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World Wide Wonderland –人形使いのVRMMO冒険記–  作者: 星砂糖
第1章 –World Wide(ログイン6日目)-
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クラゲの触手

行きは浜辺への海流で楽に来れたんだけど、帰りはその流れに逆らわないとダメだった。

なので、騎士人形で漕ぎつつボートの前方をシロツキに引っ張ってもらった。

トバリは周囲の警戒だ。


「海流は抜けたみたいだね。ありがとうミヤビちゃん」

「どういたしまして!このままシロツキちゃんに引っ張ってもらいますか?」

「うーん……どうだろう。急いでいるわけでもないし……」

「海中もありますし警戒してもらってもいい?」


迷っているとうららさんが提案してくれた。

海だと海中から接近されることもあるから警戒の目は多いに越したことはない。

陸地でも地中があるから同じかもしれないけど、見つけやすさが違う……気がする……。


「うん。わかった。シロツキちゃん周りを警戒してね」

「きゅ!」


ミヤビちゃんがシロツキに指示を出すと、前足でつかんでいたボートのヘリを離して飛び上がった。

あれ?

ミヤビちゃんは乗らないのかな。


「ミヤビちゃんはシロツキちゃんに乗らないの?」

「はい。海中も警戒してもらうつもりなので、私が乗っているとSTの関係であんまり行動できないんです」

「そうなんだ〜。なんとなくだけどシロツキちゃんの方がST多そうだしね〜」


セインも同じことが気になったみたいで、ミヤビちゃんに聞いてくれた。

どうやらミヤビちゃんの言う「周り」は海中も含んでいたようで、その事を考えた結果乗らないことに決めたようだ。

いざという時はすぐに乗れるんだろうから問題ないんじゃないかな。

たとえ混戦状態でも、一度上空まで掴んでもらってからのアクロバット騎乗もできそうだし。


パッと思いついただけなんだけど、見てみたいな……アクロバット騎乗。

今度お願いしてみようかな。


「シロツキちゃん。そろそろ海中の様子も見てもらえる?」

「きゅー!」


シロツキが水飛沫を上げながら海へ飛び込んだ。

ボートの縁から覗いてみると白い影が海中を高速で移動しているのが見えた。

ミヤビちゃんはこの速度のシロツキに乗ってたんだろうか。


「わぁ〜!やっぱり私が乗らない方が速いです!」

「アレに乗れたら凄い勢いで攻撃できそうだね〜」

「そうですね。でも、風圧はシロツキちゃん達が魔法で遮ってくれてるんですけど、攻撃した時の衝撃はどうしようもないので武器が壊れてしまいそうです」

「あー。反動で壊れるのかー」


セインとミヤビちゃんも水中を覗き、シロツキの速度に感心しながら話していた。

どうやらあの速度で戦えないわけではないみたいだけど、武器が壊れるならいざという時にしかできないね。


「行きの時も思いましたが、ボートの上は暇ですね!」

「代わりますか?」

「いえ!それはオキナさんにお任せします!」


しのぶさんが暇だといってきたのでボートの漕ぎ手を勧めたんだけど、手をビシッと決めて断られた。

行きのほとんどを地走りで走っていたから、余計暇に感じるんだと思う。


セインは召喚した精霊でお手玉をしているし、うららさんはモンスターの素材を糸に変えている。

ミヤビちゃんはトバリの様子を確認しながら海中を見ているね。

僕は騎士人形を操作しながら空いたスペースでハピネス達を動かす練習だ。

しのぶさんも何か作ったりできることがあればいいんだけど……僕にはこれぐらいしかできない。


緩やかに揺れるボートに気をつけながらハピネスを動かし、しのぶさんのところへ向かわせる。

ボートの座席として使っている出っ張り部分に腰かけてボーッとしていたしのぶさんは、目の前に移動してきたハピネスを見て目を輝かせて抱き上げた。

バタバタさせたり馘を傾げさせたりするだけで喜んでもらえるので、いい時間つぶしにはなると思う。

他にはどんな動きがいいかな。


「きゅわー!!!」

「シロツキちゃん?!皆さんモンスターです!」

「何か伸びてきた!」


しのぶさんに見せる動きを考えていると、海中からシロツキが飛び出して、僕達の頭上を旋回しながら大きく鳴いた。

その足には花クラゲが掴まれていて、ブンブンと触手を振り回していた。


