スキル『宝探し』の効果
僕達はボスエリアを後にして浜辺に戻ってきた。
一度使ってみて有用だったら後日取りに来ることになったんだけど、その度に宝箱へ過剰なスキルを放つのかな。
並んでいた人達の反応からすると、僕達の火力はとても高いらしくちょっと遠巻きにされたぐらいだ。
シロツキとトバリのマーブルブレスでさえ威力が高いのに、そこにセインの精霊剣が9本突っ込むから高くなるのはわかる。
むしろ、ボスモンスターもセイン1人で倒せるんじゃないかというぐらい火力が高い気がする。
「それじゃあここで使ってみて!」
「わかった。宝探し!」
宝探しはレベルのないスキルで、消費MP2。
使うと周囲にある隠されたアイテムや、中にアイテムが入っている箱がキラリと光るらしい。
効果範囲は半径5mなのでそこまで広いわけじゃないけど、あまり遠くの場所が光っても面倒だからちょうどいいんじゃないかな。
スキルを使いながら歩く方が宝探し感が出ているし。
そして、セインに言われて使った結果、視界の端がキラリと光った。
光は一瞬だったんだけど、妙に印象に残る感じだった。
オレンジ色の光が時計回りに光を反射したせいだと思うけど、夕暮れ時でも目立つのは何でだろう。
「ここだったけど……あった。えっと……ポーションの空瓶……」
「空瓶?」
「うん。空瓶」
「えっと……その……爺らしくていいんじゃないかなっ!」
「無理やり何か言わなくていいよ!」
「あははっ」
手に入れたアイテムは光になって消えたけど、掴んでしばらく見ることができたからポーションの空瓶だとわかった。
マナポーションをたくさん飲んでいるから見慣れているし。
セインはそれを聞いて無理やり言葉を捻り出したけど、結局は笑われた。
無言よりマシだからいいけどね。
「そ、それじゃあ私がやってみます!宝探し!」
少し森側に移動してしのぶさんが使った。
どうやらパーティメンバーといえど光る瞬間は見れないみたいで、しのぶさんは何も起きていないところに迷わず歩いて行き、砂に手を突っ込んだ。
「ヤッシーの木の種?」
「この辺に木は生えてないですよね?」
「昔生えていたとか?」
「なるほど!」
しのぶさんが使うと木の種だった。
気になったのか、ミヤビちゃんが周りの地面に槍を突き刺したりして地中を確認し始めたんだけど、何も見つからなかったみたい。
しのぶさんの推測で納得したようだね。
そんな歴史があるとは思えないので、鳥形モンスターによって運ばれたとかじゃないかな。
「もう一度やってみます。宝探し。…………ポーションの空瓶です……」
「えぇ……。爺がよく使うアイテムが出るとかじゃない?」
「それは……ないと思うけど……」
しのぶさんと同じように森へと続く道近くの砂浜で使ったんだけど、見つかったのはポーションの空瓶だった。
流石のセインも今度は茶化せなかったみたいで、変な推測をたててきた。
真っ向から否定できないのがつらい。
でも、宝探しなんだから全部がポーションの空瓶になるわけがない……と思う……。
あれかな。
お宝は人によって違うとか?
だとしたら魔石とか見つかってくれてもいいと思うんだけど……。
「そ、それじゃあ次は私が使ってお宝を見つけたら、次にオキナさんも使って取るのはどうでしょう?!そうすれば最初に見つけたのは私になりますよ!」
「それでいこう爺!」
「やってみましょう!」
しのぶさんの提案にセインとミヤビちゃんが乗り気なんだけど、まだ2回連続でポーションの空瓶が出ただけだよ。
うららさんはこの状況に苦笑いしているけど止めるつもりはないみたいだし。
やるだけやってみよう。
「それでは!宝探し!……ここでどうぞ!」
「わかりました。宝探し!」
しのぶさんに言われた所でスキルを使うと、光ったのは目の前だった。
それを拾い上げたんだけど……ポーションの空瓶だった。
そして無言の時間。
これはもう僕が宝探しを使うことでポーションの空瓶になっているんじゃないかな。
まぁ、これは冗談だけどね。
光が収まった時点でポーションの空瓶の一部が見えていたから、本当に埋まっている物や見つけづらい物を発見するスキルなんだと思う。
僕がポーションの空瓶を拾うのはたまたまだ。
「こ、これは私が見つけた時点でポーションの空瓶だったんです。次はオキナさんが先に使ってください」
「わかりました。それじゃあ、せっかくなので森の近くで使います」
「わかりました」
しのぶさんの気遣いがすごい。
こうなったらみんなが納得するまでやってみることにした。
これでポーションの空瓶以外が見つかったら、セーフになるのかな?
