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World Wide Wonderland –人形使いのVRMMO冒険記–  作者: 星砂糖
第1章 –World Wide(ログイン5日目)-
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飛び交うナイフ

カゲザルを倒してからハピネスで倒した痺れキノコがいたところを通って先に進んだ。

しのぶさんが言うには、僕が戦っていた方向からカゲザルが来たらしい。


胞子が舞っていたし、火を放っていたせいで周りは逆に暗く見えていたから気づかなかったのかな。

しのぶさん達からは、離れていてもハピネスの火が見えたらしいけど。


ハピネスと痺れキノコの戦闘音を聞いたのか火を見て寄ってきたのかはわからないけど、戦っているハピネスよりも離れた所にいたしのぶさん達に向かっていったのはなんでだろう。

ハピネスを見て本体の僕を狙った結果なのかな。

もしかしたらカゲザルがハピネスとしのぶさんの間にいて、火から逃げようとした結果遭遇したのかもね。


「ナイフオウルです!」


もう少しでワイルドベア達が出てくるエリアが見えてくるというところでしのぶさんが叫んだ。

視線を追って木の上を見ると、光沢のある灰色の羽が生えた赤い瞳のフクロウがこっちを見ていた。

大きさは4、50cmはありそうなので、少なくともハピネス達よりは大きいし、その分ナイフになっている羽も大きい。

それが3羽いた。


「ホー」


真ん中のナイフオウルが1鳴きすると、左右のナイフオウルが羽を振りかぶり、勢いよく振った。

両方とも片方の羽しか振ってないんだけど、それぞれ5枚ずつ羽を飛ばしてきた。


「防ぎます!」


ミヤビちゃんが盾を構えて前に出る。

羽は1番前にいたしのぶさんを狙っていたようで、10枚全部がミヤビちゃんの盾に当たって甲高い音を立てた。


「ホー!」

「ホーホー!」


全て防いだからか、羽を放った2羽が飛び立ち左右に散った。

そして、しのぶさんとミヤビちゃんを挟むように羽を放った。

今度は両翼なので1羽10枚、左右で20枚飛んできた。


「オキナさん!右をお願いします!」

「わかった!」


ミヤビちゃんが言いながら左に踏み出し盾を構えたので、ラナンキュラスを右に飛ばす。

ラナンキュラスの盾はミヤビちゃんの盾と比べると小さいので、ただ構えているだけだと何枚か防げないのがある。

羽が集中する場所まで下がることができれば防げるんだろうけど、そうするとしのぶさんやミヤビちゃんに当たってしまう。

アザレアを前に出して拒絶の壁(嫌い……)使うべきだったかもしれないけど、今更どうしようもない。

なので、ダメ元で盾を横に振ってみた。


「はっ!」


10枚中8枚を弾くことができたけど、1枚はラナンキュラスが着けている鎧に当たり、もう1枚はしのぶさんの方へ向かった。

だけど、しのぶさんはしっかりと見ていたようで、カゲザルと戦った時に出したパラライソードで弾いた。

ミヤビちゃんの方は問題なく弾ききっているので、左からの羽は届くことはなかった。


「ホー!」

「オキナさん!」

「大丈夫!拒絶の壁(嫌い……)


