南の孤島へ上陸
街から南の孤島へ向かう場合、途中までは自力で漕ぐ必要があるんだけど、ある程度島に近づくと海流に乗ることができる。
この時変な乗り方をすると裏側に流されてしまうらしいんだけど、それは街とは反対側から近づいた時の話なので、今回は関係のない話だ。
この潮の流れに乗ると、エリア攻略前はボスのいる洞窟へ向かうことになっていたんだけど、攻略後の今はその手前の浜辺に流れ着くようになっている。
そこから洞窟までは岩場を進めばたどり着くので、ボスと戦わない場合は浜辺を進んで島を探索できる。
島には木の実や果物などの食材系のアイテムが多く、モンスターは鳥系のモンスターが多いらしい。
南の海を進む方法は調べたけど、南の孤島については軽くしか調べていないので、色々探しながら進もうと思う。
「あれ?エリアボスにはいかないの?」
「え?行くの?」
「せっかくだし行こうよ!スキルオーブが出たらイベントに役立つかもしれないしさー」
「あー、まぁ、そうだね」
洞窟ではない方へ足を進めようとしたら、セインが待ったをかけてきた。
セインの言いたいこともわかるんだけど、島の探索もしてみたい。
洞窟にいるエリアボスはガイコツなので怖いわけじゃない。
幽霊が出てくるなら怖いけど、それはセインも一緒のはずなので、ここで行かないと言えば怖がっていると思われそうだ。
「僕はエリアボスでもいいけど……。どうしますか?」
「私は少し島を見てからがいいです。鳥のモンスターから取れるアイテムが気になります」
「羽毛ですか?」
「はい。調べたところによると属性付きの鳥のようですので」
うららさんは洞窟に行くことは問題ないけど、先に島を探索してモンスターの素材を集めたいらしい。
属性付きの鳥って火の鳥というイメージがある。
それの羽毛だと燃えたりしないのかな。
「私はどっちでも大丈夫です!森と洞窟どっちもシロツキちゃん達には飛びづらいですし」
ミヤビちゃんはどちらでもいいようだ。
確かに森の中だと木が邪魔だし、洞窟だと天井や壁のせいで狭いので飛びづらい。
シロツキ達は小さいから小回りでなんとかなっているけど、普通の竜騎士だとどうなるんだろう。
シロツキ達より大きくて動きづらくなったりするのかな。
「私もどっちでもいいですよ!木も壁も足場ですから!」
その点しのぶさんは木や壁は問題ない。
むしろあった方が機動力が上がるので、とても頼りになる。
突出しすぎて何か起きないかが心配だけど。
「それじゃあうららさんの案でいきましょー!」
「了解。まずはそこを上がらないとね」
どっちでもという票が多かったけど、セインがうららさんの案に決めてくれた。
なので、砂浜を進んで岩場を越える。
森はすぐ近くまで広がっているので、少し草が生えているところを進むだけで森に入れる。
もしかしたら砂浜までモンスターが来るかもしれないぐらい近い。
その森を進んで行くと、早速果物の成る木があった。
トゲトゲしたバナナや、光沢のある固そうな桃、指の間に挟めそうな小さなスイカ等沢山ある。
果物を前にした女性陣のテンションが上がり、しのぶさんとシロツキ達が周囲を確認してくれた。
その結果、人もモンスターもいないみたいなので、採取することにした。
「繰り糸」
「糸縛り」
「ふぅちゃん取ってきて、らいちゃん取ってきて」
「便利ですね!」
「しのぶさん達の方が取りやすそうですけどね」
果物が成っている場所が高い上に足をかける枝も少ないので、僕とうららさんはそれぞれの糸で果物を手元に引き寄せ、セインは精霊に頼んだ。
僕の場合はラナンキュラスも飛ばしているけど。
それを横目で見ながら木の幹を歩いていたしのぶさんに便利だと言われても、楽々と登っているしのぶさんに比べるとMPを消費する分面倒だと思う。
