エレメントバードに追われて
麻痺したしのぶさんの元へクローバーを向かわせながら、アザレアでストームを放つ。
エレメントバードがしのぶさんに追撃させないように放ったんだけど、そこに向かってトバリが追い立てたせいで1羽倒すことができた。
ラナンキュラスが追いかけていた方も竜巻に向かうように移動させてみたんだけど、行動に移すのが遅かったみたいでうまく避けられた。
でも、その間にクローバーが黒い竜巻の横を通ってしのぶさんのところまで無事辿り着けたから良しとしよう。
「うっ……。ありがとうございますオキナさん」
「いえいえ。次はしのぶさんに向かって追い立てるのでよろしくお願いします」
「はい!任せてください!」
しのぶさんを回復させた。
機巧は口に出さなくてもいいので、右手と左手を同時に使うように命令したんだけど、問題なく使えた。
現状で出力を上げるには糸を増やすしかないんだけど、HPと状態異常を同時に回復できるなら、もっと活躍できるかもしれない。
強いモンスターが出てくるところでは、状態異常になるだけの攻撃だけじゃなくて、ダメージの大きな状態異常になる攻撃も受けるだろうし。
そして、起きがって体の動きを確認したしのぶさんに向けて、ラナンキュラスでエレメントバードを追い立てる。
その間にミヤビちゃんが追いかけているエレメントバードに、隙をみてランスを放つと徐々に追い詰めることができているし、セインは精霊のラッシュを放つタイミングを変えることで挟み撃ちにしたり、自ら剣で道を制して戦っていた。
地味にうららさんの糸が逃げ道を削っているようで、エレメントバードはやりづらそうだった。
「しのぶさん!」
「せい!はぁ!」
ラナンキュラスが追いかけていたエレメントバードにもランスを放ち、しのぶさんへと向かわせた。
何回か失敗したけど、ようやくしのぶさんに切ってもらえたよ。
しのぶさんは二本の剣を連続で振り、ストームで減っていたHPバーは簡単に砕け散った。
パラライソードで残り1/4まで減らせたので、忍刀なら残り半分のHPを消し飛ばせたんじゃないかな。
やっぱり速度と属性による攻撃が中心でHPは低いね。
「やー!」
「はっ!ふぅちゃんストライク!」
シロツキに乗ったミヤビちゃんがエレメントバードに槍を突き入れ、バランスを崩したところでシロツキの噛み付きを受けて光になった。
セインも二本の精霊ソードを持ち、トバリに追いかけられていたエレメントバードの進行方向を片方の剣で遮ることで逃走ルートを変え、そこに後ろからストライクを放って倒した。
セインの近接戦闘能力がすごく高いんだけど……今の僕がセインと戦ったら簡単に負けそうだ。
「動きが速いので戦い辛かったですね!」
「糸縛りは直接狙っても当てられないので、張り巡らせるしかできませんでした」
「お姉ちゃんの糸のおかげで追いかけやすかったよ!」
「連携の練習には良さそうだよねー」
「そうだけど、数が多いと厳しいと思う」
倒し終わったので一箇所に集まって反省点を洗い出す。
周囲はシロツキとトバリが警戒してくれているし、うららさんの出した糸がいい感じに張り巡らされているので、追加でエレメントバードが来てもわかるはずだ。
話し合った結果、数が少ない時は連携の練習として追い立てる人を変えながら戦い、数が多い場合はストームで削ることになった。
その時に追い立てるのはシロツキとトバリに任せて、僕はラナンキュラスを操作せずにアザレアに集中する。
ラナンキュラスは飛び回っている分他の3体に比べて動かしづらいからね。
「それじゃあ採取を続けよー!ふぅちゃん取ってきてー!」
「シロツキちゃん!」
「地走り!」
「繰り糸」
「糸縛り」
エレメントバードとの戦い方を考えたので、中断していた果物の採取を再開した。
近くにある木に成っていた果物はほとんど拾っていたので、少し離れたところに行くかどうかだね。
エレメントバードの相手が面倒なので、洞窟に向かってもいいんじゃないかと思っている。
女性陣が嬉々として果物を集めているので言わないけどね。
もしかしたら、この後工房に行ってゼロスリーさんに果物を使った料理を頼むかもしれないし、美味しかったら度々頼むことになるだろうから、今のうちに集めれるだけ集めておきたい。
果物が無くなるたびにボートを漕ぐのは辛いからね。
「キュ!キュー!」
「しのぶさん!また何か来たみたいです!」
「わかりました!見てきます!」
果物を取っているとつまみ食いしながら警戒していたトバリがミヤビちゃんの元へと飛んできて鳴いた。
どうやらまた何か来たみたいで、しのぶさんが木を駆け上がって様子を見に行った。
「エレメントバードが10羽以上向かってきています!」
「多いですね」
しのぶさんが木から飛び降りて、忍者っぽい着地を決めた後エレメントバードが来ていることを教えてくれた。
僕もしのぶさんと同じ意見だけど、ここに向かってきているのかな?
