やりすぎには注意
鉄の守護者は感電状態になることなく1本目のHPバーを砕け散らせた。
それに加えてずっと雷属性で攻撃していたせいか、体が全体的に赤くなっている。
体の色が変わっても攻撃や硬さに大きな変化はないんだけど、このまま続けてもいいのか気になるところだ。
僕とセインの2人で戦う以上、この強い雷属性で攻撃すると動きが止まるという現象を利用するしかないんだけどね。
動きを止めないとタックルを避けることができなくなるだろうし、この後作り出されるはずの剣の範囲から逃げるのも難しくなるはずだ。
「1本減らしたね!」
「そうだね。今のうちに出来るだけダメージを与えよう。ランス!ランス!ランス!」
「うん!みんなショット!」
鉄の守護者が地面に両腕を突き刺したので、セインと集中攻撃を放った。
だけど、即座に引き抜かれた手には石の大剣が握られていて、放たれた魔法とショットは弾かれ、ハピネスとラナンキュラスに対しても剣を振ってきたので下がらせるしかなかった。
以前は片腕だったから対処は簡単だったけど、今回は腕を破壊できていないので両腕で1本ずつ、合計2本の剣を振り回してくる。
背後でも取らなければ当たりそうにないけど、そこは上手くタイミングをずらしたり、ハピネスやラナンキュラスで注意を引くつもりだ。
ハピネス達が狙われづらいとはいえ、流石に攻撃した時は反応されるからね。
それに、注意を弾くための手数に関してはアテがないわけじゃない。
「|爺!リトルロックゴーレムが出てきたよ!」
「わかった!繰り糸!セインも近寄ってきた奴は倒してね!」
「うん!らいちゃんは鉄の守護者に攻撃させるけど、他の子たちで倒す!」
「ありがとう!」
鉄の守護者が2本の剣を掲げると、周りに空いた小さな穴からリトルロックゴーレムがわらわらと出てきた。
そのうちの2体に糸を飛ばして操り、周囲のリトルロックゴーレムを攻撃させる。
戦闘に参加しているのは僕とセインの2人なので、2体残せば追加はないし、この2体を振り回してぶつけるように使えば鉄の守護者の注意も引けるはずだ。
セインもらいちゃん以外の精霊にラッシュをさせてリトルロックゴーレムを倒してくれているので、結構な早さで数を減らせている。
その間の鉄の守護者にはハピネスとラナンキュラスで攻撃しつつ、隙を見てアザレアのスパークランスをぶつけている。
やっぱりハピネス達が攻撃すると剣で追撃するみたいで、そこに正面以外からランスを放てば当てることができる。
正面からだと流石に剣で弾かれるから、左右へ移動させないとダメだ。
ハピネスへの攻撃は糸を引っ張ることで回避できるし、ラナンキュラスは飛んでいるので余裕を持って避けられる。
剣を持ったせいで石飛礫が飛んでこないので、ハピネス達に集中できるようになったのも大きい。
近づいて来るのはリトルロックゴーレムなのでクローバーのパチンコでも倒せるし、操っているリトルロックゴーレムを勢いよくぶつけるだけで倒すこともできる。
いざとなれば操っている方を遠くに投げて、近くにいるリトルロックゴーレムを操ればいいし、精霊によるラッシュで順調に減っているので、その心配はなさそうだけどね。
「よし!後は鉄の守護者だけだよ!」
「油断せずに戦おう!」
「だね!」
セインとクローバーのおかげでリトルロックゴーレムを操っている2体を除いて倒すことができた。
その間にも鉄の守護者を攻撃していたので、残りHPは8割を切ったところだ。
リトルロックゴーレムが追加されないことを確認して、2人で集中攻撃を行う。
「あれ?鉄の守護者の動きが早くなってない?」
「少し細くなってるかも」
「前に授業でやった電気分解かな?確か電食で痩せていくんだっけ?」
「あー。そういえばやったね。ということは赤くなっているのは発熱で、もしかしたら磁気も帯びてるかもしれないね」
鉄は電気を通すと発熱して赤くなったり、磁気を帯びて電磁石のようになったり、電気分解によって痩せて細くなると学んだことがある。
赤くなっているのも細くなって速度が増しているのも雷属性で攻撃し過ぎたせいだね。
セインの言う通り磁気を帯びているかもしれないけど、幸い引っ張られるようなことは起きていないから、帯びていても微弱なんだと思う。
それにしてもモンスターに攻撃するときの属性によって色々発生するんだね。
水のモンスターに氷属性で攻撃すると凍ったり、木属性のモンスターを炎属性で攻撃すると燃えるのと同じようなものなんだろうけど、馴染みはないので違和感がすごい。
しかも、今考えた例とは違って僕達が有利にならないから少し面倒だ。
「速くなってもやることは変わらない気をつけながら倒すだけだよ。ランス!」
