足元からの攻撃
騎士人形を操って操船して少しすると、またブレードフィッシュに出会った。
しのぶさんが海面を走り回っているおかげで狙いが分散されたので、セインの精霊とアザレアで撃ち落とし、ラナンキュラスで弾くことで船にダメージが入ることなくやり過ごせた。
ミヤビちゃんは高く飛んでいると狙われないんだけど、攻撃するために水面スレスレまで降りてきたところを横から攻撃され、危うく落ちるところだった。
水中から跳ねて攻撃してくるので、迎撃が難しいみたい。
なので、ミヤビちゃんは正面からぶつかるんじゃなくて魚群の横か後ろから攻撃することになった。
セインがボソッと「追い込み漁だ……」と言ったせいで僕とうららさんにはそうにしか見えなくなった。
続けて現れたブレードフィッシュに対してミヤビちゃんが後ろから追いかけながら跳び上がった魚を槍で突いたり、シロツキがブレスを放ったせいでブレードフィッシュの進行方向が変わったのも大きい。
このおかげで進路を変えれることがわかったんだけどね。
「うわっ!っとと……」
「ブラストシェルです!」
ブレードフィッシュをやり過ごしてから海面を歩くしのぶさんの先導で進んでいると、船の少し前を歩いていたしのぶさんの足元が不自然に膨らみ、しのぶさんが突き上げられた。
空中でバランスを立て直したしのぶさんは何とか海面に着地したんだけど、その目の前にブラストシェルが降ってきた。
どうやらブラストシェルが水中で水を噴射して跳び上がってきたらしい。
「まだ来ます!」
今度は上空を警戒していたミヤビちゃんが声を上げた。
船の縁を掴んで海中を見てみると、徐々に大きくなってくる白い物が10個ほどあった。
海中にいたブラストシェルがこのボートに目掛けて一斉に噴射したみたいだね。
「どうしよう?!」
「とりあえず少しでもボートを動かそう!」
「わかった!」
騎士人形を退かしてセインと僕でオールを1本ずつ持ち力の限り漕いだ。
「うわっ!」
「きゃっ!」
「当たったのは1つだけです!」
掛け声を出さずに漕いだけど、何とか密集している所からは離れることができた。
それでもボートの後ろに1体当たったんだけど、穴は空かなかったし、横倒しになって転覆することもなかったので何も問題はない。
しいて言えばセインがバランスを崩して僕の方に倒れてきたぐらいだけど、本人も気にしていないみたいだし役得ということで……。
「ブラストシェルが戻っていきます!」
「落ちてくる時に2体しか仕留められませんでした!」
10体近いブラストシェルは自由落下に任せて海に戻っていった。
しのぶさんは落ちてくるのに合わせて忍刀を振って倒したけど、ミヤビちゃんも空中に上がったところで何体か倒したらしい。
軌道がわかっていると対処できるみたいだけど、僕達ボート側にその余裕はない。
ブラストシェルですの体当たりを受け続けるとボートが壊れるだろうし、転覆の可能性もあるから逃げ一択だ。
「ブラストシェルが出てきたということはもう少しで一撃離脱系モンスターの生息地から抜けますね。
「次は何でしたっけ?」
「花クラゲです。上から見ると花みたいな形をしているそうです」
「進行方向に花が浮いています!」
「ちょうど見つけたみたいですね。ミヤビちゃん!近づいたらダメだからね!」
「はーい!」
うららさんが出現するモンスターで今いる大体のエリアを絞り出した。
一撃離脱系のモンスターは海に出たばかりで船の上で戦うことに慣れていない人のためなのか、トドメを刺してこない。
もちろん回復が間に合わなければ倒されるし、海に落ちると水生モンスターによって倒されることもあるんだけど、基本的に船の上にいればいい。
それがブレードフィッシュで、ブラストシェルですの場合は人ではなく船を狙うモンスターもいると知らせるためじゃないかと掲示板に書かれていた。