効率もしのぶさんの方がいいし。
「トバリちゃんあれも取ってください」
「キュー!」
「シロツキちゃんつまみ食いですか?」
「きゅ!」
ミヤビちゃんはシロツキに乗って果物を取りながらトバリにも取ってもらっていた。
ただ浮いているだけで暇なのか、シロツキは目の前にあった光沢のある桃をバリバリと食べ始め、ミヤビちゃんが確認している間にトバリも棘の生えたバナナを齧っていた。
僕達が昼食を取る時に一緒に食べていた二頭だけど、甘いものは別腹なのかもしれない。
「鳥が来ます!」
粗方の果物を撮り終えたところで、木の上にいたしのぶさんが叫んだ。
うららさんの言っていた鳥のモンスターかな。
少しすると葉っぱの間をガサガサと突き抜けて木の幹や地面に色取り取りのツバメのような鳥が突き刺さった。
赤、青、黄色に緑の鳥で、それぞれ微かに火や水、雷に風を体から発していた。
「エレメントバードの火、水、雷、風です」
「それぞれ属性を持っているんですね」
「はい。ただ、体に纏って体当たりするだけで放ってはこないみたいです」
属性を変えながら攻撃してくるわけではないみたいなので、まだ戦いやすいと思う。
しかも、遠距離攻撃をしてこないなら尚更だ。
「「「「ピュイ!」」」」
エレメントバード達は地面に突き刺した嘴を抜くと一鳴きして体に纏ったそれぞれの属性を強める。
その状態で飛び上がり、ミヤビちゃんとしのぶさんに向かっていった。
助かるけど、なんで僕達には1羽もこないんだろう。
「速い!」
「小回りもききます!」
襲われた2人はエレメントバードの速度に驚いていた。
火を軽く爆ぜさせたり、水の玉を足場にしたり、放電した反動で飛び上がったり、風で突き抜ける等それぞれの属性を活かした動きで撹乱してくる。
しのぶさんは負けじとエレメントバードを追いかけ、ミヤビちゃんはシロツキに乗って槍を振り、トバリに追いかけさせている。
だけど、2人の攻撃が捉えたと思った瞬間一気に方向を変えられて当たらず、トバリも直線では追いつくんだけどカクカクと曲がられたら途端に離される。
僕もラナンキュラスで追いかけているんだけど、あと少しのところでクイっと旋回されて当たらない。
セインの精霊もラッシュで追いかけているんだけど追いつけないし、剣にしてストライクを放ってもギリギリで体を回転して避けられる。
うららさんが糸を張り巡らせても簡単に避けられるので、攻撃のチャンスがない。
だけど、攻撃し続けているためか、エレメントバードからの攻撃もない。
こういうモンスターには範囲攻撃だ。
「魔法少女の杖・闇、ストーム!ストーム!」
4属性に対して攻撃するので、どの属性にも弱点を突けない代わりに耐性もなさそうな闇にしてストームを放った。
目標はラナンキュラスとトバリが追いかけていた火と風だ。
「ピュイー!」
「ピュッ!」
2羽のエレメントバードは避けようとしたけど、そこを塞ぐように移動したラナンキュラスとトバリによって黒い竜巻の中に押し込められた。
だけど、鳥だけにそのまま突き抜けられた。
「あれ?意外と減ってる」
竜巻の中をくぐり抜けただけなのに、半分ほど減っていた。
もしかして動きが速い分HPが少ないんだろうか。
だとしたらどうにかしてうららさんの糸に引っ掛ける事ができれば、後は誰でもトドメをさすことができそうだ。
「くぁっ!」
それを伝えようとした矢先にしのぶさんの声が響き、続けて木の上から本人が落ちてきた。
ステータスプレートの横を見ると麻痺のマークが出ていた。
エレメントバード・雷に攻撃されて感電したんだと思う。
しのぶさんは電気に弱いのかな?
書く時間が取れないです。
もしかしたら仕事納めの翌日(29)まで更新できないかもしれません。




