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World Wide Wonderland –人形使いのVRMMO冒険記–  作者: 星砂糖
第1章 –World Wide(ログイン5日目)-
223/287

周りが特殊個体なら親玉も特殊個体

パラライシールドビーを倒したら、クイーンパラライビーは一度下がって巣の前に立ち塞がった。


「ギギィィィィ!!ガチガチガチガチ!!」


錫杖を腰だめに構えると先端からバチバチと放電され始める。

距離が空いているのにそれを横に振ると、薄い電気の刃の様なものが飛んできた。


鏡写しの盾(ミラーシールド)!」


ラナンキュラスの盾を発動させて前に出し、電気の刃を跳ね返す。

それに対してもう一度錫杖を振って刃を飛ばして相殺するクイーンパラライビー。

今度は連続で3枚の刃を飛ばしてきた。


「私が防ぎます!」


今度はミヤビちゃんが盾を構える。

ミヤビちゃんの盾は魔法を無効にするからかき消されると思ったんだけど、消えることなく盾に当たりバチッと音を立てて弾けた。


「あぐっ!」


それが3回続くとミヤビちゃんのステータスプレートに麻痺のマークが発生した。

ミヤビちゃんを守るようにラナンキュラスを立たせ、急いでクローバーを投げる。

ミヤビちゃんの側に着地したクローバーですぐに麻痺を解除して、念のため少し減ったHPを回復させる。


ミヤビちゃんの盾は魔法を無効にするけど、飛刃(ひじん)の様な攻撃スキルは消せないし、広範囲の魔法はミヤビちゃんだけ無効になるものだ。

なので、消せないということは魔法ではないということになる。

その点ラナンキュラスの鏡写しの盾(ミラーシールド)は込めたMP分の魔法やスキルを跳ね返すことができる。

モンスターが使ってくる技はどれだけMP消費するのかわからないからMP30分込めたんだけど、まだ機巧(ギミック)が発動したままなので少なくとも30以下ということになる。


