第281話「雨の森を抜けて街へ」
遅くなりました。
申し訳ありません。
花畑を後にしてから気づいたんだけど、パラライビー達が飛んでない今がキングパラライビーと戦うチャンスなんじゃないかな。
クイーンパラライビーは守られていないだろうし、キングパラライビーも投げて来ないと思う。
だけどその分キングパラライビーが攻撃的になったり、クイーンパラライビーの魔法が激しくなったりしそうだ。
襲われたら嫌なので戻ってまで調べるつもりはないけど。
「爺どうしたの?」
「え?あぁ、ごめん。キングパラライビーのいたところがどうなったのか気になっただけだよ」
「ふ〜ん。この雨のせいでパラライビーは飛んでないからあの場所でも飛んでないと思うけど、クイーンパラライビー達は飛ぶのかな?」
「その可能性もあるね……」
考えているうちに歩くのが遅くなった僕に対してセインが話しかけてきたので、気になったことを話しつつ早足で横に並んだ。
セインのおかげでクイーンパラライビーは雨の中飛ぶのかという疑問が新たに浮かんだけど、その結果を知ることなく主振りの森付近まで戻ってきた。
結局スパイクフロッグとしか戦っていない。
しのぶさん曰くいくつかの気配を掴んだらしいんだけど、向こうから離れて行ったみたい。
雨の中戦うのを嫌ったのか、あるいは逃げたところを追うと罠にかけるつもりだったのかもしれない。
「あれ?湖が氾濫してる?」
「そのようですね。しかも、ここにも見たことがないモンスターが出てきているようです」
森を抜けて湖が見えるところまで来ると、明らかに湖が広くなっていた。
地面も水を吸ってグショグショだし、湖近くでは細長い何かと戦っている人達がいた。
蛇っぽいモンスターかな。
「こっちに来ます!」
「私がすくい上げます!」
しのぶさんが注意を発した瞬間みやびちゃんが前に出て、少し先まで広がった水に槍を突き入れて横に振り上げた。
跳ねあげられた水しぶきの中に水色のウロコを持った蛇がウネウネしていたんだけど、それが水に戻る前にしのぶさんに切られて光になった。
「最初見失いましたが何とか鑑定できました。カワヘビという名前でしたが、どこか川に繋がっているのでしょうか?」
「あの地底湖に繋がっていたりして」
「この中を進んで行ったらフルレイドボスに会うとか嫌だなぁ……」
うららさんのおかげでモンスターの名前がわかったけど、やっぱり蛇だった。
本来は川の中に居そうな名前だけど、湖で繋がっているんだろうね。
本来であれば湖に潜ったら遭遇するんだろうけど、雨のせいで氾濫した分移動範囲が広がったからここまで来たんだ。
とは言っても数が多いだけで一体ではそこまで強くない。
セインの精霊剣でもラナンキュラスの槍でも一撃だった。
ミヤビちゃんの槍も当たれば一撃なんだけど、すくい上げて後ろに攻撃させてくれるから簡単に倒すことができた。
「やっと抜けましたね〜」
「造反している分大きく回らないとダメだったからね」
「向こうで戦っているのはヌシ釣りの森で色々作って居た人達ですね」
「建物まで水が来るとああなるんだ……」
水がこないところをぐるっと回って入口の方まで来たけど、セインが呆然とするのもわかる。
テーブルセットの足先や、ロッジの支柱が少し水に浸かった程度なのに、カワヘビはやって来る。
そのせいでテーブルや椅子を片付ける暇がないみたいだし、生産用の建物や畑に花壇など守るものが多い。
知っている人もいるけど、僕達も行くべきかな。
しのぶさんも気にしているみたいだし。
「あの、もど「お待たせしました!!行けー!しらたま!だいふく!いちご!チョコ!はちみつ!」え……」
皆に戻るか確認しようとしたら、しらたまに乗ったマサムネちゃんが森から飛び出してきた。
使役している全員をカワヘビに向けて放ち、自分はしらたまから飛び降りてすでに抜いていた刀を振り回している。
「あはははは!弱いですよ!はちみつのレベル上げにはちょうど良さそうですけど!」
よく見るとハニーベアが増えていたんだけど、あれがはちみつなんだろうね。
ぬいぐるみサイズのハニーベアなのに僕達が戦った個体より強く、飛び出させた爪でカワヘビを切り裂いたり、牙を使って噛みちぎっている。