「ここで使いますね。宝探し……あった」
森の入り口付近で使うと茂みの中が光った。
そこをしのぶさんに教えて同じくスキルを使ってもらう。
「宝探し!……ここですね!……トゲトゲバナナンの苗木です……。こ、これでオキナさんが見つけてもポーションの空瓶しかでないってことはなくなりました!……よね?」
「そ、そうですね!よかったじゃん爺!」
「べ、別のアイテムも出て良かったですね!」
「そうだね。さっきの空瓶もスキルを使った時点で見えていたから、この苗木もずっとここにあったんだと思うよ」
「そっかそっか。なら安心だー」
しのぶさんに加えてセインとミヤビちゃんにも慰められるように言われた。
茂みの中だったけど、スキルのたびにアイテムが変わるわけではないはずなので問題ないと思う。
念のためもう少し試すけどね。
この後いろいろ試したんだけど、僕やしのぶさんがスキルを使ってセイン達に場所を教えて取ってもらうことも可能だった。
見つけづらいアイテムを見つけるスキルなんだから当然だけどね。
これでようやくポーションの空瓶固定疑惑が晴れたのは喜んでいいことなのかな?
「これからどうしましょうか」
「宝探しは爺としのぶさんがいれば問題ないから、孤島の守護者はもういいかな〜」
「そうですね。そうなると森ですか?」
「街に戻って東に向かうという手もありますね!ハチミツ集めです!」
「それもありですね。なかなかの売り上げになりましたし」
「ここの森は戦闘が意外と面倒なので、街に戻りましょうか」
うららさんの言葉で街に戻ることが決まった。
まだ、もうすぐ夕暮れなので、今から戻って森へ向かうとちょうど夜になるぐらいだ。
「ボートを出す前にもう一度宝探ししてみる?」
「わかった。やってみるよ。宝探し……ん?足元か」
「また瓶?」
「どうだろう」
砂浜に戻って魔導ボートを出そうとしたら、セインに言われたので使ってみた。
すると、ちょうど靴の下が光った。
「瓶じゃん!」
「うん。だけど、中に何か入ってるよ。手紙?」
意外と深い所に埋まっていたんだけど、掘り出したのは手紙の入った瓶だった。
しっかりとコルクで閉められた内部には水が入っていないので、まだ読める状態だと思う。
「ふん!……開かない……」
「私もー!ふっ!……くっ……ダメだ〜」
「STRが関係するんでしょうか?」
「ならしのぶさん?」
セインがしのぶさんに瓶を渡した。
どうでもいいかもしれないけど、瓶の所有権はどうなっているんだろう。
開けるために回そうとしているから問題ないのかな?
パーティ内のやりとりだし。
「お任せください!はっ!…………硬い固いですね……」
「しのぶさんでもダメか〜。ミヤビちゃんもやってみる?」
「はい!やってみます!やぁ!…………無理でした……」
念のためうららさんにもやってもらったんだけど開けられなかった。
どうしようもないので瓶を割るために攻撃したんだけど、瓶の表面に薄っすらと刻まれた魔法陣が反応して割れなかった。
反応するまで気づかなかったよ。
誰が攻撃しても一緒だったので、何かしらの特殊な魔法かもしれない。
僕達は今すぐ開けることを諦めて、荒れた砂浜を後にした。
波打際ギリギリで行ったから、波が整えてくれるよ。
きっと……。