そこを抜けると今度は普通に倒れるまで攻撃してくるモンスターが現れ、更に先では水性モンスターが襲いかかってくるようになるらしい。
その戦法がセインが忘れていた花クラゲで、ちょうどミヤビちゃんが見つけたものだ。
花クラゲは上から見ると5枚の花びらに見えるクラゲで、触手を使って攻撃してくるらしい。
その触手は痺れたり毒になったりすることはないんだけど、触手の先端が開いて複数に分かれるそうだ。
その開く姿と上から見た形の2つの意味で『花』らしいんだけど、分かれた触手に巻き付かれるとHPが吸い取られるので花なんて綺麗なものじゃないと言われている。
そもそもクラゲに近づこうとは思わないんだけど、形が綺麗だったら違うのかな。
「迂回しますか?」
「そうですね。花クラゲは面倒らしいので戦闘は避けたほうがいいと思います」
「わかりました」
近付くと触手で絡みつかれ、遠くからの物理攻撃はブヨブヨした体で軽減される。
しかも、1体の花クラゲを見つけると周囲にもいるので、気づいたら水中から伸びた触手に囲まれていることがあるそうだ。
対処方としては触手を切って攻撃手段を無くすか、わざと絡みつかせて引っ張る。
あるいは魔法なんだけど、相手は水中に潜ることで魔法を避けるらしく、なかなかに戦いづらいみたいだ。
なので、無理して戦わずに迂回することになった。
「下から何か近づいて来ます!速いです!」
今度はしのぶさんが声を上げた。
ブラストシェルでの時は水中の気配が読みづらいのと、下に注意を向けていなかったのが原因で発見が遅れたけど、来ると分かっていればある程度察知できるらしい。
それでもブラストシェルの噴射する勢いで来られたら僕達は間に合わないんだけどね。
「うわっ!」
騎士人形に船を漕がせながら警戒していると、しのぶさんが足を動かしていないにも関わらず水面を滑り出し、バランスを崩して背中から海に落ちた。
地走りは足裏に効果がある魔法だから、それ以外の場所で触れると効果がない。
「しのぶさん!トバリちゃん行って!」
「キュー!」
空からしのぶさんの動きを見ていたミヤビちゃんがトバリに指示を出した。
それを受けたトバリは翼を折りたたんで勢いよく海に飛び込み、海中を高速で動き回る。
「ミヤビちゃん!何が起きたの?!」
「水中から手が出てきてしのぶさんを引っ張っていました!」
「手ということはフィッシュマンです!船に乗り込んで来るので注意してください!ミヤビちゃんはそのまましのぶさんを助けて!」
「うん!シロツキちゃん!行くよ!」
うららさんがミヤビちゃんに確認した結果、しのぶさんが海中に引きずりこまれたのはフィッシュマンの仕業だということがわかった。
この辺で腕のあるモンスターは1/4魚人のフィッシュマンしかいないからね。
普通だったらフィッシュマンに足を掴まれて一気に海中に沈むはずなんだけど、しのぶさんが使っていた地走りのせいで沈めることができなかったんだと思う。
そのせいでフィッシュマンが泳いでいた方向に滑ったんだろうね。
フィッシュマンは胴長の魚で、左右のヒレが手のように枝分かれしていて、尾ひれもまた長くて足のようになっているモンスターらしく、さらに遠くに行けば武器を持ったフィッシュマンも出て来るらしい。
フィッシュマンといいパラライビーといい武器を持ったモンスターが多い気がする。
「そろそろ来ます」
「船に登って来るならソードだね!」
「僕もハピネスと騎士人形で斬りつけるよ」
ミヤビちゃんがしのぶさんを追いかけてシロツキに乗ったまま海中へ飛び込んだので、僕たちは船に登ってくるフィッシュマンを倒す。
セインは両手にらいちゃんとふぅちゃんのソードを持ち、いつでも戦えるようにしている。
僕もハピネスの両手を切り離して、戦う準備はできている。
海の上だとハピネスは戦えないかと思っていたけど、相手が船に登ってくるなら問題ない。