「そうだけど、雷属性でこのまま攻撃してもいいのかな?みんなショット!」
「今はこのまま戦おう。少なくとも雷属性で動きを止めることで畳み掛けることができているからね。ランス!」
「そうだね。今の状態で一気に攻められたら対処できそういよね。みんなショット!」
ハピネスとラナンキュラスで誘い、ランスやショットを打ち込む。
僕が操っているリトルロックゴーレムしかいないので、セインも6体全部でショットを放っている。
その操られたリトルロックゴーレムも鉄の守護者に攻撃を加えているんだけど、ダメージはそこまでない。
なので、振り回してぶつけることにした。
「あ!」
「あー!追加されちゃう!」
勢いよく投げたリトルロックゴーレムは2本の剣で迎撃され、繰り糸で硬くなっているにもかかわらず砕け散った。
剣を振った後の体勢が隙だらけだったので、ハピネスとラナンキュラスと騎士人形が鉄の守護者に攻撃を加えることができたけど、リトルロックゴーレムが僕達の数を下回ったので鉄の守護者が剣を掲げてリトルロックゴーレムを呼び出した。
「ごめん!もう一度よろしく!繰り糸!」
「仕方ないなー!リトルロックゴーレムは任せて!」
出てきたリトルロックゴーレムに糸を繋ぎ、振り回した後鉄の守護者に向かって投げる。
これも迎撃されたけど、その隙に攻撃を加える。
「繰り糸!」
投げたリトルロックゴーレムが粉砕されたので、次のリトルロックゴーレムに糸を繋いで同じように振り回して投げて攻撃を加える。
1度に2体しか操れないので、操っていないリトルロックゴーレムが徐々に距離を詰めて来るけど、それはセインが倒してくれている。
「あ!ごめーん!倒しすぎちゃった!」
「え?あー、こっちこそごめん。投げ方を変えたせいだよね。増えたのは投げるのに使うよ」
縛っては投げてを繰り返していると、残り2体になったのにセインが1体倒してしまった。
僕が縛って投げるまでを簡略化したせいでタイミングがずれたのが原因だからセインは悪くない。
むしろ鉄の守護者の気を引く方法が増えたと思おう。
「HPが半分を切った!振動に注意!」
「わかった!今より離れるね!」
更に追加された15体のリトルロックゴーレムを投げたり倒したりしながら攻撃していると、鉄の守護者のHPが半分を切った。
これでジャンプして地面を隆起させつつ振動で動けなくなる攻撃を放ってくるようになるはずだ。
「くるよ!」
予想通り鉄の守護者が跳んだ。
そして着地と同時に周囲の地面が隆起したんだけど、ミヤビちゃんと一緒に戦った時より飛び出した岩が小さいし振動も弱い。
鉄の守護者の体が細くなったせいかもしれないけど、今は考えるより倒す方が先だ。
「感電!」
「たたみ掛けよう!みんなラッシュ!」
2体を残してリトルロックゴーレムを投げつつ攻撃を加えていると、鉄の守護者が感電して膝をついた。
なので、ここぞとばかりに攻撃する。
ハピネスは炎を噴射しながら切りつけ、ラナンキュラスは突き抜ける槍で何度も突く。
クローバーは周囲にある石ころをパチンコで放ち、アザレアでランスを連射する。
これに騎士人形とセインの精霊によるラッシュが加わって、感電が解ける前に倒すことができた。
今気づいたけど騎士人形の剣に炎属性が付与されていた。
いつのまに……。
「やったね爺!」
「そうだね。ん?討伐クエストもクリアになってる」
「本当だー。リトルロックゴーレムをたくさん倒したからかな?」
「そうだと思うよ」
鉄の守護者を倒したことでリザルト画面が出たんだけど、視界の端で30体討伐クエストがクリアされたと流れてきた。
リトルロックゴーレムは15体呼び出されたんだけど、それを3回やられたから30体は余裕で超えている。
まさかここでクリアするとは思わなかったけど、手間が省けて良かったと思おう。
「私はスキルオーブ出なかったよー。爺は?」
「んー。あ、出てる。これはセインにあげるよ」
「え?!いいの?」
「うん。セインが不意打されそうになった時にでも使ってよ」
「わかった。お返しになるかわからないけど、ここで手に入る鉄鉱石とかは全部爺にあげるね」
「ほどほどでいいよ」
「全部あげる!」
「わかった。ありがとう」
セインの剣幕に押し切られたので、この後の採掘で手に入る物ももらえることになった。
僕としては助かるけどね。
早速取引で『堅守のスキルオーブ』を渡したら、鉄の守護者を倒したことで貰える鉄鉱石が送られてきた。
この調子なら結構な数になりそうだ。
セインは取引を終えると早速スキルオーブを取り出して使った。
一度で手に入ったことが嬉しかったのか、とてもいい笑顔だ。