雨が降り始めた中を進む
ご指摘を受けましたので、月光ゲッコーをムーンライトゲッコーに変更しました。
ヌシ釣りの森と比べて少し大きなカゲザルやナイフオウルに、5羽以上の集団で襲ってくる突撃コウモリを倒しながら森を抜けた。
カゲザルは見辛いし突撃コウモリは結構な速さで飛んでくるので、しのぶさんが気配を察知していても僕とセインとうららさんの後衛組は対処できずに不意打ちを食らうことが何回もあった。
ナイフオウルに至っては遠くからナイフのような鋭い羽を飛ばしてくるので、しのぶさんの警戒に引っかからずに攻撃されてしまった。
しのぶさんはナイフオウルの気配を感じることはできるみたいだけど、遠くから飛んでくるナイフオウルの羽は迫る速度が速いことに加えて飛んでくる羽が小さすぎて察知し辛いらしい。
それでも集中すれば察知できるので途中から弾くことができたんだけど、精神的な消耗が激しいということ諦めて攻撃を受けることにした。
ダメージはそこまで大きくないし、正面はミヤビちゃんが盾を構えてくれていたので後ろにはそこまで飛んでこなかったのもある。
だけど、首にクリティカルヒットして1/3減った時は流石に焦った。
自分の首に発生したクリティカルエフェクトのせいで視界の右半分が真っ赤に染まったのも原因の一つだ。
即座にクローバーで回復したから倒されることもなかったし、それをしたナイフオウルにはお返しとばかりにセインの精霊剣が突き刺さって光になったから問題なかった。
セインにはすごく心配されたけど。
エフェクトとはわかっていても首から赤いものを撒き散らした光景は怖かったみたい。
夜の森雰囲気も相まって、ホラー映画にしか見えなかったとなぜか怒られてしまった。
「雨が降ってきましたね」
「しばらくすると強くなりそうですね!」
「高いところから見ると向こうの方に大きな黒い雲が見えます!」
森を抜けてモンスターを探し始めると小さな雫が顔に当たった。
うららさんの声につられて見上げると、雲間はあるけど殆ど灰色っぽい雲に覆われている空が見える。
シロツキに乗ったミヤビちゃんが空から雲の様子を見てくれたんだけど、大きな黒い雲だと雷雨になりそうだ。
「爺雨を受けるとどうなるの?風邪の状態異常になるの?」
「風邪はどうだろう……」
「風邪の状態異常にはなりませんが、服が水を吸って重くなります。今のところ乾かすには時間経過しかないようです」
「服が重くなるから動きにくくなるってことですか?」
「そうなります。海中に落ちたしのぶさんは経験されたと思います」
僕も水中は体験したね。
あの時は殆ど動くことなく死に戻りしたけど、広場に戻った時は服が濡れていた。
ただ、あの時はそこまで動きにくいと感じなかったけど、それは僕が前衛職じゃないからかもしれない。
後衛でもほとんど動かずに戦っているから、仮に重くなっていたとしてもそこまで感じなさそうだし。
後、テンペストバードの時に嵐を体験したけど、あの時は無我夢中だったからあんまり覚えてない。
というより風が強すぎて服の重さより風の強さで動きづらかった。
だから、服が濡れて重くなるというのは理解できるんだけど、ちゃんとした経験にはなっていない。
「確かに濡れて重くなったのですが、私の服は薄いのでそこまででした。あと、布が特別らしく動けば動くほど早く乾くそうです。水の中を行動するためだと師匠は言ってました」
「さすが忍者!」
「そうなんですか。ミヤビちゃんは金属鎧がメインなので元から重いですし、私たちの中で服が重くなると影響するのはセインさんになりますね」
「私?」
「はい。精霊剣を持って近接戦闘をする時に動きづらくなる可能性があります」
「なるほどー。確かにそうですねー!」
セインはモンスターに精霊剣をストライクで飛ばして、倒せたら次から接近戦をする。
服もしのぶさんのように特別な生地じゃないし、布製の服にコートを羽織っているから影響が出ると思う。
「どうにかした方が良さそうだけど、そのためには濡れないようにしないと……あれ?」
「どうしたの?」
「今、ポツポツ降ってるよね?」
「うん。降ってるよ」
「全然濡れてないんだけど……」
