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World Wide Wonderland –人形使いのVRMMO冒険記–  作者: 星砂糖
第1章 –World Wide(ログイン5日目)-
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うららさんの逆鱗

少し後ろに下がったPK集団を他所に、ミヤビちゃんは真剣な表情で槍と盾を構える。

パッと見た感じでは萎縮しているようには見えないね。


「ミヤビちゃんどうしたの?」

「うららさん。この人達がミヤビちゃんを狙っていた人達です」


ミヤビちゃんは武器を構えたまま正面の4人を見ていたので代わりに答えた。

後ろはしのぶさんとセインが警戒してくれているので任せている。

僕もいつでもハピネスを跳ばしたり、アザレアの魔法が使えるように意識しているけどね。


「オキナさんが助けてくれた件ですか?」

「そうです。それです」

「なるほど。つまり、こちらから攻撃しても問題ないということですね?」

「えっと……」

「そうです!レッドネームを隠蔽で隠しているだけなので大丈夫です!」

「そうですか。わかりました……糸縛り・口縫い・乱れ糸!」


僕がわからなかったことにしのぶさんが答えて、それを聞いたうららさんは、右手を背後に左手を正面に向けて振り、複数の糸を放った。

糸は相手の数以上に出ているんだけど、そのほとんどが後ろの木や草に当たっていて、体や武器に当たった糸は解けている。


唯一解けないのは口に当たった物だけで、その糸は口を縫い上げたように表面を往復して、相手のHPバーの横に口にバツマークのついたアイコンが表示された。

スキルを使うためには言う必要があるから、縫われると使えなくなる。

流石に本当に糸を通しているわけじゃないのでダメージは入っていないんだけど、それでもスキルを封じられるだけで人はできることが一気に減るね。


僕がハピネス達を繋いでいない時にこうなったら何もできなくなる。

その時は騎士人形に頼るしかない。


「むぐっ?!」

「んんー!!」

「むぅっ!」

「スキルを封じてきたか!」


正面は顔を完全に覆っている鎧の男だけが当たらなかった。

正確には口元に当たったんだけど、兜の口当ての部分だったから効果が出なかったようだ。


「ぬぉ?!」

「んぐっ!!」


後ろに放った糸もほとんどが外れ、斧の人にはとっさに顔全体を斧でカバーしたため防がれた。

だけど、十字の杖を持った女性の口は縛ることができた。


「糸縛り・吊るし・乱れ糸!」


うららさんは続けて空に向かって糸を放った。

糸は放物線を描き、伸びている途中の部分が木の枝や幹にくっ付く。

先端は落下の勢いそのままに地上へ降り注ぎ、相手や地面に当たる。


地面に当たった物はやっぱり解けたけど、PK集団に当たった物はそうじゃなかった。

当たった箇所が上に引っ張られているようで、本数が多ければその力が強くなっている。


「んー!」

「んむ!」

「んっ!」

「はっ!」


弓と杖の人は上に引っ張り上げられて宙吊りになったけど、剣の人と全身鎧の人はそれぞれ剣を振って糸を切って対処した。

剣の人はともかく鎧の人は腕を多少引っ張られていた程度で全く持ち上がってなかったので、相手の重さに影響する技のようだ。


「うぉ?!」

「むぐっ!」


後ろの2人は斧を持った手に大量の糸が降ってきたのでうまく対処できないかと思いきや、その後ろにいた女性が十字の杖を横薙ぎに振って糸を千切った。

力任せに当てたので斧を持った人が張った糸に力を加えられたことでバランスを崩したけど、糸が切れたことですぐさま立て直し、女性の体に繋がった糸を一纏めに切り裂いた。


結果的に6人中4人のスキルを封じて、さらにその中の2人が宙吊りになっている。

それを行なったうららさんを見ると、宙吊りにしている糸を出したままだった。

後ろに放った糸は全て切られたため右手は空いているんだけど、正面の2人を吊り上げている左手からは糸がピンと張られて腕も限界まで伸びている。

もしかしたらそこまで長く持たないのかもしれない。


