎士のミヤビちゃん

GWに見直し予定。

仕事の関係上、明日投稿できるかわかりません。


白と黒の小さい竜を抱いた小柄な女の子は、竜を地面に置くとアイテムバッグを操作したのか、身の丈よりはるかに長い槍を取り出した。

形状は突くことに特化した突撃槍だ。


女の子は槍の石突を地面に突き立て、左手で持っている。

後ろに流したストレートの黒髪で、視線をキョロキョロとせわしなく動かしてる人見知りするのか、さっきまで襲われてたせいで人が怖いのかはわからないけど、とりあえず危害を加えるつもりはないから、刺激しないようにしよう。


手に持った槍は、突く部分が女の子の身長と同じぐらいあるからとても重そうだけど、女の子は難なく持ってていた。

ゲームならではだけど、小柄な女の子が身の丈に合わない武器を持っている姿はアンバラスさがあっていいね。


地面に置かれた2頭の竜は、翼をぱた付かせて飛び上がり、黒い方が女の子の右肩に、白い方は頭に乗った。

女の子は改めてこちらを見た。


「あ、あの!助けてくれて、本当にありがとうございます!」

「たまたま近くにいたからね」


ぺこぺこと何度も頭を下げる女の子。

頭を下げるたびに、長い髪の毛が踊る。

竜はその動きで振り落とされることもなく、乗ったままだった。


「あ、あの……先にアイテムを拾った方がいいと思うんですけど……」

「あー……そうだね」


広場には倒した人達が撒き散らした物がある。

剣や盾といった武具や、鉱石や角材や草などの素材。

干し肉や、食料らしき葉で包んだ何か。

白い液体が入った瓶と、緑の液体が入った瓶もある。

ポーションとマナポーションだと思う。

他には色のついたガラス玉や金貨があった。

ガラス玉や金貨は小さいから見落としそうだね。


周囲にあるものは所有権がなかったからなのか、手に取った瞬間光になって消える。

アイテムバッグを開いて見ると、問題なく入っていた。


少しの時間をかけて、アイテムを拾い集めた。

鑑定してないせいで何を手に入れたのかわからないけど、結構な数の素材が手に入った。

これだけあれば装備を作ったり、人形の腕を作れそうだ。


「あの……オキナさんはこれからどうするんですか?」

「ん?街に戻るつもりだけど、名前は…あぁ、表示されてるのか」


キョウコさんが小学生プレイヤーは、名前表示に固定されてるって言ってたね。

安全モードを初めて目にしたから、そっちに気を取られて忘れてたよ。


「は、はい!オキナさんの名前は青色で表示されてますよ!」

「青色?さっきプレイヤーを倒したから赤色になってると思ったんだけど…」

「さ、さっきの人達は赤色でしたけど、赤色の人を攻撃しても青色の人はそのままだってチュートリアルの時に教えてもらいました!」

「そうなんだ」


この子はチュートリアルで教えてもらったらしい。

キョウコさんは教えてくれなかったけど……。


「そ、それで、その……。街までご一緒してもいいですか?」

「ん?別にいいよ」

「あ、ありがとうございます!」


女の子はまた頭を下げる。

一緒に行くってことは人形使い(ドールマスター)がバレる事に繋がるけど、この子ならいいかな。

この子は気づいてないみたいだけど、ハピネスは出しっぱなしだし、回収する必要もある。

それに、森を抜けるためにはハピネスが必要だ。

バラしても、どうせ閲覧専用になるだけだろうし問題ないかな。


「じゃあ準備するからちょっと待っててね」

「は、はい」


マナポーションを取り出して飲む。

これでマナポーションが無くなったけど、慎重に進めばなんとかなるかな。

できるだけ右手に剣を(ライトセイバー)かパチンコで戦おう。

左手に業火(レフトフレイム)は消費MPが多いから、できるだけ使いたくない。


MPを回復した後は、ハピネスの回収だ。

両手をはめ込み、左腕に抱きかかえ


て女の子に向き直る。


「あの、えっと……お人形ですか?」

「そうだよ。僕は☆5職業の人形使い(ドールマスター)なんだ」

「え?あれ?あの、職業が聞き取れませんでした……」


ナックル達と同じように職業が聞き取れなかったようだね。

少しだけ首をかしげる女の子。

そして、同じようにウィンドウが出てきた。


『【ミヤビ】に人形使い(ドールマスター)に関する閲覧権限を許可しますか?なお、許可しても書き込み権限はありませんので、他者との会話、メッセージ、掲示板などでの書き込みはできません。書き込みを許可する場合、フレンド登録後、フレンドメニューから実行してください』