今度は正面の木に止まっていたナイフオウルがしのぶさん達に向けて羽を飛ばしてきたんだけど、左右のナイフオウルは僕達の方を狙ってきた。

しのぶさんとミヤビちゃんは羽を防ぐために固まっていたので、今すぐ後ろに下がっても間に合わない。

それはラナンキュラスも同じなんだけど、手元にはアザレアがいる。

ミヤビちゃんに返事をしてすぐに機巧(ギミック)を使った。


威力がわからなかったので1枚10MPと想定して100MP分の魔力の壁を作ったんだけど、問題なく防げた。

それどころか、余裕があったみたいで壁に羽が突き刺さった。


「きゅー!」

「キュキュ!」

「ランス!」

「火遁・(ぎょく)!」


ミヤビちゃんは今度も問題なく防いだようで、シロツキとトバリが反撃のために正面のナイフオウルに向かって飛び出した。

僕としのぶさんは左右に分かれて飛んでいるナイフオウルに向けて、それぞれ炎を飛ばした。

だけど、自由に飛べるモンスター相手に一直線に進む魔法は当たらなかった。


なので、僕はラナンキュラスを飛ばし、しのぶさんはうららさんが張った糸を足場にそれぞれ狙ったナイフオウルを追いかけた。


「しのぶさん援護します!ふぅちゃんラッシュ!もくちゃんラッシュ!」


セインはしのぶさんが追いかけているナイフオウルに向けて精霊を2体飛ばした。

ラッシュなら追いかけるから、誰かが攻撃を当てることができればそのまま倒せるかもしれない。

僕の方に飛ばさなかったのはクローバーとアザレアがいるからだね。


ラナンキュラスで追いかけても、空中戦はナイフオウルの方が慣れているので距離が縮まらない。

なので、そこらに落ちている石をクローバーに持たせてパチンコで撃ち、アザレアで進路状にボールを放つ。

ハピネスはラナンキュラスがナイフオウルを叩き落としたらすぐに攻撃できるように走って追いかけさせている。


ナイフオウルはアザレアのボールは避けるんだけど、クローバーが撃つ石は見えづらいのか、数発に1発当たっている。

そのせいで動きが乱れて徐々にラナンキュラスが追いついているんだけど、これ以上クローバーに撃たせないためか羽を飛ばしてくる。

だけど、まだアザレアの出した壁が残っているので、少し後ろに下がるだけで当たらなくなる。

そして、羽を放つ動作をすることでさらに距離が詰まる。


「ホー!!」


ナイフオウルが力強く鳴き、宙返りをしてラナンキュラスの背後を取ろうとした。

一回転した勢いのまま体当たりをするつもりなのか、あるいはすれ違いざまに羽で切るつもりなのかはわからないけどラナンキュラスに向けて突っ込んでくる。

これがシロツキ達のような翼のある生き物ならナイフオウルを見失って動きを止めてしまうかもしれないけど、ラナンキュラスなら振り向くだけで済む。


「ホー?!」


振り返った勢いを利用して槍を一直線に突き出すと、反応しきれなかったナイフオウルの体に刺さる。

ガンッという鈍い音がしたかと思うと、槍が突き出された方向に弧を描きながら落ちていった。

ナイフと言われるだけあって硬い羽だ。

突き抜ける槍(ライトニングランス)を使っておくべきだったかもしれない。


ラナンキュラスの槍を受けたナイフオウルは、地面に落ちて何度もバウンドした。

そこにクローバーの放った石やアザレアの魔法が直撃してさらに転がる。

そして、追いついたハピネスの斬撃と炎を受けながらラナンキュラスの槍をもう一度受けるとHPバーが砕け散った。

当てるまでが厄介だけど、HPはそんなに高くなさそうだ。


「うわっ!」


しのぶさんの様子を見ようとしたら、目の前にあるアザレアが出した魔力の壁にナイフオウルの羽が突き刺さった。

その向こうではしのぶさんとセインの精霊がナイフオウル追いかけているところだった。


セインの精霊はラッシュの命令が生きているから追いかけているんだろうけど、2体ともほとんど同じ起動なので追い詰めるのに向いていない。

しのぶさんは鳥ならではの急上昇や急旋回に追いつけず、一気に距離を縮めてもすぐに離されている。

うららさんの糸や木がないと方向展開できないことがバレているのか、ナイフオウルは糸がない方へ飛んだりすれ違いざまに張られている糸を切って飛んでいる。

切られたらうららさんが張り直しているし、ナイフオウル自体にも糸を放っているんだけど、効果はあまりない。


「こっちは終わったので加勢します!」

「お願いします!」


ミヤビちゃん達の方は、シロツキとトバリがナイフオウルとドッグファイトをしていて、2頭できっちり追い詰めていたので倒すのは時間の問題だ。

ミヤビちゃんが羽を防ぎきれずに少しダメージを受けていたけど、2割も減っていないので、回復は戦闘が終わってからにしてしのぶさんの援護に回る。


ラナンキュラスをナイフオウルの進行方向から向かわせ、避けたところにアザレアとクローバーの攻撃を加える。

それも避けたんだけど、連続で避けたせいで動きが遅くなり、しのぶさんとの距離が縮まる。


「首落とし!!」


しのぶさんはナイフオウルの体を足で挟み、空中で1回転して頭から地面に叩きつけた。

しのぶさん自身は叩きつけた衝撃によってうまく飛び退いてダメージは受けていないんだけど、少しでもミスったら自分が地面に叩きつけられそうな技だ。


地面に転がったナイフオウルにセインの精霊が殺到してラッシュを叩き込む。

その後ろでハピネスとラナンキュラスを待機させ、精霊が命令を遂行して消えた瞬間、攻撃を引き継いでトドメを刺した。


ミヤビちゃんの方もいつの間にか倒していたので、これで戦闘は終了だ。

各自ポーションやマナポーションで回復していく。


「しのぶさんのさっきの技も暗殺術なんですかー?」

「さっきのは忍体術(しのびたいじゅつ)で覚えた技の1つです。普通の格闘術だと空中で使える技が少ないみたいですけど、忍者用の体術は空中で使う技が多いんですよ」

「そうなんですか!格好良かったです!」


セインがしのぶさんのことを褒めていた。

忍者用の体術か。

なんとなくだけど、忍者同士が木の間を飛び交いながら戦っているのが頭に浮かんだ。

この時に使うなら空中技が多いのも納得できるんだけど、これで合ってるのかな。


しのぶさんに聞いてみても理由はわからなかったので、今後覚える技を見て勝手に想像を膨らまそうと思う。


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