「しのぶさんは後ろを!ミヤビちゃんは前を!オキナさんとセインさんはサポートをしてください!」

「はい!」

「行きます!やぁぁ!!」

「わかりました!セインは後ろを!ランス!」

「わかった!ひょうちゃんショット!もくちゃんラッシュ!」


しのぶさんは斧を持った男に切り掛かり、ミヤビちゃんは全身鎧の人に向かって槍を突き出す。

それぞれ斧と盾で防ぎ、反撃しようとしたところにアザレアの魔法とセインの援護が入って機会を失う。

さらに前にはシロツキとトバリブレスを吐くことで追加でダメージを与えることができた。


「オキナさん。口縫いも吊るしも糸なので長く持ちませんし、切られたら終わりです。ハピネスちゃん達に本気を出させて圧倒して欲しいのですが可能ですか?

「本気ということは腹部機巧(ギミック)ですか?」

「そうです。どの子を使うかはお任せしますが、圧倒してください」

「わ、わかりました」


うららさんが近くにいる僕とセインにだけ聞こえるように言ってきた。

その表情からはいつものふんわりとした雰囲気がなく、目の前のPK集団を睨みつけていた。

ミヤビちゃんを攻撃した連中だとわかっているからだと思うんだけど、ちょっと怖かったので返答に詰まってしまった。

だけど、お願いには答えるつもりだ。

全然使っていなかった衣装替え(ドレスチェンジ)を実践で使ういい機会にもなるし。


「むぐー!!むっ!むぅ!」


全身鎧の人をミヤビちゃんとシロツキ達に任せて、ハピネスを宙吊りになっていない剣士に向かわせる。

すると、凄い形相で剣を振り回しながら後ろに下がったので、左手から炎を噴射するとさらに勢いよく剣を振り回した。

相当嫌なんだね。


アザレアの魔法も剣士に向けて放ち、ラナンキュラスは宙吊りになった弓士に、クローバーは同じく宙吊りになった杖を持った魔法使いに向けてパチンコを放つ。


「んー!」

「んっ!んっ!」


糸を攻撃しないように注意して宙吊りの2人を攻撃しているんだけど、攻撃した時の勢いで揺れたり暴れることによって徐々に糸が切れていく。

剣士もハピネスの炎に慣れてきたのか、届かない距離片手で剣を構え、単発で放ったアザレアの魔法を避けながら口についている糸を引っ掻いている。

それだけで徐々に糸が切れていくので、宙吊りもスキル封印ももうすぐで解けそうだ。


後ろの2人はセインの精霊によるショットやラッシュで糸を解く隙がなく、さらにうららさんが後ろに向かって糸縛りを使っているせいで攻めるタイミングも少ないみたいで、しのぶさんによる一方的な攻撃を避けたり防ぐのに必死だった。


ミヤビちゃんが全身鎧の人に向けて槍を突き出すと、相手が盾で防いで剣で反撃してくる。

それを盾で受けるとシロツキやトバリが爪や体当たりで攻撃している。

シロツキ達を狙おうとするとミヤビちゃんがスキルを使って強力な一撃を放つし、逆に全身鎧の人がスキルを使って攻撃してもミヤビちゃんが防御系のスキルを使うかシロツキ達に回収されて回避している。

これにより、全員鎧の人のHPがじわじわと減っているね。


アザレアの魔法を避ける剣士にストームを放つと当てられるとは思うんだけど、そうすると宙吊りの2人に当たるかもしれないし、その勢いで一気に糸は千切れそうなのでもう少し様子見だ。

なので、クローバーとラナンキュラスも剣士に向かわせて一気に攻めようと思う。


剣士のスキル封印が解けた時のために正面に鏡写しの盾(ミラーシールド)を使ったラナンキュラス、横からハピネスで攻撃。

合間にアザレアとクローバーで魔法やパチンコを放つ。


剣士はハピネスの炎に強く反応するけどそれ以外は冷静に対処できるみたいで、ラナンキュラスの槍とクローバーのパチンコが増えても避けることに徹している。

だけど、さすがに避け切れない攻撃もあるので、その時は剣を使ってガードしているんだけど少なくないダメージが入っている。


剣士に加えて全身鎧の人と斧の人も積極的に攻撃しないのはこっちの勢いに負けているからじゃなくて、スキル封印や宙吊りが解けるのを待っているのかな。


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