「厄介な攻撃ですね!それでも、近づけば使えないでしょう!火遁・(ぎょく)!」


しのぶさんが再度錫杖を振ろうとしたクイーンパラライビーに向けて駆け出しながら火の玉を吹き、その陰に隠れて一気に距離を縮める。

クイーンパラライビーは錫杖を火の玉に当てて弾き消すと、戻す勢いのまましのぶさんへ叩きつける。


「ぐっ!」

「しのぶさん!」


忍刀(しのびがたな)で防いだしのぶさんのHPが3割ほど削れ、麻痺も発生したせいで倒れる。

クイーンパラライビーは無防備なしのぶさんにお尻の針を突き刺し、さらに錫杖を使って跳ね上げた。

麻痺して動けないしのぶさんは抵抗できず錫杖で打ち下ろされて地面を転がる。

HPは0になっていた。


「私が回復します!」

「援護します!」


うららさんがアイテムバッグから回復アイテムの天使の涙を取り出しながらしのぶさんに向かって駆け出す。

幸いしのぶさんは空中で受けた攻撃のせいでこちら側に転がったので、クイーンパラライビーにそこまで近づくわけじゃない。

回復の終わったミヤビちゃんからラナンキュラスをうららさんの方へ移動させることで電気の刃からは守ることができる。


ミヤビちゃんは大きくしたシロツキに飛び乗って速く移動することでクイーンパラライビーの注意を引いている。

クイーンパラライビーが突き出す錫杖を盾で防いだり槍で弾くだけで少しずつダメージが入っている。

ミヤビちゃんは麻痺しないので、しのぶさんはたまたま運悪く麻痺したようだね。


「もくちゃんラッシュ!ふぅちゃんラッシュ!ひーちゃんショット!やみみんショット!」

「ランス!ランス!ランス!」


ミヤビちゃんの援護としてセインがショットやラッシュを、僕はアザレアでファイアランスを打ちながらハピネスを近づけて左手から火炎放射を放つ。

セインは倒れたしのぶさんと戦闘に役立っていない騎士人形から付与していた精霊を呼び戻して攻撃させている。

騎士人形は6匹のビーの時に僕を守る様に動いただけだ。

意を決して近づけば戦ってくれるんだろうけど、そのタイミングがないんだよね。


クイーンパラライビーは錫杖をプロペラの様に回転して正面からのランスやショット、火炎放射を防いだ。

それでも防ぎきれない分はダメージを受けているし、錫杖を魔法に向けているせいで接近技のラッシュは防ぐことができず直撃した。

ミヤビちゃんもこの隙に横からランスを突き入れ、シロツキとトバリもすれ違いざまに引っ掻いたり、尻尾を当ててダメージを与えた。


与えたダメージは3割と少しだけど、錫杖をどうにかすればダメージを与えられることはわかった。

これが、他にビーがいたらとても厄介だけど今はいない。

誰かが錫杖を止めればなんとかなりそうだけど、その役目は僕とセインになるんだろうね。


「ありがとうございます!」

「無茶はしないでくださいね。バブルシャワー!」


しのぶさんを復活させたうららさんがバブルシャワー使いながら後ろに下がる。

しのぶさんはポーションとクローバーで回復。

HPが全快すると同時にクイーンパラライビーに向かっていった。


「ひーちゃん属性付与(エンチャント)!」


すかさずセインがひーちゃんを付与しようとしたんだけど、忍刀(しのびがたな)を指定しようとして失敗したらしく、しのぶさん本人に付与された。

対象を指で示さないとダメなんだけど、しのぶさんが動いているからズレたんだね。


「火遁・(ぎょく)!」


しのぶさんは一瞬驚いて動きが止まったけど、すぐに動いて火の玉を吹いた。

いつもの1.5倍は大きな火の玉がクイーンパラライビーに向かう。


クイーンパラライビーは錫杖を振って火の玉を弾け散らしたけど威力が強かったのか、余波でダメージを受けて少しよろけた。

そこにラナンキュラス突っ込ませて錫杖の柄を槍と盾で押さえ込む。

電撃は錫杖の先に発生しているので柄は問題ないんじゃないかと思ったけど、ラナンキュラスだとダメージがないのかわからない。


「ランス!ランス!ランス!ランス!」

「もくちゃんショット!ふぅちゃんショット!やみみんショット!」

「シロツキちゃん!トバリちゃん!マーブルブレス!」

「火遁・旋風!」

「ギィィィ!!」


ミヤビちゃん達に試してもらうわけにはいかないので今のまま抑え続け、その隙に攻撃を加える。

僕はあざれあでランスを放ちながら、ハピネスで火炎放射をしつつ右手で切りつける。

セインは遠くから攻撃を加え、ミヤビちゃんはシロツキ達にブレスを指示しながら槍で突く。

しのぶさんは螺旋状の業火を吹きながら忍刀(しのびがたな)で切り、うららさんはいざという時のために天使の涙とポーションを取り出している。


流石のクイーンパラライビーもこの猛攻を受けたらタダでは済まないみたいで全力で暴れる。

ラナンキュラスは弾かれて大きく後退し、振り回された錫杖でミヤビちゃんとしのぶさんが吹き飛ばされる。