「え?僕は濡れているよ」
顔に当たった雫は感じるし、手には水滴がある。
服も雨粒のシミができているんだけど、確かにセインにはそれがなかった。
どう見ても雨は当たっているんだけど。
「私も濡れています!」
「私もですね!」
「私は……濡れていませんね」
ミヤビちゃんとしのぶさんは濡れているけど、うららさんは濡れていないらしい。
この違いはなんだろう。
「あ!エアアーマーだ!」
「確かに。私も発動しています」
僕は薄っすらとした膜がないので発動していない。
たぶん、森を抜ける時の攻撃で消えたんだと思う。
それが首にクリティカルを受けた時かはわからないけど。
ミヤビちゃんは元から使っていないし、しのぶさんは前衛で激しく戦っていたからその時に切れているはず。
セインとうららさんははキングパラライビーのところで掛け直していたし、森を抜ける時もほとんど攻撃されていないから残っているんだと思う。
「雨も水だからエアアーマーを使えば弾けるのはわかるけど、これって地味に使えるスキルですよね?」
「そうですね。これがあれば色々便利そうです。嵐の中を航海していても甲板で作用しやすいでしょうし、年中雨の場所でも戦えるようになります」
「しかも、レベルが上がれば移動方法が増えますよね」
「はい。それを地上で使った時にどうなるかはわかりませんが、スクリューはともかくジェットは使えると思います」
汎用性の高いエアアーマーについてうららさんと話し、全員がエアアーマーを使った。
うららさんとセインは掛け直したことになる。
「それじゃあ行きましょうか。とは言っても近くにモンスターの気配はないんですけど……」
「雨で隠れているのでしょうか?」
「夜のこの辺りだとブラックドッグリーダーですよね?雨で濡れるのを嫌っている可能性はありますね」
しのぶさんの先導で少し進んでもモンスターと遭遇しなかった。
ブラックドッグ系ならいてもおかしくないぐらい移動したんだけど、やっぱり隠れているのかもしれない。
「少し先の草むらが動いていました」
「とりあえず行ってみましょう!」
ミヤビちゃんに飛んでもらって高いところから見てもらうと、草原を進んだ先に何かがいるようだった。
ブラックドッグが隠れているなら草むらを中心に探せばいいし、別のモンスターなら強さを確認すればいい。
考えながら問題の草むらに来たんだけど、そこから出て来たのは30cmぐらいのヤモリ?だった。
「ムーンライトゲッコーです」
「ムーンライトって月は出ていないんだけど……」
「だから鈍い光なんでしょうか?」
「動きも遅いですね!」
「とりあえず戦おう!」
うららさんが鑑定した結果は『ムーンライトゲッコー』だった。
ムーンライトゲッコーは薄黄色い体表で、何本か茶色い線が入っている。
ノソノソと近づいて来ているんだけど、動きが遅いので少し小走りになればすぐに逃げられそうだ。
「やぁ!」
「はっ!」
「ふぅちゃんソードストライク!」
ミヤビちゃんとしのぶさんの攻撃が当たり、セインの精霊剣も直撃する。
体を逸らそうとしたようだけど、全然間に合っておらず、そのまま光になって消えた。
「HPはそれなりにありそうでしたけど、セインさんの精霊剣が強力すぎてよくわからないですね!」
「動きも遅かったので、そこまで強くはないと思います」
「これならストライクを使わなくても戦えそうだよー」
3人がそれぞれ感想を言ってくれた。
僕とうららさんは後ろから援護するつもりだったけど、ムーンライトゲッコーが相手なら必要なさそうだ。
「うーん。もう少し様子見で戦ってみましょう!幸いこの辺に結構いるみたいですし!」
「そうですね。ブラックドッグリーダーもいないようなので、近くのモンスターを倒して行きましょう」
周囲のムーンライトゲッコーを倒すことになったので、しのぶさんが見つけたのを僕もハピネス達を使って倒した。
やっぱりHPは多いみたいだけど、動きが遅いせいで攻撃を受けることもなく倒せた。
雨だからかな?
月は出ているか?
ムーンライトゲッコーは月の光を浴びて魔力を蓄える系モンスターです。
なので、雨の日曇りの日はカモですね。