この子はミヤビって言うんだね。

この機能のせいで名乗られる前から名前がわかっちゃうけど、名前表示もできるから問題ないか。

ウィンドウの『許可』ボタンを押す。


「改めて、☆5職業人形使い(ドールマスター)のオキナです」

「あ、今度は聞こえました!そのお人形を使って戦うんですか?」

「そうだよ。君を助ける時に戦ったのも、このハピネスだよ」

「ハピネスって言うんですね……。ありがとうございます」


ミヤビちゃんはハピネスにも頭を下げる。


「それで、君の名前は?」


ウィンドウのせいで知ってるんだけど、勝手に呼ぶわけにはいかないよね。


「あ、ごめんなさい。言ってませんでした。私は☆4職業の竜騎士(ドラゴンナイト)で、名前はミヤビって言います」

「よろしくね。ミヤビちゃん」

「は、はい!よろしくお願いします!」


竜騎士(ドラゴンナイト)なんだ。

と言うことは、白と黒の竜はミヤビちゃんの竜なのかな?


「じゃあ街に戻る前にパーティを組もうか」

「あ、お願いします」


ミヤビちゃんに向けて空中を叩くとメニューが表示される。

チュートリアルでジャックさんに向けて操作した時のメニューに加えて「対戦」という項目が増えている。

プレイヤーとメルカトリア人の違いかな?


メニューの中から「パーティ」を選んで、ミヤビちゃんに申請。

ミヤビちゃんはすぐに承認してくれたので、左上にミヤビちゃんが追加された。


「準備はいい?」

「あ、はい。大丈夫です!」

「じゃあ行こうか」

「わ、わかりました」


僕の後を少し開けてミヤビちゃんが付いて来る。

頭の上の白い竜が左右をキョロキョロと見て、肩の上の黒い竜はチラチラと後ろを振り返ってる。

ミヤビちゃんは前や足元を見てる。

警戒する範囲を分けてるのかな?


「2頭の竜はミヤビちゃんの竜だよね?1人で2頭ももらえるの?」

「え?あ、シロツキちゃんとトバリちゃんのことですよね。えっと、普通の竜騎士(ドラゴンナイト)は1頭です。で、でも、私が受け取った卵からはこの子たちが生まれたんです。その代わり他の人の竜と比べると小さいですけど」


シロツキちゃんと言いながら頭の上の白い竜を撫でて、トバリちゃんと言いながら右肩の黒い竜を撫でる。

確かに、身長130cmもないミヤビちゃんに乗るぐらいだから小さいね。


「そうなんだ。大変じゃないの?」

「えっと、育てるのも戦闘も問題ありませんよ。その、スキルで大きくして戦ってもらえるんです」

「スキルで大きくできるんだ」


まぁ、僕も人形で戦ってるからね。

見ただけだと戦えそうにない人形でも、内部構造とスキルでどうにかなってるし、ミヤビちゃんがそうだとしても納得はできるね。


「えっと、はい。ただ、大きくしても、他の人の竜ほど大きくならないので、攻撃力と体力は低いらしいですけど、コンビネーションがあるので問題ないです。わ、私も小さいので乗ることもできますし…」

「へー。乗れるんだ。乗った状態で飛べるの?」

「す、少しの間なら飛べます」

「それはいいね」


ミヤビちゃんの頭の上に乗れる大きさの竜が、ミヤビちゃんを乗せれるぐらい大きくなるらしい。

しかも、その状態で飛べるとは……。


いいな。

空からの景色が見たいな。

さすがに僕を乗せて飛んでくれとは言えないけど、いつか空を飛ぶ機会が欲しいものだね。


でも、ミヤビちゃんを乗せて飛べるほど大きくできるなら、なんで戦わなかったんだろう?

武器も持ってなかったし。


「さっきの奴らに襲われた時に戦ったりしなかったの?」

「あ、えっと、戦おうとしたんですけど、その、MPが切れてしまってシロツキちゃんとトバリちゃんを大きくできなかったんです。後、槍は採取する時に邪魔だったので…その、アイテムバッグに入れてました」

「そうなんだ。次からはMPにも気をつけないとダメだし、武器も安全な場所じゃなかったら出しておいたほうがいいね」

「そ、そうですね。気をつけます」


僕で言うところのハピネスを出してない状態ってことかな。

人形の館(ドールハウス)で取り出せるとしても、出してたほうが戦いやすいから今は出してるし、いきなり戦闘になることもあるからね。


MPに関しては、気をつけるぐらいしかできないかな。

後確認するとしたら、さっきのPK集団がミヤビちゃんを狙い続けていた理由だよね。

丸まって退かせないなら諦めるしかないと思うんだけど、そうしなかった理由があるのかもしれないし。


「ミヤビちゃんの竜が執拗に狙われた理由はわかる?」

「し、しつよう……?」

「えっと、しつこく……かな。しつこく狙われた理由。ミヤビちゃんが丸くなって守ってたら、さっきの人達は手出しできなかったよね?」

「あ、えっと、その、騎竜はテイムモンスターじゃないので、パーティメンバーに数えられないんです。その代わり、一度倒されてしまうと復活に複雑な条件が必要で、プレイヤーが倒した場合アイテムと経験値が入手できるんです」