海中からは花クラゲの触手が数本伸びていて、覗き込むと海中にたくさんの花が咲いていた。

いつのまにか花クラゲの生息域に踏み込んでしまったようだ。


「海面を走っていたらすぐに捕まりそうですね……。ボートの上で対応します!」

「精霊のみんなでショットを撃つね!」

「私は……伸ばされてくる触手を糸でまとめます」

「シロツキちゃん!私は空から迎撃します!」

「僕はいつも通り人形で攻撃しつつ、この海域を抜けられるように騎士人形を操作しますね」

「お願いします」


戦い方が決まったことでそれぞれ海から突き出てくる触手に対処する。

今回セインがソードを選ばなかったのは相手が弱いのもあるけど、しのぶさんの邪魔にならないようにと配慮した結果だ。


既にしのぶさんは360度から伸びてきた触手に対して、狭いボートの中を飛び回るように切りつけているので、衝撃が強く大きく揺れる時がある。

その時は即座に反対側へ飛んで勢いを抑えてくれるんだけど、それにセインまで加わったらボートが転覆する可能性も出てくる。


「触手にはダメージが少ないみたいです!本体をお願いします!」


しのぶさんが触手を切ってもすぐに別の触手が伸びてくる。

海を覗き込むと一体の花クラゲから複数の触手が伸びているんだけど、切った触手は徐々に回復しているし、HPは全然減っていなかった。

どうやら本体の花部分を攻撃しないとダメなようだ。


「わかりました!らいちゃん、ふぅちゃんショット!」

「ランス!」


しのぶさんに言われて僕とセインが水中の花クラゲに対して攻撃する。

らいちゃんのショットは雷属性だけど、海面で霧散することなく突っ込んでいき、花クラゲを一撃で倒す。

アザレアのらいトランスも同様だ。


「ボール!」


ランスで一発だったのでボールを放ってみた。

これでも一撃で倒せたので、やっぱり花クラゲ自体は大したことがない。

触手で痺れさせた後開いた触手で対象のHPを吸収するするために、数で襲いかかってきているようだ。


「きゃっ!」

「うららさん!」


しのぶさんが前方と前寄りの左右、僕とセインが後方と後ろ寄りの左右で戦っていたんだけど、海中の花クラゲを狙うので覗き込む必要があって死角が多い。

だから、真ん中にいたうららさんに伸びる触手に気づかなかった。

その触手はうららさんの体に巻きつくと、海中へと引きずり込もうとしたので、ボートからうららさんが落ちるところだった。


「私が行きます!地走り!」


とっさにラナンキュラスを向かわせようとしたんだけど、間に合いそうになかった。

繰り糸(マリオネット)で引っ張るべきかと思ったんだけど、僕より早くしのぶさんが飛び出した。


地走りを発動させたしのぶさんは、うららさんの体に巻きついた触手を切る。

引っ張る力がなくなっても落ちるのは止まらない。

しのぶさんはそんなうららさんに向かって前傾姿勢で走り、背中に手を入れてどうにか落水させずに済んだ。

うららさんの体には絡みついていた触手が残っていたんだけど、それも光になって消えた。

締め付けられたことでボディラインが出ていたことは心の中にしまっておこう。


「お姉ちゃん大丈夫?!」

「大丈夫!ミヤビちゃんも気をつけてね!」

「うん!」


何度も海中へとアタックをかけていたミヤビちゃんがうららさんの様子を確認しにきた。

海中で花クラゲと戦っているせいか、ミヤビちゃんやシロツキの体にも触手が引っかかっていたんだけど、即座に消えた。

姉妹とはいえ歳が離れているし、ミヤビちゃんは鎧を着ているから全然問題なかった。

何がとは言わないけど。


そこからは戦い方を殲滅から闘争へと切り替え、迫る触手に対処しながらボートを進ませた。

僕とセインは伸びてきた触手だけを攻撃したので、さっきよりも周りを見ることができる。

その結果、もう一度触手に絡み疲れる人がでることなく花クラゲの生息域を抜けることができた。


普通だったらうららさんは海中に引きずり込まれていただろうし、それを助けに行けば花クラゲに囲まれる。

人数が減ればボートの守りがおそろかになるし、場合によっては触手を捌き切れなくなるかもしれない。

花クラゲを避けた方がいいという意味を身を以て知れてよかったかな。

身を削ったのは僕じゃないけど。


そこからは数の少ないフィッシュマンやソードフィッシュに襲われたけど、特に苦戦することもなく街に戻ることができた。


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