頭のパーツが多い
9時に噴水広場に集合なんだけど、北の鉄鉱山に行くために6時半にログインした。
あとはセインを待つだけなんだけど、5分もせずにやって来た。
「おはよー。さすがお爺さん朝は早いね〜」
「おはよう。お婆さんも早いよね」
「誰がお婆さんか!私はキュートでフレッシュな女の子ですー!」
「そうだねー」
「棒読みー!もう!……気を取り直して石拾いに行こうかー」
「そうだね。後のこともあるから走って行こう」
「りょ〜か〜い」
合流したセインとたまに学校でやるやり取りをした後、北の草原に出た。
うららさん達との待ち合わせまでに戻ってこないといけないので、途中のモンスターを無視して北の鉄鉱山まで走ることにした。
寄ってくるモンスターは、騎士人形と『近づいて来るモンスターを倒して』と指示を出した精霊が倒してくれたので、僕とセインはSTが続く限り走り続ける。
その結果、何度かの休憩を挟んだけどいつもの1/3以下の時間で辿り着けた。
出現するモンスターが弱いのもあるけど、STを消費する技のない僕とセインならではの移動になるのかな。
そして、鉄鉱山内部でもモンスターを騎士人形と精霊に任せて走り回ったおかげで採掘以外に時間を取られることがなかった。
イベントに向けての最後の追い込みなのか、ロックゴーレムだけではなくリトルアイアンゴーレムにも人が集まっていた。
中には地底湖の方へと向かっていくパーティもいたから、フルレイドボスが見つかるのも時間の問題かもしれない。
「この後は?」
「人形作成のレベル上げをするつもり。セインがくれた分も合わせたら必要数作れるからね」
「そうなんだ。それじゃあもう行く?」
「うん。工房」
セインが許可をしてホールへと移動した。
「お帰りなさいませ」
「ただいまゼロツーさん。今日は人形制作室へ行きます」
「畏まりました。こちらへどうぞ」
ゼロツーさんに階段裏へ案内された後工房エリアへ転移した。
すると、やっぱりゼロワンさんが待っていたので、用件を伝えて人形制作室へと向かった。
「おぉー。人形のパーツがいっぱいだー。目玉とか置いてあるのはちょっと怖いね」
「そうだね。それじゃあ僕は人形のパーツを作るから、セインは自由にしていて。暇ならゼロワンさんと話していてもいいんじゃない?」
「うーん……それもありだね」
セインが扉の近くで控えているゼロワンさんの方へと向かった。
僕が提案したけど、あの2人で何を話すんだろう。
「人形作成」
円卓に沿って並べられている椅子に座って人形作成のウィンドウを出した。
後47個胴体を作ればレベルが上がるから、ひとまずの目標はそこまでだ。
『人形作成のレベルが4になりました。頭の作成が可能になります。頭は目、鼻、耳、口の有無を変更できます。目をOFFにした場合同期操作時に視界が確保されなくなります。鼻をOFFにした場合匂いを感じなくなり、耳をOFFにした場合周囲の音が聞こえなくなります。同期操作時に言葉を発することはできないため、口をOFFに設定しても機構を仕込む場所が減ることになりますが、簡略して作成することが可能です。』
最小の体を作り続けること十数分。
ようやくレベルが上がった。
次に作れるようになったのは頭なんだけど、他のパーツと違ってオプションとして目、鼻、耳、口の有無を切り替えることができるみたいなんだけど、そもそも同期操作を使っている時に感覚は……あるね。
少なくとも視覚と聴覚と触覚はあった。
ハピネス達の視点で動いていたし、ミヤビちゃんが戦っている音を聞いていた。
それに、触覚がなければ地面を蹴った感覚もないはずだし、そうなるとうまく動かせていないはずだ。
ただ、OFFにする場面があまり想像できない。
目は……眩しいくらいに光が溢れているところを進む時?