「なるほど。じゃあ、さっきの奴らはアイテム狙いだったのかな?」

「そ、そうだと思います」


テイムモンスターだとパーティメンバーが埋まるから、召喚士(サモナー)獣使い(ビーストテイマー)はソロ向けだってナックル達が言ってた気がする。

でも、竜騎士(ドラゴンナイト)の竜はパーティメンバー扱いじゃないから埋まらないんだね。

その代わり、復活条件が厳しく、倒された時に経験値とアイテムが貰えるとなると、竜の素材欲しさに襲ってくる人がいても不思議じゃないのかな?

竜の素材って強そうだし。


そんなことを考えていると、シロツキが「きゅるきゅる」と鳴きだした。

それを聞いたミヤビちゃんは、シロツキちゃんが見ている方向に視線を向けた。

何か見つけたのかな?


ミヤビちゃんと同じ方向を見てみると、ステップボアが3頭いた。

3頭の視線から逃れるには大きく迂回する必要があるけど、下手に動けば見つかるかもしれない。

それに、ハピネスを使えば倒せると思うし……。


「倒そうと思うんだけど、大丈夫?」

「は、はい。大丈夫です。丸くなってる間にMPも回復しました」


そういえば、僕がマナポーションを飲んだ時も、ミヤビちゃんは何もしてなかったね。

PK集団襲われた時にはMPが無かったらしいけど、自然回復したらしい。

MPが僕と比べると少ないからだろうね。


「じゃあ、僕が一番奥のステップボアをハピネスのパチンコで倒すから、ミヤビちゃんは手前の奴を倒してくれるかな?残りの一頭は僕が倒すから」

「わ、わかりました。頑張ります」


小さな手を握って気合いを入れるミヤビちゃん。

一番奥を最初に狙うのは、突進を警戒してだ。

距離がある分助走が多くなり威力が増しそうで、プレートメイルのミヤビちゃんはともかく、僕には危険だしね。


繰り糸(マリオネット)。準備はいい?」


ハピネスに糸を繋いで、拾った石をパチンコにセットさせる。

引きしぼらせてからミヤビちゃんに確認を取ると、無言で頷いた。


「ゴー!」


声とともに石を放つ。

一番奥のステップボアの横腹に突き刺さり、HPバーが砕け散った。


右手に剣を(ライトセイバー)!」


すかさず右手を切り離して、ハピネスを放り投げる。

糸で勢いをつけて、ステップボアの背中に右手を突き入れる。

こっちも一撃で倒した。


ミヤビちゃんはシロツキとトバリを飛ばして、残った1頭に近づかせ、2頭の竜は、それぞれの体と同じ色のブレスを左右から吐いた。

ブレスはステップボアを中心にぶつかり合い、溶け合うかのように渦を巻いて弾けた。

ブレスが弾ける瞬間にHPバーも砕け散っていたので、後には何も残っていなかった。


ハピネスもなかなかの性能だけど、この竜もすごいね。

別に2頭で攻撃する必要はないんじゃないかな?

それぐらい凄まじい攻撃だったけど。


「えっと、その……シロツキちゃんとトバリちゃんが張り切っちゃったみたいで……その、やり過ぎちゃいました」

「そ、そうなんだ」


やっぱり、オーバーキルだったらしい。


ステータス(戦闘で消費)


名前:オキナ

種族:人族

職業:人形使い(ドールマスター)☆5

Lv:4

HP:130/130

MP:177/650

ST:113/113

STR:13

VIT:13

DEF:13

MDF:130

DEX:315

AGI:13

INT:260

LUK:50

ステータスポイント:残り16


スキル

繰り糸(マリオネット)Lv:2〕〔人形の館(ドールハウス)Lv:1〕〔同期操作シンクロアクションLv:1〕〔工房Lv:1〕〔人形作成ドールクリエイトLv:1〕〔自動行動オートアクションLv:1〕〔能力入力スキルインプットLv:1〕〔自爆操作(爆発は主人のために)Lv:1〕〔〕

スキルスロット:空き1

スキルポイント:残り10


職業特性

通常生産系スキル成長度0.01倍

通常魔法使用不可

武器装備不可

重量級防具装備不可


装備

・武器1:装備できません

・武器2:装備できません

・頭:なし

・腕:なし

・体上:冒険者のローブ

・体下:冒険者のズボン

・足:冒険者の靴

・アクセサリー1:なし

・アクセサリー2:なし

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