だけど、体が小さいせいでハピネスには当たらなかった。


猛攻でHPが2割まで減っていたところに継続して放たれる炎。

それに加えて延焼状態になっているようで、クイーンパラライビーの体に火が付いていて、継続ダメージが発生しているようだ。

あれだけ火を浴びたんだから不思議じゃない。


「ストライクランス!」


防御力が高いミヤビちゃんが起き上がると同時にクイーンパラライビーに向かって槍を投げる。

それはハピネスに向かって錫杖を振り下ろそうとしたクイーンパラライビーの横腹に突き刺さり、大きく横へズラす。

攻撃に失敗したところに、背中から迫ったラナンキュラスの槍が突き刺さり、走りながらポーションで回復したしのぶさんが切り付ける。


「ギィィィ……」


HPバーが砕け散り、クイーンパラライビーが光になって消えた。


「強かった……」

「だねー。私達は後ろにいたから安全だったけど、しのぶさんとミヤビちゃんは大変だった!お疲れ様ー!」

「いやー。一度やられましたけど楽しかったです!」

「そうですね!」

「私は安全に戦える方がいいですね」


それぞれポーションやマナポーションで回復しつつ感想を言い合う。

しのぶさんとミヤビちゃんは楽しかったらしいけど、うららさんはそうじゃなかったみたいだ。


「とりあえず巣を壊しましょうか」

「そうですね!」

「はい!」

「もう一踏ん張りだー!」

「私はアイテムの確認をしますね」


うららさん以外のメンバーで巣を壊し、ハチミツとローヤルゼリーを取得した。

クイーンパラライビーが強かったからか、痺れハチミツの量も多いし、痺れローヤルゼリーも8個手に入った。

これで全員が味見できるね。


「皆さん。アイテムバッグにパラライソードはありますか?」

「え?」

「どうやらクイーンパラライビーを守っていたビーからドロップしたみたいなんです」

「なるほど。見てみます」


僕がアイテムバッグを開くと他のみんなも開いた。

手に入れたアイテムを確認した結果、しのぶさんとうららさんがパラライソード、ミヤビちゃんがパラライスピアを2つ、セインパラライシールドを2つ、僕がクイーンパラライビーの痺れ錫杖だった。


説明文には『クイーンパラライビーの中でも強く、回復魔法が使える個体が持つ錫杖で、先端に王冠が付いている。』と書かれていた。

やっぱり特殊個体だったみたいで、回復魔法と錫杖の先端に王冠が付いていることが判断材料のようだ。

王冠なんて気づかないよ……。


セインは杖に王冠が付いていたので、少しテンションが上がっていたらしいけど、他のみんなは言われても付いていたか思い出せない程度だった。

他の武器もクイーンパラライビーの痺れ錫杖のように『個体名の中でも強く』と『綿毛が付いている』と書かれていたので、ビー達の見分け方は武器を見ればいいということになった。


パラライソード、パラライスピア、パラライシールドは体長1mほどのビー達に合わせているため僕達が使うには少し小さい。

だけど、パラライソードは忍刀(しのびがたな)と同じぐらいなのでしのぶさんが使うことになった。

うららさんが持っている方も予備として渡している。


パラライスピアとパラライシールドは小さくて誰も使えないので、全部僕が貰った。

人形ならこれに合わせて作れるからね。

パラライソード含めて麻痺攻撃(微)付いているので、上手くいけば相手を麻痺させることができるから、あって損はないと思う。

シールドの場合相手を殴る必要があるけど。


「あとはこれですね」


アイテムバッグからクイーンパラライビーの痺れ錫杖を取り出す。

クイーンパラライビーが体長3mあったので、錫杖も2m近い大きさだ。


武器の分類は大杖でINTにボーナスが付くみたいなんだけど、僕もセインも武器は装備できない。

魔力を込めると先端が雷に包まれ、そこに触れると麻痺することがある。

他にも振り抜くと電撃が薄い刃状になり、振って途中で止めると電撃を球体として放てるようだ。

まぁ、魔力を込めるというのが上手くできないんだけどね。


槍だったらミヤビちゃんに渡してもよかったんだけど、杖だからということでゲットした僕がそのまま持っておくことになった。

その代わりクイーンパラライビー素材やハチミツなどを渡して釣り合うように調整した。


それでも僕が得している気がするんだけど、みんなからすると使えない武器より調理することで食べられるようになるハチミツの方が価値があるそうだ。

どうしても気になるならいつか手に入るアイテムを融通してくれればいいと言われた。

なので、お言葉に甘えてもらうことにした。


あとで繰り糸(マリオネット)を繋いで、電気が発生するか試してみよう。

これでできたらうららさんの刺繍魔法も使えるようになるかもしれないからね。


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