体を大きくさせずに力だけ増した感じだ。
「マサちゃんが来たなら問題ないですね。私達は街へ戻りましょう」
「そうですね……」
「あの人凄いです!」
「獣使いなのに接近して戦うんですね」
「爺の知り合い?」
「うん。ナックルの妹」
「あー……なるほど……」
しのぶさんの言う通りマサムネちゃんが来たおかげで片付ける余裕ができたようで、テーブルやイスに木材などが各自のアイテムバッグに収納された。
それでもカワヘビはやってくるんだけど、ロッジの中には入ってこれないのか周りをウネウネしてはしらたま達に倒されている。
ミヤビちゃんはマサムネちゃんの戦い方をキラキラした目で見つめ、うららさんは驚いている。
セインはナックルの妹だとわかった時点で納得したので、何か知っているんだと思う。
「それじゃあ行きましょうか」
「ですね」
笑顔で刀を振り回しながらカワヘビを切り刻むマサムネちゃんを背後に、僕達は森を抜けて草原に出た。
ここも雨のせいかモンスターが出てこず、しのぶさんが気配を察知したところに突撃したところ、茂みの中に隠れていたパープルフロッグという綺麗な紫色のカエル型モンスターを見つけた。
出現する場所が場所なのでとても弱く、ドロップするのもパープルフロッグの肉だったので積極的に倒すことはせず街に戻った。
もうこの付近で戦う必要はなさそうだね。
「それでは痺れハチミツを売って、ポーションを補充しましょう。私は他のアイテムも補充しておきますね」
「わかりました。お願いします」
街に戻った僕達は痺れハチミツを売り、空いた瓶にそれぞれ必要なポーションを補充した。
僕とセインは追加でマナポーションをいくつか買ったんだけど、お互いアイテムスロット2つ目に突入してしまった。
明日行われるイベントの途中で補充できるかわからないのでもう少し買っておくべきかもしれないけど、いざとなったら
クローバーの腹部機巧で回復できる。
服を脱がせてから使えば人工スキンが破けるだけで済むけど、本当の最終手段だ。
セインは精霊の同時召喚を行わずある程度抑えて戦うみたいだし、ソードを手に持って戦えば召喚した時とソードにした時のMPだけで済む。
攻撃したりモンスターの攻撃を受けたりすると精霊に分けたMPが減るからずっと戦えるわけじゃないけど、ショットやストライクを使うよりかは長く戦える。
ミヤビちゃんとしのぶさんはいつも通りに戦うみたいだし、うららさんも糸に武器を括り付けて振り回す練習をしている。
今のところ鉄鉱石が1番手応えがあるらしい。
「明日は朝からでいいですか?」
「そうですね。イベント前に最後の追い込みでレベルアップを狙うのもありだと思います」
「では、9時にここでどうでしょうか?揃ったら東の森を抜けた先でレベル上げをしましょう」
「そうですね。僕はそれでいいです」
「私も〜」
「私も大丈夫です!」
「9時なら大丈夫です!」
うららさんの提案に全員が賛成したので9時に噴水広場集合になった。
そして、順次挨拶をしてログアウトしていくなかセインが近づいて来た。
「明日もお爺さんは山へ石拾いに行くの?」
「少し早めにログインして行くつもりだけど、その言い方だと昔話の出だしみたいだね。お婆さんは川へ何しに行くんだろう」
「じゃあ私も行く〜!えっと、お婆さんは川に……おじいさんの集めた石を積みにかな?」
「賽の河原かな?じゃあ少し早いけど7時にここ集合で」
「りょうかーい。それじゃあおやすみ〜」
「おやすみ」
目の前でセインがログアウトした。
素材的には1番小さいサイズにすればギリギリ必要数作れそうな感じだけど、できればもう少し余裕を持っておきたいから1人でも行くつもりだった。
セインが来てくれて石も貰えたらそれだけで数が2倍になる。
さずがにタダで貰い続けるのは悪いから何かお返しをしたほうがいいんだろうけど、何をすればいいかわからない。
まぁ、貰えると決まっているわけじゃないけどね。
考えるのは明日にして、僕もログアウトしよう。
掲示板を挟んで7日目に入りますが、例によってイベントまで少し時間がかかります。
ご容赦ください。