「全部こっちに向かってきているんですか?」
「はい!一直線で向かってきています!」
「攻撃していないのにどうして向かってくるんだろう」
「これが目当てだったり?」
セインが果物を掲げながら聞いてきた。
頭上を通り過ぎる可能性もあるけど、もしもこの果物がエレメントバードの餌だとしたら、これだけ取った僕達が狙われる可能性は出てくると思う。
だとしたら、早めにここを離れた方がいいかもしれない。
「果物が原因だったら取りすぎた僕達が襲われても不思議じゃないね。今のうちに逃げましょう」
「そうですね。私とオキナさんなら離れながらでも取れるので、走りながら残りも取りましょう」
「わ、わかりました」
残っているのは十数個だけど、全部取らなくていいと思っているのは僕だけなのかな。
みんな何も言わずに糸をの間を進んで移動を始めたし、取るしかない。
「糸縛り」
「繰り糸」
うららさんの張り巡らせた糸を背に走りながら、後ろに向けて糸を放つ。
果物に当たれば即座に糸を縮めてアイテムバッグに入れる。
これを繰り返しながら走っていると、果物を取っていた木のあるところに複数の影が飛び込んできた。
「エレメントバードが木の所に降りてきました」
うららさんが前を進むしのぶさんとセイン、後ろを守ってくれているミヤビちゃんに向けて言った。
エレメントバードは周囲の木を見回した後、翼を広げて互いに顔をを突き合わせた後、逃げている僕達の方を向いた。
「来ます!」
後ろを振り向いたミヤビちゃんが僕達に向かって飛び出したエレメントバードを見て警戒の声を上げる。
シロツキに乗っている分後ろを見やすそうだ。
「糸に絡まり、あ!燃やして抜けて来ました!堅守!」
「うぉ!ストーム!ストーム!ストーム!」
エレメントバードはうららさんが木の周囲に張り巡らせた糸に引っかかったんだけど、即座に炎を体に纏って燃やし、一気に距離を縮めて来た。
ミヤビちゃんは盾を構えて堅守を発動したんだけど、後続を抑えることはできず、一段と速い風を纏った2羽が僕達の方へ抜けて来た。
さらに奥から残りのエレメントバードが向かって来ていたので、ストームで牽制する。
こっちに向かって来てくれていたおかげで、殆どのエレメントバードに連続して当たり、半分以上を倒すことができた。
それでもまだ残っているんだけど、残り4羽なのでさっき決めた通り連携を意識して戦える数になった。
そうなると逃げながら隙を見て攻撃するだけなので、囲まれた時よりも戦いやすかった。
前から来ることもあるけど後ろからが多いので、セインが一斉にショットを放つだけでも当たるからね。
「浜辺まで戻って来ました!」
「そうだね。このまま洞窟に行きましょうか」
「そうですね。それでいいと思います」
戦いながら逃げた結果、上陸した浜辺が見えるところまで戻ってきた。
なので、そのまま洞窟へ行くことになった。