そんな場所があったとしても目を瞑って進む自信はない。
そう考えると耳と鼻はわかりやすい。
音が大きいところと臭いがキツイところで使えると思う。
逆に口はどうなんだろう。
口が無いなら穴を空けなくて済む分素材が多く必要そうだけど、無いメリットがわからない。
口があって歯もあれば噛み付けるから攻撃手段が増える。
もしかすると内部に穴があるせいで耐久値が下がってしまうのかもしれない。
機構が無いうちは口が無い方がいいのかもしれない。
「よし。早速作ってみよう」
幸いにも素材はまだ少し残っているからいくつか作れるので、早速頭を選んでみた。
すると、ワイヤーフレームでマネキンの頭に似た物が表示されたんだけど、目とかのオプションパーツが全てONになっているので微妙に違う。
このまま作れば目は眼球がない状態だし、耳と鼻と口は穴が開いているだけだ。
どうやら眼球や鼻、耳と唇や歯は別パーツとして作るようだけど、作らなくても完成にはできるみたい。
この場合眼球がないから同期操作を使っても何も見えないようだけど、どう見てもホラーな顔ができる。
他にも髪の毛や睫毛に眉毛、黒子やそばかす等もできるし、耳を変形させてエルフ耳や獣耳も作れる。
慣れたらとても楽しそうだ。
次のレベルアップまで必要な頭の数は今回と同じ数の50個だけど、どう考えても手持ちの素材では足りない。
でも、最初だから数を稼ぐだけじゃなく色々作ってみたい。
だから、オプションパーツを含めて色々触ってみようと思う。
「やっぱり怖いな……」
「うわっ。それを暗いところで見つけたら叫ぶ自信あるよ……」
とりあえず全部ONでオプションパーツを付けない頭を作ったので、アイテムバッグから取り出して眺めていたら、ゼロワンさんとの話が終わったセインも感想を言った。
誰が見ても怖いと思うだろうけど、セインの言う通り暗いところで見たら僕も叫ぶと思う。
それをセインには言わないけどね。
「うーん。やっぱり石だと微妙だね」
「目だけこっちのツルツルしたやつとか、顔を白い石で作るのはどう?」
今度は全部同じ石で作った顔だ。
造形は綺麗だから美術室に置いても問題なさそうな感じだけど、眼球も同じ素材だと違和感がある。
なので、セインのアドバイス通りパーツで使う素材を変えたらだいぶマシになった。
それでもハピネス達と比べると雲泥の差だから、もっといい素材を使って瞳孔とかも細かく作らないとダメだ。
まだまだ先は長いなぁ。
「頭もできたし一度繋げてみたりしないの?」
「あー、そうだね。やってみるよ」
頭以外は余っているのでそれと繋いでみた。
できるだけ同じ素材の物で合わせたから見栄えはいいんだけど、最小で作ったから小さい。
掌に乗るし、仮にこの状態で動かしても強くはない……はず……。
「うわー。やっぱりこれが怖いなー」
「そうだね。目がないのもそうだけど、全体的に削ぎ落とされている感じが嫌だね」
「ねぇ、どれか動かせる?」
「うん。できるよ。繰り糸」
顔がホラーになっている上半身しかない人形に糸を繋いだ。
動かした時にどう見えるか気になったからなんだけど……ちょっと後悔した。
腕で這って前に進む姿に加えて眼球もなく耳や鼻が削ぎ落とされていたら怖い。
小さいからまだマシだけど、これが僕と同じ大きさだったらモンスターにしか見えない。
「これって……怪談でよく聞くてけてけだよね」
「言われてみると確かに……」
動きと顔でそうにしか見えなくなった。
しかも、結構な速さで机の上を移動しているので、、等身大で作っても使えると思うんだけど……作るのも操作するのも抵抗がある。
でも、やるなら一層の事本格的なホラー仕様にするべきだと思う。
今のところ作るつもりはないけどね。




